2013年10月07日

『さよなら、神様』(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊『オール読物』2013年10月号掲載)

『さよなら、神様』(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊『オール読物』2013年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

探偵団のメンバーが次々と消え、俺は“悪魔”と呼ばれ始めた
(文芸春秋社公式HPより)


<感想>

麻耶雄嵩先生「神様シリーズ」の短編です。
シリーズとしては5作目ですね。
そして、シリーズ主人公である俺こと淳が高校生になったことでシリーズ自体も終わりを迎えたと考えても良さそうです。
もっとも、シリーズを続ける場合、鈴木さえ登場できれば問題ないので別の主人公で続く可能性もありますが。
その点からすれば、あくまで淳が主人公の「神様シリーズ」が終わったとの認識の方が良いかな。

そして、これまでのシリーズ中で散りばめられた伏線が見事に回収されました。
例えば『バレンタイン昔語り』で語られた川合の死の真相が遂に判明したのはファンとしてはスッキリするところでしょう。
もっとも、ラストで代わりのモヤモヤが残りますが……。

物語自体は、小夜子が殺害された前作『比土との対決』の流れをそのまま引き継ぎます。
この犯人である比土が謎の死を遂げたことから、淳が窮地に追いやられることに。
ですが、結局何か出来るワケでも無く淳も転校することに。
ところが、高校生になった淳が真相に気付くとの展開。
ただ、真相に気付いたにも関わらずあのラストが、作者ならではだなぁと思われる点。

それにしても、これまで妙に印象的な存在であった市部が此処に来て重大な役割を果たすとは!!
是非、読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
俺(淳):男言葉を用いる美少女。小学5年生。
鈴木:全知全能の神様。
市部:淳の同級生にして少年探偵団の団長。淳に好意を抱いている。
小夜子:淳の同性唯一の親友。前作『比土との対決』にて比土に殺害されてしまう。
比土:『比土との対決』にて小夜子を殺害した。市部に好意を抱いている。
川合高夫:俺のトラウマになっていた人物。『バレンタイン昔語』に登場。

俺の親友・小夜子を殺害したのは比土だった―――俺は比土と対決し、その罪を暴いた。
だが、この事実は俺と鈴木しか知らない。

数日後、比土が姿を消した。
さらに数日後、比土が変死体で発見された。

小夜子を殺したのが比土と知らない人々にとっては、小夜子に続く怪死である。
彼らは不安に駆られ始めた。

さらに、鈴木が転校を表明。
彼を神様として崇めていた同級生たちは暴走し始める。

その矛先は鈴木に批判的であった俺へ向けられた。
俺は悪魔と呼ばれることに。
市部は庇ってくれたが、それで止まる筈もない。

だが、俺としてはそれよりも比土の死の真相が気になって仕方なかった。
鈴木は転校の直前、比土の死が自殺であるとだけ言い残して行く。

しかし、俺への糾弾は止みはしなかった。
比土が死の直前に同い年ぐらいの子供と一緒に居たことも分かり、俺が比土を殺したとの噂まで出回るようになった。
「比土は自殺なんだ!!」と鈴木の言葉を皆に伝えたところで理解はされないだろう。

やがて、家族にまで迷惑が掛かり始めた。
俺は結局、事件を誰も知らない他県で生活することになった。
そんな中、市部だけが最後まで味方で居てくれたのは嬉しかった。

そして、俺は高校生になった。
其処で市部と再会した。
俺―――いや、私は共通の想い出を持つ彼と恋に落ちた。
今では普通のカップルだ。

そんなある日、鈴木を見た。
あの日、あの時の姿のままで。

この瞬間、私は悟った。
今、このときに鈴木が現れるということは―――彼が退屈を紛らわせる為に私をからかいに来たのだ。
つまり、これまでの事件の犯人は私にとって大事な人物となる。

そう、比土殺害犯は市部だったのだ。
鈴木は比土が自殺だと言った。
だが、比土が好意を寄せる市部ならば行動を操ることも不可能ではない。
罪を責め自殺を強要しなくとも、2人で心中しようと言えば比土を自殺に仕向けることが出来る。

そして、川合を殺害したのも市部だったのだ。
あの頃から、市部は私を好きだったのではないか。
だから、私に好意を寄せ乱暴しようとした川合を殺害した。

そもそも、私が犯人と疑われたのすら、こうして心を得る為のモノだったとしたら……。

全てを悟った私だが、特にどうということも無い。
もはや、鈴木が私の心の中に占める余地は存在しないのだ。
私は今日も市部と共にある―――エンド。

【神様シリーズ】
オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)

・『バレンタイン昔語り』ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『オール・スイリ2012』(文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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