<あらすじ>
ある朝、いつものように練馬北署に出勤した強行犯係の魚住久江(松下由樹)が、原口昌哉(戸次重幸)や峰岸学(馬場徹)、宮田洋平(ベンガル)らと日常のやりとりをしていると、傷害事件の知らせが入る。妻に腹部を刺された吉沢徹(森山栄治)が病院に運び込まれたという。原口と里谷俊彦(菅田俊)は吉沢の病院へ、久江と峰岸は吉沢の家へ向かう。自宅には夫を刺した妻の明穂(星野真里)が放心状態でソファに座っていた。傍らには生後6カ月になる娘の美保が眠っていた。久江は美保を乳児院に届けると、署の取り調べ室に戻り、明穂から話を聞こうとするが、一切口を割らない。強行犯係では、一カ月前に取りざたされた吉沢と女優の阿川佑子(井上美琴)の2ショット写真が掲載されている週刊誌が話題に上がっていた。広告代理店のクリエイティブディレクターである吉沢は、仕事がら派手なつきあいが多いが、交際していたのは10年も前で、今では仕事上の仲でしかない、と断言、妻の明穂も納得済みだった、と言う。
久江は峰岸とともに佑子の自宅の前で帰りを待った。峰岸から「魚住さんは10年も前の恋人を思い出すことなんてありますか?」とふいに聞かれ、一瞬戸惑うが、「ないわよ、そんなの」と流す。と、その時、佑子が高級外車で帰ってきた。吉沢のことをきくが、佑子も吉沢との仲を否定、運転席に座っている俳優の本郷俊哉(伊藤友樹)に視線を促し、さりげなく二人の関係をアピールした。
そんな時、廃工場で男性の変死体が発見された。現場には捜査一課の金本健一(田辺誠一)が部下の井上高志(KEIJI)らと駆けつけていた。かねてから捜査一課志望の原口は意気込んで金本にあいさつする。男は壁面の鉄骨に後頭部を強打し、死亡したと見られる。着衣の乱れから、争った上で殺された線で間違いないだろう、との見解だった。
ちょうどその頃、久江が吉沢の自宅の捜索をしていると、電話台の引き出しから一枚の名刺が出てきた。<信州の地酒 門倉酒造 稲森太一>と書かれた名刺にある番号に久江が電話してみると、出たのは金本だった。その番号は、廃工場で殺された男の携帯だったのだ。
稲森(大口兼悟)が務めていた門倉酒造は、15年前から「金魚の涙」という地酒を造っていた。しかし、最近になって大手酒造メーカーが発売する新リキュールの商品名が「金魚の涙」で、それを考えたのは吉沢だったこと、そして、名前が同じだったのは偶然だが、門倉酒造が商標登録をしていなかったため、門倉酒造の方がその商品名を使えなくなり、稲森が度々吉沢に難癖をつけていた、ということがわかった。稲森の死の真相は?久江は、金本、原口と一緒に門倉酒造のある松本へ向かった。
久江らは、「金魚の涙」を15年間守り続けた先代の門倉宏司(笹野高史)と娘の圭子(安蘭けい)、娘の夫で社長を引き継いだ篠原(吉満涼太)らに話を聞く。篠原は商標登録していなかったこちらが悪い、とすでに別の名前のラベルを貼り替える作業をしていた。
「金魚の涙」を守る運動のリーダー的存在だった稲森は、中学の頃、不良仲間とつるむ問題児だったが、17歳の時に門倉酒造に入り修行してきたという。今度こそ名前を守れるから、と先代に告げて東京へ行ったが、そこで帰らぬ人となってしまった。圭子には21歳になる娘の沙希(山本紗也加)がいる。稲森の死亡推定時刻には、篠原は一人事務所で仕事、先代は寝室に、圭子と沙希もそれぞれ家にいた、と言うが、家族以外にアリバイを証明するものはない…。誰が稲森を殺したのか?そして、吉沢が妻に刺された真相とは…?
