<ネタバレあらすじ>
旧校舎の幽霊について噂が囁かれ出した。
なんでも、旧校舎に恨めしそうな人影が現れるらしい。
それはバラバラ殺人事件の被害者とされていたが……。
そんな中、学園にチハヤが転入生としてやって来た。
チハヤを見た少女・五条は自分の世界が壊されるのではないかと不安に駆られる。
何故なら、五条は孤独を愛する少女だったから。
そんな五条にとって、チハヤの登場は彼女の世界を脅かす物であった。
五条の予測は彼女にとって最悪の形で当たってしまう。
五条は“友愛寮”に生活する寮生。
此処まで語ればお分かりだろう……五条はチハヤと相部屋になってしまったのだ。
ああ……1人の平穏が崩れ去ってしまう。
嘆く五条。
チハヤはそんな五条の気持ちに気付く様子もなく、2段ベッドの上段を占拠してしまう。
ところが……木が折れる音と共にチハヤが下の段に降って来る。
どうやら、床板が腐っていたらしい。
結局、五条はチハヤと1つのベッドで眠ることとなった……。
翌日、少しずつクラスに馴染みつつあるチハヤ。
だが、彼女は何処か独立していた。
クラスメートに昼食に誘われても「先約があるから」と距離を置く。
その後、向かったのは1人を貫いていた五条のもと。
五条はチハヤと昼食を共にしつつ、周囲と協調するように苦言を呈する。
ところが、チハヤは「友達は1人居ればイイ」と豪語する。
これに「自分を認めてくれている」と頬を染める五条。
その日、五条はチハヤから相談を受けた。
チハヤの目的は「おそらくもう居ないだろうが、ある人物を探すこと」。
どうやら、旧校舎の幽霊の噂を聞きつけて此処に来たようだが……。
共に図書館へと向かった2人。
チハヤはバラバラ殺人事件の記事に目を留める。
記事によれば、それは旧校舎で起こった出来事らしい。
ところが、チハヤは記事の日付に目を留める。
どうやら、その日付に違和感を覚えたらしい。
現在、旧校舎と称される校舎に出る幽霊。
だが、バラバラ殺人当時の其処は旧校舎ではなく現役の校舎として使用されていたのである。
つまり、当時から既に今とは別の旧校舎が存在していたことになるのだ。
ちょうど、次のようになる。
新校舎(現在使用中、当時は存在なし)←旧校舎(当時の新校舎)←???(当時の旧校舎)
チハヤはこの「???」にこそ秘密があると考えるが……。
数時間後、自室に戻った五条は何やら鞄を持ち出し始める。
どうやら、鞄を隠そうとしているようだ。
と、其処へチハヤが現れた。
其処にあったのね……呟くチハヤに何かを諦めた様子の五条。
五条の手から鞄を奪ったチハヤが鞄を開くと……。
中にあったのはオウカの頭部であった。
そう“友愛寮”こそ、バラバラ殺人事件当時の旧校舎だったのだ。
「???」の正体は“友愛寮”であった。
だが、新校舎が出来たことで寮に転用されていたのだ。
しかも、今では廃寮になっていた。
途端、周囲が色褪せて行く―――。
現れたのはボロボロの部屋。
だからこそ、チハヤが2段ベッドの上段に上った際に底が抜けたのだ。
では、廃寮に住む五条という少女は何者なのか!?
チハヤは五条が“友愛寮”に住む幽霊であると指摘する。
これを認める五条。
五条は旧校舎で自殺した少女であった。
少しでも多くの人の記憶に残りたい―――それゆえの自殺であった。
ところが、直後にバラバラ殺人事件が発生しそちらに注意が集中。
いつしか誰からも忘れ去られてしまったのだ。
以来、孤独に旧校舎こと“友愛寮”で存在し続けていた。
オウカの頭部を抱えたチハヤはそのまま五条のもとを去って行く。
五条はチハヤが捜し物を見つけたことを察した。
チハヤが以前に語っていた「友達は1人居ればイイ」の「友達」とは五条ではなくオウカのことだったのだ。
五条は視線を下げる。
そんな五条に対し、去り際にチハヤは一言告げる。
友達はもう1人くらい居てもイイかもしれない……と。
チハヤの消えたその部屋。
残された五条は人気のなくなった部屋を見回すと天井を見上げる。
その目には孤独ゆえか涙が浮かんでいた―――第3話へと続く。
<感想>
『メフィスト』の新連載第2回。
孤独を標榜する少女・五条こそが、もっとも孤独を怖れる少女だった。
それゆえに命を落とし、以降も孤独に囚われている。
なんとも、諧謔的なストーリーでした。
結末としては「シックスセンス」的なモノ。
まさに「叙述トリック」を漫画で表現した意欲的な作品と言えるでしょう。
そして、「旧校舎の幽霊」こそ「友愛寮の幽霊であった五条」だったのでしょう。
ところが、それすら「バラバラ殺人の被害者」にされてしまった。
皮肉です。
おそらく「バラバラ殺人の被害者」は「オウカ」となるのでしょう。
だからこそ、「おそらくもう居ない」とのチハヤの発言に繋がるモノか。
この世界が前回オウカが発言した「第9層」に当たるかどうかは不明ですね。
それにしても、この五条の正体の導き出し方がミステリ的でした。
「2段ベッドの底が抜けた点」から「廃寮であること」を伺わせるのはもちろん、「チハヤ転校時」と「バラバラ殺人事件発生当時」の時間軸のズレから「旧校舎と呼ばれる建物が変わる」点は特に良かった。
左から時間軸に応じて校舎の謎を図示すると……。
友愛寮(当時の旧校舎、今は廃寮)→旧校舎(当時の新校舎)→新校舎(現在使用中、当時は存在なし)
つまり、チハヤ転校時には「友愛寮(当時の旧校舎)」「旧校舎」「新校舎」の3つの建物が並行して存在していたことになるワケです。
此処には驚かされました。
「メフィスト」という掲載誌に見合ったトリッキーな作風も良し。
サプライズ、ロジック共に楽しめたのも高評価。
全体的に抒情的な世界で繰り広げられるチハヤとオウカの追いかけっこ。
次なる舞台は何処になるのか?
次回も楽しみです!!
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