ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
『マスカレード・ホテル』スピンオフ。
新米刑事・新田が実業家刺殺事件に挑む!
(公式HPより)
<感想>
『マスカレード・ホテル』の主人公・新田刑事の新人時代を描いたスピンオフ作品です。
・『マスカレード・ホテル』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
スピンオフと言えば「本編に登場した主役以外のキャラを主役に据えた別作品」をイメージしていた管理人。
え、待って……スピンオフ?
ということは『マスカレード・ホテル』の主人公は新田じゃなかったの?
てっきり、新田だと思ってたのだけど……じゃぁ、山岸が主人公だったのか……。
などと、愕然としてしまいましたが……。
調べてみたところ、「スピンオフ」とは「派生作品全般を指すもの」とのことで、外伝や番外編なども広い意味での派生作品だそうで、その点では新田が本編の主人公の1人だとしても「スピンオフ」と解してOKかと一安心。
そんなヒヤリハットを与えた本作。
内容的には同じ東野先生『容疑者Xの献身』の別バージョン的な作品。
・『容疑者Xの献身』(文春文庫版)&映画版
『容疑者Xの献身』の読者の誰もが一度は夢想した「もしも、あの人が意図して相手の気持ちを利用するような黒幕的人物だったら……」、「強かに凌ぎ切って居たらどうなっていたか」的な展開が実現しています。
それにしても、この時期にスピンオフとは……。
ひょっとしてシリーズ続編の構想もあるのかな……。
だとすると、嬉しいのだけど。
<ネタバレあらすじ>
新人刑事の新田は与えられた機会に燃えていた。
彼女とのデートもそこそこに、事件の方を選ぶほどの力の入れようであった。
そんな新田が先輩刑事・本宮と挑むのは、ホワイトデーに起こった会社社長・田所昇一殺害事件。
昇一の妻で料理教室を営む美千代によれば、昇一は夕食を共にした後にジョギングに出掛けそのまま何者かに刺殺されたようである。
現場付近には煙草の吸殻が5本ほど残されており、この吸殻の主が犯人と思われた。
新田は現場の状況から、犯人が自転車を使用して昇一に近付き殺害したと判断。
其処から吸殻が犯人の偽装であると推測。
5本もの他人の吸殻を手に入れられる場所から、セルフの飲食店を調べ始める。
結果、付近のハンバーガーショップの防犯カメラから犯人らしき男の映像を入手する。
その映像を美千代に確認させたところ、男が美千代の料理教室に通う横森であると判明する。
横森が美千代に横恋慕していたこともあり、横森は昇一殺害の犯人として逮捕された。
逮捕された横森は「美千代の為に昇一を殺害した」と主張。
だが、美千代から指示されたことではないと述べる。
どうやら、美千代が昇一にDVを受けていると聞き、助けようとして犯行に及んだらしい。
横森は、勝気な美千代の弱い素顔を知ったからの犯行だと譲らない。
横森にとって、あくまで美千代と結ばれるつもりはなく報われる必要も無い様子である。
こうして、事件は横森による一方的な献身が動機とされたが……。
この結果に新田は疑問を抱いていた。
新田の脳裏に恋人の「女のスッピンには“本当のスッピン”と“見せても良いスッピン”がある」との言葉が甦る。
新田は美千代に昇一の胃の内容物を調べたいと揺さぶりをかける。
これに美千代は激しく動揺する。
数日後、改めて新田は美千代のもとを訪れた。
横森が美千代から聞かされた昇一のDVの事実が存在していなかったことを告げる新田。
それどころか、美千代が浮気をしており、それが原因で昇一から離婚を切り出されていたこともぶつける。
だからこそあの日、昇一はジョギングに出掛けたのだ。
本来ならば、あの日はホワイトデー。
昇一は美千代と夕食を共にし、酒を飲んでいた筈だ。
酩酊していれば、ジョギングに出掛けられるワケがない。
そう、昇一は美千代との仲をこじらせており、食事をせずに外出したのである。
美千代はこれを逆手に取り、横森に昇一の外出情報をそれとなく伝え殺害させたのだ。
横森は美千代に利用されたに過ぎなかった。
美千代は昇一に離婚されることで、社長夫人の優雅な生活を捨てることを嫌った。
其処で自身に想いを寄せる横森に昇一を殺害させ、その遺産を継ぐことを計画したのだ。
横森が見たと確信していた美千代の素顔は「見せても良いスッピン」……いや、ニセモノの素顔だったのだ。
だが、新田にこれを立証する術は無い。
実行犯の横森は自身が操られたことを知らない。
そして、美千代がこれを操った確たる証拠も無いのだ。
「もしも、横森が逮捕されずストーカーと化したらどうするつもりだったのか?」
問う新田。
「そんなもの、どうとでもなるわ」
美千代は笑って答える。
新田の問いに応じるほどの余裕があるのだ。
横森のことなど、歯牙にもかけていないのであろう。
「女って、こんな面も持ち合わせているんです。勉強になりました?」
美千代の問いかけに黙って頷く他ない新田であった―――エンド。
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