<あらすじ>
女将の桑野厚子(岡江久美子)が切り盛りする北鎌倉の旅館「くわの」は、いつからか「密会の宿」と呼ばれるようになっていた。
ある日、人気作家の稲場早苗(高橋ひとみ)が「くわの」へ宿泊に訪れる。自身が原作を書き、知人の前園(相島一之)が監督を務める映画の撮影が鎌倉で行われており、陣中見舞いに訪れたのだった。番頭の久保隆(東幹久)が「御二人様でのご予約では?」と尋ねると、早苗は後から来ると自信なさげに答える。
とその時、一組のカップル・飯倉(高知東生)と麻里(山崎直子)がチェックアウトするためロビーに現れる。二人は早苗の顔を見るなり驚きの表情を見せ、飯倉は早苗に真剣な顔で何かを頼み込んでいた。
翌日、結局連れの人は現れないまま、宿を出発することになった早苗はどこか寂しげだった。そこへ、酔っ払った松波(岩城滉一)と派手な女・ゆかり(麻尋えりか)が「くわの」にやってくる。二人の姿になぜかショックを受けた様子の早苗が厚子は気にかかり…。
その後、厚子は馴染みの甘味茶店「彩乃」で女主人の彩乃(清水めぐみ)と雑談をしていた。すると偶然客として来ていた早苗が、レモンスカッシュを飲むなり苦しみ出し倒れてしまう!
店に居合わせていた北鎌倉署の刑事・番場(西岡コ馬)が診ると、早苗は既に死んでおり、口もとの匂いから青酸カリを飲んだようだと言う。
司法解剖の結果、早苗は2週間ほど前に胃の全摘手術が行われていたことが判明。青酸カリは、普通胃酸によって反応しそれが血液中のヘモグロビンにくっついて死に至るのだが、早苗は胃そのものがないため胃酸が出ず、レモンスカッシュの酸に反応したことが分かる。
そこで、どこで青酸カリを飲んだのかを捜査することに。前日滞在していた「くわの」にも捜査の手が及ぶ中、早苗を殺したのは自分で、円覚寺の山門近くのゴミ箱の中にあるミネラルウォーターの容器を調べれば分かる、という変声機を使った電話が刑事課に入る。早速ゴミ箱を調べるとミネラルウォーター入りのペットボトルが見つかった。
そんな中、早苗の娘・比呂美(西原亜希)と弟の和人(デビット伊東)が、早苗の遺体に対面するため警察にやってくるが…!
(水曜ミステリー9公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
1人の女性が必死に逃げていた。
どうやら何者かに追われているようだ。
追い詰められた女性は、恩人である早苗に助けを求める電話を入れる。
だが、電話に応じたのは無機質な機械音であった―――留守番電話だったのだ。
女性は自身の断末魔を吹き込むこととなった……。
数日後、人気作家の稲葉早苗は、自身の作品が映画化されることもあり、その撮影現場を訪れていた。
其処には監督で早苗の知人である前園が居た。
前園は早苗の陣中見舞いを笑顔で受ける。
さらに、早苗自慢の「のど飴」を譲り受けご満悦である。
しげしげと早苗の「のど飴ケース」を眺める前園だが……。
その夜、「くわの」に早苗が宿泊することとなった。
連れは後から来るらしいが……。
早苗のファンであった番頭の久保は興奮気味にもてなす。
久保によれば、早苗の作品は扇情的な作風で敵も多いらしい。
これを聞いた女将の厚子は不安が隠せない。
次の朝、早苗の連れは現れず、早苗はそのまま宿を去ることとなった。
ところが去り際にひと騒動が……。
「くわの」に現れた1組のカップルに早苗が反応したのだ。
だらしない様子を見せる中年の男性と若い女性、これを見るや早苗はショックを受け俯いてしまう……。
数時間後、早苗の姿は甘味茶店「彩乃」にあった。
レモンスカッシュを口にした早苗は、急に苦しみ出し絶命してしまう。
刑事の番場によれば、早苗は青酸カリによる中毒死。
さらに、早苗が2週間ほど前に胃の全摘手術を行っていたことが判明。
青酸カリは、胃酸によって反応しそれが血液中のヘモグロビンに結び付くことで死に至る。
どうやら、早苗は胃そのものが無かった為に胃酸が出ず、レモンスカッシュの酸に反応したようだ。
つまり、レモンスカッシュによる毒殺ではなく、事前に毒物を服用させられていたらしい。
そんな中、早苗の立ち寄り先のゴミ箱から飲みかけのミネラルウォーターの容器が見つかる。
これに青酸カリが混入させられていたことが分かる。
ミネラルウォーターを口にした為に死亡したのだろうが……。
番場の捜査の中、早苗が「くわの」で反応したカップルにも容疑が向かう。
遂に男女の正体が判明することに。
男は松波、女性は蔵田ゆかりというホステスであった。
周囲の人間によれば、蔵田ゆかりは松波に雇われて恋人のふりをしたらしい。
しかも、過去に松波が早苗と恋愛関係にあり、早苗を庇い松波が殺人の罪を犯していたことも明らかに。
以来、松波は早苗と距離を置き続けていたようだ。
矢先、蔵田ゆかりが何者かに襲撃され重傷に。
入院するゆかりだが、意識は回復しない。
早苗が著した『ふたたびの愛』を読んだ厚子。
早苗が松波を愛しており、彼との愛を取り戻すべく「くわの」に呼び出したと推測する。
だが、松波は自分が人気作家の早苗と吊り合わないと判断し、これを邪魔しないよう身を退いたのだ。
その為に、ゆかりを雇って早苗に諦めさせようとしたらしい。
だとすれば、松波は今も早苗を愛している。
これを証明するように、松波は早苗殺害犯を捜し始める。
どうやら、復讐する気のようだ。
そんな中、早苗が飲みかけのペットボトルを捨てないことが判明。
つまり、ミネラルウォーターの容器それ自体が犯人の偽装工作だったのだ。
青酸カリは他の経路で服用されたことになる。
厚子は早苗の娘・比呂美から早苗に関する情報を得る。
早苗は普段から健康に気を遣い、のど飴や野菜ジュースを愛用していた。
しかも、このことをある人物とメールでやり取りしていたのである。
厚子と久保は前園監督を訪ねた。
そう、早苗のメール相手にして、その殺害は前園の犯行だったのだ。
前園は早苗が手術を受けていることを知った上で、のど飴に青酸を仕掛けたのだ。
早苗は普段から酸性の野菜ジュースを愛飲している。
これが組み合わされば、その時点で落命する仕掛けであった。
その一方で、捜査を混乱させるべくペットボトルを偽装したのだ。
告発された前園は狼狽。
さらに事態が加速する出来事が!!