(「金曜プレステージ」公式HPより)
では、続きから(一部重複アリ)……
練馬北署強行犯係に勤務する魚住久江のもとへ、傷害事件の報が届いた。
吉沢徹という広告代理店のクリエイティブディレクターの男性がその妻・明穂に腹部を刺され、入院したのだ。
吉沢が「あの女、許さねぇ」と恨み言を口にしつつ運ばれて行く中、明穂は放心状態で座り込んでいた。
自身の行動が信じられないと言った様子である。
吉沢と明穂の間には生後6カ月になる娘の美保が居る。
だが、明穂は何故か美保から顔を背ける。
魚住は美保を乳児院に届けると、明穂の取り調べを行うが、明穂は黙ったまま口を開こうとしない。
明穂は何故、吉沢を刺したのか?
魚住が捜査を続ける中、1ヶ月ほど前に吉沢と女優・阿川佑子の不倫報道が話題となっていたことを突き止める。
吉沢に確認したところ「確かに10年前には交際していたが、今は仕事だけだ」と主張するが……。
吉沢の供述を確認すべく、佑子を訪ねた魚住。
佑子によれば、吉沢の言葉は事実で今は俳優・本郷俊哉と交際しているのだそうだ。
そんな折、廃工場で男性の変死体が発見。
捜査一課の金本健一らが捜査に乗り出すことに。
同じ頃、魚住が吉沢の自宅から一枚の名刺を発見。
名刺には「信州の地酒 門倉酒造 稲森太一」と書かれていた。
早速、名刺の番号に電話してみると……何故か、金本が出てしまう。
そう、廃工場で殺された男こそ稲森だったのだ。
さらに稲森と吉沢の間に意外な繋がりがあることが判明。
稲森が務めていた門倉酒造は15年前から「金魚の涙」という地酒を造っていた。
だが、最近になって大手メーカーが新リキュール開発。
これに、吉沢が「金魚の涙」との商品名を付けた。
本来ならば、門倉酒造に優先権がある筈だが、門倉酒造では商標登録をしていなかったことが仇になり「金魚の涙」との名前を奪われてしまったのだ。
祐子がイメージモデルとなり「金魚の涙」は大々的に売り出された。
これに怒った稲森は度々吉沢と揉めていた。
「金魚の涙」が稲森の死の原因なのか……魚住は門倉酒造へ。
先代の門倉宏司、その娘の圭子、娘の夫で社長を引き継いだ篠原、圭子と篠原の娘・沙希……それぞれがそれぞれの想いを抱えていた。
門倉は亡き妻の想い出の残る「金魚の涙」を大切に思っていた。
稲森はそんな門倉に強い恩義を感じており、彼の為に「金魚の涙」を守ろうとしていたらしい。
だが、篠原は「商標登録していなかったこちらが悪い」と既に別の名前のラベルを用意していた。
圭子や沙希はと言えば、どちらの立場でもない様子だが……。
稲森が死の直前に矢田薫と接触があったことが判明。
矢田薫を尾行した魚住はボーダーたちが愛好するスポーツバー・ネクストレベルに辿り着く。
其処で矢田が何やら取引する現場を目撃することに。
ネクストレベルの常連に本郷俊哉がいること。
さらに、篠原沙希がバイトをしていることが判明。
どうやら、ネクストレベルこそが本事件のキーと言えそうだ。
こうして、大々的な潜入捜査を行うことになった魚住たち。
峰岸が客に扮して店内に潜入すると、バイト店員が不思議な会話を交わしていることに気付く。
「お菓子の時間」との言葉を頻繁にやり取りしているのだ。
しかも、その言葉には何やら嬉しそうな響きが含まれていた。
同じ頃、魚住も沙希が「晴香、もう要らないって。お菓子もチョコも止めたから」と電話している場面に遭遇する。
お菓子とは違法ハーブ、チョコとは大麻の隠語である。
どうやら、ネクストレベルは違法薬物の巣窟となっているようだ。
もしも、稲森がこれに気付いていたとしたら……。
もしも、本郷を介して佑子にまで薬物汚染が広がっており、これにも稲森が気付いたとしたら……。
もしも、稲森がこの情報を武器に吉沢に「金魚の涙」から手を退かせようとしていたならば……。
