2013年12月08日

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第81話「ゴンドラ」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年1月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第81話「ゴンドラ」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年1月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬立樹:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。

荒井啓太郎:料理研究家。早苗の兄。
芝浦克彦:早苗の夫で啓太郎の義弟。
芝浦早苗:克彦の妻で啓太郎の実妹。

<ネタバレあらすじ>

テレビにも出演する著名な料理研究家・荒井啓太郎。
彼のもとに妹・早苗の夫である芝浦克彦が訪れていた。

用件は1つ、金の無心である。
芝浦は妹婿の立場を利用し、何度となく荒井から多額の金を毟り取っていたのだ。

流石に腹に据えかねた荒井はこれを拒否する。
だが、芝浦は荒井の評判を貶めるような噂を流しても良いのかと彼に詰め寄る。
どう見ても脅迫である。
これに荒井は芝浦殺害を決意する。

そんな荒井の気持ちに気付かない芝浦は、荒井が常に指に嵌めている結婚指輪について何やら語り出していた。
それは荒井の気を苛立たせる効果しかなかった……。

結局、荒井はスキーリゾートで行われるパーテイーに協力してくれるならば援助しようと条件を出し、芝浦を誘き出す。

夜のスキーリゾートに到着した2人。
会場が山頂にあると芝浦を騙した荒井はゴンドラに乗り込むことに。

この際、荒井は芝浦の顔も見たくないと、自身が乗るゴンドラと芝浦の乗るソレを別の物にした。
芝浦が乗るゴンドラは荒井が乗るソレから3つ後方の物だ。

こうして、係員の目の前で荒井が先行。
芝浦は3つ後方から後を追うこととなった。

夜の闇を切り裂きつつ、山頂へと向かうゴンドラ。
すると、芝浦の目に意外な光景が。

なんと、荒井が途中に聳え立つ支柱に掴まり待っていたのだ。
どうやら、わざわざゴンドラを抜け出したらしい。

荒井の機嫌を損ねれば援助が受けられない……そう考えた芝浦は荒井を自身のゴンドラに迎え入れる。
その直後、荒井が何やらスマホのアプリを起動させた途端にゴンドラが止まった。
実はこのゴンドラはシステムの関係上、ある種のアプリと相性が非常に悪く、電波を拾うとシステムが落ちストップしてしまうのだ。

急に止まったゴンドラに戸惑う芝浦。
荒井はそんな芝浦にゴンドラから飛び降りるよう強要する。
此処で機嫌を損ねれば援助が受けられない……またもそう考えた芝浦はスキーを履きつつゴンドラの戸を開けた。

だが、此処で急に渋り出す。
業を煮やした荒井は芝浦を突き落とすのであった。

ゴンドラの運転再開。
山頂へと辿り着いた荒井のゴンドラ。
其処から降りるや、荒井は「芝浦が停止中のゴンドラからスキーを履いて飛んだ」と係員に伝える。
さらに、係員に人を呼ぶよう指示を出す。

……と、荒井は此処でふと気付いた。
いつも着けている指輪が消えていることに。
おそらく、先程、芝浦を突き落としたときに持って行かれたに違いない。
マズイ……あれは証拠になりかねない。
焦った荒井は係員と共に芝浦のもとへ。

第一発見者として芝浦が事切れていることを確認し、指輪を探す。
だが、ない。
どこにもない。
一体、指輪は何処に消えたのか……荒井は狐に摘ままれたような気持ちに囚われた。

結局、芝浦が乗っていたとされるゴンドラから彼自身の物と思われる靴跡が検出。
それはゴンドラの扉へと続いており、荒井の証言は事実と認められ事故と結論付けられた。

数日後、森羅のもとを依頼人が訪れた。
その人物の名は芝浦早苗。
芝浦の妻にして、荒井の妹だ。

早苗は自身が妊娠しており、これを知る夫が危険な真似をする筈がないと主張。
荒井の犯行だと繰り返す。
これを受けて森羅が調査に乗り出した。

保険会社の調査員に扮した立樹は荒井に近付き、芝浦に資金援助をするつもりにもかかわらず、同じゴンドラを避けた理由を問い質す。
荒井はこれに答えられず、声を荒げて立樹を追い返してしまう。
こうして、森羅と立樹は荒井の犯行を確信した。

さらに数日後、事件現場に荒井の姿があった。
森羅と立樹、早苗に呼び出されたのだ。
彼らはあの日の真相を解き明かすと言う。

まず、立樹によりあの日の荒井の行動が再現された。
立樹は支柱から、森羅たちへのゴンドラへと乗り込んで来る。

「このようにして乗り込んだあなたは芝浦さんを殺害したんです」
続いて、森羅により荒井のトリックが説明されて行く。
もちろん、アプリを用いた停電は真っ先に看破されてしまった。

さらに、荒井のトリックの要にも森羅は斬り込んで来る。
芝浦が転落したとみられるゴンドラに芝浦の足跡しかなかった理由。
それは実際に転落したゴンドラと芝浦が乗っていたゴンドラが別だったからだ。

荒井は芝浦をゴンドラから転落死させた後、ゴンドラから芝浦の痕跡を消すと何食わぬ顔で山頂まで運ばれて行った。
山頂で係員に芝浦が転落したことを伝え人を呼ぶよう促し、係員が席を外した隙を突き、3つ後のゴンドラに靴跡だけを残したのだ。