松波が早苗の復讐をするべく現れたのだ。
松波の手には刃物が握られていた。
怯える前園、もはや惨事は避けられないか……。
そのとき、番場が到着。
前園を逮捕する。
蔵田ゆかりが意識を取り戻し、番場の犯行を明かしたらしい。
前園は神崎千夏に手を出し、スキャンダルになりかけた。
焦った前園は、千夏の口封じに成功し死体を隠した。
ところが、早苗は千夏からの留守電を聞き、これを警察に届けると言い出した。
其処で口封じされたのである。
さらに、この現場を蔵田ゆかりに目撃され、これも口封じしようと襲撃したのであった。
前園は連行されて行った。
入替りに現れたのは、早苗の娘・比呂美。
実は、早苗と松波は早苗の父により、互いに愛し合いながら引き裂かれていた。
早苗の父は、早苗には松波が死亡したと嘘を吐いた。
一方で、松波には早苗が愛する人と結婚したと嘘を吐いたのだ。
だが、最近になって早苗は真実に気付いた。
そして、松波と再会を希望した。
何故なら、早苗には松波に伝えるべき事実があったから。
比呂美は早苗と松波の間の娘だったのだ。
父と娘は此処に初めて名乗り合うのであった。
こうして事件は解決。
「くわの」は今日も元気に営業中である―――エンド。
<感想>
「密会の宿」シリーズ第10弾です。
前作は2012年6月27日の放送なので、ほぼ1年ぶりの新作となりました。
前作などはネタバレ批評(レビュー)してますね。
興味のある方は過去記事リンクをどうぞ!!
シリーズの原作者は佐野洋先生。
なお、佐野洋先生は2013年4月に亡くなられており、以来初のドラマ化放送となります。
・『推理日記』で知られる佐野洋先生、死去……。
さて、そんなドラマ版の感想を!!
今回、かなり良かったですね。
個人的に高評価。
まず、厚子の「AでなければB」な場当たり的な容疑者絞り込みが無かったのが良かった。
何より、オープニング時点で既に犯人と動機、犯行方法が示されていましたし。
つまり、開始早々3分にして犯人が分かる作りだったワケです。
管理人!?
もちろん、前園が犯人だと分かってましたよ。
何しろ、かなりのど飴を強調してましたからね。
なので、ミステリ的なフーダニット部分だけならば、開始3分と終盤10分で十分な筈。
ネタバレあらすじでも飯倉と和人らミスリード要員はカットしてます。
とはいえ、本作のメインは其処には無い。
今回のメインは「松波と早苗の二十年に及ぶ愛そのもの」にありました。
これは良かったです。
最近、夏バテ気味か2時間サスペンスを視聴しても首を傾げるような感想が多かったのですが、今回はアリでした。
むしろ、少し胸が熱くなりました。
何故だろう……。
当初こそ斜に構えていたところもありましたが、ラストに向けてズルズルと興味を惹かれて、松波と比呂美の親娘の名乗りのシーンでは「良かったねぇ、本当に良かったねぇ」を連発してしまいました。
ただひとつ、松波の真意を誤解したままだった早苗は可哀想でした。
その分、身勝手に早苗を殺害した前園への怒りが……。
次回にも期待出来る作品でした!!
◆関連過去記事
・水曜ミステリー9「密会の宿 北鎌倉心中!死ねなかった女…私の弱さがあなたを殺した純愛と不倫に揺れる心に復讐の炎!帯留めと和服が暴く殺人計画(最愛の人の命日に新たな悲劇が!罠にはまった殺人者)」(12月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「密会の宿9 最後の恋 鎌倉人魚伝説殺人事件 宝石の甘い罠に堕ちた3人の女!愛と嫉妬の炎に身を焦した果てに見た悲しみの真実!(宝石の甘い罠〜この恋だけは失いたくない誕生石に隠された罠!涙の北鎌倉人魚伝説)」(6月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・【衝撃】佐野洋先生『推理日記』が39年目にして終了を迎える。
・『推理日記』で知られる佐野洋先生、死去……。
<キャスト>
桑野厚子:岡江久美子
久保隆:東幹久
番場周平:西岡コ馬
松波映二:岩城滉一
稲場早苗:高橋ひとみ
稲場比呂美:西原亜希
前園雄作:相島一之
稲場和人:デビット伊東
飯倉晋平:高知東生
等々力麻里:山崎直子
蔵田ゆかり:麻尋えりか
瀬川樹里:Sharo
古谷勝江:松井紀美江
宮本千夏:松本眞佳
六波羅浩介:内浦純一 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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