2014年02月18日

『ビター・ブラッド』(雫井脩介著、幻冬舎刊)

『ビター・ブラッド』(雫井脩介著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

新人刑事の夏輝が初の現場でコンビを組んだのは、少年時代に別離した実の父親の明村だった。夏輝は反発しながらも、刑事としてのあるべき姿を明村から学んでいく……。傑作長編ミステリー。
(公式HPより)


<感想>

父と息子によるバディもの。
最初は反発していた息子が、事件を通じて父を理解していく物語。

かなりキャラが個性的。
ジェントル、アイスマン、バチェラー、チェイサー、スカンク、ゴブリン、オクトパスなど、それぞれに通称があり、これまた個性的。
しかも、この通称こそが意外な伏線に繋がる点も見逃せない。

総評して、キャラの個性と展開の妙を楽しむ作品と言えるのではないでしょうか。
此の点、かなり映像化向きの作品のような気もします。
このあたりはネタバレあらすじでは伝えきれていないと思うので、本作そのものを楽しむべき。

ちなみに本作はドラマ化が決定済み。
フジテレビ系列にて2014年4月より21時枠にて放送予定とのこと。

雫井脩介先生『ビター・ブラッド』(幻冬舎刊)がドラマ化!!

気になるキャストは2014年2月時点の情報だと次の通り。

息子・佐原夏輝役に佐藤健さん。
“ジェントル”こと父・島尾明村役に渡部篤郎さん。
“アイスマン”こと鍵山役に高橋克実さん。
“バチェラー”こと古雅役に田中哲司さん。
“チェイサー”こと稲木役に吹越満さん。
“スカンク”こと富樫役に皆川猿時さん。

とのこと。
本作はドラマ化した方が映えそうな作品なので期待です!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
佐原夏輝:主人公。島尾の息子で父を嫌う。5係の新人刑事。
島尾明村:通称“ジェントル”。5係の刑事で夏輝の父。家族を愛しているのだが……。
鍵山係長:通称“アイスマン”。5係の係長。
古雅:通称“バチェラー”。5係の刑事。
稲木:通称“チェイサー”。5係の刑事。
富樫:通称“スカンク”。5係の刑事。
小出:通称“ゴブリン”。6係の刑事。
南:通称“オクトパス”。6係の刑事。
江渕:生活安全課のデカ長。
貝塚:情報屋。何者かに殺害される。
相星:情報屋。
美倉:美倉組の元組長。息子が居る。
順子:貝塚殺害容疑者の娘。
忍:島尾の娘、夏輝の妹。
シャドーマン:謎の人物。

佐原夏輝は新人刑事。
配属されたのは“アイスマン”こと切れ者として知られる鍵山係長の5係であった。
鍵山はもちろん、尾行の達人で“チェイサー”と呼ばれる稲木や結婚願望の強い独身で“バチェラー”と呼ばれる古雅、口臭が酷い“スカンク”富樫など、個性的な先輩に囲まれる夏輝。
さらに、5係以外にも“ゴブリン”小出や“オクトパス”南や、生活安全課のデカ長こと江渕などがいる。

ところが「さぁ、これから」というときにコンビを組まされたのは冴えない中年刑事ながらも紳士を気取る“ジェントル”島尾明村であった。
これに心底、反発を憶える夏輝。

何故なら、島尾は夏輝の実父だったのだ。
とはいえ、苗字が変わっていることからもお分かりの通り、夏輝の両親は離婚していた。
その上で、夏輝は母親に引き取られたのである。
だが、その母親も謎の失踪を遂げていた。
今では、夏輝は妹の忍と生活している。

そう、夏輝は島尾に捨てられたと思い憎んでいたのである。

そんな矢先、闇社会と関わりの深いとされる情報屋・貝塚が何者かに殺害される。
貝塚は過去に美倉組を潰す行為にも参加しており、多くの人間に恨まれていた。
しかも、犯人は蚊に血を吸われた人物のようだが……。

しかも、この捜査の指揮をとっていた鍵山もが何者かに殺害されてしまったのだ。

貝塚殺害の容疑者の娘・順子によれば、鍵山は5係内に闇社会に通じる裏切り者の存在を嗅ぎ付けており、その人物を「シャドーマン」と呼んで探っていたようだ。
では、鍵山殺害は「シャドーマン」による犯行なのか……。

捜査を続けるうちに、島尾の苦悩を理解するようになった夏輝。
島尾は捜査に打ち込んだが為に、家族が疎かになってしまったのであった。
少しずつ距離を縮める島尾と夏輝。

