ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
現代最高のストーリーテラーの神髄、ここにあり
平凡なサラリーマンが追うささやかな事件。しかし日常性の中でこそ、物語はどこまでも深まっていく。これぞ宮部みゆきの真骨頂!
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める――。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。解説・杉江松恋
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
宮部みゆき先生による「杉村三郎シリーズ」の1作です。
杉村三郎シリーズは主人公のサラリーマン・杉村三郎を通じて描かれる人間の悪意がテーマの作品。
2013年5月31日現在のところ『誰か Somebody』、『名もなき毒』、岐阜新聞にて連載された『ペテロの葬列』の3作が存在しています。
このうち、『誰か』と『名もなき毒』は文庫化されていますね。
『名もなき毒』と『ペテロの葬列』連載開始については過去に記事にもしています。
・『名もなき毒』(宮部みゆき著、文芸春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ペテロの葬列』(宮部みゆき著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・宮部みゆき先生新作「ペテロの葬列」が岐阜新聞で6月21日より連載開始!!
本作『誰か Somebody』は続編『名もなき毒』と同様に「世の中に蔓延る毒(人の悪意)」について描かれた作品。
毒の持ち主は特別ではありません。
何処にでも居る「誰か」なのでしょう。
だからこそ、タイトルの『誰か』。
聡美は過去の体験から「毒」に怯えている。
梨子はそんな聡美の影を知らず、「毒」を抱いている。
浜田はそんな梨子の「毒」に当てられる。
3者が関わり方こそ違えど、それぞれに「毒」と関り、皆一様に「毒」に影響される姿は恐ろしい。
これは続編『名もなき毒』にも繋がるテーマでしょうね。
ちなみに、この後のネタバレあらすじはかなりまとめ易く改変を加えています。
本作はもっと深いです。
是非、本作を!!
さて、そんな本作ですが『名もなき毒』としてTBS系「月曜ミステリー」枠にてドラマ化されることが明らかになりました。
ドラマ化されるのはこの『誰か』と『名もなき毒』の2作とのことです。
そんなドラマ版『名もなき毒』2013年7月8日20時よりスタート!!
・宮部みゆき先生原作、杉村三郎シリーズが『名もなき毒』のタイトルでドラマ化!!
<ネタバレあらすじ>
杉村三郎は今多コンツェルン広報室に勤務している。
杉村の妻は、会長の娘・菜穂子。
映画館で痴漢に遭っていたのを助けたことをきっかけに交際し、ゴールインしたのだ。
ちなみに、彼ら夫婦の間には可愛い盛りの娘・桃子が居る。
ある日、舅の運転手を務める梶田信夫が自転車に轢き逃げされ殺害されてしまう。
杉村は、これを悲しんだ梶田の2人の娘から梶田に関する伝記作成を依頼されることに。
姉妹の名は聡美と梨子。
姉・聡美は近く、その婚約者である浜田との結婚を控えていた。
どうやら、伝記作成も梨子の発案であり、聡美はこれに批判的らしいのだが……。
聡美は梶田の過去に表沙汰に出来ない影があると察していたのである。
しかし、梨子は何故か退かない。
伝記作成の為に梶田の過去について調べ始めた杉村。
聡美の懸念通り、何やら怪しい雲行きだが……。
すると、梨子から菜穂子に電話が。
なんと、何者かから「梶田の死について調べるな」と脅迫電話が架かって来たらしい。
なおさら気にかかり始めた杉村は梶田について調査を続け、過去に彼らがある事件に関与していたことを突き止める。
実は、梶田は酔っぱらった父を殺害してしまった女性を庇い、その死体遺棄に関与していた。
事件は表面化されず終わっていたのである。
だが、幼かった聡美はこれを無意識に察しており、以来、目に見えぬ「毒(人の悪意)」に怯えることとなった。
梶田は、聡美と面識のあったその女性を聡美の結婚式に呼ぶ為に訪問した帰路に轢き逃げされたのだ。
だが、轢き逃げ犯はまったく無関係の少年だったことも明らかに。
梶田の死は純然たる事故だったのである。
しかし、梨子は脅迫電話を受けたと主張していた。
これを機に梨子に違和感を抱いた杉村は彼女を調べ、さらに忌むべき事実を突き止める。
なんと、梨子は姉の婚約者・浜田と男女関係にあったのである。
また、浜田も流されるように交際を続けていた。
だからこそ、梶田の死をダシに伝記作成を主張し周囲をかき回し、2人の結婚を先延ばしにしようとしていたのである。
梨子は聡美に嫉妬しており、彼女の物を奪うことに生き甲斐を見出していたのだ。
この事実を梨子と浜田に突き付ける杉村。
ところが、彼らは開き直るばかりか、会長の娘と結婚した杉村には分からないと逆に攻撃する始末。
結局、彼らと相容れないことを痛感するのであった。
浜田たちはこれを機に聡美に彼らの関係を明かした。
結婚はご破算になるのだろう。
薄々、浜田たちの関係を察していた聡美は、杉村が余計なことをしたと憤るのであった―――エンド。
◆宮部みゆき先生関連過去記事
【書評】
