2013年11月21日

「最強少女さゆり」最終話(第5話)「さゆりとサヨナラの日」(福田やすひろ作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「最強少女さゆり」最終話(第5話)「さゆりとサヨナラの日」(福田やすひろ作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
さゆり(彩百合):謎の少女。4歳ながらとてつもない怪力を誇る。
権藤:さゆりの祖父。普通の人。
バニー・ラビット:宇宙警察の刑事。
リコス:バニーが追う逃亡犯。
源さん:さゆりの体当たりを受け止めることが出来る地球人。愛の力は偉大だ。
駐在さん:最近赴任してきたばかりの若い警官。1話でさゆりの三輪車に撥ねられトラウマに。
ヨシさん:隣町の住人。さゆりを侮ったが為に……。

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

宇宙刑事であるバニー・ラビットは凶悪犯リコスを追って地球に飛来。
あと一息というところまで追いつめるが、現地の少女・さゆりにリコスともどものされてしまう。
こうして、さゆりの家に保護(囚われた)されることに。
仲間に救助を依頼するが助けは未だにやって来ない。
さゆりを通じ、何時の間にやら凶悪犯のリコスが善良になりつつあるなど、想定外な要素を抱え過ぎた彼女の明日はどっちだ(嘘)!?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その日、権藤家の庭にて源さんとさゆりがパス練習を繰り返していた。
とはいえ、その力の差は歴然である。

ドドオォォォォォォォォン。

本来、パスで起こる筈のない轟音を聞きつつ、縁側でバニーとリコスは2人の様子を眺めていた。

「さゆりちゃん、手加減手加減」
「ごめんでしゅ」
さゆりの1蹴りに対し、源さんが上半身を仰け反らせつつ耐える。
常人ならば最初の1蹴りで消し飛んでいただろう。
やはり、愛の力は偉大である。

さて、そもそもこの2人が何故、パス練習をしているかと言うと……。

数日後、隣町との間にあるグラウンドで隣町とのサッカー試合が行われた。
この助っ人として源さんが招いたのがさゆりだったのだ。

まさに「牛刀をもって鶏を割く」―――どう考えても反則である。

だが、隣町のメンバーはさゆりのことを知らない。
「大丈夫かい?お嬢ちゃん」
リーダーのヨシを筆頭に、さゆりの外見を目にするや指を突き付け笑っている。
だが、さゆりの実力を知る源さんたちは真剣である。

それが余計にヨシたちをつけあがらせた。
しかも、そのさゆりがキックオフすることになると知るや、爆笑は最高潮。

「こんな子に頼らないといけないなんて」
「笑わせるなよ、ははははははは」
「2回蹴ってもいいんだよ。お・じょう・ちゃん」

ゲラゲラゲラ。
無礼の数々にさゆりの額に青筋が入る。
流石に源さんたちが怯え始めた。

「あ〜〜〜あ、無知とは罪だな」
「ま、すぐに分かるだろうさ」
この様子を観戦に訪れていたバニーとリコスが見守る。
彼らにとって他人事ながら冷や汗を禁じ得ない光景だ。

「それにしても、お別れも無しってのはなぁ」
リコスは、今まさにボールを蹴ろうと足を振り上げるさゆりを眺めつつ呟いた。

実はバニーとリコスにとってこの試合観戦が地球最後のイベントになろうとしていた。
秘密裏にバニーの仲間が迎えに来ているのだ。
今回ばかりはリコスもバニーに従うことになっていた。
夜にはさゆりとも別れることになるだろう。

そんな中、さゆりの足がボールにちょこんと触れた。

ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんんん。

ボールが消えた。
次いで、空気が揺れた。

驚異的な風圧に耐えながらヨシたちが気付いたときには、ゴールキーパーがボールを胸に抱えつつゴールポスト奥に消えていた。
何が起こったのか……混乱状態のヨシたちの前でさゆりが再度、ボールを置いた。

