2013年12月31日

『月は囁く』第6話「月と凶相の微笑み」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル1月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第6話「月と凶相の微笑み」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル1月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。

高峰:藤村家の近所の住人。


その日、珍しく早朝から目覚めた陽一は月を探しつつ何気なくベランダを覗き込んで驚いた。
ベランダの手すりの上、其処に片足でバランスを取りつつ月が立っていたのだ。

「うわっ!!」
素っ頓狂な声を上げた陽一。
その声に驚いた月はバランスを崩し、あわや転落しかけることに。

数分後、朝食の席にて月に説教される陽一の姿があった。
月は体内の気を練るべく功夫を積んでいたのだ。
毎朝の日課となっていたのだが、たまたま起床時間と重ならなかったこともあって陽一が知らなかっただけらしい。

ご機嫌を直してもらう為に、2人で出かけることになった陽一と月。
途中で、1人の女性と擦れ違う。
女性は微笑みながら、陽一に挨拶するとそのまま歩き去った。

その女性を目にした月は眉を顰める。
陽一に女性について尋ねる月。

その女性は陽一の近所に住む高峰であった。
陽一によれば、高峰は良妻の鑑のような存在で介護を必要とする夫の面倒を1年程前まで看ていたのだそうだ。
今、高峰の夫は遠方の施設に居るらしい。
さらに、高峰はボランティア精神に溢れ、身寄りが無く病で動けない公園居住者を自宅で介護もしているのだそうだ。

これを聞きながらも、月は高峰の顔に凶相が浮かんでいると主張する。
観相学上、高峰は何か他人には言えないような悪事を働いているらしい。

「まさかぁ〜〜〜」
まったく信じようとしない陽一に月は激しく憤慨。
そんな月の勢いに釣られるように、陽一は月と共に高峰宅を訪問する。

高峰は2人を快く招き入れる。
屋内では、1人の男性が高峰の介護を受けていた。
どうやら、公園居住者の1人のようだ。
長年の野外での生活が負担となり、余命幾許も無いらしい。
高峰はせめて最期の時は看取って上げたいと語る。

実際、高峰はこれまでにも同様に2人の男性を介護していた。
1人目は介護の甲斐なく死亡。身寄りが無かった為に、高峰により葬儀が行われていた。
2人目は身寄りが無いものと思われていたが、調べた結果、親族が見つかり引き取られて行ったのだそうだ。
つまり、これで3人目なのだ。
やはり、彼も身寄りは無いらしい。

これを聞いた陽一は「ほらな?」と月に目で合図を送る。

だが、月の瞳はそんな陽一を取らえていなかった。
彼女の目は高峰家の庭に向いていたのである。
其処には良く手入れされたキンモクセイなどが咲き誇っていた。
「すべて匂いの強い花ばかり……」
月が呟く。

数日後、陽一は高峰が介護していた男性が死亡したことを聞き、何の気なく月に伝えた。
途端、月の表情が険しいものに変わる。

「3人目だからこそ、実行に移す筈……」
何やら思い詰めた様子の月。
陽一は彼女から高峰の秘密を聞かされる。

翌日、高峰の姿は火葬場にあった。
棺桶が今まさに焼却炉へと向かっている。

其処へ、陽一と月が飛び込んで来た。
動揺する高峰の前で、棺桶が開かれる。

「ひっ!!」
それまで困惑しつつも様子を眺めていた葬儀担当者。
ところが、棺桶の中を見て小さく悲鳴を上げる。

中には2つの遺体が入っていたのである。
1体は、先日まで高峰が世話をしていた男性。
もう1体は……ミイラ化していた。

秘密が露見した高峰はその場で泣き崩れる。

後日、月と陽一は改めて事件について振り返っていた。
ミイラ化した遺体、その正体は施設に入ったとされていた高峰の夫であった。
高峰は介護していた夫から暴力を奮われており、追い詰められ遂に手にかけてしまったらしい。
死体の処理に困った高峰は、一旦、夫の遺体を庭に埋めた。
そして匂いを隠す為に、その上にキンモクセイを植えた。
だが、これらはあくまで一時的な処理である。
最終的にはどうにかしなければならない。

其処で高峰が考えたのが他の遺体に紛れさせ荼毘に伏すことであった。

その隠れ蓑として用意されたのが、3人の男性である。
1人目の死により、実際の荼毘の手続きを確認した。
こうして2人目で、目的を達成する筈だったのだが……。

2人目は親族が見つかり、逃げられてしまった。
其処で3人目が必要となったのである。

月と陽一があの場に現れなければ、事件は高峰の狙い通り表面化していないところであった。

陽一によれば、高峰も罪の意識に悩んでいたらしく露見して良かったと洩らしているらしい。
今は晴れやかな表情を浮かべているのだそうだ。

これを聞いた月は観相学が科学的に評価され信頼するに足る物であると再度、主張する。
表情には意識して動かせない筋肉があり、後ろめたい想いや悩みを抱えているとこの筋肉が痙攣するのだそうである。
高峰も笑顔を浮かべていたが、この筋肉ばかりはコントロール出来なかったのである。

実際にその正しさを目にしているだけに、陽一は月の言葉を認めざるを得ないのであった。
さらに、高峰同様に自分も嘘が見抜かれるのではないかと不安がる陽一。

月はそんな陽一を見詰めながらニッコリと微笑む。
陽一の笑みは心底からの笑み、裏表のないものだからこそ嘘も何もない。
だからこそ、純粋に信用出来るのだ。
陽一には告げ無いものの、そう思う月であった―――7話に続く。

<感想>

先頃完結した「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。

まさに陽一(太陽)と月(月)の物語です。

では、6話を読んだ感想を。

今回はまさにシリーズの理想形的な回だったのではないでしょうか。
月というキャラクターの持ち味を活かしつつ、観相学も効果的に用いられていました。
ラストの陽一との絆や信頼関係の表現の仕方もベストでした。
伏線の張り方、展開のペースも良かったですね。

個人的には1話から6話の間では、この6話がもっとも完成度が高いと思います。
今後もこの調子で進んで欲しい!!
次回、7話にも期待!!

ちなみに、ルナは父親に対しトラウマがある様子。
その天才的な力により、父に虐待されていたのかな。
結局、父と母はこれが原因で離婚。
そして、母が陽一の父と再婚といった流れか。

ルナとしては離婚の原因が自身にあると考えて、以来、人と距離を置くようになったか。
ところが、無邪気な陽一に癒されていく展開か。
イイですね。
最終的にはルナがトラウマとなった父と和解する(乗り越える)展開もありそうかな。

興味を抱かれた方は是非、『ビッグコミックオリジナル 増刊号』にて本作を確認されたし。

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