日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season12(twelve)」第17話「ヒーロー」(3月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
ジリリリリリリリリリリリリ……。
響き渡る警報音と共に周囲に立ち込める煙。
「火事だぁ!!」
男性の叫ぶ声が轟き、これを聞きつけた人々が逃げ惑う。
同時刻、現場近くでは甲斐(成宮寛貴)が右京(水谷豊)に昼食を奢って貰っていた。
其処で火事に気付き、現場へと急行する。
救出作業に加わる右京たち。
と、煙の中にいた女性を一人の青年が抱きかかえながら階段を降りて来た。
救出されたのは企業訴訟を得意分野とする弁護士の里見麗子(松尾れい子)。
麗子は右京たちに保護されることに。
其処で助けてくれた青年に礼を告げようとするが……青年はその場から姿を消してしまっていた。
麗子は「どうしても礼を告げたい」と青年の捜索を右京に依頼する。
右京は現場に残されたていた「富士の湯」の手拭いを手がかりに青年を見つける。
ところが、青年は「助けたのは自分じゃないですよ」と逃げるように去って行ってしまう。
彼は人助けをしたにも関わらず、何故、頑なに認めようとしないのだろうか?
翌朝、IT企業「メディアステップ」の経営企画部長・轟(大内厚雄)が死体で発見された。
どうやら、一昨日に殺害されたようだ。
捜査を開始した伊丹(川原和久)は、轟の携帯に残されていた最後の着信から「杉本竜也」なる人物を疑うことに。
一方、新聞で麗子を救った「謎のヒーロー」が報道される。
右京と甲斐は麗子に本人に出会ったが認めようとしないことを報告。
麗子は「そうですか……」と溜息を吐く。
其処へ当の「謎のヒーロー」から連絡が入った。
電話をかけて来た人物こそ、伊丹たちが追っている杉本竜也(岸田タツヤ)であった。
こうして、右京たちは麗子と共に杉本のもとへ。
杉本を訪ね、その部屋に足を踏み入れた右京は「一旦、否定しておきながら何故、認めることにしたのか」と問う。
「印刷工場で働きながら、大学の法学部へ進学を目指しているんです」と答える杉本。
しかし、費用的な面で困っており、報道により助けた麗子が弁護士だと知って何か助けて貰えたらと考えたらしい。
これに部屋の様子を眺めつつ些か納得のいかない表情を浮かべる右京。
其処へ伊丹たちが現れる。
もちろん、轟殺害についての捜査である。
しかし、杉本は間違い電話をしただけと主張。
なんでも、ナンパした女の子から貰った番号であり、騙されたと思ったのだそうだ。
麗子も杉本のフォローに入り、手も足も出ない伊丹は苦虫を噛み潰す。
そんな伊丹を尻目に、麗子は杉本に自分の事務所でバイトしないかと誘う。
これに一も二も無く応じる杉本。
右京はひょんなことから飛び込んで来た轟の事件に興味を抱く。
轟は島巡りのツアーを運営する「スターリゾート」の元営業社員。
しかし、当時は一介のヒラであった。
それが何故、部長へと大躍進したのか……。
その頃、伊丹たちは轟の周辺を調べていた。
轟の名刺入れから出て来た菅井修二なる人物にあたる伊丹。
菅井によれば「(轟が)秋葉原で電話しながら歩いて来てぶつかって転んだので名刺を渡したんですよ」とのことだが……。
どうやら、杉本からの電話を受けた轟が前方への注意を怠ったようだ。
ちなみに、電話で杉本は「8時に西新宿中央公園イベント広場で……」と語っていたそうである。
これを聞いた伊丹は「やはり間違い電話では無かった」とリベンジに燃える。
翌日、右京は1人で杉本を訪ねていた。
法学部を目指していると言いながら入試関連の書籍が部屋に無かったことを指摘する右京。
さらに杉本の経歴について述べる。
杉本は東京北区の育ち、10歳の時に母が夫と杉本を捨て家を出た。
残された杉本は高校を1年生の時に退学していた。
これが3年前のことである。
右京の指摘を受けた杉本は法学部を目指しているとの言葉が嘘であることを認める。
印刷工場がきつかったので同情を惹こうとして嘘を吐いたと述べる杉本。
其処へ満を持して伊丹たちが登場。
前回のリベンジを果たそうとするが……追求しようとした途端にまたも麗子に妨害されてしまう。
同じ頃、「メディアステップ」の社長・沼田敬一郎を訪問していた甲斐。
「メディアステップ」と「スターリゾート」は両方とも沼田の会社であった。
沼田によれば轟を部長に任命したのは「それが相応しい」と思ったかららしい。
杉本の生い立ちに興味を持った右京は伊丹たちを連れて杉本の父のもとへ。
杉本の父は息子にも関わらず杉本に興味の無い様子。
杉本の部屋を見たいとの申し出にも、へらへらと手を振って応じる。
杉本の部屋へ足を踏み入れた右京は「平成23年8月の給料明細」を発見する。
どうやら、杉本はゴミ処理センターで夏休みにアルバイトして8万円の収入を得たらしい。
当時、杉本は高校一年生、何か大金が必要だったのだろうか?
