<あらすじ>
保護司・笹本邦明(橋爪功)は身元引受人の工務店社長・太地喜三郎(丸岡奨詞)と17年の刑期を経て仮出所となった名本登(萩原聖人)を迎えに行く。
名本は車には乗らず電車で移動したいと話し、笹本が道中に付き合うことにする。
数週間後、刑事の石出誠(田中哲司)が笹本を訪ねてくる。ある旅館で宿泊中の女性・真柄きよ子(奥山佳恵)が死んでいた件で、きよ子の死亡は自殺に見せかけた他殺事件の可能性があり、容疑者として名本があがっているのだという。出所した際の名本の様子から、事件を起こすとは信じがたい笹本が事実確認に向かうと、名本はきよ子と会っていたことは認めたものの、死亡したことは知らなかった。きよ子と名本は同郷の幼なじみで、刑務所の中にいるときも手紙のやりとりをしていた仲だった。
出所後に一度だけきよ子が訪ねてきて一緒に旅館に入ったが、名本は泊まらずに帰り、その時はまだきよ子は元気だったという。名本の証言を信じた笹本は疑いを晴らそうと試みるが、石出は前科がある名本が犯人と決め付けるような取り調べを行う。
そんな中、名本を訪ねて元警察官の高梨岩太郎(嶋田久作)という男が訪ねてくる。高梨はさらに笹本の家まで訪ねてきて、17年前の事件以前の名本ときよ子にまつわる過去を語りはじめる。
一方笹本の計らいで、名本は箱根の人里離れた場所の家具職人・上島作太郎(品川徹)のもとで働くことに。ところがしばらくして、その近くのモーテル裏の雑木林で若い女性の首つり死体が見つかって…。
(水曜ミステリー9公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
保護司・笹本邦明はベテラン保護司である。
これまでも多くの人を迎え、これを支えるとその社会復帰に全力を尽くしてきた。
そんな笹本が今回担当したのは17年の刑期を経て仮出所となった名本登。
工務店社長・太地喜三郎に身元引受人になって貰い迎えに行くことに。
だが、名本は17年ぶりの外界に感じるところがあったのか「車には乗らず電車で移動したい」と要望。
笹本はこれを認め、道中に付き合うことにした。
笹本が見たところ、名本は真摯に罪を反省しやり直すことに前向きであった。
彼ならば大丈夫と笹本は思った。
数週間後、石出誠刑事が笹本を訪ねて来た。
石出刑事によれば、名本に殺害容疑がかかっていると言う。
ある旅館で宿泊中の女性・真柄きよ子が何者かに殺害されたのだ。
この殺害容疑が名本にかかっていたのである。
笹本は大変驚くと、確認の為に名本のもとを訪れる。
名本はきよ子と会っていたことは認めたものの、殺害は否定。
きよ子と名本は同郷の幼馴染。
ずっと、手紙のやりとりをしていた仲だそうだ。
名本を信じる笹本だが、石出は信じようとしない。
石出の捜査活動の余波から、名本が疑われていることが周囲に知られて行った……。
逆風が名本を襲った。
周囲の目が名本に冷たくなった。
笹本を除き、皆が皆、名本によそよそしくなった。
それは身元引受人である筈の太地ですら同様であった。
名本は今更ながらに世間の風の冷たさを知った。
名本ときよ子の関係を知る高梨岩太郎元刑事が笹本のもとを訪れた。
高梨は名本ときよ子の過去を知っていた……。
窮地に追いやられて行く名本を慮った笹本は周囲から名本を守るべく、人里離れた場所で保護して貰おうと考えた。
其処で、知り合いで箱根に住む家具職人・上島作太郎に名本を託した。
名本は息を吹き返すかに思えた。
ところがしばらくして、名本の仕事場近くで若い女性の首吊り死体が発見される。
被害者の名は木島うた子。
きよ子同様の殺害方法がとられていたことから、同一犯の犯行と思われた。
結果、またも名本に容疑が向かう。
名本は此処でも先と同じ冷遇を受ける。
上島の妻・もと枝からも「犯人だと暴露されたくなければ私に従いなさい」と脅迫される日々。
