ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
超豪華執筆陣の「超」最新作!
(アマゾンドットコムさんより)
<感想>
やっぱり、倉知先生はイイ!!
シリアスからコメディまで、千変万化の作家さんです。
惜しむらくは寡作な事か……。
そんな倉知先生の新作短編が『メフィスト』に掲載されました。
今回の『夏の終わりと僕らの影と』は「問題編」と「解答編」に分割された短編。
「問題編」は『メフィスト2013vol.2』に掲載されていますが、「解答編」それ自体は掲載されていません。
では、「解答編」は何処に掲載されているのかと言うと―――此処で倉知先生ファンに朗報です!!
なんと、2013年10月に『倉知淳短編集(仮)』なる本が講談社ノベルスより発売予定なのだそう!!
「解答編」はこの『倉知淳短編集(仮)』に掲載される予定だとか。
・倉知淳先生短編集が講談社さんより2013年10月発売予定!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
新作は、東京創元社から出版された『なぎなた』『こめぐら』以来ではなかろうか!!
超超超期待ですよ!!
そんな朗報が伝えられた『夏の終わりと僕らの影と』。
内容は「とある夏休み、主人公の僕は仲間と共に自主映画の撮影を開始。撮影は順調に進むが、ある日、急にヒロインが消えてしまった……ヒロインは何処に消えたのか」とのもの。
この語り口に倉知先生らしさが大爆発。
シリアスとギャグが上手くバランスが取れており面白い。
そして、肝心の「ヒロイン消失の謎」ですが……。
これがイロイロ可能性が考えられて難しい。
あらすじをご覧頂ければお分かりの通り手掛かりと思われる点は複数あります。
まず、「ヒロインは自転車に乗れない」。
次に、「映画のシナリオが平行世界から来訪するとのテーマ」。
そして、「複数の野球部員」。
さらに、「城址のカップル」。
何より気になるのが、ヒロイン・百合川の影の薄さ。
百合川よりもサブヒロインである筈の乾の方が影が濃い。
こちらに筆を費やしている感もあります。
真のヒロインはこちらではないか。
タイトルも『夏の終わりと僕らの影と』と『影』を強調していますし。
それと、時代設定も気になりますね。
特に明言されていませんが、主人公と乾の会話から携帯電話が登場する前の様子。
そんな中で、乾は携帯電話の登場を予期しています。
これが何を意味するのか!?
さて、これらを考え併せて可能性を検討してみると―――。
通常考えれば「大量の野球部員の中に変装して紛れ込んだ」。
次いで「城址のカップルに変装して紛れ込んだ(カップルのいずれかが百合川と交代)」。
あるいは、大穴で「百合川が苦手な自転車で城址からダイブ」は……流石にないか。
イロイロ考えられますが、管理人が押したいのはこのいずれでもなく、次の仮説。
注目したいのは「百合川の影の薄さと乾の影の濃さ、そして映画シナリオの内容」。
これに、倉知先生の作風的にSFオチも十分に考えられることも加味すると……。
「作中映画のシナリオよろしく百合川の正体は乾のパラレルワールド人格だった。
僕と乾の仲を取り持つことに成功した為に姿を消した」とかもありそうだなぁ……。
ただ。どちらかと言えば「携帯電話の件」から「乾の方こそ平行世界の住人」とも解釈出来そう。
おそらく、最終的にこの平行世界住人設定がオチに来ると思われるが、これが直接的に百合川消失に繋がるのかは明言できないところか。
果たして、この仮説は正鵠を射ているのか……それは2013年10月発売予定の短編集まで分からないのだ!!
やっぱり、気になるぅぅぅぅぅぅぅぅ。
2013年10月発売予定の短編集が待ち切れないぞ!!
本当に倉知先生は作品の雰囲気の作り方が上手い!!
この雰囲気はあらすじで到底伝えられるものではなく、思い切ってかなり改変しています。
興味を持たれた方は倉知先生の緩急自在ぶりを味わう為にも本作それ自体を読むべし!!
こうなると、猫丸先輩の新作も読みたいぞ!!
