果たして気になる結果は?
◆「本格ミステリ・ベスト10 2014」(原書房、探偵小説研究会著 2013年12月2日発売)
注意:各タイトルのリンクは「ネタバレ書評(レビュー)」に繋がっています。
順位 | 国内 | 海外 |
---|---|---|
1 | 貴族探偵と女探偵 | 列車に御用心 |
2 | 水族館の殺人 | 百年祭の殺人 |
3 | リバーサイド・チルドレン | イン・ザ・ブラッド |
4 | ノックス・マシン | 跡形なく沈む |
5 | 犯罪ホロスコープ2 | ポーカー・レッスン |
6 | アリス殺し&戯作・誕生殺人事件 | 小鬼の市 |
7 | なし | 人形パズル |
8 | コモリと子守 | ムーンズエンド荘の殺人 |
9 | 星籠の海 | サイモン・アークの事件簿4 |
10 | リカーシブル | 警官の騎士道 |
国内編1位は麻耶雄嵩先生『貴族探偵対女探偵』(集英社刊)。
麻耶先生、おめでとうございます!!
やはり、麻耶先生は強かった―――「貴族探偵シリーズ」の最新作が堂々1位です!!
・『貴族探偵対女探偵』(麻耶雄嵩著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
『貴族探偵対女探偵』は、女探偵・高徳愛香と貴族探偵との推理対決を描く短編集。
とはいえ、貴族探偵シリーズである以上、勝者は明らか。
そんな中で、如何にして推理が展開されるかが注目の作品。
ちなみに、シリーズ前作『貴族探偵』は「2011 本格ミステリ・ベスト10(2010年度版)」では6位。
・2011年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・『貴族探偵』(麻耶雄嵩著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
それだけに3年越しの悲願達成か……と思いきや、実はこの年(2010年版)の1位は同じ麻耶先生による『隻眼の少女』だったりします。
同一作者ゆえに票が割れた筈なのですが、1位と6位だったんですね……流石。
その翌年(2011年版)にも『メルカトルかく語りき』にて2位にランクインしており、まさにランキング常連の風格です。
本格ファンにとって麻耶雄嵩先生は外せない存在となっており、この勢いで他ランキングも席巻するか!?
ちなみに、麻耶先生は『貴族探偵対女探偵』以外にも精力的に作品を発表されています。
まず、変則的に掲載されていた『神様ゲーム』が遂に完結。
2014年には書籍化の筈。
・『さよなら、神様』(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊『オール読物』2013年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
木更津シリーズ最新作『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』も5話までが連載(2013年12月初旬現在)。
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第5話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年11月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
おじさんシリーズも短編が4作まで既にストックされているので、後1作発表されるか書下ろしが加われば書籍化も可能な筈。
・『旧友』(麻耶雄嵩著、新潮社刊『小説新潮』2013年09月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
これらが書籍化されるであろう2014年もランキングトップ争いに参加するのは確定か。
そう言えば、メルカトルシリーズの『メルカトル鮎 悪人狩り』も続きが発表されるか!?
・『メルカトル鮎 悪人狩り「第1話 囁くもの(メフィスト2011 vol.3掲載)」』(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
2位には青崎有吾先生『水族館の殺人』(東京創元社刊)。
第22回鮎川哲也賞受賞作『体育館の殺人』に続く「裏染シリーズ」長編第2弾。
水族館で発生した殺人事件を裏染天馬がロジカルに解決!!
意外な動機やいわくありげな裏染家の人間模様も注目ポイント。
ちなみに本作の後日談として、スピンオフ短編『針宮理恵子のサードインパクト』も発表されています。
短編では『水族館の殺人』最後で裏染が受け取ったフリーチケットの行方も明かされていたり。
・『体育館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『水族館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『針宮理恵子のサードインパクト』(青崎有吾著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.60』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
そして、3位は梓崎優先生『リバーサイド・チルドレン』(東京創元社刊)。
『叫びと祈り』で知られる著者による初の長編作品。
管理人が2013年に読んだオススメ作品の1つです。
『早ミス』では6位でした。
・『リバーサイド・チルドレン』(梓崎優著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『叫びと祈り』(梓崎優著、東京創元社刊)ネタバレ批評(レビュー)
4位には、法月綸太郎先生『ノックス・マシン』(角川書店刊)。
『早ミス』では1位でしたが、こちらは4位。
あれ、このフレーズに既視感があるなぁ……と思いきや、実は去年も同様のことがありました。
去年(2012年)は三津田信三先生『幽女の如き怨むもの』が同じように『早ミス』1位、『本ミス』4位でしたね。
5位には、同じく法月綸太郎先生『犯罪ホロスコープII』(光文社刊)。
タイトル通り星座をモチーフにした切れ味鋭い短編集です。
6位には小林泰三先生『アリス殺し』と辻真先先生『戯作・誕生殺人事件』(共に東京創元社刊)。
まず、『早ミス』では8位だった『アリス殺し』は、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をモチーフにした作品。
内容的に暗黒童話と呼ぶに相応しい怪作だけに、残虐描写にさえ耐性があれば読むべし!!
