2013年10月21日

「MASTERキートン Reマスター」第6話「オオカミ少年」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「MASTERキートン Reマスター」第6話「オオカミ少年」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

あの名作「MASTERキートン」の続編が「ビッグコミックオリジナル」に掲載されています。
今回で6話目です。
早速、その感想をお伝えするべくこうして記事にした次第!!
「MASTERキートン」をご存じの方はもちろん、ご存じない方も本作に興味を持って頂ければと思います。

<ネタバレあらすじ>

「オオカミ少年」の童話について語り合う親娘が居た。
ありもしないのに「オオカミが来たぞ〜〜〜」と繰り返したことにより、遂には誰にも信用されなくなってしまった少年の物語に、少女は「嘘を吐くことはいけないことだ」との教訓を導き出す。
だが、彼女の父は違っていた。
彼女の父は語る―――オオカミ少年の嘘は村人の結束を促す為の物だった、と。
オオカミ少年は「仮想敵」を用意する役割だったとの主張である。
そして、オオカミ少年には黒幕が居り、その黒幕こそ村長だったに違いない……とも。

キートンに次なる依頼が舞い込んだ。
今回の依頼人は保険会社ロイドの女性エリート社員ハンナ・ブラウン。
依頼の内容は彼女が幼い頃に消えた父親ジョン・ブラウンの消息を突き止めることであった。
何でも最近になって、何処からともなくロイドへハンナについての信用調査が入ったらしい。
どうせ調べられるなら……この際、行方不明の父親についてはっきりさせておきたいとの意向のようだ。

ジョンの手掛かりを尋ねるキートンだが、ハンナは関連する品を何一つ所持していないらしい。
しかも、写真すら残されていないそうなのだ。
唯一、ハンナがジョンについて覚えていることと言えば、オオカミ少年について何か面白いことを語って聞かせてくれたことぐらいだそうだが、何が面白かったのか詳しい内容は覚えていないそうだ。
さらに、ポーランドの貿易商との会食を控えていると語るハンナだが……。

まるで雲を掴むような話だが、キートンもプロである。
勤め先とされた場所から経歴を追って行く。
だが、この方面でも経理をしていたこと以外には特に浮かばないのであった。
どうやら、意図的に目立たないようにしていたようだ。

ジョンとハンナが以前に住んでいた土地を訪れるキートン。
地主であるヨーク公によれば、ジョンが大金を支払い土地を購入していたらしい。
到底、一経理が用意できる金額では無かったが……。
しかも、ヨーク公は最近になってジョンをあるレストランで見かけたらしい。

続いてハンナの母・ベスの兄夫婦を訪ねたキートン。
キートンは此処でようやくジョンの写真を手に入れる。
だが、それも本人の顔がぶれている集合写真というお粗末な物であった。

再びヨーク公に接触したキートンは集合写真を確認して貰うことに。
ところが、ヨーク公がジョン・ブラウンとして指し示した人物は顔のぶれたハンナの父親ではなく、その後ろに写ったジョンの親友とされていた人物であった。
つまり、ハンナの父親の為に本物のジョン・ブラウンが土地を用意したことになる。
一体、ジョン・ブラウンを名乗っていたハンナの父親は何者なのか……。

キートンはハンナの実父が身分を明かせない大物スパイなのではないかと考えた。
少しでも手掛かりを得るべく、本物のジョン・ブラウンを追うキートン。
ヨーク公の目撃証言をもとにレストランで張り込みしたところ、ジョン・ブラウンに遭遇する。
ジョン・ブラウンはいかついエージェントらしき男2人を従えていた。
明らかに危険な雰囲気を醸し出している……。

そんな中、キートンはMI5あるいは公安部と思われる人物から招待を受ける。
彼の目的は調査の中止であった。

MI5あるいは公安部が動く時、それは局長クラスの人事が行われその対象の内偵が行われる時だ。
キートンはジョン・ブラウンがMI6の所属であり内偵の対象になっていると推測する。

これにキートンはハンナの実父の正体を悟る。
ハンナの父親は東西冷戦時の東側の大物スパイだったのだ。
どうやら、西側に伝手を頼ってポーランドから亡命したらしい。

その伝手こそが、当時、MI6の職員であった本物のジョン・ブラウン。
ハンナの父親の手引きによりスパイ網は壊滅された。
ジョンはハンナの父親に身分を保証した。
ハンナの父親は身分を隠しつつ、ハンナの母親と結婚しハンナをもうけたのだ。
そして、どうやらジョンに密告され昔の仲間に抹殺されたようだ……。

