2013年11月05日

「電波の城」(細野不二彦作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載)1話から236話「深夜の告白」までネタバレ批評(レビュー)

「電波の城」(細野不二彦作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載)1話から236話「深夜の告白」までネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

天宮詩織はローカルラジオ局のアナウンサーを辞め、キーテレビ局のアナウンサーになるべく上京して来た。
一時栄華を誇りながら今は寂れた鯨岡の芸能プロダクションに所属した彼女は早速、行動に移す。

面接で児島君子を蹴落した丸の内テレビのお天気キャスターを皮切りに、とんとん拍子で出世していく詩織。
本城律子や立花哲人など「電波の城」に住まう怪物相手に一歩も退かない。
さらには、度重なる危機を類稀なる才知と胆力により幾度となく乗り越えた結果、立花の死に伴い番組を引き継ぐまでに。

一方で、記者の谷口ハジメと知り合い、今は病床に臥す父・天宮理一に似た彼に惹かれて行き、遂に関係を持つに至った。

公私ともに順風満帆に思われた詩織。
だが、彼女の出生に纏わる闇は直ぐそこまで迫っていたのである。

実は詩織は「聖レムリア教団」の生き残りであった。
しかも、「聖レムリア教団」の姫・朱雀院ひな子だったのだ。
「聖レムリア教団」は過去に謎の集団自決を引き起こし壊滅していた。
だが、詩織こと朱雀院ひな子はその直前に脱出していたのである。

母方に引き取られた後、天宮理一のもとで養育された詩織。
実は詩織は理一の実の娘であった。
親娘の名乗りを上げた彼らは2人で暮らし始めるが……。

「聖レムリア教団」には他にも生き残りが居たのだ。
生き残りは「聖レムリア教団」を再建すべく詩織擁立を目論み、これを奪回しようとする。
だが、理一の必死の抵抗に遭い失敗、落命する。
しかし、理一もまたこの際の後遺症で病床に臥すことに。

実は理一は事あるを予期し、実弾入りの拳銃を用意していた。
ところが、これを見つけた詩織により実弾を摩り替えられており肝心な時に役に立たせることが出来なかったのである。
これに責任を感じた詩織は、理一の夢である日本を代表するジャーナリストを目指すようになったのだ。

そして、その夢実現まで迫りつつあったのだが……。
此処に来て、詩織の出生の秘密に辿り着く者が現れた。
谷口ハジメの先輩ジャーナリストの三隅である。
三隅はジャーナリストとして、詩織の過去を出版しようとする。

一方、詩織は理一が自身を守る為に犯した殺人を隠すべく、三隅の排除を決意する。
その手にはあの時、撃てなかった拳銃が握られていた。

密かに三隅との会談の場を設けた詩織。
遂に彼女自身の手で発砲し、三隅を殺害してしまう。

同時に、詩織は遂に自身の看板番組を持つに至る。
詩織は一国一城の主になったのだ。
理一との夢の実現も目前である。

詩織の朗報に喜びつつも、三隅の死に衝撃を受けた谷口。
そんな谷口を自身が三隅殺害犯であるにも関わらず慰める詩織。

しかし、当の詩織にも大きな衝撃が。
理一が死亡してしまったのである。
まるで、娘がキャスターとして電波の城の頂点に上り詰めたのを確認したかのようなタイミングであった。

さらに、詩織を衝撃が襲う。
一度は詩織に敗れたキャスター・角館ちず子が再起。
彼女が受け持った裏番組が詩織の報道番組を脅かし始めたのだ。

この裏には本城律子が居た。
本城は自身が表に出ることなく、角館を影から支援することで本格派のイメージを隠しながら本格的な報道番組を放送することに成功したのだ。
気軽に視聴出来ながら、独自の鋭い切り口を併せ持つ本格的な報道番組。
これは従来の報道番組の域を抜け出られない詩織にとっては未曾有の出来事であった。

さらにさらに、詩織は三隅殺害の証拠を産業廃棄物処分場に不法投棄する現場を、自身がアナウンサー生命を奪い、今は谷口を巡り三角関係にある児島君子にそれと知らず目撃されてしまうことに。
ところが、児島君子はその場で事故に遭い……。

一方で、詩織の裏の顔を知る仁科が窮地に陥ることになった。
奇しくも谷口が追っていた不正献金疑惑に関与していたのである。
追い詰められた仁科は殺人未遂まで引き起こすが、これにも失敗し逃げ出さざるを得なくなった。
仁科は詩織を頼るが、これを救う詩織ではない。

孤独になった仁科は、海外逃亡の手段と引き換えに詩織との仲を取り持つよう、詩織に興味を抱く若頭(12巻登場)に迫られる。
一度はこれに応じたかに見えた仁科であったが……裏で谷口にある手紙を送ると共に、若頭を刺殺するも報復に殺害されてしまう。

その頃、当の詩織は自身の報道番組が持つ根本的な欠陥を角館を通じて本城から教えられることに。
これに不満を抱いていた本城は政界に打って出ようとしていた。

これを利用した詩織は本城が持つ立花の秘蔵ビデオを入手することに成功。
それは「聖レムリア教団」壊滅の理由が記録されたもの。
壊滅には烏丸と神祇官が関わっていたらしい。

その頃、長らくデスク上にて日の目を見なかった仁科の手紙に、ようやく谷口が気付いた。
中身は詩織の正体が「聖レムリア教団」の姫であることを明かす物であった。

さらに君子が生還し、詩織が三隅殺害の証拠品を遺棄する現場をVTRにしたものと証拠品自体を持ち帰る。
しかも、これに三隅殺害を追っていた捜査本部が辿り着いた。
谷口に好意を抱く君子は彼に詩織を諦めさせるべくこの事実を教えてしまう。

こうして谷口は、詩織の正体と彼女の罪のすべてを知った。
だが、谷口にとって詩織は愛する人であった。
そして、それは詩織にとっても同じこと。

谷口から打ち明けられた詩織。
混乱するままに「殺してくれ」と訴える谷口に愛情を感じた詩織は彼に救いを求めるのだが―――237話に続く。

<感想>

遂に谷口が真実に到達。
ジャーナリストとして使命に誠実足らんと欲する谷口にとって、この事実は明かすべき物の筈ですが……。
相手が詩織である以上、公には出来ないでしょう。

そして、詩織もまた烏丸たちへ復讐する時間を欲するが為に谷口に沈黙を強いるか。
あるいは、谷口が詩織の身代わりを買って出るような事態もありうる?

だが、これはいずれにしても「ジャーナリスト」としての谷口の誠実さを奪うことになりかねない。
ひいては詩織が憧れた父・理一のように谷口もジャーナリスト生命を断たれかねないのではないか。
本作は谷口らの手記による回想の形式をとっていますが、この手記自体が発表できない類の物であり、私的な手記に留まる可能性もあるか。
なかなかに事態が混迷を深めて来た印象。

さて、詩織としては本城から指摘された弱点を打破しつつ、烏丸たちへ復讐する必要があると思われる。
というワケで、番組内で「聖レムリアの真実」を追求することになりそう。
生き証人・詩織と立花のテープを武器に烏丸を討つのか?

ただ、いずれにしても目的を果たした詩織は、自身の名誉と谷口の今後の為にも死を選びそうな気がしますね。
果たして、如何なる結末が待つや?

現在で8合目から9合目として、おそらくラストシーンはもうすぐ其処にまで迫っている筈。
『電波の城』、今後の展開に要注目です!!

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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