2013年12月15日

【遂に完結!!】「電波の城」(細野不二彦作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載)1話から最終話「going home」までネタバレ批評(レビュー)

「電波の城」(細野不二彦作、小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載)1話から最終話「going home」までネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

天宮詩織はローカルラジオ局のアナウンサーを辞め、キーテレビ局のアナウンサーになるべく上京して来た。
一時栄華を誇りながら今は寂れた鯨岡の芸能プロダクションに所属した彼女は早速、行動に移す。

面接で児島君子を蹴落した丸の内テレビのお天気キャスターを皮切りに、とんとん拍子で出世していく詩織。
本城律子や立花哲人など「電波の城」に住まう怪物相手に一歩も退かない。
さらには、度重なる危機を類稀なる才知と胆力により幾度となく乗り越えた結果、立花の死に伴い番組を引き継ぐまでに。

一方で、記者の谷口ハジメと知り合い、今は病床に臥す父・天宮理一に似た彼に惹かれて行き、遂に関係を持つに至った。

公私ともに順風満帆に思われた詩織。
だが、彼女の出生に纏わる闇は直ぐそこまで迫っていたのである。

実は詩織は「聖レムリア教団」の生き残りであった。
しかも、「聖レムリア教団」の姫・朱雀院ひな子だったのだ。
「聖レムリア教団」はひな子の母である神祇官・朱雀院さおりを中心に内部抗争を繰り広げた末に謎の集団自決を引き起こし壊滅していた。
だが、詩織こと朱雀院ひな子はその直前に脱出していたのである。

母方に引き取られた後、天宮理一のもとで養育された詩織。
実は詩織は理一の実の娘であった。
親娘の名乗りを上げた彼らは2人で暮らし始めるが……。

「聖レムリア教団」には他にも生き残りが居たのだ。
生き残りは「聖レムリア教団」を再建すべく詩織擁立を目論み、これを奪回しようとする。
だが、理一の必死の抵抗に遭い失敗、落命する。
しかし、理一もまたこの際の後遺症で病床に臥すことに。

実は理一は事あるを予期し、実弾入りの拳銃を用意していた。
ところが、これを見つけた詩織により実弾を摩り替えられており肝心な時に役に立たせることが出来なかったのである。
これに責任を感じた詩織は、理一の夢である日本を代表するジャーナリストを目指すようになったのだ。

そして、その夢実現まで迫りつつあったのだが……。
此処に来て、詩織の出生の秘密に辿り着く者が現れた。
谷口ハジメの先輩ジャーナリストの三隅である。
三隅はジャーナリストとして、詩織の過去を出版しようとする。

一方、詩織は理一が自身を守る為に犯した殺人を隠すべく、三隅の排除を決意する。
その手にはあの時、撃てなかった拳銃が握られていた。

密かに三隅との会談の場を設けた詩織。
遂に彼女自身の手で発砲し、三隅を殺害してしまう。

同時に、詩織は遂に自身の看板番組を持つに至る。
詩織は一国一城の主になったのだ。
理一との夢の実現も目前である。

詩織の朗報に喜びつつも、三隅の死に衝撃を受けた谷口。
そんな谷口を自身が三隅殺害犯であるにも関わらず慰める詩織。

しかし、当の詩織にも大きな衝撃が。
理一が死亡してしまったのである。
まるで、娘がキャスターとして電波の城の頂点に上り詰めたのを確認したかのようなタイミングであった。

さらに、詩織を衝撃が襲う。
一度は詩織に敗れたキャスター・角館ちず子が再起。
彼女が受け持った裏番組が詩織の報道番組を脅かし始めたのだ。

この裏には本城律子が居た。
本城は自身が表に出ることなく、角館を影から支援することで本格派のイメージを隠しながら本格的な報道番組を放送することに成功したのだ。
気軽に視聴出来ながら、独自の鋭い切り口を併せ持つ本格的な報道番組。
これは従来の報道番組の域を抜け出られない詩織にとっては未曾有の出来事であった。

