<あらすじ>
左遷直前の刑事・香西武雄(佐藤)は、コンビを組む刑事・石川えみ(栗山)の目を盗み、15年前の殺人事件の真犯人・堂島明(要潤)を罠にはめる計画を立てるが、それを手伝っていた藤井寺里紗(多部)が、堂島を正当防衛で死なせてしまう。香西は、里紗を守るためDNAも分解してしまう最新のごみ処理技術の研究者・真崎亮(向井)に分解処理を頼む。しかし、この男こそ、底知れない闇を持つ“怪物”だった……。
(シネマトゥデイさんより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
香西は定年退職を目前に控えた刑事。
彼には過去に苦い思い出があった。
「遠藤くるみちゃん誘拐殺人事件」―――香西は犯人を知りながら逮捕出来なかったのである。
犯人の名は堂島昭、現在の彼は政界に打って出ようとしていた。
しかし、何故、香西は堂島が犯人であると知り得たのか?
香西が犯人を知り得た理由は彼に備わる異能に依ってであった。
その異能の正体は「死の匂い」を香西が嗅ぎ取ることが出来ること。
これにより、その場所で無念の死を遂げた者が居れば知ることが出来るのだ。
それは科学的に証明が出来ない。
その為に香西は堂島が犯人と知りながら証拠不十分で逮捕出来なかった。
自身の無力を許せない香西は、出馬パーティーに参加し堂島に詰め寄る。
だが、堂島はそんな香西を歯牙にもかけない。
なおさら、無力感に苛まれる香西。
しかも、堂島から圧力がかかり、後輩刑事の石川と共に行方不明者捜索に回されてしまう。
消えたとされるのは橋詰という男性。
彼は「日本環境循環ラボラトリ」に真崎という研究員を訪ね、消息を絶っていた。
「日本環境循環ラボラトリ」を訪れた香西は其処で「死の匂い」を嗅ぎ取る。
橋詰は此処で真崎に殺害されたのだ。
そして、水の臨界点を利用し物を分解する真崎の研究で死体は分解されてしまったに違いない。
橋詰について調べた香西は真崎の両親が彼に騙され心中していたことを突き止める。
真崎は唯一の生き残りらしい。
こうして動機も判明した。
だが、やはり証拠が無いのだ。
思い悩む香西に藤井寺里紗が近付く。
里紗は堂島のパーティー会場での騒動を目にしたのだそうだ。
さらに、過去に堂島により乱暴されたことを打ち明ける。
当時は、母親に被害を届け出ないよう言い含められたが、以来、男性を愛せなくなってしまったらしい。
今も、堂島の被害に苦しんでいるのだ。
当初は「今、訴えても君が傷付くだけだ」と里紗を押し留めていた香西も、自身の無力さに耐え兼ねて遂に行動に踏み切る。
里紗を囮に堂島を罠にかけ、彼自身に罪を告白させそれを録音し公開しようと言うのだ。
堂島を呼び出すことに成功した里紗。
ところが、里紗が堂島を逆上させたことで揉み合いになりこれを殺してしまう。
このままでは里紗が殺人犯になってしまう。
堂島を逮捕出来なかった無力さがこの結果を生んだ……そう考えた香西は里紗を逃がす。
そして、真崎を利用することを思いつく。
自身が「死の匂い」を嗅ぐことが出来ると明かし、真崎を脅迫した香西。
結果、堂島の遺体も橋詰同様に分解されるが……その現場を真崎の同僚・斉藤に目撃されてしまう。
数日後、香西のもとに真崎が訪ねて来た。
斉藤が行方不明になったらしい。
もちろん、真崎の仕業である。
とんでもない奴の手を借りてしまった。
後悔する香西だがもう遅い。
真崎は香西の生活に影を落とし始める。
一方、真崎は里紗にも接近し始めた。
香西は里紗を巻き込まないよう真崎を警戒するが、里紗は真崎に溺れてしまう。