しかも、本棚には「伊豆諸島」のガイドブックがあった。
その夜、甲斐が耳寄りな情報を手に特命係に戻って来た。
「スターリゾート」は、3年前に「伊豆大島沖クルーズ事故」を引き起こしていたのである。
この事故では6人が死亡していた。
被害者はクルーズ船の船長・上田と客の山本美香、榛原夫妻、栗原夫妻であった。
そして、会社側の弁護士こそが麗子だったのだ。
麗子の活躍により「スターリゾート」は支払う賠償額を最小限に抑えることが出来た。
しかも、この成功が麗子の名を一躍高めた。
クルーズ事故と轟の転職。
この裁判で名声を得た麗子。
そして、杉本の存在。
謎が謎を呼ぶ展開だが……。
上田船長の自宅を訪問した右京。
上田の妻によれば、当時の上田は食欲を失い、常に疲れた様子だったそうだ。
上田の部屋を調べたところ、轟と並んで映った写真が発見される。
轟と上田は同期入社で親しい関係だったのである。
さらに、先頃、行われた事故の慰霊祭に轟が参加し、その様子がおかしかったことも明らかになる。
一方で、右京は上田の携帯に轟の連絡先が登録されていなかったことに注目する。
親しい関係にありながら、何故、登録がないのだろうか!?
携帯を調べたところ、上田から轟に宛てたメールが復元される。
それによると、上田は長時間労働に疲れ果て最近は海に出るのが怖いとまで述べていた。
どうやら、「スターリゾート」では上田を酷使していたようで上田は自殺しようとまで追い詰められていた。
だとすれば、クルーズ事故の真相は上田の無理心中なのではないか。
右京たちは沼田に事故の真相を明かすよう迫る。
これを渋々認める沼田。
当時、沼田は轟宛に届いた上田のメールの対処に困っていた。
これが存在する限り無理心中の疑惑は拭えない。
其処で麗子の提案により、メールの存在を隠蔽することにした。
沼田が轟に部長職を約束し沈黙を強いたのだ。
これこそが沼田が部長に就任した真相であった。
右京は再度、杉本の実家へ。
部屋にあった伊豆諸島のガイド本を調べる右京。
すると、「スターリゾート3万7千円×2」とのメモを発見する。
どうやら、クルーズ費用2人分を誰かにプレゼントしたようである。
例のバイト代もこの料金と考えれば合致する。
杉本の父親に当時の杉本の交友関係を問う右京たち。
杉本の父はまたも興味が無さそうに「そう言えば……裏のマンションに行ってたよ」と告げる。
裏のマンションの管理人に確認したところ、杉本が栗原夫妻と交友があったことが判明する。
管理人によれば、杉本と栗原夫妻は実の親子のように親しかったらしい。
あのクルーズも杉本から大島行きを望む栗原夫妻へのプレゼントであった。
その頃、杉本は轟が死亡したあの夜のことを思い出していた。
「あんた何か言おうとしてただろ」
轟を呼び出した杉本は、慰霊祭のことで轟を問い詰める。
これに轟は事故が上田の無理心中だったことを明かした。
逆上した杉本はナイフを振り上げるが……。
一方、右京たちは伊丹と芹沢に調べた上げた事実を伝えていた。
杉本が麗子を助けることが出来たのも、麗子の周辺を探っていたからに違いない。
だとすれば……杉本は麗子を殺そうとしているのか!?
