2014年01月19日

「テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル 三億円事件 戦後最大の未解決事件〜衝撃の推理初映像化!!消えた真犯人VS保険調査員!!最後の真実」(1月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル 三億円事件 戦後最大の未解決事件〜衝撃の推理初映像化!!消えた真犯人VS保険調査員!!最後の真実」(1月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

1975年12月10日午前0時。約12万人の捜査人員、およそ9億円の捜査費用を投入した三億円事件の時効が成立した。実は奪われた三億円には保険金が掛けられており、そのうちの3分の2をアメリカの保険会社が支払っていたが、当時の日本人でそれを知る者はほとんどいなかった。
1976年、ニューヨークから一人の日本人が送られてきた。アメリカ有数の保険会社の査定部長の武田(田村正和)だった。敗戦によって変わり果てた日本を捨て、母親のヨシコ(奈良岡朋子)を残してアメリカへと渡った武田。彼には日本の警察にもなしえなかった三億円事件の真相を明らかにし、犯人に50万ドルに及ぶ賠償をさせるという目的があった。そして、もう一つ、25年ぶりに母・ヨシコと再会するという目的も…。
日本では現地調査員の涼子(余貴美子)、高原(段田安則)の協力を得ながら、着々と捜査を進めていく武田。さまざまな情報から事件の真相へと近づこうとするのだが、アメリカからやってきた日本人を日本の警察は冷遇する。
そんな障害にぶち当たりながらも、武田が目にした新事実とは?そして、経済大国となった日本と、そこで生きる日本人の変化とは?
20世紀最大の未解決事件の真相が今、明らかに…!?
(公式HPより)


では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……

あなたはご存知だろうか。
三億円事件にて犯人に奪われた大金に米国の保険会社が50万ドルもの保険金を支払っていたことを。
この支払いを行ったのがENY火災海上保険であった。

その査定部長・武田は事件の真相を明らかにし、犯人に賠償請求すべく来日し調査を開始した。
彼に協力するのは、リサーチ会社の社員・中岡涼子と高原薫の2人である。

当時の捜査資料から当初、容疑者とされていながらアリバイ成立により圏外へと逃れた2人の人物が浮上。
その名は浜野健次と杉本三郎。
共にカミナリ族のメンバーで、かなり派手に暴れ回っていたらしい。
杉本は存命だが、浜野は既に故人となってた。
なんでも、服毒自殺を遂げたらしい。

浜野の姉・悦子を訪ねる武田たち。
悦子は警備会社の社員・戸田雄一の妻。
戸田の叔父は元大物官僚で雄一が勤める警備会社の社長・戸田重光であった。

悦子は健次について問われるや顔色を変える。
武田は悦子が健次を殺害したと確信することに。
健次の死は自殺ではなく、他殺だったのだ。

悦子の口から「紫水晶のイヤリング」について聞く武田。
それは資料にも載っていない新情報であった。
そのイヤリングは、3億円事件に用いられた車のトランクに放置されていた物だそうだ。

調べた結果、イヤリングの持ち主が判明。
小林ユカという女性の所持品であった。

ユカは健次の交際相手。
やはり、健次が実行犯だったのだ。
健次のアリバイも偽証による虚偽であることが明らかになった。
さらに、杉本三郎により健次が実行犯であるとの証言を得ることが出来た。

これを受けて、武田は調査結果についての記者会見を開いた。
重光による圧力の為か、数少ない記者の前で結論を語り出す武田。

健次は杉本の発案で、3億円強奪を実行に移した。
イヤリングの件などからすぐに健次が容疑者となった。
だが、健次はアリバイ工作により身を護っていた。
とは言え、付け焼き刃である。
健次はいつもの通り、姉である悦子に縋ろうと考えていた。
悦子の夫・雄一を介し重光を動かす為だ。

そんなある夜、雄一は健次が3億円事件の犯人であると知らされた。
健次が雄一に告白し、雄一の会社の金庫に保管するよう金を無理矢理預けたのだ。

対処に困った雄一は重光に相談した。
重光はこれが露見すれば身の破滅だと繰り返した。
そして、腐った林檎は周囲をも腐らせると主張した。

この危惧は的中した。
健次は罪を悔いるどころか、協力したとして雄一を脅迫し始めた。
追い詰められた雄一と悦子は健次を殺害したのだ。
金庫に預けられた3億円は重光の会社の運営資金に充てられた。

武田は重光の圧力こそが真相を捻じ曲げたと結論付けると、重光たちに賠償請求訴訟を行うと宣言した。
だが、以降この事件に進展があったとの報は寡聞にして聞かない―――エンド。