<ネタバレあらすじ>
“僕”こと久遠は高校2年生。
親戚から撮影用機材や編集機器を譲って貰ったことを契機に、友人・拓真と共に夏休みの残りを用いて自主映画を撮影することになった。
自主製作映画ということで人員費用ともに限りがある。
上手く回して行かなければならない。
監督、シナリオは僕。
拓真は俳優兼大道具などとなった。
当然、2人で映画撮影は出来ない。
其処で、僕は憧れの同級生・百合川に主演女優を依頼した。
一方、拓真は百合川の親友である新田を誘う。
新田はサブヒロイン兼メイク担当だ。
拓真は新田に告白し、一度フラれており、これを機にあわよくばお近付きになるつもりらしい。
さらに、同級生連中にも声をかけ、協力者を募った。
此の中で、寡黙ながらも辛辣な評を下すことで知られる女子生徒・乾も参加することに。
乾は映画制作に興味があるらしい。
本人の希望で裏方を依頼することとなった。
僕は乾がシナリオを高く評価してくれていることを知り、嬉しくなった。
乾は辛辣な評で知られる人物である。
その彼女に認められたとなれば、シナリオ面は安心である。
ちなみに、シナリオの内容となるが……。
百合川演ずる奥手なヒロインが、拓真演ずる同級生の男子に恋をする。
だが、奥手ゆえに告白できない。
そんなヒロインの前に、新田演ずるサブヒロインが登場。
サブヒロインはヒロインとは全く逆の性格の持ち主。
彼女に影響されたヒロインは遂に男子に告白し恋仲になる。
すると、サブヒロインが消えてしまう。
実は、サブヒロインは平行世界のヒロインその人であった。
その世界でも、サブヒロインは男子と恋に落ちたモノの、相手が病気で死亡してしまう悲恋に見舞われていた。
其処で、せめて平行世界では結ばれたいと手助けに現れたのであった―――とのストーリーである。
この撮影の為に、夏休みの前半はバイトに明け暮れた僕と拓真。
その甲斐あってか撮影に入ってからは順調に進む。
そんな中、拓真と新田は順調にお近付きになる。
僕はと言えば、意外な才能を発揮し監督としても有能さを示す。
乾も献身的に協力し、百合川も少しずつ心を開き「自転車に乗れない」ことも明かしてくれるようになった。
そんなある日、城址にて撮影していたときのことである。
役者である拓真、百合川、新田が城址の上に移動。
カメラマン兼監督として、僕と乾が下に残った。
此処で撮影に取り掛かるが、城址の上に居るカップルが邪魔で撮影できない。
拓真をジェスチャーで呼び戻す。
こんなときは「無線があれば……」と後悔してしまう時だ。
そんな僕に乾は将来的には携帯電話が出来るだろうと予言する。
SF的な思考だなぁ……と笑う僕。
拓真がカップルを説得し、撮影は無事終了。
フィルムが余ったので、たまたま通りがかった野球部員を撮影させて貰う。
そうこうしているうちに、上から拓真と新田が下りて来た。
ところが、肝心の百合川の姿が無い。
2人に尋ねてみると、確かに先に降りた筈だと言う。
だが、僕も乾もその姿を確認出来てはいない。
百合川は何処に消えてしまったのだろう―――2013年10月発売予定『倉知淳短編集(仮)』掲載の解答編に続く。
2013年10月12日追記:
2013年10月8日『シュークリーム・パニック 生チョコレート』読みました。
収録作が予想していたのと異なっていますね。
『現金強奪作戦』『強運の男』『夏の終わりと僕らの影と』の3作に。
真面目な作品ばかりが揃いました。
だからこそ、ブラックなテイストの生チョコレートか。
これにより『シュークリーム・パニック Wクリーム』がギャグ系に偏ったな。
ある意味、メリハリが効くことになるか。
それにしても、『夏の終わりと僕らの影と』にはやられました。
脱出方法を必死に考えていたのですが、そもそも上っていなかったとは……。
そんな『夏の終わりと僕らの影と』の解答編ネタバレあらすじはこちら。
<『夏の終わりと僕らの影と』ネタバレあらすじ>
城址跡から忽然と姿を消した百合川。
これに対し、僕は推理を巡らせる。
まず、城址跡へと繋がる道は1本しかなく、其処は僕が見守っていた。
つまり、脱出する為には僕の目を逸らせる必要がある。
僕が目を逸らしたのは1度だけ。
シャボン玉を楽しむ親子を撮影した際だ。
だが、このとき百合川は城址跡へと上って行くところであった。
つまり、そもそも百合川は城址跡へ上っていなかったのではないか。
上ったふりをして、途中で戻ったのではないか。
だとすれば、僕が撮影したのは誰か。
百合川のふりをした誰かだ。
当然、拓真と新田もこの事実を知っていることになる。
おそらく、百合川のふりをした人物は新田だろう。
そして、これを成功させるには乾との連携が不可欠である。
何故なら、僕の目を逸らさせる必要があるのだから。
だが、どうしてこんな細工を仕掛けたのかが分からない。
戸惑う僕の前で「時間は稼げたな」と頷き合う拓真と新田。
丁度其処へ百合川が戻って来る。
手には手作りのケーキを持っていた。
「ハッピバースデー・トゥー・ユー」
歌う百合川たち。
此処で僕は思い出した。
数日後が僕の誕生日であることに。
今日がクランクアップである以上、僕はこれから缶詰になって編集しなければならない。
その間に誕生日は過ぎてしまう。
実際、ケーキを渡せるとすれば今日しかない。
だが、この炎天下でケーキを保管する場所はない。
当然、誰かの冷蔵庫を借りる必要がある。
拓真宅も新田宅も遠い。
一番近いのは百合川宅だ。
そして、百合川は自転車に乗れない。
当然、徒歩となると時間がかかる。
本来は、この時間を稼ぐことが狙いであった。
そう、すべてはサプライズパーティーの為だったのだ。
こうして誕生日を祝って貰った僕だが、実は初めから百合川が偽物に入替っていたことには気付いていた。
何故なら、僕は彼女に好意を抱いておりその姿をずっと追っていたのだから。
翌日、僕は思い切って百合川を呼び出した。
その目的は1つ、成功するかどうかはまた別の物語―――エンド。
追記終わり
◆倉知淳先生関連過去記事
【ネタバレ書評(レビュー)】
・『壺中の天国』(倉知淳著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『現金強奪作戦!(但し現地集合)』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『限定販売特性濃厚プレミアムシュークリーム事件』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『強運の男』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『夏の終わりと僕らの影と』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場 」&「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
(収録作『Aカップの男たち』について)
【その他】
・倉知淳さんの「猫丸先輩」が舞台化!!
・倉知淳先生の作品集「なぎなた」&「こめぐら」は東京創元社さんより9月30日発売!!
・倉知淳先生短編集が講談社さんより2013年10月発売予定!!
・倉知淳先生、短編集はよもやの2ヶ月連続刊行予定!!2013年10月『シュークリーム・パニック 金(仮)』に『銀』が続く!?
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- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)