『戯作・誕生殺人事件』は「ポテトとスーパーシリーズ」最終巻。
辻真先先生と言えばこんな記事も……。
・夢枕獏先生、別名義で短編を執筆!!そして“牧薩次”の正体とは!?
8位には、歌野晶午先生『コモリと子守』(光文社刊)がランクイン。
「舞田ひとみシリーズ」第3弾にして、誘拐事件を扱った作品。
まさに「誘拐物の歌野」の面目躍如か。
歌野先生が「誘拐事件」を扱った作品と言えば『さらわれたい女』、『ガラス張りの誘拐』などがありましたね。
・『さらわれたい女』(歌野晶午著、講談社、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ガラス張りの誘拐』(歌野晶午著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
ちなみに、ランキング系だと締切近く(10月ごろ)に刊行された作品が有利となりがちですが、本作は2012年12月に発売されており、その不利を撥ね退けての8位となっています。
9位には島田荘司先生『星籠の海』(講談社刊)。
島田荘司先生の名を耳にすれば思い浮かぶのは名探偵・御手洗潔、そのシリーズ最新作(2013年12月現在)です。
御手洗シリーズと言えば、2012年から原点火先生作画により『週刊モーニング』誌上にて「ミタライ」としてコミカライズされています。
これまでにコミカライズされた原作は『糸ノコとジグザグ』、『傘を折る女』、『山高帽のイカロス』、『数字錠』、『IgE』の5作品。
次回は2014年2月頃から『疾走する死者』(講談社刊『御手洗潔の挨拶』収録)がコミカライズということでこちらも注目です!!
・『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― IgE』最終話(第4話)「美女と便器と男たち」(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)
10位には米澤穂信先生『リカーシブル』。
『小説新潮』に連載された作品です。
こちらも2013年1月に発売されながらの10位入り。
米澤先生と言えば、2013年中に書籍として発売されたのは本作のみ。
とはいえ、短編では次の4作が発表されています。
「甦り課シリーズ」第2弾『黒い網』。
「僕と松倉シリーズ」第2弾『ロックオンロッカー』。
「古典部シリーズ」最新作『長い休日』。
「ノンシリーズ(単発)」だと『関守』もありました。
「ノンシリーズ」はそろそろ一冊になっても不思議ではない頃合いかも……。
でも、2014年にはもっと読みたいぞ!!
では、国内10位以降の注目作について。
11位は平石貴樹先生『松谷警部と目黒の雨』(東京創元社刊)。
『だれもがポオを愛していた』で知られる著者による徹底的にロジックを用いた1作で、本格推理好きには堪らない。
ちなみに、ニッキ・サラシナは未登場でした。
・『だれもがポオを愛していた』で知られる平石貴樹先生の最新作が2013年9月に東京創元社より登場!!『松谷警部と目黒の雨』に注目せよ!!
17位は「第23回鮎川哲也賞」受賞作、市川哲也先生『名探偵の証明』(東京創元社刊)。
「名探偵の存在意義」に挑んだ1作。
20位は天祢涼先生『セシューズ・ハイ』(講談社刊)。
天祢涼先生と言えば、音宮美夜シリーズの新作も読みたいぞ!!
