<あらすじ>
ある雨の夜、神社の境内で近所に住む滝本あやめ(石原あつ美)が遺体となって発見される。現場に急行した多摩南署のたたき上げ刑事・近松丙吉(伊東四朗)は、遺体の下の土がぬかるんでいたことから、雨が降り出してから殺害されたとして犯行時刻を絞り込む。
その後、警視庁と多摩南署による合同捜査会議では、近松の上司・村越(角野卓造)が、検視の結果正面から両手で首を絞められたことによる窒息死であると報告。また現場から、被害者の靴跡以外に27cmの長靴の跡が発見され、状況から犯人のものであると分析される。さらにあやめが事件直前に銀行で30万円下ろしていたことや、所持していたバッグが見つからないこと、着衣に乱れがないことなどから、警視庁捜査一課管理官の山形(三浦浩一)は強盗殺人とみて捜査を進めると指示。
しかし近松は、被害者のカーディガンのボタンはきちんと留められていたのに下に着ていたブラウスのボタンの一番上がちぎられていたことや、犯人は雨が降る前から長靴を履いていたのか?と疑問を抱く。
あやめの母・芳子(小宮久美子)や同僚の証言から、近松は下ろしたお金は付き合っている男性とハワイに行く旅費だったと推測。そんな中、あやめが銀行の近くで白いスポーツカーに乗るのを見たという証言が取れる。車の持ち主はあやめが勤める建材メーカーの専務・浅田(乃木涼介)で、問い詰めるとあやめとは遊びのつもりで交際していたと白状する。事件当日は、「会わせたい人がいる」と言うあやめを車に乗せ彼女のマンションに向かったところ、その人物があやめの母親と判明、母親の前で結婚の約束をして欲しいとせがまれて神社で口論になり、母親には会わずに帰ったという。
犯行現場近くの住民に聞き込みをすることにした近松は中石(益岡徹)家へ。中石や妻の雅代(国生さゆり)、息子の暁(柄本時生)に話を聞くが、皆、雨が降り出してから外出をしていないので外の様子はわからないという。
しかしそこで近松は気になるものを見つける。
その後、現場に残された長靴の足跡と、中石が捨てた長靴が一致。だが、中石とあやめには接点が全くなく、中石の家の様子からも金に困っていた様子がなく、金目当ての犯行とも思えなかった。逮捕状を請求するだけの材料がなく、警察は任意で事情聴取していた中石を解放。新たな情報を探す近松に、地元に住むオバちゃん(小柳友貴美)が話しかけてくる。
雅代が若い男とラブホテルから出てくる姿を見たといい…!
(水曜ミステリー9公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
滝本あやめが何者かに殺害された。
あやめの遺体の周囲には、濡れた地面の上にあやめ自身の足跡とこれと争った思われる犯人の足跡が残されており、雨が降り始めて以降に殺害されたと思われた。
この事件の捜査に近松と後輩刑事の西尾が乗り出した。
あやめの周囲を調べたところ、あやめが浅田と交際していたことが判明。
だが、浅田はあやめとは遊びのつもりであり、本気では無かったことが分かる。
あの日も、それが原因で別れ話となり喧嘩になっていたそうだ。
続いて、現場周辺の聞き込みを行った近松たち。
すると、近所に住む中石家が浮上する。
中石家は夫の中石と妻・雅代、それに息子の暁の3人家族。
暁は司法試験に合格した俊英であった。
中石と暁は共に眼鏡をかけており、表情が読みにくい。
眼鏡の為に眼精疲労になり易いと笑う中石。
だが、そんな中で暁の挙動に何処か不審を抱く近松。
しかし、暁にはアリバイがあった。
あやめが死亡したとされる降雨中には、ずっと友人と電話していたのだそうである。
緊張しているのか、証言中に何度も繰り返し眼鏡をずり上げる暁。
そんな中、西尾が聞き込みから有力な情報を掴む。
どうやら、雅代には不倫している若い男が居るらしい。
その若い男―――小山田も何者かに殺害されてしまう。
どうしても暁が気にかかる近松は、降雨前の行動について調べ始める。
すると、暁が駅にある「みつば書店」に立ち寄っていたことが判明。
此処から帰宅すれば、犯行現場を通過することになるが……。
近松はあやめが本当に降雨後に殺害されたのかに疑問を抱くように。
犯行現場に残されたあやめの靴跡を確認した近松は、それが無軌道に並んでいることに気付く。
つまり、犯人による工作だったのだ。
そもそも、犯行時刻の割り出しはあやめの足跡が根拠となっていた。
となれば、犯行時刻それ自体が「降雨後」ではなく「降雨前」である可能性も出て来たのだ。
これならば、暁でも犯行可能である。
矢先、中石が犯行を認める手紙を残し姿を消した。
どうやら自殺するつもりらしい。
近松は消えた中石を追い、自殺を阻止することに成功するが……。
中石はあやめに欲情し襲い掛かったが、抵抗され顔を見られたので殺害したと述べる。
その現場を小山田に目撃され、脅迫されたと語る中石。
雅代が小山田と関係を結んだのは、犯行を黙認して貰う条件だったそうだ。
これを知った小山田が口封じに殺害したらしいが……。
近松はこれを否定。
少なくともあやめ殺害の真犯人は別に居ると断言する。
