2014年05月02日

『嘘つき鼠』(梓崎優著、徳間書店刊『読楽 2014年5月号』掲載)

『嘘つき鼠』(梓崎優著、徳間書店刊『読楽 2014年5月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

生き抜く為、≪U≫に属した兄弟。
行方不明だった妹からの手紙が届く。
組織を裏切り、兄弟は妹を探す旅へ出る。
(徳間書店公式HPより)


<感想>

全編から刹那的かつ破滅的な匂いが漂う物語です。
組織から抜けた彼らの行く手には、あの結末しか存在しえなかったのでしょう。

そんな彼らにとってある目的を抱いた逃避行が描かれつつ、その裏で大きな仕掛けが動いています。
ラストにて、本作に隠された大きな謎の正体が明らかにされるとき、読者をサプライズが包み込むでしょう。

このあたりは、流石に海外を舞台にした作品を多く手掛けた作者だからこそ。
ネタバレあらすじは本作の楽しみを損なわないように、大仕掛けの部分は残しつつ他を大幅に改変しています。
是非、本作それ自体を手に取ってご確認頂きたい。
読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
タヒル:アダンとサラの兄。Uに所属する。
アダン:タヒルの弟でサラの兄。Uに所属する。
サラ:タヒルとアダンの妹。Uに所属した2人と袂を分かった。

その日、タヒルとアダンはそれまで所属していた組織「U」を裏切り旅に出た。
彼らの目的はただ1つ、彼らがUに属した為に不仲となり袂を分かってしまった妹・サラのもとへ向かうこと。
最近になって届いたサラの手紙を読んだアダンの先導で、彼らは幸せに暮らしているらしいサラのもとへと車を進める。

タヒル、アダン、サラ、3人は内戦によりボスニアで両親を失った。
3人は共に孤児院に引き取られ、其処で成長した。
その孤児院の院長はUのエージェントであった。
やがて、タヒルとアダンはUに所属することとなった。

しかし、1人サラだけはこれに反発した。
ある日、サラは孤児院から逃亡し行方が分からなくなった。

後にサラが反発した理由が判明した。
Uは内戦を利用して周囲に武器を売り捌いていたのである。
いわば、彼ら兄妹の仇でもあったのだ。
サラはこれに薄々勘付いていたのであろう。

タヒルとアダンがこれを知ったその日。
彼らは院長と、やって来ていた別のエージェントを射殺した。
そして、妹・サラから届いていた手紙を頼りに旅に出たのだ。
早晩、彼らの裏切りはUに知れるだろう。
当然、追っ手がかけられるに違いない。
その日その時から、彼らは逃亡者となっていた。

道中、タヒルは何度となく口にしていた。
「サラはボスニアには住んでいないのだろうな」と。
何故なら、タヒルにとってそれは両親の命を直接的に奪った相手だったからである。
これに、アダンは何度となく頷いた。
アダンは黙々と車を飛ばした。

アダンは思う―――まるで、某アニメの猫と鼠のようだと。
そう言えば、あれにはこんなエピソードがあった。
鼠は猫に嘘の場所を教え、猫はそれを信じて痛い目に遭う。
果たして、自分たちはどうなのだろうか……。

遂にサラが住む街へと辿り着いたアダンとタヒル。
2人は其処で若い男性と共に居るサラを目にし安堵する。
サラは大丈夫、もう彼らが居なくても支えてくれる相手が居るのだ。

声をかけずにその場を去ったアダンたち。
その直後、アダンを衝撃が襲った。
アダンは何がやって来たのかを理解した。
次いで、タヒルもまた身を震わすと倒れ込む。
彼の身体からは血が流れていた。

そう、Uの刺客がアダンたちを襲ったのだ。
それは必殺の一撃であった。

アダンは薄れゆく意識の中で思い浮かべる。
鼠に騙された猫は騙された事実を知るまで幸せの絶頂にあったに違いない。
だとすれば、タヒルもまたそうなのではないかと。

タヒルはUから逃げ切れると思っていたらしいが、アダンは違っていた。
Uは強大な組織である。
到底、逃げ切れる筈がない。

タヒルはアダンにとって尊敬できる兄である。
せめて、幸せな気持ちで最期を迎えさせてやりたかった。
其処でサラの現状を確認させてやろうと決意した。

だから、アダンは偽った―――サラの居場所を。
サラはボスニアに居たのだ。
サラはその事実を手紙で語りつつ、本当に幸せそうであった。

だが、タヒルが事実を知れば、怒りに我を忘れ何をするか分からない。

それはサラの生活を壊しかねないものであった。
サラを1目見ることは消えて行くタヒルたちの我儘に過ぎない。
だとすれば、死する2人に代わり、生きるサラを守る為に事実を偽ることに何の罪があろうか。
其処で、アダンはタヒルに行先を偽りつつも目的地であるボスニアに連れて来たのであった。

アダンは死の間際、倒れたまま見えないタヒルの笑顔を思い浮かべた。
そして、サラを祝福し微笑んだ―――エンド。

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