では、此処で「本格ミステリ・ベスト10」時点での国内総評。
『本格ミステリ・ベスト10』はどちらかと言うと例年シリーズ物が強く特に波乱は無かった印象ですね。
全体的に手堅い作品が上位にランキングされた感じです。
ただ、個人的に『アリス殺し』は、もっと上位にランキングされても不思議ではない気はしますが……。
それと『早ミス』と『本格ミステリ・ベスト10』を比較すると、10位以内に入ったのが『ノックス・マシン(1位→4位)』、『リバーサイド・チルドレン(6位→3位)』、『アリス殺し(8位→6位)』の3作のみであることも注目ポイントか。
あれ、此処でも既視感が……。
そうか、両方10位以内にランキングした作品数も3作とこれまた去年と似た状況ですね。
こうなると、やはり感想も去年と似たものになるかな。
と言うワケで、自称・本格ミステリファンの管理人としては、これが2013年の「本格ミステリ」の不作を指すのか、あるいは豊作だった為に票が割れた結果と見るか―――どう捉えるかで感想が大きく変わって来そう。
あるいは、もう1つ―――「本格ミステリ」自体も豊作だったが、「ミステリ界全体」が豊作だった為に全体のレベルが押し上げられ、「本格」「社会派」「サスペンス」など各ジャンルで偏ることなくランクインしたことなども考えられるか。
個人的には「オススメ作品」も幾つか出て来ているので、第3の理由「全体のレベルが上がった説」を主張したいところ。
では、海外。
1位には、エドマンド・クリスピン『列車に御用心』。
そして、今年も「本格ミステリ・ベスト10」海外1位の作品は『IN★POCKET』、『早ミス』共に10位以内に入っていません。
それどころか『本ミス』の10位以内にランクインした作品のうち『ポーカー・レッスン』を除く9作品すべてが『IN★POCKET』、『早ミス』に挙げられていません。
どうも海外では本格系以外の作品が多く、その絶対数の差から本格系作品が「本ミス」以外では10位以内に入りづらくなっているような印象を受けますね。
一転、国内では本格系作品が他ランキングでも上位を占めることもあり、なかなかに面白い現象と言えそうです。
大体、こんな感じでしょうか。
ここまでで「2014年(2013年発売作品対象)」のランキングは『週刊文春ミステリーベスト10』と『このミステリーがすごい』を残すのみ。
そこで今後の注目点を。
まずは国内。
注目は『早ミス』と『本ミス』でそれぞれ1位に輝いた『ノックス・マシン』と『貴族探偵対女探偵』。
いずれかが2冠達成なるか?
噂では『このミス』を『ノックス・マシン』が制したとのことですが、果たして!?
同時に、『ノックス・マシン』、『リバーサイド・チルドレン』、『アリス殺し』の3作がベスト10皆勤(すべてのランキングで10位以内)を達成できるかも注目。
次に海外。
まず、各ランキングで1位を達成した『冬のフロスト』、『遮断地区』、『列車に御用心』の2冠達成に注目が集まる。
次に、ベスト10皆勤の可能性を唯一残す『ポーカー・レッスン』だが、果たして皆勤達成なるかも注目。
一方で、皆勤達成とは行かずとも如何に多く他のランキングで10以内に選ばれたかも、広く支持を受けた作品であると判断する上でのポイントと言える筈。
つまり、『IN★POCKET』と『早ミス』で10位以内に入った作品も見逃せない。
現状のところ、皆勤達成が注目される『ポーカー・レッスン』(3位→6位→5位)以外で、この条件を満たすのは、2冠がかかる『遮断地区』(8位→1位)と『冬のフロスト』(1位→3位)に『スケアクロウ』(2位→10位)の3作品。
これをまとめると、『ポーカー・レッスン』、『遮断地区』、『冬のフロスト』、『スケアクロウ』、『列車に御用心』が2013年を代表すると言えそうだ。
他ランキングに比べ独自色が強く見られた『本格ミステリ・ベスト10』。
管理人とっては「本格ミステリ」とは次の2条件を満たすかどうか。
・作中にロジックを用いているか?
・そこにサプライズはあるか?
どちらか一方でも構いません。
勿論、両方兼ね備えていればより本格純度の高いミステリと考えます。
その意味で、今回のランキングに入った作品はいずれかの条件を満たしており、さらに上位作品に関しては両方をクリア。
満足いくランキングとなりました。
◆【2013速報】現在までのランキング
・【2013速報】『ミステリが読みたい!2014年版』発表!!
・【2013速報】「IN★POCKET 文庫翻訳ミステリー・ベスト10 2013」発表!!
◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・探偵小説研究会HP
http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/
◆関連過去記事
・2013年(2012年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2012年(2011年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2011年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2010年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・【2012速報】「2013 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
・【2011速報】「2012 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
・【速報】「2011 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
上記、ランキング中で気になる本がある方はこちら。
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古典部シリーズなのに小市民シリーズと書かれてます。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
ああっ、確かに……これはマズイ。
急ぎ訂正させて頂きます!!
ご指摘ありがとうございます(^O^)/!!