さらに、真崎に「里紗を犯行に走らせたのはあなたですよ」と指摘された香西。
なんと、里紗は初めから堂島を殺害するつもりだったと言うのである。
なんでも、香西から堂島を罠にかけると聞いた時に決心していたらしい。
どうしても里紗を救いたい香西は真崎の排除を目論む。
東京都江東区と品川区の行方不明者について調べ始める香西。
江東区は「日本環境循環ラボラトリ」の所在地。
品川区は真崎の自宅の所在地だ。
真崎の犯行を調べ、取引のカードにするつもりなのだ。
行方不明者リストの中に、真崎と同じ住所の住人を発見する香西。
その名は山本照男。
妻・由紀子によれば、ある日を境にふっと消えたらしい。
携帯電話に連絡を入れると、コールはするが電話に出ないのだそうだ。
これを聞いた香西は真崎の犯行と確信、山本家に乗り込む。
山本家の息子・悠の部屋から死の匂いを嗅ぎ取った香西は彼に詰め寄り殺人を認めさせる。
その姿はまさに鬼気迫っていたのだが、香西本人は知る由もない。
香西は由紀子に取引を迫る。
真崎の死体遺棄を証明出来れば、犯行自体は黙認しようと言うのだ。
だが、由紀子はこれを否定。
「山本は生きている、その証拠に携帯に電話すれば呼び出し音が鳴るのだから」と繰り返す。
「なら、確認してやるよ」
香西は由紀子から携帯を奪い取ると山本の携帯番号を鳴らす。
すると……不思議なことに呼び出し音が近くから聞こえて来るではないか!!
なんと、山本の物とされる携帯電話は駐車場備え付けのロッカーに隠されていた。
もちろん、真崎のロッカーである。
香西は勝利を確信し高笑いする。
香西は山本の携帯電話を切り札に真崎に迫る。
だが、真崎は「その携帯は僕の物だ」と開き直る。
由紀子の携帯に登録された夫のナンバーを自身のナンバーに書き換えていたのだそうだ。
何故、そんなことをしたのか?
すべては真崎の罠だった。
真崎は香西の語った「死の匂い」が真実かどうか確かめたのだ。
「いや〜〜〜本当だったんですね」
おどけるように真崎は真相を語り出す。
真崎は過去から死体処理を行っていた。
これを橋詰に知られ、脅迫された為に殺害したのだ。
両親の復讐でも無かった。
さらに、真崎は「里紗ももう用無しだ」とまで口にするが……。
これを確認した香西はニヤリと笑う。
陰に居る里紗に聞かせていたのだ。
ところが、里紗は真崎を選んでしまう。
その黒さが自分と同じだと語る里紗。
同じ罪人だから離れられないとまで口にする。
これを聞いた香西は自身も罪人だと苦しみ始める。
いずれ真崎は里紗をも手にかけるだろう。
阻止すべく香西は真崎に銃を向ける。
それを手を広げ迎え入れる真崎。
だが、香西は銃を捨て、真崎を抱えて川へと飛び込む。
これが俺の選択だ―――そう心の中で呟く香西。
ここでふと目が覚めた。
すべては白昼夢だったのである。
香西は真崎へと銃を構えた姿勢のまま、一歩も動けていなかった。
真崎は香西を誘う。
香西は怪物になるくらいなら……と銃を頭に突き付けるのだが。
数日後、香西は石川と会食していた。
石川によれば、堂島捜索が開始されることとなったらしい。
その堂島に関連して里紗の名前が挙がったと言う。
だが、石川は香西に確認してからと考え、まだ情報を上には伝えていないようだ。
「真相は永遠に暴けない」
香西は物証がないことを理由に、石川にそう告げるが……。
その夜、香西は真崎に関する資料をすべて捨てた。
同じ頃、石川は香西の言葉を繰り返していた。
物証がない……そう言えば、橋詰、堂島、斉藤ら消えた人々は何処に行ったのだろうか?
