2013年11月28日

『SROシリーズ 1巻(警視庁広域捜査専任特別調査室)から5巻(ボディーファーム)まで』(富樫倫太郎著、中央公論新社刊)

『SROシリーズ 1巻(警視庁広域捜査専任特別調査室)から5巻(ボディーファーム)まで』(富樫倫太郎著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

・『SROT 警視庁広域捜査専任特別調査室』
七名の小所帯に、警視長以下キャリアが五名。管轄を越えた花形部署のはずが――。警察組織の盲点を衝く、連続殺人犯を追え! 新時代警察小説の登場。

・『SROU 死の天使』
死を願ったのち亡くなる患者たち、解雇された看護師、病院内でささやかれる『死の天使』の噂。SRO対連続殺人犯の行方は。待望のシリーズ第二弾! 書き下ろし長篇。

・『SROV キラークィーン』
SRO対“最凶の連続殺人犯”、因縁の対決再び!! 東京地検へ向かう道中、近藤房子を乗せた護送車は裏道へ誘導され――。大好評シリーズ第三弾、書き下ろし長篇

・『SROW 黒い羊』
SROに初めての協力要請が届く。自らの家族四人を殺害して医療少年院に収容され、六年後に退院した少年が行方不明になったというのだが――書き下ろし長篇。

・『SROX ボディーファーム』
最凶の連続殺人犯が再び覚醒。残虐な殺人を繰り返し、日本中を恐怖に陥れる。焦った警視庁上層部は、SROの副室長を囮に逮捕を目指すのだが――。書き下ろし長篇。
(中央公論新社公式HPより)


<感想>

富樫倫太郎先生による警察小説です。
シリーズには2013年10月時点で5巻存在しています。
それぞれ、『SROT 警視庁広域捜査専任特別調査室』『SROU 死の天使』『SROV キラークィーン』『SROW 黒い羊』『SROX ボディーファーム』の5冊。

物語はSRO室長である新九郎を中心に毎回連続殺人犯と対決する展開。
特に5巻までは「ドクター」こと「最凶の快楽殺人者・近藤房子」との対決を描く(2巻と4巻は除く)。
一応、5巻にてひとまずの決着はついたかに思われますが果たして房子は復活するのか?
復活するとなると、坊屋あたりが危険な気が……。

そして、何よりも気になるのが、新九郎のお見合い相手・鈴木花子。
新九郎が「運命の相手」として惹かれているということで、房子を上回る凶悪な存在の可能性もありそうな……。

さらに、5巻ラストにて尾形の息子・誠がまさかの暴走。
6巻では彼と対決することになるのか!?

他にも、5巻にて遂に銃を撃てなかった針谷。
正義の為に射殺するのは正しいのか―――彼がこの問題をどう乗り越えるのかも注目だ。

ちなみに、2013年12月9日にドラマが放送予定。
公式HPで確認したところ、新九郎ではなく麗子が主役の様子。
さらに、ドラマ版だと川久保の存在自体がカットされているっぽい。
そして何より楽しみなのが近藤房子役が戸田恵子さんであること。
演技巧者な戸田さんだけに、どんな怪演を魅せてくれるのか……期待大!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:

山根新九郎:SRO室長、天才的な頭脳を誇る
芝原麗子:SRO副室長
尾形:SROメンバー
富田課長:SROメンバー
針谷:SROメンバー、通称ダーティーハリー
川久保:SROメンバー、通称坊や。実は胡桃沢のスパイ
木戸沙織:SROメンバー

胡桃沢大介:警察庁刑事局理事官、SROにスパイを送り込む

鈴木花子:ぽっちゃり型の女性。新九郎の見合い相手だが……。

門奈:捜査一課の刑事。キラークィーンにて登場。房子の手にかかり殉職する
坊屋:捜査一課の刑事。キラークィーンにて登場。門奈の仇を討とうとするが……。

尾形誠:尾形の息子、ボディーファームにて尾形たちを刺し逃走。
琥珀:副院長。死の天使にて登場。死の天使の正体。
大刀川:黒い羊にて登場。連続殺人犯。
氷室:振り込め詐欺の主謀者。キラークィーンにて登場。
桐野:氷室の相棒。キラークィーンにて登場。