さらにさらに、詩織は三隅殺害の証拠を産業廃棄物処分場に不法投棄する現場を、自身がアナウンサー生命を奪い、今は谷口を巡り三角関係にある児島君子にそれと知らず目撃されてしまうことに。
ところが、児島君子はその場で事故に遭い……。

一方で、詩織の裏の顔を知る仁科が窮地に陥ることになった。
奇しくも谷口が追っていた不正献金疑惑に関与していたのである。
追い詰められた仁科は殺人未遂まで引き起こすが、これにも失敗し逃げ出さざるを得なくなった。
仁科は詩織を頼るが、これを救う詩織ではない。

孤独になった仁科は、海外逃亡の手段と引き換えに詩織との仲を取り持つよう、詩織に興味を抱く若頭(12巻登場)に迫られる。
一度はこれに応じたかに見えた仁科であったが……裏で谷口にある手紙を送ると共に、若頭を刺殺するも報復に殺害されてしまう。

その頃、当の詩織は自身の報道番組が持つ根本的な欠陥を角館を通じて本城から教えられることに。
それは自身に甘く、また、伝えることしか出来ないことであった。
これに不満を抱いていた本城は政界に打って出ようとしていた。

これを利用した詩織は本城が持つ立花の秘蔵ビデオを入手することに成功。
それは「聖レムリア教団」壊滅の理由が記録されたもの。
壊滅には、当時の取材班の1人で今は局長となった烏丸ともう1人―――詩織の母と対立し処刑された筈だが実は生きていた神祇官・葛城聖子が関わっていた。

その頃、長らくデスク上にて日の目を見なかった仁科の手紙に、ようやく谷口が気付いた。
中身は詩織の正体が「聖レムリア教団」の姫であることを明かす物であった。

さらに君子が生還し、詩織が三隅殺害の証拠品を遺棄する現場をVTRにしたものと証拠品自体を持ち帰る。
しかも、これに三隅殺害を追っていた捜査本部が辿り着いた。
谷口に好意を抱く君子は彼に詩織を諦めさせるべくこの事実を教えてしまう。

こうして谷口は、詩織の正体と彼女の罪のすべてを知った。
だが、谷口にとって詩織は愛する人であった。
そして、それは詩織にとっても同じこと。

谷口から打ち明けられた詩織。
混乱するままに「殺してくれ」と訴える谷口に愛情を感じた詩織は彼に救いを求める。
谷口は近くキャスター生命を奪われることになるであろう詩織の希望を叶えることを誓う。

詩織は自身の最期の仕事として、数奇な運命の発端となった「聖レムリア」を取り上げようとしていた。
実は「聖レムリア」は緩やかに崩壊の道を進んでいた。
ところが、これを加速させたのものこそが1本のVTRだった。
これに関わりながらも、その崩壊に口を噤み利益を得た者たちをキャスターとして暴こうとする詩織。
対象となるのは立花、烏丸、葛城聖子だが、既に立花はない。
残るは現局長である烏丸と生きていた葛城聖子だ。

しかし、烏丸が健在である限り、彼を脅かす「聖レムリア関連」の報道は出来ない。
其処で、詩織は烏丸の目を盗み、マスタールームを占拠することを思い立つ。
これは谷口にも秘密の行動であった。

限られた時間を共に過ごす詩織と谷口。
そして、遂にXデイがやって来た。

詩織がVTRを摩り替えたことにより、「聖レムリア崩壊の真相」が明らかになった。
当時、立花と烏丸は既に「聖レムリア」に捜査の手が伸びることを察していた。
其処で検挙前にスクープを得ようと、活発に関係者への取材を行っていた。

其処で目を付けたのが神祇官として最高幹部の1人であった葛城聖子。
葛城は朱雀院さおりとの権力闘争に敗れ処刑された筈であったが、教祖のはからいで秘密裏に逃げ延びていた。
葛城聖子は立花と烏丸に「教祖がさおりに恐怖心を抱き、これを疎んじている」と打ち明けた。

