2014年05月21日

「棺探偵D&W」6話(光永康則作、少年画報社刊「月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「棺探偵D&W」6話(光永康則作、少年画報社刊「月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

講談社刊『月刊シリウス』にて連載していた『怪物王女』も見事な完結を迎えた光永康則先生。
そんな光永先生が『月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ』誌上にて不定期連載されている本作。
2014年4月号に6話が掲載されていたので、こちらをネタバレ批評(レビュー)です。

<ネタバレあらすじ>

その日、十郎は樫尾柊子、初生親娘と共に田舎へと移動していた。
目的地はヒサトの一族が所有する別荘だ。
其処は過去に十郎とヒサトが初めて出会った土地でもある。

到着した十郎。
柊子はと言えば早速、本業のメイド業に取り掛かっている。
それもその筈、別荘には彼らの雇い主であるヒサトが滞在していたのだ。

ヒサトは別荘でもカーテンを閉め切った部屋で過ごしていた。
その正体が吸血鬼であることを知らない十郎は、昔と全く同じだと揶揄する。
十郎とヒサトは互いに初めて出会った日を思い返した。

2人とも互いの第一印象は最悪だった。
父から自身がどんな生き物であるかを教え込まれ、その使命をも伝えられていたヒサトは何処か覚めた子供であった。
一方、母を早くに亡くした物の自身の正体を知らない十郎は伸び伸びと子供らしく育っていた。
当然、互いにソリは合わない。

この対面、実は十郎の父が息子を将来仕えることになるヒサトと早めに引き合わせようとの配慮だったのだが、事情を知らない十郎にとってヒサトはいけすかない野郎でしかなかった。
結局、2人はすぐに衝突し、面白くない十郎は町を彷徨うことに。

すると、ある家に血の匂いを嗅ぎ付けた。
その家の名は他崎家。
何故か気にかかった十郎は子供ながらに他崎家を調べ始める。

近所の住民によると、他崎家は高齢の父・他崎と40代の息子・耕作の2人暮らし。
他崎は認知症を患っており、耕作がこの介護を行っているらしい。
1日1回、車椅子で生活する父親を耕作が外に連れ出し、車椅子を押して散歩させている光景が目撃されている。
だが、他崎と会話した者は居なかった。

子供心に何やら危険な香りを感じ取った十郎。
別荘に戻るが、相談出来る相手も居ない。
思い悩んだ十郎はあのいけ好かない相手に相談を持ちかける。

これを聞いたヒサトの表情が変わった。
ヒサトは十郎が人狼としての自覚を持っていないにも関わらず、その優れた能力で事件を嗅ぎ付けたことに感嘆しつつ、ヒサトの発見に事件性があるかもしれないと指摘する。

もしかしたら、他崎家の窓や扉には厳重に目張りがされていなかったかと尋ねるヒサト。
さらに、ヒサトは現状から導き出される推測の1つを述べる。

それは十郎が嗅ぎ付けた血の匂いが他崎の物ではないかとの推測。
つまり、他崎が既に死亡しているのでは―――とのモノだ。

もし、目張りが行われていたとしたら……それは内部の匂いを外に洩らさない為である。
つまり、屋内に人に知られたくない何かが隠されているのだ。
それこそが他崎の死体ではないか。

他崎は耕作に付き添われ車椅子で散歩をしている。
だが、会話をした者はいない。
他崎ではなく人形でも事足りるのだ。

そして、もしこれらが事実だとすれば耕作の関与が欠かせない。
すなわち、耕作こそが他崎の死を隠蔽している張本人なのだ。

では、耕作は何故、他崎の死を隠蔽する必要があるのか。
耕作は表向き他崎の介護を行っているとされている。
つまり、仕事に出ていない。
だとすれば、生活費は何処から出ているのか?
おそらく、他崎の年金だろう。

そう、ヒサトは耕作が他崎の年金を不正受給しているのではないかと疑っているのだ。

これを聞いた十郎は「まさか……」とヒサトの推測を軽んじつつ、しかし、確かに否定できない自分を感じるのであった。

やがて、その想いは強くなっていった。
その翌日、遂に十郎は想いを抑え切れなくなり、行動に移した。

まず、車椅子の他崎を連れた耕作に接近。
隙を突き、車椅子の他崎を確認する。

しかし、其処に居たのは痩せ衰えた老人……つまり、本物の他崎であった。

困惑する十郎。
ヒサトの言葉を信じて損したと考えつつ、どうしても気になって他崎家へ足を運ぶ。

其処にはヒサトの推測通り目張りがされていた。
そして、血の匂いは中から漂っている。
だが、車椅子の老人は他崎だった筈だ。
では、中の血の匂いの原因は何なのか!?

好奇心に駆られた十郎はこっそりと他崎家へ忍び込む。
血の匂いを辿ったその先には、布団にくるまれた死体が転がっていた。

(若い……)
一見して十郎は察した。
死体は明らかに若い男性のものであった。

困惑する十郎、意識は死体へと集中し後方への注意が疎かになっていた。
十郎がハッと背後の気配に気づいたときには既に、バットが振り下ろされていたのである。

強い衝撃が襲った。
頭部から血を流した十郎はその場に倒れ込むと意識を失ってしまう……。

十郎を殴りつけた男は不敵に笑っていた。
彼こそは他崎の車椅子を押していた人物。
だが、彼は耕作ではない。
当の耕作は十郎が見つけた死体と化していたからである。

止めを刺そうとする男。
そんな男に声をかける者が居た……ヒサトである。
ヒサトは朗々と推理を口にする。

男の正体は耕作の友人であった。
男は耕作を殺害し、成り済ますことで他崎の財産と年金を奪い取ろうとしたのだ。
入替っていたのは他崎ではなく、耕作の方だった。

ギョッとして振り返る男。
ヒサトが口にしたことはすべて事実であった。

慌ててヒサトをも口封じしようとする男だが……敵う筈がない。
あっさりとヒサトに吸血されてしまう。
ヒサトにとって、これが初めての狩りであった。
もちろん、十郎はこの事実を知らない……。

現在に戻って。

懐かしくなったヒサトは久しぶりに周辺を歩くことにした。
あの頃から特に変わった様子はない。
ふとヒサトは他崎のことを思い浮かべた―――あの老人はあれからどうなったのか。

そのとき、ヒサトは車椅子に乗った人物とこれを押す人影が迫って来ることに気付いた。
そして目を見張った。
何故なら、車椅子にはあの日あの時と変わらぬ他崎が乗っていたからである―――エンド。

<感想>

1巻も発売された「棺探偵D&W」その6話です。

トリックのキーは他崎老人にあると思いきや、第三者の介入により反転する構成は面白かったですね。

十郎こそ知らないものの、そのピンチを救ったヒサト。
グッジョブです!!
ある意味、ヒサトは平成の「ハングマン」、「必殺仕事人」なんだなぁ……。

そして、衝撃のラスト!!

現在のヒサトと車椅子で擦れ違ったあの老人は他崎なのでしょう。
だとすれば、他崎老人は単なる被害者ではなく、自身が生き続ける為に加害者たちを動かし続け、息子・耕作でさえも邪魔と判断すればこれを排除させたとなるのでしょうか。
まさに恐怖……。

これがあるから「棺探偵」は目が離せない。
もちろん、7話にも注目です!!
要チェック!!

◆関連過去記事
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