近藤一郎:房子の夫。
近藤房子:SROの宿敵。1巻ではドクターと呼ばれていた最凶の快楽殺人者。

・『SROT 警視庁広域捜査専任特別調査室』

警視庁内に「広域捜査専任特別調査室(通称:SRO)」が発足された。
発起人は室長である山根新九郎。
新九郎はプロファイラーとして確かな技術を保持しており、凶悪化・広域化する犯罪を効率的に捜査・解決する為に部署新設を訴え成功させたのだ。

新九郎の他のSROのメンバーは次の通り。
副室長となった芝原麗子、尾形、富田課長、過去に凶悪犯を射殺したことから「ダーティーハリー」とあだ名される針谷、イケメンで周囲からは「坊や」と呼ばれる川久保、木戸沙織である。

だが、そんな新九郎を好ましく思わない者たちが居た。
実はSROメンバーの中にはスパイが居たのだ。

スパイの役割はただ1つ。
新九郎の行動に瑕疵を見出し、それを口実にSROを潰すこと。

そんな中、麗子は理事官の胡桃沢に呼び出され彼女がSROに配属された理由を聞くことに。
その理由こそ、SROをスパイすることであった。
最初は乗り気な麗子だったが、新九郎たちと触れ合う内に戸惑うようになってしまう。

一方、新九郎はそのプロファイリング技術を用いて、少なくとも16年以上前から複数の管轄で犯行を繰り広げる連続猟奇殺人犯の存在に気付いた。
新九郎はこの人物を「ドクター」と名付け、SROで追うこととする。

様々な状況証拠を手掛かりに「ドクター」へと迫るSROの面々。

だが、「ドクター」の行動は素早かった。
SROメンバーの1人・木戸沙織を捕まえると、これから捜査状況を聞き出したのだ。
実は「ドクター」は薬剤師である近藤一郎、房子夫妻であった。
いや、より正確には一郎を操る近藤房子こそが「ドクター」その人だったのである。

沙織を救うべく、近藤夫妻の居所を突き止めたSROメンバーは拠点へ突入。
針谷はその異名そのままに、抵抗を示した一郎を射殺。
何故か奥で血を流し倒れ伏す房子を保護する。

実は房子は一郎をドクターに仕立て被害者のふりをしつつ、隙を見て救急隊員を襲い脱出するつもりであった。
だが、これもSROに先読みされたことで房子は逮捕されることとなった。

しかし、房子は狡猾であった。
彼女がドクターであることを証明する術は無い。
こうして、SROと房子の長い戦いが始まったのだ。
そして、房子はと言えば自身を此処まで追い詰めたSRO室長・新九郎に強い興味を抱く。

一方、木戸を助ける為の針谷たちの行動が胡桃沢によって問題とされ、SRO閉鎖の危機が迫る。
そんな中、胡桃沢の真のスパイが発覚。
それは川久保であった。
だが、川久保自身はSROに親しみを感じており、遅まきながら本当の仲間になりたいと希望する。

とは言え、SRO自体が閉鎖の危機に瀕している。
これを救ったのは富田課長であった。
富田は経理畑出身。
上層部による黒い金の流れを記した「ブラックノート」を取引に用いて、SROを救うのであった。

・『SROU 死の天使』

房子の罪は未だ明確にならない。
そんな中、SROに新たな敵が。

とある病院内で患者の連続不審死が続いていたのだ。
副院長・琥珀を疑う新九郎は富田課長を囮に遂にその犯行を抑える。

だが、追い詰められた琥珀は屋上から尾形たちを道連れに転落死しようとして失敗。
1人で落下し死亡してしまうのであった。

・『SROV キラークィーン』

房子が護送されることになった。
ところが、この護送車が何者かにより襲撃され房子が奪われてしまう。

房子を奪ったのは氷室と桐野。
彼らは振り込め詐欺グループの首謀者。
とはいえ、氷室はもっと大きなことをしたいと常々考えていた。
そこで、氷室は房子の胆力と頭脳に敬意を抱き、これを食べることで房子を超えるつもりだったのだ。

その頃、新九郎は自由になった房子が復讐を企むに違いないと考えていた。
特に沙織に対しては何らかの執着を持っている筈だ。
其処で捜査一課から門奈と坊屋が警備に当たることに。