「もう1回、蹴れるんでしゅよね」
さゆりはニコヤカに微笑む。

ヨシたちの間に動揺が走った。
同時に、さゆりの正体に気付いた。

「そ、そう言えば聞いたことがある。隣町に怪力を誇る子供が居るって……」
「じゃ、じゃあ、あれが……」

後は言葉に成らなかった。

「ごめん、急用を思い出した」
「俺、体調不良」

1人が逃げ出すと、皆が我先に逃げ出した。
残されたのは……ヨシだけだ。

「根性なしどもが、俺が止めてやる!!」
心なしか震える声で叫ぶとヨシはキーパーとしてゴール前に立った。
だが、結果が変わるワケではない。

「じゃあ、行きましゅよ〜〜〜」
未だ余裕を感じさせる声でさゆりは軽く足を振り抜いた。

グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。

ボールが飛んだ。
ボールは火の玉となると、羽を生やした。
遂にはボールから嘴が突き出た。
何時の間にか、ボールはフェニックスとなり羽ばたいていた。

流石にこの展開は予測していなかったのであろう。
唖然となるバニーとリコス。

一方、目の前に迫る炎の鳥―――フェニックス。
ヨシはそのとき、死を覚悟した……。

数分後。

「ばんざ〜〜〜い、勝利だ!!」
さゆりが源さんたちに胴上げされている。
その隅ではこんがりと焦げたヨシが倒れ込んでいた。

「あ〜〜〜忘れてた。お別れはしない方が安全だな」
さゆりの愛らしい容姿にその驚異のポテンシャルを忘れていたリコス。
だが、この光景を目にし別れの挨拶をすることのリスクを思い起こしたようだ。
その隣に立つバニーは黙って頷いていた。

だが……彼らは知らなかったのだ。

その頃、宇宙ではバニーを迎えるべく宇宙船がやって来ていた。
ところが、突如として船内にアラーム音が鳴り響いた。

「前方にエネルギー体、迫って来ます。避けられません!!」
オペレーターの悲鳴が上がる中、エネルギー体は宇宙船に衝突。
宇宙船は爆発、四散した……。

エネルギー体の正体。
それは、先程、さゆりが蹴り上げたボール……そう、フェニックスと化したソレがヨシごとゴールを焼き空へと駆け上がったものであった。

その夜、権藤家居間にて。

「おい、迎えは何処に行ったんだ」
「おかしい。すぐ其処までは来ていたんだ……」
甘えるさゆりを背に、彼女に聞こえないよう声のトーンを落とすリコス。
不可解な表情を浮かべるバニー。

どうやら、サヨナラの日はまだまだ先になりそうである―――エンド。

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて短期集中連載が開始された福田やすひろ先生の作品。
狙いとしては「さゆりを中心とし、人並み外れた怪力がありながら周囲の人々に保護される4歳児を描くハートフルコメディ」かな。
雑誌を読んでいて、目を惹かれたので読んでみました。

今回はその5話目にして最終話。
彼らの日常は続く的なエンドでしたね。

感想を述べると……物凄く良かった!!
最終話にて1話目を超えた。
つまり、5話中でもっとも好きな回になりました。

それにしても、まさか此処に来てサッカーとは思わなかった。
さゆりの蹴ったボールがフェニックスになったシーンでは少林サッカーを思い出した。

本作の魅力は、あのファンシーな絵柄で驚きのアクションを魅せることなんだと思う。
とはいえ、おそらく此処で幾ら言葉を尽くしたところで本作の面白さは伝えられないだろうなぁ。
やっぱり本作は理屈じゃないな。
実際に読んで感じるべし。

彩百合の両親が謎ですね。
山中の病院で1ヶ月に1度のお見舞い……「となりのトトロ」を思い出しました。
さゆりの母は静養中なのでしょうか。
そう言えば、リコスはトトロっぽいと言えなくもないか。
入院中とのことですが、何か理由があるのでしょうか。
このあたりも謎だし、是非、連載に繋がって欲しいなぁ。

ちなみに、上記のあらすじは本作の魅力を伝えられるよう改変を加えてまとめてみましたが、残念ながらその面白さを伝えきれていませんね。
やっぱり、本作を直接読んで欲しい。

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は「名探偵マーニー」や「実は私は」など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

◆関連過去記事
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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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