その真犯人とは暁であった。
実際の犯行時刻は雨が降る前。
暁はあやめと浅田の別れ話を目撃し、あやめに迫った。
だが、抵抗された為に殺害したのだ。
犯行後、暁は逃げるように帰宅。
全ての事情を中石たちに告げた。
中石は慌てて暁を守るべく善後策を講じた。
まず、暁はあやめを殺害した際に眼鏡を壊してしまった。
其処で中石は自身の眼鏡を暁に譲り、自分は古い眼鏡を持ち出した。
新たに注文し怪しまれないようにする為だ。
結果、中石は度の合わない眼鏡に眼精疲労を引き起こした。
一方、暁は慣れないフレームにずり落ちないよう必死に何度も押し上げたのだ。
そうしつつも、雨が降ったことを利用し殺害現場に工作し暁のアリバイを確保した。
ところが、この中石の工作を小山田に目撃されたのだ。
小山田は中石たちを脅迫した。
雅代が小山田と関係したのもこの所為であった。
こうして中石は小山田を口封じに殺害したのであった。
だが、中石は暁の犯行を認めようとしない。
さらに、暁自身も「じゃあ、父がやったんじゃないですか」と開き直る始末。
これを聞いた近松は「君には親の気持ちが分からないのか!!」と激昂。
暁の態度に「このままではいけない」と考えた中石自身も暁の罪を認める。
こうして、暁自身も罪を認め始めることに。
その夕刻、暁は全面自供した。
事件が解決し一息つく近松に上司の村越が話しかける。
「親指は小指を向いている。小指は親指を向いていない」
つまり、親は子を見るが、子は親を見ないのだ。
何処かぶっきらぼうに語る村越。
「寂しいモノですね」と呟く近松―――エンド。
<感想>
「多摩南署・たたき上げ刑事近松丙吉」シリーズ11作目。
前作は2012年8月15日に放送されているので、実に1年ぶりの新作となりました。
過去記事にてネタバレ批評(レビュー)していますね。
興味のある方はどうぞ!!
もともとは東野圭吾先生の短編をテレビドラマ化したこのシリーズ。
管理人にとっては非常に思い入れの深いシリーズとなります。
詳しく説明すると、3作目までが東野圭吾先生原作。
4作目が飛島高先生、5作目がオリジナル、6作目が日下圭介先生の原作と変遷し、7作目からは夏樹静子先生の原作が用いられています。
そんなシリーズ11作目の原作は、これまでと同じく夏樹静子先生『被害者へのバラ』(徳間書店刊『星の証言』収録)。
弁護士・朝吹里矢子シリーズが原作だったんですね。
では、そんなドラマ版の感想を。
かなり大満足ですね。
テーマは「親子」か。
ラストで村越により語られた「親指は小指を向いている。小指は親指を向いていない」との台詞が全てを表現しています。
親の愛は子に向かい、子の愛は別方向に向かう。
それは子の配偶者であり、子の子でもある。
いずれにしろ、子にとっての家族に向かうのでしょう。
でも、これで良いのです。
親は子に愛の示し方を伝えるのが仕事。
そうして、子は次の親となり、その子に愛の示し方を伝える。
親子の愛は一方通行。
でも、親から子へ、子から孫へとずっと子孫に受け継がれて行くモノなのですから。
ただし、愛の伝え方を間違ってはいけない。
中石はこれを誤ったがゆえに、悲劇に見舞われた。
暁の犯行を知った時点で自首を勧めていれば、その後の事件は起こらなかった筈です。
此処を見事に描いた近松シリーズ第11弾でしたね。
良かった!!
トリック的には、眼鏡の伏線が印象深かったですね。
眼鏡族にはありがちなトリビアが利用されてました。
ただ靴跡は……鑑識が調べれば靴跡の深さから工作はすぐに露見していたと思うのですが。
でも、他が良かったので特に気になりません。
そして、西尾大活躍でしたね〜〜〜。
頼りになる後輩キャラは珍しくて、とても面白かった。
うん、今回も大満足です。
シリーズ次回にも期待!!
◆関連過去記事
・水曜ミステリー9「多摩南署・たたき上げ刑事近松丙吉10 橋を渡る死者〜不倫夫殺した妻が自殺!?1枚欠けた遺言書の謎!罪深い女三人を追う刑事の眼(妻の無理心中?34枚の便箋に隠されたトリック)」(8月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「多摩南署・たたき上げ刑事近松丙吉 見知らぬ死体〜時間差殺人の罠 二人の女の罪深き事情我が子の為に…父の涙に迫る刑事の執念(接点のない女2人の刺殺体 消えたカメラに真相が…復讐誓った父の涙)」(1月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
近松丙吉:伊東四朗
村越実:角野卓造
中石俊哉:益岡徹
中石雅代:国生さゆり
近松春子:市毛良枝
山形治:三浦浩一
中石暁:柄本時生
西尾昭夫:マギー
浅田勝行:乃木涼介
家梨:石井愃一
法村典夫:重松収
角本寿子:小柳友貴美
滝本芳子:小宮久美子
池田光男:杉崎真宏
滝本あやめ:石原あつ美 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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