つまり、最初に荒井が乗っていたゴンドラをA、芝浦が乗っていたゴンドラをB、Bの3つ後方のゴンドラをCとすると……。

荒井はAからBへと乗り換えると、芝浦を殺害。
そのままBに乗り続けることで、BをAのように偽装した。
その上で、Cに靴跡を偽装し、芝浦がCから転落したように見せかけたのだ。

こうしてすべてのトリックが露見した。
だが……荒井は証拠がないと犯行を認めない。

しかし、これに対し森羅はまだ2つの切り札を所持していた。

まず1つ目、荒井のトリックは荒井自身が「3つ後方のゴンドラから芝浦が飛び降りる光景を目撃した」ことにより成立している。

だが、それは不可能なのだ。
何故なら、荒井がアプリを用い停電を引き起こしたことで周囲は真っ暗闇に覆われており、到底3つ後方のゴンドラを確認することなど出来なかったのだから。

そして2つ目、荒井が芝浦を突き落とした何よりの証拠―――それこそ荒井の指輪である。
その指輪が解剖された芝浦の胃から検出されたのだ。

森羅は告げる。
「芝浦さんは死の直前に指輪に気付きました。其処で自分亡き後の早苗さんとお腹の子供を助けて貰う為に、荒井さんを庇おうとしたんです。だから、指輪を飲み込んだんですよ」

これを聞いた早苗が荒井を罵る。
事破れ、また芝浦の真意を知り、荒井は泣き崩れた―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2014年1月号掲載「81話 ゴンドラ」です。

「荒井、騙されんな……ソイツらは嘘を吐いているぞ」な回でした。
流石に今回の芝浦を庇う森羅たちには納得できないわ。
まず、芝浦に全く同情出来ないし。

森羅たちは早苗が妊娠したから芝浦が心を入替えようとしていたと主張したけど、それでやったことが義兄への「金の無心」から「脅迫」へのステップアップではフォローのしようがないだろう。
芝浦は早苗の身柄を人質に荒井を脅迫し続けているのだからこれ1度で終わる筈がなく、今後も早苗とその子供を人質に何度となく金を要求したであろうことは火を見るよりも明らかだし。

どうも芝浦の生活設計には初めから荒井の資産が含まれていたのだろうし、それ目当てに早苗と結婚したのだとすら思われる。
とすれば、荒井からの援助が断たれた時点で破綻するのは目に見えてる。
早苗とお腹の子供はどう転んでも痛い目に遭っていただろう。

それを回避するには芝浦に消えて貰う他ないだろうに。
此の点、手段こそ誤っていたが目的は荒井が正しかった。
荒井は殺害ではなく、早苗(及びその子供)を守る為に、何としてでも芝浦と離婚させるべきだったのだ。
それこそ、別れさせ屋を雇ってでも。

そもそも、早苗も荒井に対して恨むのは筋が違う気が。
早苗たちの生活は芝浦が荒井から手に入れた金で成り立っていたのだろう。
つまり、早苗とお腹の子供が生きて来られたのは、芝浦ではなく荒井のおかげ。
芝浦はなんら生産的なことはしていない。
そんな芝浦を選んだ早苗にも問題があるのだし、早苗は夫が迷惑をかけたことを荒井に謝罪するべきではないか。
少なくとも、兄を殺人者にまで追い込んだことを反省するべきだし、結果として荒井を奪うことになった荒井の家族には土下座すべきだ。
何処までも恩を仇で返す妹だなぁ……早苗は。

芝浦が荒井の指輪を飲み込んだのも、荒井を庇う為と言うよりは告発する為でしょう。
庇う為なら、荒井が言い逃れできるようにどこか遠くに放り投げるか、それが無理なら預けていたとの言い訳が出来るようにポケットに入れとけよ。
それが何で飲み込んでるんだよ。
どう考えても、指輪に気付いた荒井に取り戻されないよう隠したとしか思えません。
と言うか、普通はその論理立てでしょう。
芝浦は荒井の罪を告発しようとしたに違いないのに、違いないのに……何故、森羅は荒井を貶めてまで芝浦を庇うんだ。

荒井の行動と「76話 レース」でのオズウェルの行動にどう違いがあると言うのか!!
オズウェルは生さぬ仲の娘の為、荒井は主に自身の為だが早苗と子供の為でもあるんだぞ!!
そんなに代わらないだろ。

これは何か裏があるとしか思えない。
森羅、芝浦から幾ら受け取ったんだ!?
いや、それとも、荒井の所持品の中に森羅が欲する何かがあり、それを手に入れる為に人品を貶めようとしているのか?
ともかく、陰謀としか思えない。

トリックそれ自体よりも、此処が気になって気になって仕方がない回でした。

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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、はじめまして。
今回C.M.B.の新刊を購入し、こちらの話を読んだため、書き込みさせていただきました。
コメントしたいのは指輪の件。
>遠くへ投げる
これは転落して頚椎骨折か全身打撲かしている人間には不可能です。首が折れると力は入らないし、全身打撲ならなおさらでしょう。寝そべって立てないと力抜けるから。(まあ、腕位は動かせたみたいですが…)

あと提示されている「ポケット」のほかに雪の中に埋めるとかもなかったですね。

では失礼しました。
Posted by ブレイブ at 2014年06月22日 12:02
Re:ブレイブさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

なるほど、あの状態では遠くに投げるのは無理なんですね。
となると、仰る通り動かせる範囲で雪の中に埋めるとかの方が良さそうかな。
Posted by 俺 at 2014年06月23日 22:41
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