2013年09月16日

「Q.E.D.証明終了 巡礼」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン 2013年10月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「Q.E.D.証明終了 巡礼」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン 2013年10月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
燈馬想:言わずと知れた主人公。
水原可奈:言わずと知れたヒロイン。

・現代
内堀:ノンフィクション作家。雨水について調べていた。
内堀小雪:内堀の娘で翻訳家。父の没原稿を見つけその真意を探す。
グエン・ソン:雨水たちを担当した通訳の孫娘。

・過去(1941年)
雨水慈:第2次大戦前に活躍した外交官。妻を晴明に殺害される。
山井晴明:雨水の妻を殺害した容疑者。国外逃亡するも現地で逮捕された。
グエン:ソンの祖父。雨水と山井の通訳を担当した。

<ネタバレあらすじ>

1941年―――第2次大戦直前、外交官の雨水慈は被告人・山井晴明の助命を申し出た。
それは、雨水の妻が山井に殺害された裁判での出来事であった。

山井は国外逃亡し、逃亡先のハノイにて裁かれようとしていた。
これに雨水が被害者遺族として参加。
関係者は厳罰を求めるものと思っていただけに、戸惑う事態となった。
誰もが雨水の真意を疑う中、彼は慈愛の精神の持ち主なのだと納得するしか方法は無かった。

そして現代。
翻訳家の内堀小雪は亡き父の没原稿を発見し、困惑していた。
小雪の父である内堀はノンフィクション作家。
この没とされた原稿も内容はとても良く取材出来ていた。

その内容は山井が雨水の妻を殺害したこと。
この手口だが、犬を逃がしてしまったと捜索の手助けを被害者に求め、隙を見て殴りつけ金品を奪うとの物。
しかし、雨水の妻の折は加減を誤り殺害してしまったらしい。
容疑者として山井が浮かぶが、山井は国外逃亡。
だが、現地で逮捕され裁判にかけられたこと。
これに雨水が参加したこと。
途中、何故か雨水は交通機関から離れ、ハノイまで自身の足で1000キロにも及ぶ長距離を走破していたこと。
この踏破自体が命の危険を伴うモノであり、現地に辿り着いた雨水は憔悴し切っていたほどであったこと。
裁判に出廷した雨水が山井の減刑を求めたこと。
これにより、山井は死刑を免れたこと。
雨水はさらに、日本に居る山井にとって唯一の肉親であった彼の妹からの手紙を届けるとの約束まで取り付けていた。
その後、帰路も何故か雨水は交通機関を用いず徒歩で走破したこと。
判決から半年後、山井が謎の自殺を遂げてしまったこと―――などが綴られていた。

内堀は雨水による往復の走破に注目。
憎しみに囚われた雨水だが、この命を賭けた「心の巡礼」により人の慈悲を知り、山井を許したのではないかと締め括っていた。

何故、これが没になったのだろうか?
内堀の真意を測りかねる小雪。
原稿の入った封筒に「故意?偶然?」と書かれている点も小雪にとっては気にかかった。

こんなとき、小雪には頼れる相手が居た。
小雪の参加した市民講座で講師をしていた燈馬想である。

こうして、想は原稿に目を通すこととなった。
だが、良く出来た内容ですねとしか語ろうとしない。

煮え切らない想の態度に、業を煮やした水原可奈(想を疑い付いて来ていた)は想に代わって小雪に協力すると宣言。
こうして、可奈と小雪の急造コンビが内堀の取材を追跡調査することとなった。

当時の関係者を巡るうちに、山井の裁判後にも同様の手口で犯行が行われていたことが判明する。
これから、一部では山井は犯人では無かったのではないかとの説も囁かれたそうだ。
これもまた、雨水の山井への態度に評価を加えた。

さらに、雨水たちの通訳をしていたグエンが既にこの世を去っていることが判明。
グエンの孫娘・ソンによれば、グエンは「読み上げられなかったことで山井を死なせてしまった」と悔やんでいたそうだが……。

矢先、内堀の原稿が可奈たちの隙を突いた何者かに盗まれてしまう。
これを聞いた想は犯人のもとへ、可奈たちを連れて行く。

その現行盗難事件の犯人とはソンであった。
想によればソンは祖父の名誉を守ろうとしたらしい。

此処で内堀の封筒にあった「故意か?偶然か?」の文字に注目する想。
これが何を指すのか?

それこそ、「読み上げられなかったことで山井を死なせてしまった」とのグエンの後悔に繋がるのだ。
半年後、日本から山井に向けて妹からの手紙が届いたのである。
だが、グエンは読み上げられなかったのだ。
だから、山井は死んでしまった。
想は語る「おそらく、山井は手紙を心待ちにしたが、届かぬことに絶望し死を選んだのだろう」と。

しかし、此処で疑問が残る。
本当に手紙は届かなかったのだろうか?
此処で内堀の「故意か?偶然か?」が活きて来る。

もしかして、グエンはその正義感から山井を許せず、故意に手紙を読まなかったのではないか。
あるいは、偶然、手紙を読み忘れたのかもしれない。

だから、内堀は「故意か?偶然か?」と悩んだのだ。
そして、この結論はグエンが居ない限り分からない。
もしも、誤ればグエンの名誉を傷つけることになる。
不確定な情報で作品を完成させることが許せなかった内堀は原稿を没としたのである。

父の取材対象を慮る態度に感銘を受けた小雪は納得。
可奈もまた感心することに。
2人は先に宿泊先へと引き上げた。

そして、想は真相をソンに告げる。
山井を死に追いやったのは雨水だ、と。
この事実まで内堀は辿り着けなかったのだ。

想は内堀が注目した雨水の往復走破に注目。
同時に、山井の判決後に発生した同様の事件にも注目した。
そう、この同様の事件の犯人こそ雨水であった。
そして、被害者は山井の妹だったのだ。

雨水は山井に自身と同じ境遇を味合わせようとしたのだ。
往路の走破は「山井を生かすべきかどうか」を問う旅であった。
そして、帰路の走破は「この復讐を為すべきか」を問う旅だったのだ。

この「巡礼」の成功により、雨水は復讐を決行。
雨水は山井に復讐結果を報告した。

グエンは手紙の内容のあまりの恐ろしさに読み上げることが出来なかった。
其処で直接手紙を山井に渡してしまった。
結果、事実を知った山井は自ら命を絶ってしまったのだ。

ソンはこの恐るべき事実を隠そうとしていたのである。
雨水の旅は内堀が思い描いたような「心の巡礼」ではなく「魔の巡礼」であった。
この大いなる秘密は想とソンの胸に秘められることとなった―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2013年10月号掲載「巡礼」です。
尚、2013年10月号では「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」ではなく「Q.E.D.証明終了」の掲載となっています。

巡礼の旅路の果てにあったのは、己の心の闇だったのでしょうか。
妻を失った雨水の執念、その強さが窺われるエピソードでしたね。
真相と思われた先にもう1つの真相と、2重構造になっている点もなかなか良かったです。
次回も期待!!

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