ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
『このミス』大賞シリーズ累計1800万部突破!
この裁判に負ければ、地獄の釜の蓋があく――
国会議員、地検トップまで敵に回す「死命」、郵政監察官とタッグを組む「心を掬う」他、読む者の心を激しく揺さぶる傑作検事ミステリー。
満場一致!
2013年度 第15回大藪春彦賞受賞『検事の本懐』受賞後第一作!
2012年度の山本周五郎賞にノミネートされ、2013年度第15回大藪春彦賞を満場一致で受賞した『検事の本懐』。TV、新聞・雑誌で話題沸騰、法曹界からもエールをおくられる著者の受賞後第一作です。検事の矜持をかけて権力との激闘に挑む力作中篇「死命」、『ザ・ベストミステリーズ2013(推理小説年鑑)』にも選ばれた傑作短編 「心を掬う」、感涙必至の“帰郷小説”「業をおろす」を収録した検事・佐方シリーズ最新刊。いま、ミステリー界で熱く注目される『このミス』大賞作家・柚月裕子の、大いなる飛翔を告げる渾身の一作!
(宝島社公式HPより)
<感想>
佐方シリーズ2013年9月時点での最新作。
シリーズには『最後の証人』と「第15回大藪春彦賞」を受賞した短編集『検事の本懐』があります。
これに未収録短編が2作品となっていましたが……。
・『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
本作『検事の死命』は短編2編と中編2編を収録。
収録作は、未収録だった短編『心を掬う』と『業をおろす』。
中編は『死命を賭ける ≪死命≫刑事部編』と『死命を決する ≪死命≫公判部編』。
以前は批判的だった『業をおろす』ですが、こうして短編集の1つとして収まると『死命を賭ける』に繋がる重要短編だったんだなぁ……と理解できた気がします。
さらに、中編『死命を賭ける』と『死命を決する』では、まさに「正義を貫き、悪を憎む」佐方の面目躍如。
シリーズファンは必読の作品と言えそうです。
次作にも注目です!!
<ネタバレあらすじ>
・『心を掬う』はこちら。
『心を掬う』(柚月裕子著、宝島社刊『しあわせなミステリー』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『業をおろす』はこちら。
『業をおろす』(柚月裕子著、宝島社刊『『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『死命を賭ける ≪死命≫刑事部編』『死命を決する≪死命≫公判部編』
登場人物一覧:
佐方:検事
筒井:佐方の上司、副部長
増田:佐方の担当事務官
鬼貫:佐方の上司、部長
武本:痴漢事件の被疑者
玲奈:痴漢事件の被害者
井原:武本の弁護人
半田:武本側の目撃者
麻美:武本の妻で名家・本多家の血を引く
大河内:代議士
明日香:被害者の1人
・『死命を賭ける ≪死命≫刑事部編』
佐方のもとに新たな案件が持ち込まれた。
それは玲奈という少女が電車内で痴漢被害に遭ったとされる事件。
被疑者とされる男は地元の名家に婿入りしていた武本であった。
この事件、被疑者と被害者とで供述が食い違っていた。
ポイントは次の2点である。
まず、1番はやったやらないの点。
武本は犯行を否定しているが、玲奈は武本が犯人だと主張している。
次に、武本によれば玲奈から金額次第で示談に応じると脅されたらしい。
もし、これが事実ならば玲奈は金銭目的で狂言を働いた恐れもある。
だが、玲奈自身はこれを否定している。
金銭を要求したされたとの供述がある限り、どちらかの勘違いではあり得ない。
確実に誰かが嘘を吐いているのだ。
果して、どちらか嘘を吐いているのか!?
武本の妻・麻美や大河内代議士から圧力がかかるが、佐方は屈しない。
部長検事の鬼貫に睨まれながらも、副部長の筒井の助力を得て遂に起訴に踏み切ることに。
・『死命を決する ≪死命≫公判部編』
武本側の弁護士・井原と公判を争うことになった佐方。
佐方は同様の手口で被害者となっていた明日香もまた武本の被害者であると主張する。
これにより武本の常習性を立証し、今回の犯行も武本によるものと訴えたのだ。
一方、井原は目撃証人として、武本とは関係のない第三者を自称する半田を召喚する。
井原は半田と事前の打ち合わせをしており、必勝を確信していた。
半田は打ち合わせ通り「武本が痴漢をしていない」と証言。
さらに、玲奈が武本に示談金を要求していたとも主張する。
これが事実ならば、玲奈が武本を罠に嵌めたことになる。
玲奈はこれを否定するが……。
後日、佐方により半田が取調で呼び出された。
佐方の切れ者ぶりを知る井原は警戒するが……。
そして、翌日の公判。
佐方は「正義を愛し、悪を憎む」その本質を見せることとなる。
召喚された半田を佐方が問い詰めたのだ。
前日の取調の際に、半田の手帳に奇妙な文字列を見出した佐方。
佐方はそれを掲示板のアドレスとパスワードだと看破し一瞬で記憶した。
警戒していたが、記憶出来る筈がないと高を括っていた半田は秘密を暴露されることとなった。
その秘密とは―――武本と半田が共に痴漢常習者であったことであった。
武本と半田は痴漢愛好家による掲示板に参加し、実際の犯行計画を立案すると実行に移していたのだ。
つまり、半田も共犯だったのである。
内容と犯行日時が合致することやアクセスログも証拠となり、半田は罪を認めることに。
同時に武本の罪も暴かれた。
こうして、圧力にも屈せず佐方は正義を貫いたのであった―――エンド。
◆関連過去記事
【佐方シリーズ】
・『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『心を掬う』(柚月裕子著、宝島社刊『しあわせなミステリー』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『業をおろす』(柚月裕子著、宝島社刊『『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『臨床真理』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【「大藪春彦賞」関連記事】
・「第15回大藪春彦賞」受賞作は柚月裕子先生『検事の本懐』に!!
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)