一方、夏輝は島尾子飼いの情報屋・相星の協力もあって、遂に「シャドーマン」らしき人物の正体へと近づくことに。
だが、直前までこれを尾行していた相星は撃たれてしまう。
死を覚悟した相星は、電話越しに夏輝に連絡を取り相手を確認次第名前を教えると告げる。
相星を救うべく、急行する夏輝だが……。

犯人と相対した相星。
「こ、い……てめぇ!!」
と叫ぶなり、電話口に激しい銃声が鳴り響いた。
これに夏輝は相星の命が失われたことを確信する。

現場に駆け付けた夏輝は意外な光景を目撃する。
其処に居たのは“ゴブリン”小出に“チェイサー”稲木……そして、射殺体となった相星であった。
小出は相星の死体の前で、血を流しつつ倒れ込んでいる。

稲木は「小出が相星を殺害したので、自分が負傷させこれを止めた」と語る。
だが、夏輝は気付いた。

犯人の名前を教えると意気込んでいた相星。
彼の最期の言葉は「こ、い……てめぇ!!」であった。
「小出」ならば、そのまま伝えればいい。
だが、「こ」と「い」の間で明らかな逡巡があった。
これが何を意味するか……!?

もしかして、相手は2人居たのではないか。
1人は小出。
だから「こ」と言いかけて、その後ろにもう1人を目にした。
改めて「い」と言いかけて、射殺されたのだとしたら。
小出と共に居たのは稲木である。

夏輝は稲木を警戒し、隙を突いて取り押さえるのだが……。
稲木にはもう1人仲間が居たのである。
それは江渕であった。

不意を突かれた夏輝は江渕に転落死させられそうになる。
そこへおっとり刀で現れたのは島尾。
とはいえ、距離があり過ぎて間に合わない。
もはや、これまでかと思われたが……。
以前から江渕に疑惑を抱いていた他の捜査員が現場に駆け付け、これに救われるのであった。

江渕や稲木たちは逮捕された。
鍵山殺害は彼らが実行犯に指示して行わせたことであると判明。
事件は解決したかに思われたのだが……。

数日後、夏輝は島尾と古雅に呼び出された。
彼らはある場所に向かうと言う。
その移動中、夏輝は驚くべき話を聞かされる。

鍵山殺害と貝塚殺害は別人の犯行だったのだ。
貝塚を殺害したのは古雅であった。
島尾は犯人が血を吸われた蚊の死体に含まれたDNAから古雅の犯行に早くに辿り着いていたらしい。
だが、これを見逃していたのには動機に大きな理由があった。

結婚願望の強い独身で“バチェラー”と呼ばれる古雅。
実は彼には過去に結婚を約束した恋人が居た。
だが、恋人はある日を境に姿を消したのだ。
まるで、夏輝の母のように……。

互いに愛する人が消えたことに、島尾と古雅は疑惑を抱いていた。
そして秘密裏に調べていたところ、貝塚の存在が浮上したのだ。
貝塚は島尾と古雅に恨みを抱いており、復讐を目論んでいたらしい。
もしかすると……。

貝塚を問い詰めた古雅は衝撃の事実を聞かされる。
なんと、貝塚は古雅の恋人を殺害したことを認めたのだ。
すべては“墓守”が知っていると嘯く貝塚。
これに古雅が逆上し、貝塚を殺害してしまったのである。
同様に、夏輝の母も殺害されていた可能性があった。

そして、島尾と古雅にとって貝塚が“墓守”と語る相手は1人しかいない……。
貝塚により組を潰された美倉である。
実は、美倉は貝塚に組を潰されて以来、田舎で隠居生活を余儀なくされていたのである。

これを訪ねた島尾たち。
必死の説得で遂に美倉の重い口を開かせることに成功する。
美倉から教えられた場所を掘り返してみると……其処には!!

さらに数日後、すべての事件が解決していた。
あの後、古雅の恋人の白骨死体が発見されたが夏輝の母については見つからず仕舞いであった。
これは「もしかしたら生きているのかもしれない」と喜ぶべきことなのだろうか……。

さらに、恋人を取り戻した古雅は貝塚殺害で自首した。

そして、鍵山が語っていた「シャドーマン」らしき人物の正体も判明。
その正体は5係内の裏切り者ではなく、美倉の息子であった。
どうやら、貝塚と彼に繋がる組織に恨みを持っていた美倉の息子は鍵山に情報を流し続けていたらしい。
つまり、「裏切り者=シャドーマン」ではなく「裏切り者を炙り出す為の情報提供者=シャドーマン」だったようだ。

事件を通じて、島尾を父として認めた夏輝。
一方、島尾と言えば娘・忍の成長に妻を重ね合わせ目を細めるのであった―――エンド。

「ビター・ブラッド (幻冬舎文庫)」です!!
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こちらはキンドル版「ビター・ブラッド」です!!
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