2014年02月24日

『月は囁く』第7話「月と呪いの藁人形・前篇」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第7話「月と呪いの藁人形・前篇」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。

黒崎麟太郎:代議士の息子。
鈴木悠太:学生時代にリンチを受けて殺害された少年。
天誅:謎の人物。黒崎を憎んでいるらしい。


動画サイトにある映像がアップされ話題になった。
動画を再生すると、目は自然に中央の人物へと向くだろう。
画面中央には額に蝋燭を括りつけ、白装束を身にまとった異様な風体の人物が居た。
その人物は自身を「天誅」と名乗り、黒崎麟太郎を呪い殺すと主張するのだが……。

当の黒崎はと言えば、深夜に胃を抑え込むと喀血し倒れ込んでしまう。
これこそ「天誅」の語った「呪い」の力なのか?

この謎に陽一が挑むことになった。
とはいえ、相手は得体の知れない「呪い」である。
陽一にはどうしようもない。
だが、黒崎の父は高名な代議士であり、犯人を早く捕まえるよう陽一に大きな重圧を与えるのだ。
陽一にとっては、ただただストレスで胃が痛くなる日々である。

そんな陽一を見かねた月。
漢方を処方すると共に捜査に協力することに。
月によれば「呪いは実在する」とのことだが……。

2人は黒崎のもとへ。
黒崎は喀血した為に入院生活を送っていた。

黒崎の担当医師によれば、呪いではなく胃潰瘍なのだそうだ。
ところが、黒崎はこれを信じない。
あくまで「天誅」の呪いだと主張する。

月は黒崎の表情から彼が何かを隠していると見抜く。
どうやら、黒崎には恨まられる心当たりがあるようだ。

例の動画と黒崎について調べた結果、鈴木悠太なる少年が浮かび上がる。
悠太は黒崎の同級生であったが、黒崎の仲間にリンチを受けて死亡していた。
この犯人として2人の少年が罪に問われていたが、黒崎自身は罪を逃れていたのである。
しかも、罪に問われた少年2人は最近になって謎の事故死を遂げていた。
これもまた「天誅」の語る「呪い」なのだろうか?

矢先、黒崎が病室から消えた。
どうやら「天誅」に悠太が殺害された場所へ来るよう指示されたらしい。

現場に駆け付けた陽一と月。
其処には精神の均衡を崩した黒崎が立っていた。

「違うんだ……リンチしろなんて言ってない。ただ、最近生意気だって言っただけなんだ」
ブツブツと呟く黒崎の目は一点を見据えていた。

黒崎の視線の先には、憎悪の表情を浮かべた悠太が立っていたのである―――7話に続く。

<感想>

先頃完結した「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。

まさに陽一(太陽)と月(月)の物語です。

では、7話を読んだ感想を。
シリーズ初の前後篇、その前篇。

黒崎を襲う呪いの正体とは何か……それが今回のテーマの様子。
だとすれば「天誅」の語る「呪い」には何らかの仕組みが存在することになる。
月の台詞から類推すれば、今回だけに限らず一般的な正体と捉えても良さそうか。

今回、陽一が「呪い」について捜査するストレスで胃をやられた描写があった。
これこそが伏線なのではないかと思うのだが……。

だとすると、普通に考えれば天誅からストレス(精神的負荷)を与えられたことが原因だろう。
例の動画などで、名指しで「呪う」と告げられれば誰しもが不安に思う物。
特に黒崎の場合は身に覚えがあるだけに、相当なストレスだっただろう。
これを繰り返されることにより、精神的に追い詰められ身体的な病気に現れたのではないか。
そして一旦、不調を感じれば表面上は否定しても深層心理下でそれを呪いと結び付けるのは自然。
思い込みが強ければ強いほど、これは効果を示すだろう。
それにより、なおさら呪いを意識してしまい自滅する。
つまり、負のスパイラルに陥るのだ。
いずれは精神も病み、幻覚も視る。

これが前篇ラストの悠太の幽霊の正体だろう。
おそらく陽一と月には見えていないのではないだろうか。

そして、幻覚を目にするほどならば日常生活も困難になる。
結果、捨て鉢ともなれば注意力も散漫になり事故にも遭いかねない。
これこそが、悠太をリンチした2人の死の原因ではなかろうか。
だからこそ、月が語るように「呪い」なのでは……。
「天誅」をこれを意識的に行っているとすればどうだろうか。

もしも、この仮説通りならば「天誅」は心理学に通じた人物なのかもしれない。
例えば、精神科の医師のような。

あるいは物理的な方法も考えられる。
こちらは同様に、陽一の食事と漢方が伏線なのかもしれない。
すなわち、物理的に胃に負担を与えるような食事や薬を摂取させるのだ。
こちらの方法だと、「天誅」は黒崎の近くにおり食事をコントロール出来る人物となるだろう。

ただ、個人的には前者の「精神的負荷説」を推したい。

果たして、如何な仕組みなのか……次回、8話にも期待!!

ちなみに、ルナは父親に対しトラウマがある様子。
その天才的な力により、父に虐待されていたのかな。
結局、父と母はこれが原因で離婚。
そして、母が陽一の父と再婚といった流れか。

ルナとしては離婚の原因が自身にあると考えて、以来、人と距離を置くようになったか。
ところが、無邪気な陽一に癒されていく展開か。
イイですね。
最終的にはルナがトラウマとなった父と和解する(乗り越える)展開もありそうかな。

興味を抱かれた方は是非、『ビッグコミックオリジナル 増刊号』にて本作を確認されたし。

◆関連過去記事
『月は囁く』第1話「月は囁き、花は語る」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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