伊丹たちは杉本の身柄を抑えるべく動く。
しかし、右京は微動だにしない。
どうやら、他に調べるべきことがあるようだ。
轟殺害事件の捜査資料を確認した右京は其処におかしな点があることに気付く。
さらに、山本美香の名前に注目する。
数時間後、杉本は事故の慰霊碑の前に麗子を呼び出していた。
「僕はヒーローなんかじゃない!!」
叫ぶ杉本は麗子に3年前の真実を問う。
栗原夫妻の死の真相を聞き出そうと言うのだ。
ところが、そんな杉本の背後に謎の人影が……。
「退いてくれ。さもなければお前も殺すぞ!!」
ナイフを手に麗子を狙う人影。
襲いかかろうとするソレを杉本は必死に防ぐ。
其処へ右京と甲斐が駆け付け、人影は逮捕された。
その正体は証言者の1人・菅井であった。
菅井は事故の被害者・山本美香の父親だったのだ。
右京は告げる。
電話をしながらぶつかっただけにも関わらず「8時に西新宿中央公園イベント広場で……」などと言った長い内容が分かる筈がない、と。
それを知ることが出来たのは初めから轟を監視していたからだったのだ。
娘・美香を喪った菅井。
娘を亡くしたことで、菅井の妻は精神の均衡を崩してしまった。
こうして、家族を失った菅井はずっと恨みを抱えていた。
其処へ慰霊祭の轟の態度だ。
杉本同様に不審を憶えた菅井はこれを監視し続けた。
そしてあの夜、轟は杉本に脅されすべてを告白。
真相を聞き出した杉本は怒りを堪えつつ、その場を去った。
残された轟の前に、歩み出たのは……陰から様子を窺っていた菅井であった。
「娘の死を餌に、出世したあんたは許せない」
菅井は轟を刺殺してしまう。
菅井は自身の復讐の正当性を主張。
「あなたのやり方は間違ってしまったんです」
右京はそんな菅井を否定する。
数日後、麗子と杉本が右京たちの立会いの下で再会していた。
「ありがとう、あなたには2度も助けられた」
「助けてなんかないよ。俺はあんたに復讐しようとしていたんだ」
感謝を伝えようとする麗子に、冷たく応ずる杉本。
「確かに、あなたは復讐の為に近付いたのかもしれません。ですが、あなたは真相を知り考え方を改めたのですね」
そんな杉本に右京は推理を告げる。
実は、無理心中の隠蔽を主導したのは麗子ではなく沼田であった。
そして、麗子が沼田の隠蔽工作に協力したのも「スターリゾート」の倒産を防ぎ被害者遺族へ賠償金を支払わせる為だったのである。
さらに、麗子は1つだけ隠していたことがあった。
「ひょっとして、あなたは竜也君が誰かを知っていたのではありませんか?」
「法廷で少年を見たんです。いつも、涙で目を赤く腫らしていました。3年後、その少年が私に近付いて来た」
右京の問いかけに、自身の知る杉本を語る麗子。
麗子は杉本が自身を狙っていることを知った上で、これを受け入れたのである。
さらに、麗子は今後は上田船長の遺族と協議してどうするか決めるつもりのようだ。
「あなたは私を救ってくれた。誰が何と言おうとあなたは私のヒーローよ」
麗子の言葉に何やら考え込む杉本。
その晩、「花の里」では右京たちが事件について振り返っていた。
「杉本が麗子を救ったように、麗子の生き方が杉本を復讐から救った」と語る右京。
これを聞いた幸子は「私のヒーローは杉下さんかな」と述べる。
カウンターの上には「ふき料理」が並んでいた。
これに春の到来を感じる右京と甲斐―――17話了。
<感想>
シーズン12(twelve)17話。
脚本は金井寛さん。
サブタイトルは「ヒーロー」。
右京がラストで述べていた通り、杉本と麗子は互いに互いのヒーローとなったのでしょう。
復讐対象者の生き方を知り、復讐者が復讐を思い留まる。
このテーマは菊池寛『恩讐の彼方に』でも語られたもので、まさにタイトル通り個人の復讐心を越えたところに存在する大義などの在処を示したもの。
『恩讐の彼方に』は未読の方には是非、読んで欲しいぐらいこのテーマを上手く表現した深い作品。
一方、本作「ヒーロー」はこの「相棒」版ともなるべき存在でしたが……。
正直、今回はあんまりだったかなぁ……との印象。
麗子の深慮遠謀こそが杉本を犯行から救った―――との結末の筈なんですが、杉本が麗子の事実を知る前に轟殺しを思い留まっているから、あまり説得力がない……。
伏線も張られてはいたんだけど、結末からの逆算のように思えたのもちょっと……。
テーマ的に興味深い筈なんだけど、描き方の問題か少なくとも管理人には響かなかったかな。
此の点は視聴前からのハードルが高過ぎた為かもしれないけど。
そう言えば、息子に無関心な筈なのに杉本父は杉本の部屋を綺麗に維持していましたね。
息子の物を捨てるでもなく、いつ帰って来ても大丈夫なぐらいでした。
だから、あれこそ伏線になると思っていたんだけどなぁ……。
ちょっと、いろいろ惜しい点が多い回との印象でした。
話の運び方次第では大きく化けた気がする。
次回に期待!!
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こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
お尋ねの件についてお答えします。
17話「ヒーロー」の犯人ですが、菅井でした。
前半で伊丹たちが被害者・轟が所持していた名刺を手掛かりに訪ねた相手が菅井です。
菅井は犯行動機となったクルーズ事故の被害者の父親。
終盤まで杉本の犯行かと思わせておいて、菅井が実は……との展開でした。