立花たちはこともあろうか、この取材ビデオを教祖とさおりに見せたのだ。
さおりは教祖に裏切られていたと激怒し、遂には集団自決を引き起こしてしまう。
これこそが「聖レムリア教団」崩壊の真相であった。
立花と烏丸がスクープを焦ったゆえの行動が集団自決に結び付いたのだ。

烏丸はこの取材テープを報道しなかった。
それどころか、秘密裏に処分していたのだ。
だが、立花は烏丸への切り札としてこのテープを隠し持っていたのである。
こうして、烏丸と葛城聖子の秘密は暴露された。

詩織はこれを報道する為にマスタールームに籠城していた。
手には拳銃が握りしめられている。
鯨岡は詩織の携帯に連絡を入れるが、着信拒否で繋がらない。

何故なら、詩織の携帯はたった1人の為に用意されたものだったから。

事態に気付いた谷口から電話が入った。
彼だけは詩織にとって特別であった。
父の面影を持つ人、そして、詩織のすべてを認めた人。
そんな谷口に、半ば騙し討ちになったことを詫びる詩織。
だが、詩織には既に引き返すとの選択肢は残されていなかった。

三隅や「聖レムリア」のことを知りながら、自分を選んでくれて嬉しかった―――そう伝える詩織。
さらに、詩織は自身の生涯を手記としてまとめてくれるよう谷口に頼み込む。

詩織は谷口の手記の中に生きる。
そして、其処に挟んだ栞こそが詩織そのものなのだ。
この言葉を最後に電話は詩織から切られてしまった。

烏丸の横暴は報じられ、最期の言葉も谷口に伝え終えた。
テレビでは以前に録画しておいたVTRが流れ続けている。
その中で詩織は新たなメディアの在り方について一石投じていた。

これで良い。

こうして、役割を果たした詩織は銃口を自身のこめかみに押し付ける。
そして、勢いよく引鉄が引かれた。
詩織の血は周囲に大輪の花を咲かせることとなった―――。

過去、詩織の母・さおりの遺体は、その凄惨な末路ゆえに生家からも引き取りを拒否された。
そんなさおりを人知れず弔ったのは、理一であった。
だが、周囲の目を憚る必要があってか、その墓標は小さな……墓石とは到底呼べない石ころであった。
詩織を連れた理一はその前で静かに1時間に及び咽び泣いたと言う。

この日からである。
詩織が理一のことを「お父さん」と呼び始めたのは。

そして今、共に「電波の城」に携わった父娘が、並んで天へと歩んで行く―――「電波の城」了。

<感想>

まさにこれ以上は無い最終回でしたね。
これまでの流れから、この帰結以外は考えられない―――そんな結末でした。

本作は詩織と言う女性の一代記であり、出世譚であり、その破滅の物語。
この物語の重要人物にして、遂には語り部となった谷口……切ないですね。

そして……読み終えてみて振り返れば、詩織によるピカレスク作品だったのでしょう。

『電波の城』―――遠方より見れば荘厳にして煌びやかなソレは、いざ近付いてみれば多くの屍の上に成り立つ物でした。
その中で頂点を極めた詩織。
それは栄華を掴んだに他ならない。

登る中では気付かなかったが、掴んでみればそれは彼女にとって無味乾燥な物だったのでしょう。
彼女にとって、本当に必要な物は栄華ではなく安息であった。
聖レムリアの悪夢から逃げ続けた彼女にはそれが最も重要であった。
だからこそ、理一と谷口を求めたのでしょう。
ただ、気付くのが遅過ぎた。
詩織は結局、聖レムリアの悪夢に呑み込まれ儚く命を散らすこととなりました。
とはいえ、その前に過ごした谷口との日々。
また、安息こそを自身が求めていたことに気付けた事実は詩織を救ったのかもしれません。
だからこそ、ジャーナリストの在り方とのテーマから、ラストにて父と娘(ひいては谷口と詩織)の物語に転じた。

多くは語りますまい。
すべては作中で語り尽くされているように思います。
何より、詩織の物語は彼女が愛した谷口を通じて語り継がれるに違いないのです。

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