<感想>

原作は松本清張先生『小説 3億円事件 「米国保険会社内調査報告書」』(新潮社刊『水の肌』収録)。
『小説 3億円事件 「米国保険会社内調査報告書」』は過去にネタバレ書評(レビュー)してますね。

『小説 3億円事件 「米国保険会社内調査報告書」』(松本清張著、新潮社刊『水の肌』収録)ネタバレ書評(レビュー)

では、ドラマの感想を。

まず、原作とは主人公などが大幅に変更されていることを述べておきたいと思います。
原作の主人公は調査員のセーヤーズで武田ではありません。
さらに細部のニュアンスも原作からは大幅に変更となっています。

何故、主人公がセーヤーズから武田に変更となったかはラストを見れば明らかなのかもしれません。
それは「武田の告発を受けた被告発者の自浄作用が問われたもの」であるに他ならないのではないでしょうか。
その結末は……ラストの通りです。
此の点、あまりにも内省的に過ぎるのではないか……との感想もありますね。
おそらく、このテーマの為に「鋭意調査中であった原作の結末」から「結論、記者会見に至ったドラマ版の結末」が生じたのでしょう。

それに合わせて結末の事象のみならず、事件自体のニュアンスも異なっていました。
原作だと戸田重光、雄一が健次を利用した形でしたが、ドラマ版だと健次に周囲が振り回された結果となっているように感じました。
この点も前述のテーマの影響が大きいのではないでしょうか。

まさに、劇中の武田の言葉ではありませんが「全然変わっちゃったんだな」と言えるでしょう。
そう言えば、当時「全然変わっちゃったんだな」との「全然+肯定形」での語彙が存在したのかなぁ……と思ったりもしました。

さて、結論を述べると、ドラマ版もなかなかでしたね。
ただ、個人的には、原作であったように報告書の形で事実(として述べられている事象)だけが淡々と並べられていた演出の方が好きだったりします。

<キャスト>

武田秀哉(たけだ・ひでや):田村正和(たむら・まさかず)
中岡涼子(なかおか・りょうこ):余貴美子(よ・きみこ)
高原 薫(たかはら・かおる):段田安則(だんた・やすのり)
中田所長(なかたしょちょう):小野武彦(おの・たけひこ)
杉本三郎(すぎもと・さぶろう):忍成修吾(おしなり・しゅうご)
戸田悦子(とだ・えつこ):板谷由夏(いたや・ゆか)
戸田雄一(とだ・ゆういち):田中哲司(たなか・てつし)
戸田重光(とだ・しげみつ):津川雅彦(つがわ・まさひこ)
平沼 要(ひらぬま・かなめ):橋爪 功(はしづめ・いさお)
佐竹(さたけ):光石 研(みついし・けん)
伊藤記者(いとうきしゃ):泉谷しげる(いずみや・しげる)
武田ヨシコ(たけだ・よしこ):奈良岡朋子(ならおか・ともこ) ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)


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【その他】
・『眼の壁』から出題がありました。
「ミステリーキューブ 名作ミステリーを凝縮▽華麗なトリックを見破り密室から脱出せよ!▽松本清張が仕掛けたわなに挑戦だ」(8月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【特報】松本清張先生、未収録短編発見さる!!その名も『女に憑かれた男』!!

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この記事へのコメント
遅くなりましたが、
新年あけましておめでとうございます!

本年も宜しくお願いいたします(*´Д`)φ_

最近気になっている
田中哲司さんが出演されていたので
みました。

原作とドラマ版は結構違うみたいで。

重光、雄一が健次を利用した、というのも
なかなか面白そうな設定ですね。

松本清張さんは知り合いが絶賛していたので、是非読んでみたいです。

(家にまだ読み終えてない本が山積みですが・・・)

試験、部活が一段落したら
読んでみようと思います。
Posted by 白石コサク at 2014年01月30日 20:45
Re:白石コサクさん

管理人の“俺”です(^O^)/!!
明けましておめでとうございます。
こちらこそ、本年も宜しくお願い致します!!

田中哲司さん、良い役者さんですよね。
「ブラッディ・マンデイ」、「アンタッチャブル」、「SPEC」、「熱海の捜査官」と管理人が好きなドラマで好演されています(^O^)/!!

社会派の巨匠・松本清張作品は骨太で重厚な作品が多いので、そういった作品が好きな方にはオススメです。
是非、ご一読を(^O^)/!!
Posted by 俺 at 2014年02月01日 01:18
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