2014年02月01日

『七人の犯罪者』(星新一著、新潮社刊『かぼちゃの馬車』収録)

『七人の犯罪者』(星新一著、新潮社刊『かぼちゃの馬車』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

【現代社会に隠されたからくりをユーモアと鋭い風刺で描いた28編】冴えない女の運命を変えた、1通のダイレクト・メール――。

地方から都会に出てきて、ひとりで暮している若い女のもとに届いたダイレクト・メールの内容は? だれもが見すごしてしまいそうな、目立たない家に住んでいる夫婦者の正体は? 熱帯の小さな国の独裁者に捕えられた男の運命は? めまぐるしく移り変る現代社会の裏の裏のからくりを、寓話の世界に仮託して、鋭い風刺と溢れるユーモアで描くショートショート28編。
(新潮社公式HPより)


<感想>

星新一熱が再燃している管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。

本作『七人の犯罪者』は新潮社刊『かぼちゃの馬車』収録の一篇。
短編です。

斬新な設定に意外な結末。

犯罪が増えたとされるあの世界。
犯罪が増えた為にあのルールが適用されたのか、あるいはルールが適用された為にエヌ氏同様の考えを持つ者が増えて犯罪も増えたのか。

卵が先か、鶏が先か。
さて、どちらが答えとなるのでしょうか?
いずれにしろ、あの方法では犯罪抑止に対しての実効性は低そうです。

<ネタバレあらすじ>

その夜、エヌ氏はとある屋敷への窃盗計画を実行に移していた。
エヌ氏の後ろにはこの日の為に集めたスペシャリスト4人が居る。
金庫開けのプロなど、それぞれがエヌ氏がこれはと見込んだ人物だ。

エヌ氏は彼らに自身が先行して屋敷に侵入し、警報装置を解除するので計画通りに行動するよう言い含めた。
4人はこれい頷く。
彼らが計画通りに動けばエヌ氏の計画は成功間違いなしである。
エヌ氏は小躍りするほど喜んだ。

勇躍、1人で先を行くエヌ氏。
しかし、その喜びの反面、どこか複雑な気持ちも残っていた。
何故なら、これから窃盗に挑むのはエヌ氏の自宅なのである。

話は1年半ほど前に遡る。
ある晩、エヌ氏はバーで見知らぬ男に声をかけられた。
男はエヌ氏に「良いバイトがあるのだが……」と勧めて来た。
男によれば自分が忙しいので代わりに知人宅に届け物をして欲しいとのこと。
報酬の金額も手伝って、エヌ氏は一も二も無くこれに応じてしまった。

そして、指定された住所のポストに届けたところを張り込んでいた警察に逮捕されたのだ。
聞けば、届け物の中身は薬物だと言う。
事情を説明するエヌ氏だが、誰もそれを信用してくれない。
結局、エヌ氏は懲役7年の実刑判決を受けた。

ところが、その判決直後にエヌ氏は裁判官に呼び出されたのだ。
裁判官はエヌ氏にある取引を持ちかけた。
それは7人の犯罪者をエヌ氏が通報或いは捕まえることで、永遠に刑の執行を停止するとのもの。
猶予は2年間与えられる。
その間に7人のノルマを達成すればエヌ氏の罪は見逃されるのだ。

なんでも、最近は受刑者が増加し過ぎた為に収容施設が破綻をきたしつつあるらしい。
とはいえ、治安維持にも金がかかる。
其処でこの取引が持ちかけられるようになったのだそうだ。
もちろん、逃亡防止用の機械が体に埋め込まれるのは免れえない。
エヌ氏はまたも一も二も無くこれに応じることに。

エヌ氏には指名手配犯のカタログが渡された。
もちろん、カタログに載っていない現行犯でも良いらしい。
さらに、カタログには参考として統計まで添付されていた。

エヌ氏はこれを一読し、あることに気付いた。
どうやら、都会より地方の方が検挙率が高いようだ。
おそらく人の数が少ないから見つけやすいのだろう。

こうして、エヌ氏は地方へ旅に出た。
しかし、素人であるエヌ氏にすぐに見つけられる筈もない。

それでもエヌ氏は自身の自由がかかっている。
必死にカタログ掲載の顔写真を覚え、探し続けた。

その甲斐あってか最初の1年間に2人を捕まえることが出来た。
1人は鄙びた旅館に、もう1人は整形まで施していたが耳の形で気が付いたのだ。
残るは5人。

慣れればなんとかなるかと考えていたエヌ氏だがそのペースは一向に上がらなかった。
さらに半年が経過した頃、ようやくもう1人、轢き逃げの現行犯を捕まえることに成功した。

今では、エヌ氏の注意力は尋常ではないレベルにまで達している。
だが、このペースではノルマが達成出来ないことも明らかであった。

エヌ氏は悩んだ。
そして、気が付いた。

要は誰かに犯罪を行わせて、それを通報するなり捕まえれば良いのだ。

エヌ氏のノルマは残り4人。
其処でエヌ氏はそれまでに培ってきた注意力で「これは」と思われる冒頭の仲間4人を見つけ出したのである。

エヌ氏はノルマから解放される喜びに打ち震えつつ、自宅へと入って行った。
そして「自宅に不審な人物4人が侵入しようとしている」と通報した。
これで4人が捕まれば、エヌ氏の手柄である。

ところが、此処で予期せぬことが起きた。
4人は霞の如く消えていたのである。
しかも、通報者もまたエヌ氏を含め5人居たのだそうだ。

エヌ氏は気付いた。
彼らもまたエヌ氏と同様の立場の人間であったことに。
5人全員が他の4人を陥れ、ノルマにしようと企んでいたのだ。

そして、エヌ氏はさらに愕然とした。
もしかして……最初にエヌ氏が逮捕されることとなった薬物配達事件。
あれさえも、別の誰かがノルマの為に行ったのではなかったか?

エヌ氏は考えた。
次はあれのようにもっと上手くやらなければ、と―――エンド。

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【その他】
世田谷文学館にて「星新一展」開催中!!

『七人の犯罪者』が収録された「かぼちゃの馬車 (新潮文庫)」です!!
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