仮定が積み重なる中、ネクストレベルへの強制捜査が開始。
現場を抑えられた本郷は「佑子に奨められたんだ」と供述。
佑子を調べたところ、薬物反応が検出される。
佑子によれば、稲森にこの事実を突き止められていたが、その殺害はしていないと主張。
現に、稲森殺害当日にも別の薬物パーティーに参加していたことが分かる。
到底、犯行は不可能だ。
矢先、逮捕状を目にした魚住は佑子の本名が「鈴木美保」であることを知る。
魚住は明穂の動機に思い当たった。
吉沢夫婦の娘の名は「美保」。
だが、不自然であった。
母親である明穂から名付けるのならば「保」の字は「穂」でなければならない。
何故、「保」なのか。
その答えが其処にあった。
あの日、稲森から佑子の素行不良について知らされた明穂。
夫である吉沢を守るべく佑子について調べたところ、その本名が美保であると知ってしまう。
このとき、吉沢が強硬に娘の名前を「美保」にした真意を悟った。
吉沢は明穂ではなく、佑子を愛していた。
別れて尚、佑子を忘れない為に愛娘に彼女の名を付けたのだ。
この瞬間、明穂の中で何かが壊れた。
気付けば、吉沢を刺していたと言う。
涙ながらにすべてを打ち明けた明穂。
さらに、稲森が「奥さんが出て来る」と語っていたことを明かす。
その夜、吉沢宅を訪問した魚住。
すると、吉沢が「おおっ、待ってたぞ!!」と明るく出て来る。
どうやら、魚住と誰かを勘違いしたようだ。
そう、こんなときにも関わらず吉沢は明穂以外の女性を自宅に呼び込もうとしていたのだ。
怒りを覚えた魚住は吉沢の頬を張ることしか出来なかった……。
明穂の言葉ですべてのピースを埋め終えた魚住は、圭子のもとへ。
稲森を殺害したのは圭子だったのだ。
あの日、稲森は圭子を呼び出し、これから佑子の薬物使用を武器に吉沢と交渉することを告げた。
これに圭子は慌てた。
ネクストレベルの実態を明かせば、沙希の身にまで累が及ぶ危険があったからだ。
だが、稲森は交渉を止めようとしなかった。
沙希を守らなければ……圭子は稲森を揉み合った末に殺害してしまったのではないか。
魚住の問い。
だが、圭子は必死に認めようとしない。
そんな圭子に、魚住は沙希の真実を告げる。
沙希は既に薬物から足を洗っていた。
ネクストレベルにバイトに通っていたのは友人である晴香に足を洗わせようとしていた為だったのだ。
これを知った圭子は「私は娘を信用していなかったんですね……」と洩らす。
あの晩、稲森を必死に引き止めた圭子。
だが、稲森は止まらなかった。
揉み合う内に、稲森を突き飛ばしてしまう。
稲森は転倒し、傍で切っ先を向けていたパイプに倒れ込み絶命してしまったのだ。
「どんなに大切な名前でも娘には代えられません」
圭子は「金魚の涙」よりも沙希を選んだのだ。
母のただならぬ様子を不審に思った沙希が駆け付けて来た。
圭子は沙希に謝罪するも、沙希には意味が分からない。
沙希がその理由を知るのはこの直後のことである。
事件が原因で佑子は降板、「金魚の涙」も使用不可となった。
だが、門倉酒造でも今回の騒動を受け、製造中止とされることに。
明穂は保釈申請が為された。
認められれば早期に美保と生活することも可能であろう。
美保の名に抵抗を示していた明穂だが、魚住から圭子の言葉「どんなに大切な名前でも娘には代えられません」を聞かされ、美保と共に生きて行くことに決めたらしい。
今回の事件解決により、手塚管理官も魚住に注目。
捜査一課へ呼びたがっているそうだ。
だが、魚住は強行犯係を選ぶ。
それこそが、事件を未然に防ぐとの魚住の信念に沿う部署だから―――エンド。
<感想>
3週連続で放送された「壮絶!女のミステリー」第3弾にして、ドラマ版「ドルチェ」の第2弾。
・「金曜プレステージ」にて「壮絶!女のミステリー」が3週連続で放送!!
