2014年02月12日

『華やかな三つの願い』(星新一著、新潮社刊『午後の恐竜』収録)

『華やかな三つの願い』(星新一著、新潮社刊『午後の恐竜』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

現代社会に突然出現した巨大な恐竜の群れ。蜃気楼か? 集団幻覚か? それとも立体テレビの放映でも始まったのか?──地球の運命をシニカルに描く表題作。ティーチング・マシンになった教育ママ、体中に極彩色の模様ができた前衛芸術家、核爆弾になった大臣――偏執と狂気の世界をユーモラスに描く『狂的体質』。ほかに、『戦う人』『契約時代』『理想的販売法』『幸運のベル』など全11編。
(新潮社公式HPより)


<感想>

星新一熱が再燃している管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。

本作『華やかな三つの願い』は新潮社刊『午後の恐竜』収録の一篇。
短編です。

「禍福は糾える縄の如し」であり「人間万事塞翁が馬」か。
一方で、誰かの幸せの裏には誰かの犠牲があるとも取れる。
さらに、「金」「名誉」「愛情」ならば「愛情」こそが最も尊いと訴えているようにも取れる。

果たして、いずれが著者のテーマだったのか。
あるいは、これら全てなのか。
それとも、全く別の何かなのか。

ただ1つだけ言えることは、邦子は強かに生きたと言うことだけ。

なんとも、読後感の不思議な作品。
たぶん、読み手によって感想は千変万化を遂げる筈。
是非、読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

邦子は愛に生き、それに破れた。
愛する人に捨てられたのである。
邦子にとって彼が全てであった。
それだけに衝撃は大きく、彼女は死を決意した。

最後に豪遊を……と望んだのは贅沢だったのであろうか。
邦子は湖畔のホテルに宿泊すると、豪華なディナーを楽しんだ。

もはや、思い残すことは無い。
邦子は湖畔で服毒自殺を試みようと、薬を手に湖の水を掬い上げた……。

そんな邦子に声をかけた者が居た。
一見、冴えない中年男性―――だが、それが尋常ならざる者であることはすぐに察せられた。

男は自身を「悪魔である」と名乗った。
さらに邦子にある取引を持ちかけた。

願い事を3つまで叶えてあげよう。
その代り、死後に魂を頂く。

男は厳かにそう告げた。
邦子にしてみれば、どうせ死んだ身である。
男の申し出に乗ってみることにした。

邦子は1つ目の願いを伝えた。
まずは、長年の夢・スターになることである。
ふと気付けば、邦子はホテルに戻っていた。

(あれは夢だったのかしら……)

あの出来事の実在を疑う邦子。
しかし、あれが事実であったことは直ぐに証明された。

なんと、偶然ホテルに宿泊していたドラマ製作のスタッフにスカウトされたのだ。
そのまま撮影に参加したところ、邦子の演技は好評。
たちまち、レギュラー番組を持つに至った。

さらに、邦子をスカウトしたスタッフが独立し芸能事務所を起業。
邦子を大々的に売り出すこととなった。

次の営業戦略は邦子を歌手として売り込むこと。
これも大当たり。
邦子の知名度は日に日に上がって行った。

だが、事務所の社長は何故か邦子に外出を禁じた。
テレビや新聞では自分の名前や顔がどんどんと売れている。
だが、それを実感する術がない。

不満を抱いた邦子は社長の言いつけを破り外出することに。
すると、何故、外出が禁じられたかが分かった。

外へ出た邦子は債権者に追い立てられたのだ。
どうやら、社長は邦子を売り出す為の費用を借金で捻出したらしい。
しかも、邦子の名で借りていたのだ。
このままでは知名度が上がっても、自身の首も絞まるだけである。

邦子は途方に暮れた。
……と、其処へ例の男が現れた。

男は邦子に2番目の願いを尋ねる。
これに邦子は「名声よりも金よ、金」と大金持ちになれるよう依頼した。

翌日、突如、邦子の声が出なくなった。
邦子は緊急入院することに。
途端、社長も姿を消してしまった。
債権者は邦子から絞れるだけ絞ると、諦めることにしたようだ。

ほっとした邦子。
入院中にある玩具のアイデアを思いついた。
それは双六のようで双六では無い画期的なゲーム。

邦子は入院仲間にこれを紹介した。
彼らは皆が皆、このゲームを楽しんだ。
さらに、邦子は仲間に奨められてゲームの使用許諾を取った。
これが奏功した。

噂を聞きつけゲームに興味を持った玩具会社から販売の打診があり、これに応じたところ飛ぶように売れたのだ。
邦子のもとには巨額の富が転がり込んだ。

邦子は前回のことで、表舞台に出ることに警戒心を抱いていた。
其処で自身の名は伏せることにした。

ところが、ある悩みが邦子を襲った。
誰も信用出来なくなってしまったのだ。

確かに、名前は伏せている。
だから、邦子が資産家になったことを知る者は限られている筈である。

だが、邦子に近付く者は皆、彼女が資産家となっていることを知った上で近付く者ばかり。
つまり、全員が金目当ての輩だったのだ。
どんなに誠実そうな相手でもこれだけは一貫していた。

これでは人を愛することも出来ない……邦子は心底疲れ果ててしまった。
そんなときに、またあの男が現れた。
男は邦子に3つ目の願いを尋ねた。

今では、邦子は平凡でも良いから心から愛することの出来る異性を望んでいた。
しかし、これが最後の願いである。
慎重にならなければならない。

迂闊に願えば、これまで通り碌な結末にはならないだろう。
例えば、願いが叶った途端に相手が死んでしまうとか。
あるいは、邦子自身が死んでしまうこともあるかもしれない。
それでは意味が無い。

邦子は必死に考えた。
目の前の男を出し抜く方法はないだろうか。
何か、出し抜く方法は……。

そのうちに、邦子は気付いた。
目の前の男でも良いのではないか、と。

邦子は男に告げた。
「あなたと結婚したい」と。

これに、男は今までの余裕は何処へやら、驚くほどに狼狽した。
遂には「魂はとらないから」とか「幾つでも願いは叶えるから」と願いを変更するよう懇願まで始めたのである。

これを見ているうちに、どうしても邦子はこの願いでなければ駄目だと思うようになった。
さらに、必死に頼み込む男に愛情を感じ始めたのである。
結局、邦子は譲らなかった。

邦子は男と結婚した。
大金の多くは以前の借金の返済に充てられ、あっという間に失われた。
邦子に残されたのは少しの資産と男である。
だが、邦子は満足していた。
此の平凡な幸せこそがもっとも大事な物なのだから。

男は新居と会社を往復する毎日を続けている。
ちなみに、これに男が邦子同様に満足しているかどうかは本人にしか分からない―――エンド。

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【その他】
世田谷文学館にて「星新一展」開催中!!

『華やかな三つの願い』が収録された「午後の恐竜 (新潮文庫)」です!!
午後の恐竜 (新潮文庫)





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