<あらすじ>
妻を亡くし息子と二人暮らしの石坂登志男(石塚英彦)は、横浜市中央区役所保護課の係長に配属されることになった。未経験者には無理だと保護課のケースワーカー・上原桃子(酒井美紀)が石坂の着任を不服に思うが、石坂は福祉について色々学びたいと積極的に現場に出ることを希望し、桃子に指導を頼む。
桃子は何人かのケース(生活保護受給者)が暮らすアパート・あすなろ荘を石坂に案内。民生委員で、近所にある病院の院長でもある大家・野口充(伊武雅刀)に挨拶し、アパート内の部屋を一部屋ずつ回ることに。住人の一人で受給者の桐畑(ガンビーノ小林)に不正受給の疑いを指摘、すると包丁で凄まれてしまう。しかし一歩も引かない桃子の態度に石坂は驚く。その桃子は「生活保護制度は廃止してしまえばいい」とドライな様子で…。
その頃、横浜のある立派な邸宅に窃盗犯が侵入し、多額の現金が盗まれる事件が発生。現場に向かった富永刑事(佐藤B作)は、被害者の態度から盗まれた金は違法な金だと推測。そして犯行の手口や現場に残されたねずみのシールから30年以上前に広島や横浜で続発した後、こつ然と消息を絶った窃盗犯「昭和のねずみ小僧」だと直感する。
ある日、駅員からの通報で駅に駆けつけた石坂と桃子は、駅のホームに居座るホームレスの福場(深水三章)をあすなろ荘に連れて行く。快く部屋を貸してくれた野口だったが、体調の悪そうな福場を診察しようとすると「医者は嫌いだ!」と部屋から追い出されてしまう。
そんなところに弁護士の村木芳忠(永島敏行)があすなろ荘から出てくる。現在は弁護士だが、元ケースワーカーの村木はその経験と知識を生かし、保護課や福祉事務所を相手に訴訟を起こし勝ちまくっているという。そんな村木に野口は嫌悪感をあらわにする。
やがて例の窃盗事件が「昭和のねずみ小僧」と同一人物であることが明らかに。一方、石坂は桐畑ともう一度話し合うためあすなろ荘へ。そこで住人の目片律子(杉田かおる)から福場がネコに餌づけしたせいで庭が臭うようになったと苦情を言われ、猫を探すため庭に向かった石坂は、そこで桐畑の死体を発見し…!
黒川刑事(工藤俊作)に事情聴取をされる石坂は、無くした手帳がなぜか遺体の横で発見されたことや、石坂の体格とそっくりな目撃情報が匿名で寄せられたことから、石坂が犯人だと疑われてしまう。
そんな石坂のもとに差出人不明の封筒が届く。中身は血だらけの千枚通し。それは桐畑の殺害に使用された凶器であり、あの「昭和のねずみ小僧」の小道具でもあった。
そんな中、福場が病死する。遺留物の中から福場が「昭和のねずみ小僧」であるとの告白文が発見され…。
(テレビ東京公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
石坂登志男は横浜市中央区役所保護課の係長になった。
保護課のケースワーカー・上原桃子からは未経験者ということで軽んじられているが、石坂は持ち前のやる気を見せ仕事に前向きに取り組む。
そんな石坂を試すべく、桃子は「アパート・あすなろ荘」を案内する。
「あすなろ荘」を管理するのは、民生委員で近所にある病院の院長・野口充。
野口は篤志家として知られ、其処には多くの保護費受給者が暮らしていた。
住人の1人・目片律子と挨拶を交わす石坂。
すると、律子の表情が変わった。
どうやら、何かあるようだ。
さらに、住人の1人・桐畑には不正受給の疑いがあった。
これを指摘された桐畑は包丁を持ち出し脅しつける。
しかし、桃子は一歩も退かず対決する。
驚く石坂に、桃子は「本当に困っている人にこそ救済が必要で、不正受給など以ての他!!」と熱く語る。
その頃、横浜の資産家宅に窃盗犯が侵入、多額の現金が盗まれる事件が発生した。
現場に向かった富永刑事は盗まれた金が違法な金だと推測し、犯行の手口と併せて30年以上前に広島や横浜で続発していた窃盗犯「昭和のねずみ小僧」の犯行だと考える。
「昭和のねずみ小僧」は不正を行い蓄財する者から金銭を盗み貧しい者に配る「ねずみ小僧」と同じ義賊とされていた。
そんなある日、石坂と桃子は広島出身の福場を保護し、あすなろ荘に連れて行く。
桃子は空いていた4号室が借りられないか野口に交渉。
普段の温厚な彼に似合わず渋る野口であったが、最終的に桃子に押し切られる形で了承する。
野口は福場の診察を行おうとするが、福場は医者嫌いらしく部屋から追い出されてしまう。
それ以来、野口は4号室へ入れなくなってしまった。
一方、弁護士の村木芳忠があすなろ荘へやって来た。
村木は元ケースワーカーの経験を活かしている弁護士。
保護課や福祉事務所を相手に訴訟を起こし大金を稼いでいた。
