2013年10月10日

「ボクの憂鬱」(阿部共実作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「ボクの憂鬱」(阿部共実作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』10月7日発売45号掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

なんと、なんと……『空が灰色だから』で知られる阿部共実先生の新作短編が『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載されました!!
これは見逃せないし、語るしかない。

と言うワケで、実に『空が灰色だから』最終回より半年ぶりの阿部共実先生作品のネタバレ批評(レビュー)です。

<ネタバレあらすじ>

とある高校の登校風景―――生徒である観月と白田は肩を並べて歩いている。
だが、親しげな白田に対し、観月は何処かよそよそしい。

「―――と思うよなぁ、観月ぃ」
「まぁ、僕もね」

白田の言葉に取り敢えず同意する観月だが、内心では嵐が吹き荒れていたのである。
実は観月は白田が嫌いであった。

何故なら、観月は知人の居ない高校を選んだ筈なのに白田と出会ってしまったからだった。
そう、観月は高校デビューを果たそうとしており、その為には白田の存在が邪魔だったのだ。

そもそもコイツさえ居なければ……歯噛みする観月。
観月と白田の付き合いは幼稚園から始まる。

当時、白田は自分を「ボク」と呼んでいた。
つられて観月も自身を「ボク」と呼んだ。

小学校に入り、白田は何時の間にやら「俺」に変わっていた。
観月は切り替えるタイミングが計れず「ボク」のままであった。

中学に進学したが、同様であった。
だが、観月は「ボク」から脱却したくて仕方がなかった。
何故なら……観月は女性だったのだから。

観月は高校で「ボク」から「私」に転身し、女性らしく生きて行こうと決めていたのだ。
ところが、白田が同じ高校に進学して来たことがネックとなった。

なんとか一人称を「私」に変えたい。
その為には白田が邪魔だ。
どうにかしなければ、どうにかしなければ……。
焦りが募るものの、妙案は一向に浮かばない。

そんな折、チャンスが向こうからやって来た。

同じクラスの女子から声をかけられたのだ。
彼女たちは観月の一人称が「ボク」であることを知らない。
今しかない……観月はここぞとばかりに「私は」「私が」「タワシが」と繰り返す。

……中に「タワシ」が混じっていたが、気にしてはならない。

ともかくも、これにより観月は遂に「私デビュー」を果たしたのだが。
好事魔多し。
其処へ白田が現れる。

だが、今更、後には退けない。
理想を実現するチャンスなのだ。

観月は白田の前でも「私」で押し通す。
だが、案の定、白田はそんな観月を気持ち悪がることに。

(くっそ〜〜〜)
内心の苛立ちを抑えつつ、観月はイチかバチかの勝負に出る。

「ええ〜〜〜っ、酷いよ〜〜〜私も女子なんだよ〜〜〜」
観月が誇る女子力を出力最大で白田にぶつけたのだ。

「なんだよ、それ!!本当にどうかしたのか?」
全く理解しない白田。観月の希望も儚く散るのか……。

此処で救いの手が差し伸べられた。
クラスの女子たちだ。
喜ぶ観月だが……。

「もう、分かってあげてよ。観月さんは白田君に恋人として見て欲しいんだってば」
「なんだ、そうだったのか。分かってやれなくてゴメンな」
想定外のフォローに、こんなときだけあっさり納得する白田。
白田は頬を染めると満更でも無い様子。

(ちが〜〜〜う!!)
1人心中で叫び声を上げる観月だが、その声は誰にも届かないのであった―――エンド。

<感想>

阿部共実先生の新作短編が『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載されました!!
その名も「ボクの憂鬱」。

あらすじをご覧になってお分かりの通り『空が灰色だから』のテイストを色濃く受け継いだ短編でした。

「ボクっ娘」の悩みの正体は「ボクっ娘」であること。
まさに意外なスタート。

そして「ボクっ娘」を脱却し「女性」として認められたゆえに、「白田の恋人」に祭り上げられてしまうとの皮肉な結末。
悩みが解消されたゆえに、新たな悩みが生じるとは……。

これまた阿部共実先生の本領発揮と言えるでしょう。
管理人にとって久しぶりの阿部共実先生作品、やっぱり良かった。

阿部先生、このまま『週刊ビッグコミックスピリッツ』で週刊連載して欲しい!!

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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