ネタバレあります、注意!!
<感想>
「明智小五郎対金田一耕助」シリーズの正統なる続編です。
シリーズはこれまでに短編が2作品発表されていますね。
それぞれ『明智小五郎対金田一耕助』と『金田一耕助対明智小五郎』となっています。
2作品とも過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
うむむ……なかなかに紛らわしいタイトル。
それもその筈、作者である芦辺拓先生も意識してつけているとあとがきに語られているほど。
そんな2作ですが、時系列は『明智小五郎対金田一耕助』→『金田一耕助対明智小五郎』の順。
この『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』は『明智小五郎対金田一耕助』の続編であり、既発表2作品の間の出来事となります。
ちなみに『金田一耕助対明智小五郎』はかなり後年の出来事と言えそうですが。
そして『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』。
早速、読みました。
事件の内容について詳しくはネタバレあらすじをご覧頂きたく思いますが、「華族・柳條家で起こった次男・月光の殺人事件」となります。
そして、今回は前篇。
つまり、少なくとも後篇が存在しているワケで途中にて物語は「次回に続く」となります。
ということは、後篇に向けて読者に推理の余地が生まれるワケで。
これは楽しむべきでしょう!!
では、此処から管理人の推理を!!
当たっているかどうかは不確定(外している可能性の方が高いが……)ですが、これに目を通すことで本編が楽しめなくなる恐れがあります。
注意!!
おそらく、金田一のもとに依頼に訪れた月光は偽物でしょう。
女性的であることが強調され、また、星野兄弟への嫌悪感も凄まじいことから直接的な関係者であり、月光と血縁関係にある為に容姿が似通った花陽か雪夜だと思われます。
だとすると、殺害された月光こそが星野兄弟に情報を提供していた内通者ではないでしょうか。
犯人は華族のプライドがあり、この恥ずべき事実を伏せて月光を殺害するべく金田一に依頼したものと思われます。
そして、金田一に依頼したのにはもう1つの理由があると考えています。
それに、もう1つのトリックが絡んで来ると思われる。
何故、もう1つトリックがあると思うのか。
これだけだと後篇がボリューム的に維持できないこと。
サプライズが薄いこと。
また、明智の活躍の余地が無い(上記の推理は金田一が行うとして、同じ結論に明智が辿り着く必要がある)。
使用人が目撃したカエル男の正体もある。
これらから、もう1つトリックがある可能性が高い。
おそらく、明智にかかって来た電話の主は月光本人ではないのではないか。
これまた犯人の偽装なのだ。
つまり、月光は既に殺害されており、明智への電話により殺害日時を偽装した。
殺害日時を偽装しており、金田一の前に現れた月光が偽物ならば、金田一への依頼が行われる前の時点で月光は殺害されていた可能性もある。
この殺害日時偽装を誤魔化す為に、月光の遺体の腹が抉られているのだ。
食べ物などから、殺害日時を特定されることを避けたのではないか。
ストーリーとしては、金田一が自身に関連した偽依頼人の推理を展開。
並行する、あるいは更なる真相として明智が自身に関連する偽電話の推理を展開。
両方から犯人を断定する流れではなかろうか。
これなら、金田一も明智も活躍出来るし。
というワケで、前篇にて以上のような推理に挑んでみた。
果たして、管理人の推理は正しいのか!?
後篇に注目せよ!!
<ネタバレあらすじ>
その日、金田一耕助は外地でその放送を耳にした。
終戦を意味する玉音放送―――彼がその意味を理解するのはさらに数日たった後である。
まったく同じ放送を明智小五郎は国内にある暗号研究所で聞いていた。
彼の胸中は複雑であった。
暗号が解読されていることを何度となく意見具申した。
だが、まったく改善された無かった結果がコレであった。
金田一、明智ともにこの数十年を捧げたモノが崩壊したことを知ったのであった。
そして戦後と呼ばれる時代が到来した。
金田一は獄門島事件を経て、東京に事務所を出した。
だが、客が来ない。
無聊に耐え兼ねたそのとき、待ち人がやって来た。
まるで女性のような線の細さをたたえた人物。
その人物は華族・柳條家の次男である月光を名乗った。
柳條月光―――聞き覚えのあった金田一は驚いた。
それはカストリ雑誌で話題になっている騒動の登場人物の1人であったからだ。
柳條家には美人姉妹が居る。
姉・花陽、妹・雪夜。
記事の内容は、その姉妹の貞操が悪徳資産家に狙われているとのものであった。
なお、柳條家には、他に戦地に向かい帰って来ない月光の兄と、末の妹・星子が居るのだが……。
月光によれば柳條家の現状は危機にあった。
戦後、財産法により柳條家の威勢は終息を迎えた。
使用人も解雇し、なんとか耐え抜いていたのだが……。
そんなときには有象無象がたかるモノ。
怪しげな儲け話などが集中し、資産はみるみる失われて行った。
そんな柳條家を救ったのが、元使用人であった星野夏彦、冬彦兄弟。
彼らは使用人を解雇されると、わずかな資産をもとに闇市で財を為した。
押しの強い商人風の兄・夏彦、逆に神経質そうなインテリの弟・冬彦。
この2人こそが雑誌が語る悪徳資産家なのである。
この2人は、柳條家に群がる有象無象を排除した。
だが、代わりに彼らを恩という鎖でがんじがらめにした。
そして、柳條家の美人姉妹に結婚を申し込んだのだ。
彼らは日を置かず、屋敷に来ては贈り物を残すらしい。
だが、姉妹にとってその行為は虫唾が走るものだったそうだ。
このときばかりは熱く語る月光。
金田一は星野兄弟に同情したくなった。
そんな月光の依頼内容は柳條家に居る星野兄弟への内通者を探し出して欲しいとのモノであった。
星野兄弟は明らかに柳條家の内情を知り尽くした上で行動しているらしい。
つまり、柳條家の中に情報を流している人物が存在しているのだ。
退屈していた金田一は、この依頼を受けることに。
その夜、明智探偵事務所に据え付けられた電話のベルが鳴った。
電話に出た文代は、夫・明智小五郎を慌てて呼んだ。
電話を代わった明智は文代が狼狽したワケを知った。
電話の奥では、何者かが瀕死の状態で助けを求めていたのである。
その人物は自身が柳條家の次男・月光であると告げた。
明智は文代に負けない慌て振りで現地へ向かった。
翌日、金田一は轟警部の招きで柳條家を訪問した。
其処で月光が何者かに殺害されたことを知った。
月光の死体を見た金田一は、余りの惨たらしさに顔を背けた。
死体は腹部がごっそり消失しており、あの女性のような美しさは消え失せていたのだ。
どうやら、至近距離からラッパ銃で撃たれ腹部を喪失したらしい。
さらに、使用人によればカエルのような男を屋敷で見たと言う。
その人物こそが犯人なのか!?
動揺する金田一に明智が声をかけた。
明智は前夜の出来事を金田一に伝え、この事件解決は自分が行うと宣言する。
だが、相手が如何に大先達とは言え、金田一も探偵である。
金田一は明智に手を引かないと主張すると、真っ向から勝負を挑むのであった。
此処に公式上では初の明智と金田一の推理対決が始まったのだ―――後編(下記リンク)へ続く。
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ化情報】
・【至急報】謎の推理ドラマ情報が!!果たして「KvsA」とは!?
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◆関連過去記事
【明智小五郎対金田一耕助シリーズ関連】
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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