ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
ベストセラー作家がみたび集結!!
年末恒例のミステリー別冊も第3弾となりました。
1冊で短編集2冊分のおもしろさは今年も保証します!
東野圭吾 湊かなえ 今野敏 誉田哲也 東川篤哉 笹本稜平 若竹七海 石持浅海 小杉健治 長岡弘樹 深水黎一郎 深町秋生 大山誠一郎 長沢樹 川崎草志
(光文社公式HPより)
<感想>
2011年の年末から続く『宝石 ザ ミステリー』が今年も発売されました。
この『宝石 ザ ミステリー』では、2011年『アンダーカヴァー』、2012年『インデックス』と、毎年、姫川玲子シリーズの短編が掲載。
そんな今年の短編は『お裾分け』。
タイトルの由来は、作中で「脇沢がある人物のもとへ向かった際の言い訳にお裾分けが用いられたこと」と、「ラストでの玲子の台詞」だと思われます。
そして、何よりも本作で気になるのは姫川玲子最新の状況。
前作『インデックス』にて、今泉より復帰を示唆されていましたが……これが読者の気になるところですが。
なんと、ついに本部への復帰を果たしました!!
それに伴い和田が定年退職を迎えたことなども明かされています。
もちろん、今泉も登場、さらには井岡も登場したり……と、ファン必読の内容。
さらに小幡など気になるキャラも登場し、シリーズ以降からも目が離せない。
読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
管理官となった今泉の尽力により、玲子は本部に復帰することとなった。
しかし、今の玲子にとってそれは嬉しくもあり、大きなプレッシャーでもあった。
何故ならこの異動、僥倖に僥倖を重ねたモノだったからである。
異動にあたり必要となる条件は簡単に3つ。
1つ目は本部から玲子を曳いてくれる人物の存在。
これは今泉が当たる。
2つ目は異動に相応しい実績。
「ブルーマーダー事件」や「インデックス事件」を解決したことにより、これも条件を満たしていた。
そして、3つ目。
玲子自身が階級を上げる必要があった。
本部への異動はこの3つを満たして初めて可能なモノだったのだ。
階級を上げるには昇任試験に合格しなければならない。
ところが、既に今泉から本部異動の打診を受けていた玲子は油断していた。
結果、試験を受けたのだがまさかの筆記で落第。
あわや、異動の話自体が流れかけたのである。
これを覆すべく奔走したのが今泉であった。
そのハンデがあってなお、実現した人事である。
如何に特別な人事であったかが分かるだろう。
今泉によれば「インビジブルレイン事件」により地方に異動となり其処で定年を迎えた和田の働きかけがあったからこそ実現したことだそうである。
今泉の推測となるが、実現させる為に和田が何らかの取引に応じたとしか思えないそうだ。
彼らの犠牲を経て、得られた本部異動。
多くの人々に愛され、実現したことを知った玲子は「その期待に応えなければならない」と襟を正す他ない気分である。
そんな玲子が本部で配属されたのは、これまた資料課から異動してきた林のもとである。
林は玲子のことを理解しており、温和な人柄。
まさに、玲子にとって現在考え得る最高の上司であった。
これもどうやら、玲子が復帰早々に立場を失わないようにとの今泉の配慮のようだ。
林のもとで仲間の紹介を受ける玲子。
仲間は3人、ベテランが居並ぶ中で若手の小幡に玲子は目を留める。
3人が3人共に曲者揃いの中、特に小幡は玲子に対し反発を抱いている様子だが……。
新体制で挑む初仕事は「地主殺人事件」。
被害者は大地主の山地であった。
早速、捜査に張り切る玲子だが隣に居るのは何故か見知った顔。
そう、井岡である。
事件発生現場が井岡の所轄の隣だったということで応援としてやって来たらしい。
玲子は人事が井岡に弱味でも握られているのでは……と頭を抱える。
玲子と井岡は、山地から土地を借りている人物―――すなわち借地人を調べることに。
借地人の1人で古くから山地に土地を借り、アパートを経営している脇沢を訪問した玲子。
脇沢は高齢の女性で「最近の店子には恩義も何もない」と、礼も無く退去したチアゴなる人物を批難する。
だが、その表情は何処か落ち着きがない。
脇沢は明らかに何かを隠している様子だが……。
不動産屋を調べた玲子は、山地と借地人との間でトラブルが絶えなかったことを突き止める。
山地は地主として、地主に比べ借地人の立場が弱いことを利用しかなり稼いでいたらしい。
例えば、借地人から地代の受取を拒否することで、借地人として義務を果たしていないと主張し、その権利を剥奪する。
これにより、何時でも立ち退かせることが出来るのだ。
あるいは、契約更新時にゴネることで地代を上げたりすることもあったらしい。
これを拒否すれば、借地人は借地権を山地に買い叩かれるしか無くなるのである。
どうやら、山地は相当の悪徳地主のようだ。
しかも、山地と脇沢との間にも同様のトラブルがあったことが判明。
不動産屋に確認したところ、脇沢のアパートの店子の数が合わないことも分かる。
何故か、小幡たちを呼び寄せた玲子。
玲子は彼らと共に、脇沢を監視する。
すると、奇妙なことに。
脇沢が店子の居ない筈の部屋に食事を届けるではないか!!
この機を狙っていた玲子は脇沢を呼び止めると、向かおうとしていた部屋を小幡たちと取り囲む。
脇沢は誰かを匿っていたのである。
そして、その匿っていた人物こそ、礼も無く去って行ったとされていたチアゴを名乗る外国人であった。
「チャゴちゃん、逃げて〜〜〜」
叫ぶ脇沢だが、チアゴは逃げない。
「オバアチャン、オイテイケナイ」と逮捕される道を選ぶ。
チアゴは店子として脇沢に親切にされており、これを苦しめる山地が許せなかったらしい。
だからこそ、手を下したのだそうだ。
チアゴはその場で緊急逮捕されることに。
こうして、本部復帰後初の事件は無事解決。
手柄は玲子と小幡たちで半分ずつとなった。
何故、手柄を独占しなかったのか問う小幡に玲子は答える。
「異動の挨拶。つまり、お裾分けよ」と―――エンド。
◆「誉田哲也」先生関連過去記事
【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ1作目「ストロベリーナイト」はこちら。
「ストロベリーナイト」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
「シンメトリー」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
「インビジブルレイン」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズスピンオフ作品「感染遊戯」です。
「感染遊戯」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『アンダーカヴァー(「宝石 ザ ミステリー」掲載)』(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『女の敵』(誉田哲也著、宝島社刊『誉田哲也 All Works』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ブルーマーダー』(誉田哲也著、光文社刊『小説宝石』連載)まとめ
・『インデックス』(誉田哲也著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー2』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【ジウシリーズ】
・『ジウ 1〜3』(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『三十九番』(誉田哲也著、双葉社刊『痛み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ドルチェ』(誉田哲也著、新潮社刊)ネタバレ書評
【ドラマ版】
・土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」(フジテレビ系、2012年)まとめ
・土曜プレミアム「ストロベリーナイト〜アフター・ザ・インビジブルレイン〜女子高生転落死から始まる官僚連続殺人!!携帯に残された暗号、顔無き真犯人?絡まる5つの謎と共に解ける真実とは!?本日公開の映画と連動する衝撃のミステリー(アンダーカヴァー、東京、サイレントマーダー/沈黙怨嗟、左だけ見た場合、プロバブリィギルティ/推定有罪)」(2013年1月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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【コミカライズ】
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