矢先、石川のもとに悠が父親殺害で出頭して来た。
石川は香西の背信に気付く。
その頃、香西は真崎と接触し「処分して欲しい相手が居る」と語る。
香西は遂に「怪物」になったのだ。
しかし、香西は知らない。
悠の件が発端となり、石川は香西の背信を知ってしまった。
其処で、里紗も含め彼女が知るすべての事実を上層部に報告してしまったのだ。
真崎、香西、里紗は逮捕されるのだろうか―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は福田和代先生『怪物』(集英社刊)。
原作『怪物』(福田和代著、集英社刊)は過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『怪物』(福田和代著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマ版の感想を!!
いろいろモヤモヤをぶつけるよ!!
読むと不快な思いを抱く可能性があるよ!!
注意!!
まさかのラストでしたね。
原作と180度結末を変えてしまいました。
これは……ちょっと驚きかなぁ。
この改変では香西個人に物語が留まり、「怪物」の意味やテーマがまったく活かされないことになるような気がするのだが……気の所為だろうか。
とりあえず、ドラマ版としては次のようなテーマか。
特殊な力を持ちながら、それが認められず常に無力感を抱えた男・香西。
そんな彼が行ってきた正義は決して無駄ではなく、それが皮肉にも香西が悪に屈した後に効果を示した。
つまり、香西は悪に勝った。彼自身は気付かなかったが。
う〜〜〜ん、改めて考えるまでもなく、これは……原作の方が上だなぁ。
だって、ドラマ版だと上記の結論なんだろうけども、まるで香西が与した方が敗けるみたいに見えるし……。
香西の真の能力は「死の匂い」よりも与した側を破滅させる能力になっちゃうよ。
そもそも原作のテーマは「人は誰しもが怪物になる」だと思うしなぁ。
これが、あの唐突な「正義は勝つエンド」で有耶無耶になっちゃった……。
そう言えば、香西の孤独も描けていなかった気がする。
原作だと香西は妻子を失って……との背景があって、娘のような里紗に思い入れ真崎に呑み込まれるんだけど、ドラマ版の香西は自身の無力感よりも先に何だか良く分からない自問自答を繰り返し自滅した印象。
真崎も原作とイメージが違ったかな。
少なくとも原作ほどの迫力や説得力がない。
向井理さんは管理人が好きな俳優さんの1人ですが、基本として包容力のある善人役こそが本領の方だと思うので、今回の真崎役に関してはミスキャストだったのではないでしょうか。
どちらかと言えば、原作のイメージは『十三人の刺客』などで好演を見せた稲垣吾郎さんでした。
・『映画ノベライズ版 十三人の刺客』(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
それと、原作の里紗は不透明なキャラで、真崎を通じて語られる里紗が何処まで真実か分からないところに、香西と同じく読者が振り回される点もあったのですが、ドラマ版は割と明快な設定に。
ドラマ版の里紗はこんな感じか。
異性を愛したいのだが、堂島に与えられた傷が原因で男性と向き合えずに居た里紗。
これを克服するべく堂島排除を謀り、身近な異性を求めた。
だから、最初が香西であったが、香西は罪の意識からこれを拒否。
次いで、近付いて来た真崎に走ったと言った感じ。
う〜〜〜ん、原作版よりもかなりあっさりしたタイプになった気がする。
此の点も真崎の迫力が欠けたように感じた原因かもしれない。
ドラマ中であったように里紗を用いて香西を翻弄することこそが、真崎の闇の一端なので。
その里紗が分かり易くなると、真崎も……。
結果、なんだか真崎の底知れ無さが無くなっちゃったんだよなぁ……。
それと、原作の石川と三園がドラマ版の石川に統合されて性別も変更されていたワケですが、この点はアリだと思います。2時間でまとめる為には必要な改変でしょう。
でも、このドラマ版のまとめ方からすると、山本関連一切をカットして別のエピソードで補うのもアリだった気がします。
総評として「ドラマ単体としては頑張ってたけど、原作を知ってると物足りない印象」です。
◆関連過去記事
・『怪物』(福田和代著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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