2013年12月28日

「サイレーン」第31話「見つからない。」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「サイレーン」第31話「見つからない。」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
里見偲:男性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の猪熊と恋人同士。
猪熊夕貴:女性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の里見と恋人同士。
橘カラ:女性マネージャー急性アルコール中毒死(実は他殺?)の犯人?猪熊に興味を持つ。
渡:猪熊の寮の向かいに住む。カラを家に置くこととなった。
月本:美容整形外科医。実は高級売春クラブ「フルムーン」のオーナー。カラに正義執行される。
乃花:カラの元同僚。不倫の恋に生きていたがカラに殺害される。
千歳:生活安全課所属。
レナ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
アイ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
盛元:テレビ局有名アナウンサー。

・前回までのあらすじはこちら。
「サイレーン」第30話「正義の真似事A」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

月本を殺害し、その現場を目撃した少女をも手にかけたカラ。
だが、少女を取り押さえる際に抵抗され、前歯が欠けてしまっていた。

月本宅からの逃亡途中にその事実に気付いたカラは、慌てて現場に立ち返る。
現場の何処かに落ちているであろう歯の欠片を回収する為だ。
だが、どれだけ周囲を見回してみてもソレらしいものは見つからない……。

数時間後、月本宅を別の少女が訪れた。
少女は月本たちの遺体を発見、通報することとなった。

こうして事件が表面化した。
現場を訪れた里見と猪熊は惨状に目を背ける。

里見の活躍こそ伏せられているが、生活安全課が月本を追っていた事実も伝えられ、「追い詰められた月本がお気に入りの少女を道連れに自殺を図ったもの」と結論づけられることに。

これに里見は違和感を抱く。
里見は月本の人柄を知っていた。
あんな人物があっさりと命を絶つだろうか……。
里見は月本が乃花の担当医だったことを報告し、事件の再捜査を求める。

さらに、里見は次々と奇妙な点に気付く。
まずは、カラのカルテ。
月本が担当した患者のカルテからは、それが発見されなかったのである。

そして、現場階段付近の窓枠に奇妙な白い塊を発見、証拠品の1つとして回収する。
実は、これこそがカラが必死に探しながらも遂に見出し得なかった歯の欠片だったのだが……。

一方、カラは歯科医院を後にしていた。
結局、回収し切れなかった歯の欠片。
其処でカラは歯科で自身の歯を補修したのだ。
加えて、既に月本と自身を繋ぐカルテは焼却済みである。

これで、自分に辿り着くことは出来ない。
そう心中にて嘯くカラ。

カラは今回のことであることを学習していた。
自分には猪熊の正義を体得することは出来ない、と。

ならば、もう用はない。
カラは当初の計画通り猪熊を殺害することを決断するのであった―――32話に続く。

<感想>

「週刊モーニング」では『レンアイ漫画家』や『シマシマ』、『はるか17』などで知られる山崎紗也夏先生の新連載です。
『レンアイ漫画家』は設定と展開が面白くて読みました。

そんな「サイレーン」、内容は刑事もの……しかも男女バディもので、「警視庁機動捜査隊(キソウ)」を取り上げた作品となりました。
設定に「キソウ」を採用している点が珍しいですね。
ドラマでも「キソウ」がメインになった作品は「警視庁機動捜査隊216」くらいか。

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その第31話。
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サブタイトルは「見つからない。」。
カラにとっては「欠けた歯」が。
里見にとっては「カラのカルテ」が。
猪熊にとっては「犯人」が。
それぞれ見つかりませんでした。

そんな中、遂にカラによる猪熊殺害が決断されました。
猪熊ピンチ!!

一方、カルテこそ手に入れられなかったものの、当のカラも致命的な証拠となる歯の欠片を里見に握られることに。
とはいえ、神ならざる身の里見はその重大性に気付けていない。
この歯は月本殺害にカラが関与した決定的な証拠。
それだけに切り札的な扱いとなる筈。
だとすれば、物語で効果を発揮した際にはカラが消える時になる以上、用いられることは暫くの間ないと思われます。
結果、当分の間、読者は「志村、うしろうしろ」的にヤキモキすることになりそうです。

そして、カラが正義を体得出来ないと自身で悟ってしまった以上、「悪が悪なりの方法で行った正義は果たして正義か」などといったテーマについては触れられ無さそうな感じ。
直近は「カラ対猪熊」がメインになりそうです。
カラの殺意を知らない猪熊は、その刃から逃れることが出来るのか。
そして、里見は猪熊を助けることが出来るのか。

さて、此処でまとめ。

目標である捜査一課へひた走る猪熊。
そんな猪熊をターゲットとしてロックオンしたカラ。
そんなカラをターゲットとしてロックオンした里見。
追う者と追われる者の構図が明らかになりつつあるようです。

そして、今のカラが整形により手に入れた顔であることが判明。
過去を捨てようとしていたらしいことと併せても、事件の匂い。
やはり、薬局店息子殺人事件に関連ありか。

カラはその名の通り、中身の無い虚ろな「空」。
それゆえに、自身に欠ける物を補おうと求めている。
以前から予測している通り「カラは自身に無い物を持っている対象を特定すると、これに近付き相手を殺害することで、自身に欠けた物を相手から奪う」で正しいようです。

キャバクラの女性マネージャーを殺害し「その垢抜けた佇まい」を奪い、綺麗になった。
タクシー運転手は「自身は選ばれた」と語っていたが「その選ばれた存在であること」を彼を殺害することで奪ったものと思われます。
だとすると、これまでにも同様の犯行を重ねているのが当然。
里見が過去に遭遇した「薬局店息子殺人事件」を皮切りに変貌したものと思われますね。
カラの闇は想像以上に深そうだ。

止められるのは里見と猪熊のカップルのみかも。
これに渡が意外な活躍を示しそうな予感。
果たして、如何なる結末を迎えるのか……32話に期待!!

ちなみに、山崎先生と言えば『七瀬ふたたび』のコミカライズでも知られる方です。

「七瀬ふたたび」(筒井康隆著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

◆関連過去記事
「サイレーン」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)第1話から第30話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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