ドラマ原作は『ストロベリーナイト』で知られる誉田哲也先生の短編集『ドルチェ』(新潮社刊)。
ちなみにシリーズには続編として長編『ドンナ ビアンカ』もあります。
ちなみに『ドルチェ』については過去にネタバレ書評(レビュー)ありますね。
・『ドルチェ』(誉田哲也著、新潮社刊)ネタバレ書評
では、ドラマ版感想を。
「美保」という名に囚われ、娘への愛を抑え込もうとした明穂。
「金魚の涙」という名に囚われず、娘・沙希の為に生きた圭子。
「名前」と「娘」いずれが大事か―――そして「娘」を選ぶ。
まさに「名より実」がテーマ。
明穂が蟠りを捨て、娘に向き合おうと決意したのは良かった。
ただ、圭子は沙希に対して「殺人犯の娘」と言う薬物使用以上の枷を背負わせましたね。
意図せずとは言え、切ない……。
原作にはストックもあるので、シリーズ続編にも期待したいところです!!
◆関連過去記事
・金曜プレステージ「特別企画 ドルチェ ストロベリーナイトの誉田哲也傑作原作を初映像化!重体の幼児消えた母親…白骨死体その女は聖母?魔女?嘘つく女VS心を読む女、女の壮絶取調室開幕」(10月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
魚住久江:松下由樹
吉沢明穂:星野真里
原口昌哉:戸次重幸
峰岸学:馬場徹
里谷俊彦:菅田俊
井上高志:KEIJI
吉沢徹:森山栄治
門倉宏司:笹野高史
門倉圭子:安蘭けい
宮田洋平:ベンガル
手塚義則:西岡徳馬
金本健一:田辺誠一 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
◆「誉田哲也」先生関連過去記事
【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ1作目「ストロベリーナイト」はこちら。
「ストロベリーナイト」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
「シンメトリー」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
「インビジブルレイン」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズスピンオフ作品「感染遊戯」です。
「感染遊戯」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『アンダーカヴァー(「宝石 ザ ミステリー」掲載)』(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『女の敵』(誉田哲也著、宝島社刊『誉田哲也 All Works』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ブルーマーダー』(誉田哲也著、光文社刊『小説宝石』連載)まとめ
【ジウシリーズ】
・『ジウ 1〜3』(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『三十九番』(誉田哲也著、双葉社刊『痛み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ドルチェ』(誉田哲也著、新潮社刊)ネタバレ書評
【ドラマ版】
・土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」(フジテレビ系、2012年)まとめ
・土曜プレミアム「ストロベリーナイト〜アフター・ザ・インビジブルレイン〜女子高生転落死から始まる官僚連続殺人!!携帯に残された暗号、顔無き真犯人?絡まる5つの謎と共に解ける真実とは!?本日公開の映画と連動する衝撃のミステリー(アンダーカヴァー、東京、サイレントマーダー/沈黙怨嗟、左だけ見た場合、プロバブリィギルティ/推定有罪)」(2013年1月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「特別企画 ドルチェ ストロベリーナイトの誉田哲也傑作原作を初映像化!重体の幼児消えた母親…白骨死体その女は聖母?魔女?嘘つく女VS心を読む女、女の壮絶取調室開幕」(10月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【コミカライズ】
・『ストロベリーナイト―見えない雨―』第1部(第1話から第11話)まとめ(誉田哲也原作、桑村千宏作画、講談社刊『週刊ヤングマガジン』連載)ネタバレ批評(レビュー)
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