2014年05月12日

「最強少女さゆり」第11話(16話)「リコスとタマちゃん」(福田やすひろ作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「最強少女さゆり」第11話(16話)「リコスとタマちゃん」(福田やすひろ作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
さゆり(彩百合):謎の少女。4歳ながらとてつもない怪力を誇る。
豪田:さゆりの祖父。普通の人。
バニー・ラビット:宇宙警察の刑事。
リコス:バニーが追う逃亡犯。
源さん:さゆりの体当たりを受け止めることが出来る地球人。愛の力は偉大だ。
駐在さん:最近赴任してきたばかりの若い警官。集中連載1話でさゆりの三輪車に撥ねられトラウマに。
ヨシさん:隣町の住人。さゆりを侮ったが為に……。
恭也:さゆりが出会った年上の少年。さゆりに自身を「師匠」と呼ばせる命知らず。
メタボ:ヤスの兄貴分。
ヤス:メタボの弟分。出っ歯が特徴。心は折れても出っ歯は折れない。
オヤッサン:バッティングセンターの経営者。
タマちゃん:オヤッサンが作った自律制御AI搭載型ボールタイプロボット(たぶん)。
デービス親子:グリーンスライダー大会に参加した親子。

<あらすじ>

〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

宇宙刑事であるバニー・ラビットは凶悪犯リコスを追って地球に飛来。
あと一息というところまで追いつめるが、現地の少女・さゆりにリコスともどものされてしまう。
こうして、さゆりの家に保護(囚われた)されることに。
仲間に救助を依頼するが助けは未だにやって来ない。
さゆりを通じ、何時の間にやら凶悪犯のリコスが善良になりつつあるなど、想定外な要素を抱え過ぎた彼女の明日はどっちだ(嘘)!?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

1人の将軍が名を成す陰には多くの兵士の犠牲がある。
すなわち「一将功成して万骨枯る」とはよく言ったもので。

此処でも同じような出来事が起こっていた。

スヤスヤと寝入ったさゆり。
その傍らではバニーとリコスが憔悴し切った表情で座り込んでいる。
ぐずってしまったさゆりの睡眠という成果の為に、バニーとリコスが身体を張った結果である。

バニーとリコスにとってはようやく手に入れたこの成果……当然、手放したくない。
その為に、2人はサイレントモードを余儀なくされていた。

すなわち、極力喋らない。
すなわち、音を立てない。
すなわち、寝ているさゆりに触れない。

さゆりが寝返りを打つたびに身を固くする2人。

こんな生活もう嫌だ〜〜〜リコスが暴れ放題やっていた過去を思い返す。
ああ、宙はあんなにも遠い……。
そんなリコスに、本来ならば対立する立場の筈のバニーも同意。
「迎えは何時になるのだろう……」とぼんやりとした目で答える。

2人の意志は同じように見える。
だが、やはり2人は敵同士だったのだ。
バニーはリコスの隙を突くと、豪田の買い出しに同行するとの大義名分で逃げ出してしまう。

残されたリコスが愚痴を零す中、さゆりはスヤスヤと寝息を立てていた。
その寝顔からはあの鬼神の如き恐ろしさは全く窺えない。
だが、それを忘れてはならないのである。

同じ頃、豪田家に一台の改造トラクターが向かっていた。
運転手はオヤッサン、その隣にはタマちゃんも同乗している。
改造トラクターは勢いそのままに豪田家に突っ込んだ。

響く轟音に、慌てるリコス。
だが、さゆりはまだ寝ている。

胸を撫で下ろしたリコスは改造トラクターの主・オヤッサンを批難する。
しかし、オヤッサンはそれどころではなかった。

「ゲリラ豪雨じゃぁ〜〜〜」

と奇声を上げながら、豪田家のトイレに駆け込んだのだ。
どうやら、急な腹痛でトイレを探していたらしい。
トイレに立て籠もってしまったオヤッサン。

残されたのは、リコスとタマちゃんだけである。
リコスは「お前さんも大変だなぁ……」とタマちゃんに同情するが「お前に言われる筋合いはねぇ」と暴言を返されてしまう。

実はタマちゃんには二面性があったのだ。
マスターであるオヤッサンには礼儀正しいが、自分より下と認識した者には悉く蔑むのである。
そして、リコスはタマちゃんから完全に格下と思われていた。

