ネタバレあります、注意!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。
渡辺医師:美星村の医師。
吉田:美星村に赴任した巡査。
田中:美星村の住人。
限界集落・美星村。
村で唯一の医師・渡辺は患者である田中の家へと向け、直線道路に沿って真っ直ぐに車を走らせていた。
特に何もない辺鄙な直線の筈であったが……その日に限っては異なっていた。
渡辺の車の進行方向が少しずつ奇妙な霧に覆われ出したのである。
やがて、不意に人影らしきものが飛び出して、渡辺はソレを轢いてしまった。
轢かれたソレはバラバラに弾け飛んで……消えた。
渡辺は恐怖を感じながらも走り続けた。
やがて、患者である田中の家に到着した。
あれは……何だったのだろうか?
狐に包まれた様な気持ちで車を降りると、車のフロント部分に血が付着していた。
驚き慌てたが、田中に急かされるように患者を診察した。
そして、帰りに車を確認すると血痕は消えていたのである……。
得体の知れない恐怖に襲われた渡辺は村の巡査・吉田に相談した。
だが、被害者も出ていないことから、吉田は夢でも見たのだろうと笑って相手にしない。
数日後、吉田が陽一の自宅を訪ねた。
吉田は陽一の後輩だったのである。
ふと話題に上がった渡辺のエピソード。
吉田は与太話として取り上げたのだが、これを傍で聞いていた月の表情が変わる。
月によれば、渡辺の訴えは捨て置けないモノらしい。
こうして、陽一と月は綺麗な星が見えると言う美星村を訪問することとなった。
渡辺は未だ納得がいかないらしく、幽霊を轢いたのかもしれないと主張し続けていた。
一方、田中や他の美星村の住人はそんな渡辺の主張を夢でも見たのだろうと取り合わない。
それどころか、そんな事故は無かったとの目撃者までが現れる。
陽一と吉田はやはり夢でも見たのだろうかと納得しかけるが……月は田中や目撃者が嘘を吐いていると看破する。
渡辺が事故現場と主張する直線道路を確認する陽一と月。
すると、其処で月が何者かに襲撃されてしまう。
……だが、月は護身術を身に着けていた。
逆に相手を取り押さえることに。
襲撃者、その正体は田中や目撃者たちであった。
こうして事件の真相が明らかとなった。
轢き逃げ事故は実際に発生していたのだ。
だが、村で唯一の医師である渡辺の轢き逃げ事故を認めてしまえば、彼は逮捕されるかもしれない。
あるいは、医師免許を剥奪され医療行為に従事できなくなるかもしれない。
もし、そうなれば村には医師が居なくなってしまう……。
それを怖れた住人達が事故を隠蔽していたのだ。
轢き逃げ被害者は酔っ払って道に飛び出しており、軽傷だった為に町の病院に入院させていると言う。
酔っ払った被害者自身に轢き逃げの記憶が無いことも、彼らに幸いしたようである。
こうして、真相が明らかになった。
だが、田中たち美星村の住人は一様に口を揃えて不思議がる。
何故、渡辺が轢き逃げしてしまったのか……と。
月は彼らに事情を説明する。
当時の渡辺は、ハイウェイ・ヒュプノシス状態だったのである。
ハイウェイ・ヒュプノシスは「ドライバーが疲労を抱えており、単調な直線道路を走っているときに起こる現象」。
つまり、渡辺は一種の催眠状態にあった。
だから、幻覚と現実の境が曖昧になり人を轢いた事実を認識できなかったのだ。
こうして、渡辺が轢き逃げした謎も解明された。
村人たちは偽証したことを認めたが、吉田により説諭に留められた。
渡辺自身は被害者に謝罪。
当時の渡辺の状況と被害者自身も酒に酔っていたことから、示談が成立し罪に問われることは無いようである。
その夜、美星村名物の星を見る陽一と月。
「来て良かっただろ」と告げる陽一に、照れながら頷く月であった―――4話に続く。
<感想>
先頃完結した「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。
まさに陽一(太陽)と月(月)の物語です。
では、3話を読んだ感想を。
物語自体は「渡辺医師による幽霊轢き逃げ事件」からスタートと興味深いものでした。
導入部はかなり良かったと思います。
ただ、その後が薄味なのと、結論を優先させ過ぎて過程や内容が説得力を欠く部分があったように感じられたのが惜しいかも。
薄味になった理由としては、最終的に「ハイウェイ・ヒュプノシス」と「無医村問題」にまで触れることで、テーマが2つになりブレたかな、と。
いずれか1つに絞って、より深く描いた方が濃くなったと思う。
今回の場合だと「無医村問題」に絞り、村人が渡辺を庇った点のみにした方がテーマを深く描けたと思う。
余った尺は美星村か限界集落であることを深く描写することに充てても良かったかもしれない。
あるいは、キャラ描写に割いた方が面白かったのでは!?
キャラ描写の具体的な例としては、月の能力描写に充てるべきではないだろうか。
今回、月の顔相能力が発揮された機会が「渡辺の主張が真実であること」、「村人の証言が嘘であること」を看破する際の2回のみとなっており、かなりあっさり目。
あくまで、月の推理の補助的要因のみに用いられている。
これでは、嘘発見器と変わらない。
また、この見極めも実質2コマでほぼ説明なしの台詞(真実か嘘かのみ)となっているのも惜しい。
まだ3話目だし、折角の月の能力なので、もう少し重点を置いて描いても良かったような気もする。
これが無いと、本作の特徴が薄れてしまうので。
それと、吉田の話を聞いて月が疑惑を抱いた根拠も弱い気がする。
作中の流れから推察すると、おそらく吉田が語った渡辺のエピソードにより月が「ハイウェイ・ヒュプノシス」の可能性に思い当たり疑惑を抱いたのだと思うが、これは根拠として薄弱だと思う。
「疑惑を抱き美星村を訪問する」との結論が先にあり、物語の必要性から強引にその展開へと繋げた印象を受けた。
先に述べたテーマを1つに絞る方法を採用すれば、ありがちかもしれないが、いっそのこと「陽一と月が吉田を訪ねて美星村に足を運び渡辺の幽霊轢き逃げ事件について耳にした」設定の方が自然な展開との印象を受けたと思う。
3話はこんなところか。
テーマ自体は魅力的だし、素材やキャラ設定も面白いと思うので、3話は些か勿体なかったかな。
それとも、この展開の見せ方こそが本作のカラーとなるのかもしれない。
だとすると、ちょっと管理人の好みとは合わないかなぁ……。
とはいえ、まだ3話。
次回、4話に期待!!
ちなみに、ルナは父親に対しトラウマがある様子。
その天才的な力により、父に虐待されていたのかな。
結局、父と母はこれが原因で離婚。
そして、母が陽一の父と再婚といった流れか。
ルナとしては離婚の原因が自身にあると考えて、以来、人と距離を置くようになったか。
ところが、無邪気な陽一に癒されていく展開か。
イイですね。
最終的にはルナがトラウマとなった父と和解する(乗り越える)展開もありそうかな。
興味を抱かれた方は是非、『ビッグコミックオリジナル 増刊号』にて本作を確認されたし。
◆関連過去記事
・『月は囁く』第1話「月は囁き、花は語る」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)
・『月は囁く』第2話「月とドッペルゲンガー」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル5月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)
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