2013年12月14日

「サイレーン」第30話「正義の真似事A」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「サイレーン」第30話「正義の真似事A」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
里見偲:男性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の猪熊と恋人同士。
猪熊夕貴:女性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の里見と恋人同士。
橘カラ:女性マネージャー急性アルコール中毒死(実は他殺?)の犯人?猪熊に興味を持つ。
渡:猪熊の寮の向かいに住む。カラを家に置くこととなった。
月本:美容整形外科医。カラと乃花を担当した。実は高級売春クラブ「フルムーン」のオーナー。
乃花:カラの元同僚。不倫の恋に生きていたがカラに殺害される。
千歳:生活安全課所属。
レナ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
アイ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
盛元:テレビ局有名アナウンサー。

・前回までのあらすじはこちら。
「サイレーン」第29話「正義の真似事」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

里見たちが月本に迫りつつも、手が出せずに歯噛みしていた頃―――カラは当の月本を拘束していた。
「正義を執行する」そう宣言するカラに恐れ戦く月本。

状況が飲み込めない月本は「何故、こんなことを?」と繰り返す。
過去、月本はカラに少女殺害の現場を目撃されていた。
だが、あの時は見逃してくれたではないか。
だからこそ、カラには売春の斡旋をしなかったのだ。
それが何故!?

暴れる月本だが、その細い腕ではカラには敵わない。
抑えつけられたところで首筋に注射を射たれてしまう。

「な……ぜ……」
最期まで理解出来ずに月本は事切れた。
これを冷ややかに見つめるカラ。
だが、彼女に達成感は無い。

カラは不思議な表情を浮かべる。
あのとき、カラの目の前で通り魔を取り押さえたとき正義を行った猪熊には何処か誇らしげな高揚感があった。
それが何故かカラにはない。
カラは首を傾げるとその場で悩み始めた。

と、その背後で物音が。
慌てて振り返ったカラの目に映ったのは、月本が今晩を楽しむ為に用意した相手の少女であった。

(見られた!!)
慌てたカラは逃げる少女に背中から追い縋ると、揉み合いになりながらもこれを殺害するのであった。

その帰路、カラは正義を執行したにも関わらず猪熊にあった高揚感が自身に訪れ無い理由に首を傾げていた。
さらに、カラは初めての失敗に戸惑っていた。
少なくとも、月本1人で終わる筈だったのだ。
あの少女は明らかに失敗であった。
今のカラにとって、月本宅から奪った自身のカルテも何処か虚しかった。

思い悩みつつ、ふと口元に添えられた手。
其処でカラは違和感にハタと気付く。
ない……歯が無い……。

カラの脳裏に浮かぶのは少女と揉み合った際の光景。
まさか、あのとき……だとすれば、月本宅にあるのか?
カラは歯が証拠品となる可能性に気付き戦慄した―――31話に続く。

<感想>

「週刊モーニング」では『レンアイ漫画家』や『シマシマ』、『はるか17』などで知られる山崎紗也夏先生の新連載です。
『レンアイ漫画家』は設定と展開が面白くて読みました。

そんな「サイレーン」、内容は刑事もの……しかも男女バディもので、「警視庁機動捜査隊(キソウ)」を取り上げた作品となりました。
設定に「キソウ」を採用している点が珍しいですね。
ドラマでも「キソウ」がメインになった作品は「警視庁機動捜査隊216」くらいか。

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その第30話。
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サブタイトルは「正義の真似事A」。
猪熊を真似たカラにより月本は裁かれました。
とは言え、裁いてしまったこと自体が猪熊の模倣の領域を逸脱していますね。
しかも、裁き方は「相手を殺害する」との「毒を以て毒を制する」モノ。
其処に理解が及んでいないところを見ると、カラには猪熊の正義を理解することは不可能なのか……。
此の点、さらに正義を理解するべく猪熊に近付くのか、あるいは更なる正義執行に挑むのかに注目です。

とはいえ、その前に里見たちの手がカラへと届く方が早いような予感も。
それが、カラの歯。
おそらく、次回はカラが回収に動く筈、これに里見たちが先んじることが出来るかどうか。
真の正義の意味が問われそうです。

但し、少なくとも月本については真似事の正義が真の正義に先んじたことは忘れてはならないでしょう。
オリジナルである猪熊たちでは裁けない悪。
これを裁けたのが、模倣であり、裁かれる側と同じく“悪”のカラでしかなかったとは……痛烈な皮肉です。

「世の中の役に立たない正義」と「世の中の役に立つ悪」。
いずれが世の為になるのか……またも猪熊を悩ませることになりそうですが、この点をどう描くのかも注目です。

さて、此処でまとめ。

目標である捜査一課へひた走る猪熊。
そんな猪熊をターゲットとしてロックオンしたカラ。
そんなカラをターゲットとしてロックオンした里見。
追う者と追われる者の構図が明らかになりつつあるようです。

そして、今のカラが整形により手に入れた顔であることが判明。
過去を捨てようとしていたらしいことと併せても、事件の匂い。
やはり、薬局店息子殺人事件に関連ありか。

カラはその名の通り、中身の無い虚ろな「空」。
それゆえに、自身に欠ける物を補おうと求めている。
以前から予測している通り「カラは自身に無い物を持っている対象を特定すると、これに近付き相手を殺害することで、自身に欠けた物を相手から奪う」で正しいようです。

キャバクラの女性マネージャーを殺害し「その垢抜けた佇まい」を奪い、綺麗になった。
タクシー運転手は「自身は選ばれた」と語っていたが「その選ばれた存在であること」を彼を殺害することで奪ったものと思われます。
だとすると、これまでにも同様の犯行を重ねているのが当然。
里見が過去に遭遇した「薬局店息子殺人事件」を皮切りに変貌したものと思われますね。
カラの闇は想像以上に深そうだ。

止められるのは里見と猪熊のカップルのみかも。
これに渡が意外な活躍を示しそうな予感。
果たして、如何なる結末を迎えるのか……31話に期待!!

ちなみに、山崎先生と言えば『七瀬ふたたび』のコミカライズでも知られる方です。

「七瀬ふたたび」(筒井康隆著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

◆関連過去記事
「サイレーン」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)第1話から20話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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