一方、氷室側では思いも寄らぬ展開が。
氷室たちの金を巡り、これを追うグループが登場。
グループに氷室が捕まったのだ。

1人残された桐野は氷室を失いどうして良いか分からない。
これをチャンスと見た房子は桐野を操ると、グループのメンバー2人を殺害し氷室を救う。
だが、房子は氷室を自身を超える資質を持つ者と危険視していた。
結局、氷室は桐野への見せしめとして房子に処刑され、逆に食べられてしまう。

一郎に代わる桐野を従えた房子は復讐開始。
沙織を襲う陽動として、麗子を襲撃し目の前で人を殺害、解体しこれにトラウマを与える。

さらに沙織を襲撃。
この最中、門奈が殺されてしまう。
坊屋は報復すべく射殺するつもりで発砲。
だが、房子が身体に隠していたナイフに弾が当たるという奇跡により、房子を取り逃がすことに。
沙織はこの襲撃がもとで入院療養を余儀なくされた。

房子は桐野と共に潜伏するが、グループが報復に動いたことを知るや、桐野を見捨てて姿を消す。
哀れ、桐野はグループに抹殺されることとなった。

次に房子が現れたのは神奈川県。
独居老人に近付くや、介護者としてその家に潜り込む。
こうして、房子は野に放たれた。

・『SROW 黒い羊』

SROの次なる敵は大刀川。
彼は被害者を家族に見立てて殺害することに執着していた。
これを追うSROメンバー。

一方、針谷に記者が近付く。
針谷のやり方(犯人を射殺)が正義を貫く為ではなく、単なる趣味だと言い募ったのだ。
針谷はトラウマを刺激されてしまう。

そんな中、遂に大刀川と対決。
針谷は被害者を出さない為に、大刀川を射殺する。

だが、記者はこれを批難。
実は、彼女は針谷が過去に射殺した犯人の親族であった。
これにより、針谷は自身の在り方に悩むことに。

その頃、房子はSROの活躍をテレビで知り、自身も活動再開する。
手始めは世話になっている独居老人である。

一方、新九郎はぽっちゃり型の女性・鈴木花子とお見合い。
これに一目惚れしていた。
だが、花子にフラれてしまう。

・『SROX ボディーファーム』

房子からゲーム開始の電話が新九郎に届いた。
鈴木花子にフラれ傷心の新九郎だが、房子と対決することに。

一方、門奈の仇を討ちたい坊屋は新九郎の力でSROへ異動していた。
とはいえ、この異動にはある条件があって……。

房子の行方が掴めないことに少しずつ焦りを募らせる上層部。
遂に麗子を囮にする作戦を決行するよう指示が出る。
批判的な新九郎だが、拒否は出来ない。
結局、麗子を囮に待ち伏せ作戦を展開する。

だが、房子は一枚上手であった。
麗子がプライベートで利用する占いの館に先回りすると、逆に待ち伏せを仕掛けたのだ。
これに気付いた新九郎も応戦するが、麗子は連れ去られてしまう。

新九郎は近藤夫妻の過去を調べ、彼らが寄付した土地に秘密の拠点が存在すると看破する。
メンバーを連れ此処に急行することに。

居所の露見した房子だが、焦りはない。
彼女はあくまで命を永らえつつ、ゲームを続けられれば良いのだ。

驚異的なタフネスを発揮しつつ、麗子を盾にメンバーから武器を奪う房子。
針谷でさえ、銃を撃つことが出来ず無力化されてしまう。

しかし、門奈の復讐に燃える坊屋は違っていた。
麗子ごと房子を撃つ。
これにより、麗子と房子は共に重傷を負うものの、房子の逮捕に成功した。

敵討ちを果たした坊屋は、そもそもの条件であった地方へ異動。
だが、坊屋にとってはその方が気が落ち着くらしい。
子供と一緒にのんびり暮らすそうだ。

一方、ようやく宿敵・房子を下し胸を撫で下ろす新九郎は花子と再会。
食事に誘うことに成功し、有頂天に。

だが同じ頃、尾形宅では非常事態が。
尾形の息子・誠が両親に反発し、これを刺すと何処へともなく逃走したのだ―――6巻に続く。

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