ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
『マスカレード・ホテル』スピンオフ!
山岸尚美が勤務するホテル・コルテシア東京。
そこに招かれざる客がやって来た……。
(集英社公式HPより)
<感想>
『ルーキー登場』に続く『マスカレード・ホテル』シリーズのスピンオフ第2弾。
『ルーキー登場』では新田が主役でしたが、今回は彼と並ぶもう1人の主人公・山岸尚美の活躍を描く。
・『マスカレード・ホテル』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ルーキー登場』(東野圭吾著、集英社刊『小説すばる 2013年7月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
スピンオフと言えば「本編に登場した主役以外のキャラを主役に据えた別作品」をイメージしていた管理人。
え、待って……スピンオフ?
ということは『マスカレード・ホテル』の主人公は尚美じゃなかったの?
との声が上がりそうですが、ご安心を。
調べてみたところ、「スピンオフ」とは「派生作品全般を指すもの」とのことで、外伝や番外編なども広い意味での派生作品だそうで、その点では尚美が本編の主人公の1人だとしても「スピンオフ」と解してOKかと一安心。
そんな『仮面と覆面』。
「人気作家タチバナサクラの正体は玉村薫」である―――これは事実。
だが、この事実が作中にて如何に巧妙に形作られているかがポイントか。
さらに、『仮面と覆面』の意味が分かる終盤のサプライズは良かったですね。
玉村薫の仮面とタチバナサクラの覆面。
これにホテルとの舞台が絡んだときに生まれるストーリー。
ファン必読の作品と言えるでしょう。
<ネタバレあらすじ>
山岸尚美:ホテル・コルテシア東京に勤務する主人公。
タチバナサクラ:覆面作家。プロフィール上は27歳女性とされているが……。
玉村薫:タチバナサクラの正体。
望月:タチバナサクラ担当編集者。
今村:望月と同じ編集社に勤める男性。
目黒:???
犬飼:???
山岸尚美が勤務するホテル・コルテシア東京に奇妙なグループが現れた。
グループのリーダー格とみられる目黒と犬飼は自身らを「禁煙を目指す会」の者だと名乗る。
だが、どうにも様子がおかしい。
その理由はすぐに判明した。
目黒と犬飼の目的は禁煙では無く、ホテル・コルテシア東京に滞在する人気作家・タチバナサクラに一目逢う為だったのだ。
タチバナサクラは覆面作家、プロフィール上は27歳の女性とされており、その正体を探ろうとしているようだ。
もちろん、ホテルの従業員である尚美はその正体を知っている。
担当編集者の望月によれば、タチバナサクラの正体は玉村薫なる中年男性。
だからこそ、正体を知られるワケにはいかないのだと言う。
だが、尚美は玉村に不信感を抱いていた。
玉村は原稿を上げるべく部屋でカンヅメになっている筈なのに、日中に堂々と外出していたのだ。
さらに、玉村の不在中に部屋に電話があった際も誰か女性が応対していた気配があった。
どうにも怪しい……。
とはいえ、尚美には宿泊客のプライバシーを守る義務がある。
目黒や犬飼たちの挙動にも注意を払っていたのだが……。
目黒たちのタチバナサクラへの行動は激しさを増すばかり。
遂には、盗聴器騒動まで引き起こす。
流石に他の宿泊客にまで被害が及びかねない。
強硬手段も止む無しと思われたが……。
そんな中、望月の後輩編集者を名乗る今村が来訪。
タチバナサクラへの取り次ぎを願う。
確認するべく部屋へ電話を入れる尚美だが、隙を突かれて今村に受話器を奪われてしまう。
今村は自身がファンの1人であることを告白。
タチバナサクラの声を録音した上に「想像通りの美しい声の人で良かった」と述べると逃げるようにその場を去るのであった。
尚美には大きな疑問が残された。
宿泊客は玉村の筈だ。
何故、今村の想像通りの女性が電話に出たのか?
この答えは1つしかない。
尚美は従業員として秘密は守るから教えて欲しいと玉村に迫る。
そして明かされた玉村の秘密。
それは玉村以外にもう1人……しかも、女性が同じ部屋に宿泊しているとの事実であった。
玉村はその女性を尚美に紹介する。
彼女の名こそ薫。
玉村の娘であり、現役の受験生。
そして、タチバナサクラの正体であった。
実は薫は玉村にも内緒で新人賞に応募し受賞した。
玉村は薫が学生であり学業が本分であることから、この受賞は薫の将来の為にならないと考えた。
なんとか、受賞を取り止めに出来ないか……玉村は考えた。
そして、あることに目を付けた。
薫は応募時のプロフィールで女性であると明かしていた。
そこで、玉村は自分がタチバナサクラを名乗ることにしたのだ。
経歴詐称で受賞取消になることを狙ったのである。
だが、望月はタチバナサクラに惚れ込んでいた。
其処で玉村を覆面作家・タチバナサクラとしてデビューさせたのだ。
そして、タチバナサクラはヒットメーカーとなった。
その作品はすべて薫の手によるものだそうだ。
玉村自身は別に本業を抱えており、日中によく出かけていたのもその為であった。
今回、カンヅメに至ったのも薫が試験期間中の為に締切をオーバーしてしまったからであった。
つまり、タチバナサクラは本当に女性なのだ。
だが、これを知らない望月が覆面作家に仕立てあげてしまったのである。
玉村親娘によれば、薫が卒業する頃には真実を打ち明ける予定なのだそうだ。
これを聞いた尚美は玉村親娘の為に協力を約束する。
それから数分後、望月から尚美に連絡が入った。
目黒たちに情報を流していた内通者が判明したのだそうだ。
内通者は今村。
どうやら、今村はアルバイトとして編集部に潜り込んでいたらしい。
既に退職処分にしたが気を付けて欲しいとの連絡であった。
尚美は思う。
今村は薫の声を録音していた。
此のことを望月が知ったらどう考えるのだろうか、と。
そして、数年後に薫が仮面を脱いだ時、望月は自身が作り出した筈の覆面作家の正体に驚かされるのだろう―――エンド。
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