村木は福場に目を付け、そんな村木に野口は嫌悪感を露骨にする。
数日後、石坂は不正受給の件で話し合うべく桐畑のもとへ。
しかし、桐畑の姿は見えない。
困惑する石坂だが、律子から猫を探すよう頼まれ庭に向かったところ、桐畑の死体を発見する。
しかも、桐畑の死体の傍には石坂の手帳が。
それは、先日何者かに盗まれたものであった。
これにより容疑は石坂へ向かう。
しかも、石坂に桐畑殺害の凶器である千枚通しが届く。
どうやら、誰かが石坂に罪を着せようとしているようだ。
これに奮起した石坂は桐畑殺害犯を調べ始める。
そんな中、福場が病死してしまう。
遺留物の中からは福場が「昭和のねずみ小僧」であるとの告白文が発見される。
しかも、千枚通しは「昭和のねずみ小僧」が使用していた道具であった。
矢先、富永刑事のもとに「2代目・昭和のねずみ小僧」を名乗る人物から予告上が届く。
富永は福場が後継者を残していたのではと考えるように。
一方、石坂は自身を恨む人物について心当たりを調べていた。
過去、公園建設を巡り地元住民と対立したことがあったことを思い出した石坂は、対立した相手・松井のもとへ。
松井は公園を建設すると不特定多数の人物が出入りすることになるから治安が悪くなると難色を示していたのだ。
とはいえ、最終的には松井は石坂の説得に応じていたのだが……。
此処で、石坂は意外な事実を知る。
なんと、松井が死亡していたのだ。
しかも、公園に屯する不良に殺されたらしい。
それこそまさに、松井が危惧していたことであった。
自身の行動が松井を殺す1つの原因になったと考えた石坂は後悔する。
さらに、松井に妻が居たことが判明。
その写真を確認したところ……。
律子を訪ねた石坂。
松井の妻は律子であった。
「説得してまで了承させておきながら責任を取らなかった」と石坂を責める律子。
これに石坂は土下座して謝罪する。
そんな石坂の姿に絆された律子は、石坂に罪を着せようと千枚通しなどの工作を行ったことを認める。
だが、桐畑殺害は別人によるモノらしい。
律子はこれが「2代目・昭和のねずみ小僧」によるものではないかと告げる。
実は律子は桐畑殺害現場から逃走する犯人らしき人影を見ていた。
しかも、桐畑が殺害された現場に面する4号室には窓をこじ開けようとした形跡があった。
律子はこれが福場が2代目を手ほどきした痕跡ではないかと指摘。
その現場を桐畑に目撃されたので、犯行が起こったのではないかと考えているようだ。
だとすれば、2代目の正体は福場が「あすなろ荘」に来てから出会った人物となる。
そうなると、条件を満たすのは4人しか居ない。
まず、石坂。
次に、野口。
そして、村木。
最後に、桃子だ。
とはいえ、石坂自身に身に覚えはない。
さらに、律子によれば石坂は体型的に有り得ないらしい。
となれば、残る3人の中に「2代目・昭和のねずみ小僧」が居ることになる―――。
石坂は秘密裏に3人の過去を調べ始める。
一方、律子からこれを聞かされた富永も同様に捜査を開始。
すると、意外な事実が判明する。
村木と桃子に因縁があったのだ。
広島出身であった桃子。
幼い頃に母を亡くし、以降は児童福祉施設で育っていた。
この母を亡くした理由に村木が関わっていたのである。
父が失踪し、残された桃子と母。
困った母は保護費を申請した。
ところが、当時担当であった村木が桃子の母に邪な感情を抱いたのだ。
これを拒否したところ、偽りの報告を提出され受給出来なくなってしまった。
結果、桃子の母は衰弱死してしまっていたのである。
桃子にとって村木は仇であった。
そして、桃子が「本当に困っている人にこそ救済が必要で、不正受給など以ての他!!」と語った理由はコレであった。
そんな中、「2代目・昭和のねずみ小僧」から予告状が富永のもとに届く。
其処には「大切な人を奪った者に復讐する」とあった。
富永は野口、桃子、村木に監視を付ける。
一方、富永から予告状を見せて貰った石坂は犯人に気付く。
その夜、村木宅を張り込む石坂と富永。
其処へ中から「2代目・昭和のねずみ小僧」らしき人物が現れる。
村木こそが2代目だったのか?
いや、違う。
その人物の手には既に仕事を終えた証拠の大金が入った鞄が握られていた。
村木こそがターゲットだったのである。
出て来た2代目らしき人影を追跡する石坂と富永。
2人は遂に人影を捕まえる。
その正体は野口であった。
同時に、石坂は野口こそが「昭和のねずみ小僧」本人だと指摘する。
そう、2代目などはそもそも存在していなかったのである。
福場も本人が知らないところで利用されただけで全く関係ない。
では、何故、2代目が現れたのか?
