ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
明治大学ミステリ研究会所属の著者が贈る、夏休みの日常を巧みに描いた短編ミステリ
(東京創元社公式HPより)
<感想>
第2弾『水族館の殺人』も好評な「裏染シリーズ」の短編です。
時系列的には『水族館の殺人』のアフターストーリーか。
『水族館の殺人』ラストで出た「丸美水族館フリーパス」がこちらにも登場しており、シリーズ既読の方はクスリとする筈。
キャラ自体もシリーズお馴染みのあの人・針宮理恵子が主人公。
針宮視点での天馬観などが窺えて興味深い筈。
そして、「裏染シリーズ」らしいロジックも満載なのでシリーズファンは必読と言えるのではないでしょうか。
<ネタバレあらすじ>
ここからネタバレあらすじになります。
本作は論理的な伏線が多い為、あらすじにするにあたりかなり端折っています。
注意!!
針宮理恵子は、その恋人・早乙女との距離に悩んでいた。
早乙女は可愛い系男子。
吹奏楽部に所属し、クラリネットパート唯一の男性メンバーである。
針宮としては早乙女が可愛くて可愛くて仕方がないだけに、どう接するべきか分からないのだ。
そんなある日、当の早乙女が同じクラリネットパートの先輩からイジメを受けているらしい現場を目撃する。
先輩である山吹の言いつけでジュースを買いに出た早乙女が戻ってみると締め出されたようなのだ。
ドンドンと扉を叩き続け「開けて下さい」と懇願する早乙女。
見かねて助けに入る針宮。
流石に第3者の介入を招くことを怖れたのか、扉は中から開けられた。
室内のカーテンは閉め切られ、冷却スプレーなどが散乱していた。
山吹に喰ってかかる針宮。
だが、復讐を恐れてか早乙女は「イジメではない」と否定する。
こうなると、針宮にはどうすることも出来ない。
しかし、針宮は何か早乙女の役に立ちたかった。
其処で、あの人物に助けを求めた。
そう―――裏染天馬である。
天馬は先程の騒動を目撃しており、事情を了解していた。
2千円で事件を解決してみせると豪語する。
これに依頼する針宮。
翌日、天馬が新聞部に山吹たちへの扇風機の貸し出しを依頼したことで事件はあっさり解決した。
何が何やら事情の分からない針宮は天馬に説明を求める。
これに当然とばかりに応じる天馬。
まず、早乙女が追い出されなければならない状況が発生していたことが原因だったと指摘。
つまり、早乙女を追い出した室内で何かを行っていたのだ。
では、何を行っていたのか?
その正体は次の手掛かりから導き出される。
それは部屋のカーテンを閉める必要があること。
それは冷却スプレーを使用する必要があること。
そして、パートメンバー中で早乙女が唯一の男性であったことも影響しているらしい。
部屋のカーテンを閉める必要がある。
つまり、周囲から目隠しする必要があった。
冷却スプレーを使用する必要がある。
つまり、室内がそれだけ暑かった。
そして、男性である早乙女が追い出されたということは……。
そう、山吹たちはかなりラフな服装で演奏練習する機会を伺っていたのだ。
この暑さである、本気で演奏すれば室内の温度は相当な物になる。
汗が止まらなくなってしまうだろう。
これを避ける為に山吹たちは薄着になる必要があった。
だが、男性である早乙女の前で服を脱ぐことは出来ない。
だから、わざわざ口実を作っては早乙女を閉め出し、その間に練習に励んでいたのである。
これを察した天馬は事態を解決すべく、新聞部に口を利き扇風機を貸し出すことにした。
扇風機により室内の温度が改善されたことで、山吹たちは早乙女の目を憚る必要が無くなったのである。
こうして早乙女の悩みは解決した。
喜ぶ針宮は天馬に報酬2千円を支払おうとするが……天馬は受け取らない。
代わりに丸美水族館のフリーパスを針宮に譲る。
どうやら、針宮に早乙女とのデートに使えとのメッセージのようだ。
フリーパスを貰った針宮はどう早乙女を誘おうか、胸を高鳴らせるのであった―――エンド。
◆関連過去記事
・『体育館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『水族館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「第22回鮎川哲也賞」決定!!栄冠は青崎有吾先生『体育館の殺人』に!!
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