ネタバレあります、注意!!
<感想>
ドラマ化もされた「防犯探偵シリーズ」。
その2014年2月時点での最新作です。
当初は前後篇(上下)、後に前中後篇(上中下)と思われていましたが、三回以上続く集中連載と判明しました。
ちなみにタイトル上は「四」となっていますが、おそらく「結」と同じと考えて良いのかな。
今回ラストにて「了」となりました。
前後篇(上下)と思いきや「中」となり、前中後篇(上中下)と思いきや「三」となり「四」以降が示唆され、今回のタイトル上は「四」でありながら「最終話」。
うむむ……稲庭の変幻自在なトリックと同様に読者を幻惑するなぁ……。
でもって肝心の内容。
トリックこそドラマ版と同じでしたが、終盤の流れがかなり異なっていますね。
そして、ドラマ版と比較すると平松がだいぶ善人になったなぁ。
そう言えば、原作は榎本が侵入するところから始まってたしなぁ。
ちなみに、本作に先立ち2014年1月3日に既にドラマ版が放送されています。
・「鍵のかかった部屋SP〜2つの密室事件と、鏡の国の殺人〜久しぶりだなぁ、榎本っちゃん!元気だった?」(1月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)
そんな『鏡の国の殺人』、その内容は「美術館長・平松殺害の容疑をかけられた榎本が如何に謎を解き、自身の無実を証明するか」といったもの。
ドラマ版と些か異なる結末を確認せよ!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
榎本:言わずと知れた防犯探偵その人。
青砥:弁護士。榎本の相棒と言えばこの人。
平松館長:美術館館長。何者かに殺害される。
鈴木繁子:平松の秘書。
稲庭透:美術館に展示されていた「鏡の迷図」の作者。
玲子:稲庭のアシスタント。
山本:稲庭のアシスタント。
ハゲコウ:刑事。
・前回のあらすじはこちら。
『鏡の国の殺人 三』(貴志祐介著、角川書店刊『小説野性時代 2014年2月号 vol.123』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
稲庭のトリックの1つを暴いた榎本。
残るは「出口の防犯カメラに映らなかった謎」だけだ。
青砥は保護色など様々なトリックを考えるが、どれも実効性に乏しいものばかり。
だが、あるものに気付いたことで榎本にトリック看破のヒントを与える。
その「あるもの」とは偏向フィルムであった。
稲庭を呼び出した榎本はトリックを暴く。
入口は「ホロマスク錯視」の応用。
問題は出口だが……。
稲庭は停電を起こすと監視カメラBに偏向レンズを装着した。
偏向フィルムには縦方向と横方向がある。
方向が違えば像が映らなくなる。
タイミングを計り、カメラに仕掛けた偏向フィルムの縦横を変えた。
しかも、事前に「鏡の迷図」の下部にのみ偏向フィルムを貼り付けていた。
カメラの縦横が変わったことで、下部が真っ暗になったのだ。
稲庭はその横を堂々と潜り抜けた。
残った偏向レンズは大展示室の照明を落としたときに回収した。
だが、此処に大きなミスがあった。
偏向フィルムの方向が変わったことで、窓ガラスの反射像が消えていたのだ。
これを指摘された稲庭は罪を認める。
次いで動機を語り出す稲庭。
平松が美術品を不正に横流ししていたことが許せなかったのだと言う。
しかも、そんな悪人に利用される自分も許せなかった。
だから、平松からの解放を望み、彼を殺した。
榎本は平松が決して殺されるべきほどの悪人では無かったと指摘。
確かに平松は不正行為にも手を染めていたが、あくまで清濁併せ飲むスタイルだったのだ。
平松は得た利益の一部を児童福祉施設に寄付していたらしい。
だからこそ、榎本もこれに協力していたのである。
「黙れ、同じ穴の貉!!」
何時の間にか手にしたボウガンを榎本の首筋に射かける稲庭。
これを受けた榎本は倒れ伏す。
慌てる青砥。
だが、何故か榎本を射殺した筈の稲庭の顔色が優れない。
そうこうしているうちに、榎本が別方向から現れた。
どうやら、先に射られた榎本は虚像だったようである。
稲庭はそのトリックの正体が自身の作品の1つで、別の美術館に展示されている筈の「不在の証明」であると気付く。
到底、容易に借り受けられる物ではない。
これに「断りなく借りました」と真顔で応ずる榎本。
「なんだ、やっぱり泥棒なんじゃん」
稲庭が呟いた―――『鏡の国の殺人』了。
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