それには「昭和のねずみ小僧」としての野口のプライドが関係していた。
「昭和のねずみ小僧」として盗んだ金を分け与えていた野口。
彼にとって自身の行いは犯罪でこそあるものの、弱者を救済する為の正義であった。
ある事情により東京へと出て来た野口は「あすなろ荘」を経営し、「昭和のねずみ小僧」として活動しつつ表からも救済活動に尽力していた。
しかし、思いも寄らない事態が発生してしまう。
それが4号室への福場の入居であった。
実は、野口は4号室に備えられた押入れの床下に盗んだ金を隠していた。
これを弱者に配っていたのだ。
野口が福場の入居を渋ったのもこれが理由であった。
ところが結局、福場が入室してしまったことで金が出し入れ出来なくなった。
しかも、福場は医者嫌いの為に野口に隙を見せない。
困った野口は千枚通しを用い窓から侵入することにした。
しかし、この現場を桐畑に目撃されてしまったのだ。
桐畑と揉み合いになってしまった野口は誤ってこれを殺害してしまう。
義賊であり、人を殺さないことが誇りであった野口にとってこれはあってはならない事態であった。
少なくとも「昭和のねずみ小僧」の名を汚すことは出来ない。
其処で架空の2代目が実在するように偽装し、その犯行に見せかけようとしたのだ。
まさか、律子が石坂に罪を着せようとするとは思いも寄らないことであった。
では何故、野口は村木宅をターゲットにしたのか?
それは野口こそが失踪した桃子の父親だったからである。
「昭和のねずみ小僧」として活動していた野口は妻子に迷惑をかけないよう姿を消した。
ところが、これが仇になった。
村木に付け入られることとなり、桃子の母が死に追いやられた。
桃子自身も苦しみを背負ったのだ。
これを野口は後に知った。
以来、野口は桃子を陰ながら見守り続けたのだ。
これこそが野口が上京した理由であった。
だからこそ、最後に仇をとるべく村木を狙ったのである。
こうして野口は逮捕された。
桃子は野口を父と知り、これと和解する。
今回の活躍により、石坂は桃子から認められたようである―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は大門剛明先生『レアケース』(PHP研究所刊)。
あらすじは次の通り。
<あらすじ>
2014年、石塚英彦主演で、「水曜ミステリー9」(テレビ東京系)ドラマ化!
今、何かと話題の「生活保護制度」の矛盾を突く問題作!
生活保護者を担当するケースワーカーとして、大津市役所に勤める石坂壮馬。彼は、生活保護をもらうだけでいっこうに自立しようとしない者や、仮病などで保護費を詐取しようとする者、そして被保護者を食い物にする「貧困ビジネス」の存在に、生活保護制度の矛盾を強く感じていた。そんな中、大津市内では、あくどく稼いでいると評判の者から盗みを働き、貧しい人々に金を配る「現代のねずみ小僧」が話題になっていた。――ねずみ小僧に複雑な思いを抱く壮馬だったが、ある日、彼の担当する被保護者が殺される事件が起こり……。
殺人事件の意外な真相とは? そしてねずみ小僧の意外な正体とは? 「横溝正史ミステリ大賞」受賞でデビューした社会派の気鋭が格差社会の闇に迫る、二転三転する衝撃のミステリ。
(PHP研究所公式HPより)
著者である大門剛明先生原作のドラマと言えば、2010年9月19日に放送された『雪冤』以来。
『雪冤』からは実に3年半ぶりのドラマ化となります。
奇しくも、ドラマ版『雪冤』は同じテレビ東京系列で本番組の前身である「水曜シアター9」時代の作品。
原作、ドラマ共に過去記事有りますね。
当ブログもまだまだ初々しい頃で、管理人も振り返ると感慨深いです。
・水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
なかなか良かったですね。
主人公である石坂の体型こそが犯人では有り得ない証拠となる点は、視覚的にも分かり易く、また演者の特徴を活かした良い点だと思います。
それと、石坂が推理するシーンで「信濃のコロンボ」のテーマ曲が流れたのは印象的でした。
ちなみに、公式のあらすじだと、福場の件で「快く部屋を貸してくれた野口」となっているけど、そもそも快く貸してくれなかったから石坂が野口の犯行を疑ったワケで。
この記述はちょっと気になるかな。
とはいえ、ドラマ上は問題なし。
それと、テーマについては触り程度でかなりマイルドにされていたように思いますね。
これが今回は良い方向に働いていたように思います。
次回以降はキャラを活かしたオリジナルストーリーで続編もアリな出来ではないでしょうか。
◆関連過去記事
【大門剛明先生原作ドラマ関連記事】
・水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【大門剛明先生著作関連記事】
・「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
<キャスト>
石坂登志男:石塚英彦
上原桃子:酒井美紀
野口充:伊武雅刀
村木芳忠:永島敏行
富永保夫:佐藤B作
目片律子:杉田かおる
梨田剛:嶋田久作
小林恵太:山中聡
森山邦宏:牧田哲也
石坂壮馬:根岸拓哉
福場次郎:深水三章
黒川刑事:工藤俊作
稲川英介:三田村周三
桐畑弘:ガンビーノ小林
佐々木真希子:東山明美 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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