遂に名本は上島のもとを逃げ出してしまう。
しかし、上島はそんな名本を引き止めようとしなかった。
笹本は名本を心配し、これを探すが何処に消えたのか名本は見つからない。
矢先、遠見仙太郎なる男性がきよ子とうた子の殺害容疑で逮捕された。
どうやら、彼こそが真犯人だったようである。
これで名本の容疑が晴れたとほっとする笹本だが……。
その夜、笹本は高梨を呼び出し「きよ子を守るとの美名で行われた彼のストーカー行為こそがきよ子を故郷から追い出し、遠見に命を奪われる原因となった」となじる。
無言でその場を去る高梨。
1人酒に溺れた名本は苛立ち、傷害事件を起こして収監されてしまう。
名本は傷害の現行犯で服役することとなった。
今回の周囲の行動が名本を追い詰めたのだと考えていた笹本。
名本を助けたい笹本は彼に会いに行く。
だが、名本はそんな笹本に背を向けた。
名本は、遠見にも今回同様の前科があったと知るや「奴も一緒だ」と口にする。
「こちらの水では腹を下しました。でも、あちらの水では17年間、一度も腹を下したことがないんです」
名本は薄く笑う。
いつからか、名本と笹本の間には見えない壁が出来ていた。
「あちらに戻ります」と語る名本。
「また、力になるから」と告げる笹本。
だが、名本は無言で首を横に振る。
名本の目は何か諦めたような、それでいて何処か故郷を懐かしむものに見えた。
ほっと肩の荷を下ろしたかのような……。
笹本は一瞬、無力感に囚われかけて慌ててそれを振り払った。
名本は壁の向こうに消えて行った。
笹本は今も必死に保護司の活動を続けている。
彼が信じる人の為に―――エンド。
<感想>
「保護司・笹本邦明の奔走」シリーズの第1弾。
原作は水上勉先生『その橋まで』(中央公論社、新潮社刊)。
では、ドラマの感想をば。
最初に注意を!!
実は22時20分近くまでは移動しながら飛び飛びの視聴となっています。
ですので、上記のネタバレあらすじは飛び飛びの内容と22時20分以降の内容を総合的に判断し管理人が仕上げたネタバレあらすじとなっています。
実際の内容と異なる恐れがあるので注意。
ただし、22時20分以降の展開については間違っていません。
当然、結論も同様です。
敢えて言えば、此処から先の感想は22時20分以降の本ドラマを視た管理人なりの理解に基づく感想とお考え頂ければ幸いです。
とはいえ、重厚なドラマだっただけに最初からきちんと視たかった……。
では、改めて感想を。
名本は異邦人でした。
いや、周囲の先入観が彼を異邦人に仕立てたのか。
17年を塀の中で過ごした名本。
その間、きよ子が彼の心の支えであった。
きよ子こそが彼にとっての外界であった。
外界は名本にとって憧れであった。
その憧れの世界に戻った名本。
だが、きよ子は奪われ、その世界も安息の地ではないことを知った。
むしろ、彼にとって外界は異郷の地であった。
彼は心の支えのすべてを失った。
そして、慣れ親しんだ彼の地へと戻ることになったのでしょう。
切ないです……。
笹本個人の努力では限界があるものなぁ……。
異邦人となってしまった名本、彼が再び異郷へと赴く時、其処が故郷となるよう彼を支えられる人間は居るのでしょうか。
居るとすれば、それは彼に否定されたものの笹本しかあり得ないような気がします。
<キャスト>
笹本邦明:橋爪功
名本登:萩原聖人
笹本千鳥:藤田朋子
石出誠:田中哲司
高梨岩太郎:嶋田久作
上島作太郎:品川徹
上島もと枝:川上麻衣子
真柄きよ子:奥山佳恵
鰺村輝三:浜田学
太地喜三郎:丸岡奨詞
井上:山中崇 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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