さらに、キートンはハンナの信用調査が行われた理由を知らされ愕然とする。
ジョンの旧悪を炙り出す為に、間接的にハンナを利用し揺さぶりをかけたのだ。
ハンナの信用調査と並行して、ハンナに接触するようジョンに指令が下っているらしい。
ジョンはハンナを危険と判断すれば容赦なく口封じするだろう……。

ジョンの表向きの仕事がポーランドの貿易商であることを聞かされたキートン。
ハンナは貿易商と会食すると語っていたではないか!!
ハンナが危ない!!

その頃、ハンナはジョンと会食していた。
もちろん、ハンナはジョンの正体を知らない……筈だった。
だが、ふと会話の拍子に「オオカミ少年」のエピソードを思い出す。
そして、目の前の男が父の旧友であること。
さらに、父が彼を「オオカミ少年」だと口にしていたことも……。

当時、ハンナの父が村長として名を上げた人物は東西の首脳陣であった。
彼らは互いに互いの危険性を声高に吹聴することで自陣営の団結と地位の保全を図ったのだ。

これをジョンに伝えてしまうハンナ。
途端にジョンの顔色が変わる。
ハンナは身の危険を感じて……。

其処へキートンが飛び込んで来た。
ジョンに付き従うエージェントが銃を抜く。

これにキートンは大声で告げる。
「此処は既に多数の警官に囲まれている!!だが、今ならまだ逃がしてもいいぞ」と。
その姿はまるでオオカミ少年そのものであった。

エージェントは忽ち狼狽。
雇い主のジョンを捨て、我先に逃げ出すのであった。
ジョンはハンナの父殺害に関与していたことが露見し拘束された。

後にジョンは動機を語った。
それまでは親友同士として上手くやっていたと言う。
だがある日、ハンナの父はジョンを逆上させることを口にした。
自分たちは所詮、オオカミ少年に過ぎず道化でしかないと自嘲気味に語ったのだ。
これがジョンのプライドを痛く傷付けた。
ジョンは自身のすべてが否定されたと感じ、ハンナの父を売った。

後日、調査結果をハンナに伝えるキートン。
だが、ハンナの父の本名や出身地などは分からず仕舞いであった。

肩を落とすハンナ。
キートンはただ1つ、父親として家族への愛情だけは本物だったのだろうと締め括る。
この言葉にハンナは前向きに生きる勇気を与えられるのであった。
ハンナとその父の絆を目にしたキートンは、百合子のもとへと向かう決心を固めることに。

マルタ島―――其処に百合子は居た。
父・キートンと同じく発掘作業に勤しむ百合子にキートンは声をかける。
ふとキートンを見上げる百合子。
其処には母親に似た娘の笑顔があった―――エンド。

<感想>

「Reマスター」第6話「オオカミ少年」です。

今回は、ハンナとその父を通じ父娘関係が描かれました。
これとキートンと百合子の父娘関係が重ねられたワケですね。

一方で、ハンナの父により「両陣営の対立構造そのものが実は両陣営を成り立たせていた」との主張が為されました。
事実、冷戦構造の崩壊は首脳陣の立場を流動的にしました。

「リーダーシップを取る者は仮想敵を設定することで自陣営を固め、自身の地位を守る」と言います。
自陣営に所属する者の目を上に居る自分自身ではなく、外へと向けることで安定を図るワケです。

例えばバトル漫画にて、2者間で争っていても第3の敵が現れた途端に手を組む描写があります。
あのようなものですね。

この仮想敵の成立に自分たちが利用されているとの想いがハンナの父にはあったのでしょう。
だからこそ、事が全て終え、妻子をもうけ、第3者的な立場になったときについ口を出た。
だが、当時のジョンはまさにその立場そのものであり、これを許せなかった。
ある意味、実感があったからこその犯行だったと言えそうです。
なかなかに考えさせられるストーリーでした。

そして前回の太平に続き、遂に遂に百合子が登場です。
果たして、キートン親娘の再会は如何なる波乱を生むのか……。
百合子自身は夫・基行との離婚騒動もあるし、気になりますね。

そういえば、チャーリーも出てませんね。
こちらの登場もあるのか?
要注目!!

ネタバレあらすじでは本作の良さは伝えられていません。
是非、「ビッグコミックオリジナル」本誌をご覧になって頂きたい。

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