・「魔術はささやく」(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「パーフェクト・ブルー」(宮部みゆき著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ステップファザー・ステップ』(宮部みゆき著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『理由』(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『スナーク狩り』(宮部みゆき著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『長い長い殺人』(宮部みゆき著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『レベル7』(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『火車』(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『名もなき毒』(宮部みゆき著、文芸春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ペテロの葬列』(宮部みゆき著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「燔祭(鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまでより)」&「クロスファイア(上・下巻)」(宮部みゆき著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ批評(レビュー)】
・金曜プレステージ「3週連続・罪と女とミステリー最終夜!宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく〜大ヒット原作が今蘇る!大罪を犯した女を襲う復讐地獄…死の着信が私を今日殺す!姿なき悪魔は誰?」(9月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・サスペンス特別企画「火車 宮部みゆき作 東京〜伊勢〜大阪…死体なき連続殺人の謎に挑む!名前も顔も捨て1000キロを逃げる美女!!“このミステリーがすごい!”過去20年間のNo.1小説完全映像化!借金地獄に堕ちたOL衝撃の結末」(11月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・ステップファザー・ステップ「宮部みゆき原作ステップファザー・ステップ 大ベストセラー解禁!!泥棒が双子のパパに!?笑える!泣ける!ニセモノ親子の本物の絆…!!」(1月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・月曜ゴールデン「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー 第一夜 理由 直木賞受賞超大作を豪華キャストで完全映像化!犯人も被害者さえも正体不明4死体と7つの家族…謎と裏切りの真相!!」(5月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・月曜ゴールデン「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー 第二夜 スナーク狩り〜愛する家族を殺された男の悲しい復讐計画!タイムリミットは24時間…東京〜金沢500キロ!今夜貴方は慟哭する」(5月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・月曜ゴールデン「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー 第三夜 長い長い殺人〜史上“最凶”頭脳犯による連続殺人!疑惑の人妻には完璧なアリバイと3億円の保険金が…!壮大トリックの真相」(5月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・月曜ゴールデン「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー 最終夜 レベル7〜宮部作品最大の謎−記憶を奪われた男の決死の逃亡!!極限の中で愛した女は無情にも自らが殺した被害者の娘…!?裏切りと衝撃の最期」(5月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【その他】
・TBSスペシャルドラマ企画「宮部みゆき・4週連続 “極上”ミステリー」放送決定!!
・宮部みゆきさんの「パーフェクト・ブルー」ドラマ化!!
・宮部みゆきさん「パーフェクト・ブルー」ドラマ化・続報!!
・宮部みゆき原作「パーフェクト・ブルー」ドラマ版が劇場公開決定!!
・映画「パーフェクト・ブルー」2010年11月24日DVD発売決定!!
・柳家花緑さん、宮部みゆき先生「我らが隣人の犯罪」を演ずる!!
・宮部みゆき先生新作「ペテロの葬列」が岐阜新聞で6月21日より連載開始!!
・宮部みゆき先生「火車」が韓国で映画化!!
・宮部みゆき先生『ソロモンの偽証』(新潮社刊)、遂に発売決定!!
・【ドラマ】TBS系列にて宮部みゆき先生『パーフェクト・ブルー』(東京創元社刊)が連続ドラマ化!!
・宮部みゆき先生原作、韓国映画版『火車 HELPLESS』が2013年2月6日に日本上陸!!
・宮部みゆき先生『小暮写眞館』(講談社刊)がNHK・BSプレミアムにてドラマ化!!
・宮部みゆき先生原作、杉村三郎シリーズが『名もなき毒』のタイトルでドラマ化!!
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)