「この野郎〜〜〜」
事情を察したリコスは「上下関係を教えてやるぜ!!」とばかりにタマちゃんに拳骨。
しかし、タマちゃんはマシンの身体である。
逆にリコスが痛みに震えることに。

「てめぇ〜〜〜よくも〜〜〜」
怒りに我を忘れたリコスはタマちゃんへ嫌がらせを繰り返す。
しかし、タマちゃんは動じない。
むしろ、さゆりを盾に「おら、煙草を寄越せ」と迫る始末。

リコスはプルプルと小刻みに震える。
そして、吠えた!!
それはもう周囲を震わせんばかりの大声で。

さて、読者の皆様には思い出して欲しい。
リコスには忘れてはならない事柄があったような……。

案の定、寝起きのさゆりの一撃で沈黙させられることになるリコスであった。

どうやら、この勝負。
タマちゃん圧勝のようである―――エンド。

前回に続き登場のオヤッサンとタマちゃん。
あらすじでは彼らの味を伝えきれていません。
本作を真に楽しむ為に「週刊少年チャンピオン」本誌にて確認せよ!!

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて短期集中連載された福田やすひろ先生の作品「最強少女さゆり」。
そんな本作が正式な連載として帰って来ました!!
ファン大歓喜だぜ、ヒャッホウ(^O^)/!!

ちなみに連載になったことで本作のアプローチも多少変わった様子。
短期集中連載時は「さゆりを中心とし、人並み外れた怪力がありながら周囲の人々に保護される4歳児を描くハートフルコメディ」でしたが「人並み外れた怪力を有する少女と、これを温かく見守る周囲の人々を描いたハートフルコメディ」へと変わった印象あり。

つまり、何処が変わったかと言うと、短期集中連載時は「さゆりが中心だった」のに対し連載では「さゆりとその他の人々」にまで焦点の対象が広がったかな。
これは新キャラである恭也の登場にも顕著。
それに伴い源さんの「さゆりラブ」キャラに拍車がかかってます。
これにより、さゆり抜きでサブキャラたちのみ描かれる回も有り得ますね。
正直、個人的には短期連載時の「さゆり中心」のノリが好きだけど、連載が長期化することを見据えれば物語の幅を広げる意味で正しい判断だと思われます。
ただ、出来るなら主人公・さゆりの正体はもちろんのこと、リコスとバニーの掘り下げをもっとして欲しいかも。

そんな仕切り直しの11話(通算16話)。
「オヤッサン」3度登場回。
さらに、タマちゃんの意外な本性が明らかに―――これでリコスとの因縁が出来たか。
これにより、オヤッサンはさゆりにリベンジ、リコスはタマちゃんにリベンジを目的とした展開も有りそうだ。
ちなみに、10話にてさゆりはボール恐怖症になってる筈だから、設定がリセットされていない限りは「タマちゃん」有利な筈なんだよなぁ……。

ちなみに「タマちゃん」。
今後も改良されて「タマちゃんMK2」とか「タマちゃん改」とか「Zタマちゃん」とか出て来て欲しい感じだ。
オヤッサン同様に良キャラになりそうな予感。

さらに、さゆりに弱点が増えつつある印象。
これまでのところ、お化け、ボールとかが上がってるけど、これを利用してさゆり打倒を図るキャラが居ても良さそうだ。
もちろん、オチはあまりの恐怖にさゆりがキレて相手ごと吹き飛ばしてしまうもので決まり!!
やっぱり、この様式美が読者的にスカッとするんだよなぁ……。

本作の魅力は2つあると思う。
まず1つ目は、あのファンシーな絵柄で驚きのアクションを魅せること。
そして、2つ目は「思わぬ展開の意外性(キャラ追加など)」と「固定化された結末の安定性(さゆり大勝利)」この2つのバランスが伴うこと。
これが面白い!!

とはいえ、おそらく此処で幾ら言葉を尽くしたところで本作の面白さは伝えられないだろうなぁ。
やっぱり本作は理屈じゃないな。
実際に読んで感じるべし。

彩百合の両親が謎ですね。
山中の病院で1ヶ月に1度のお見舞い……「となりのトトロ」を思い出しました。
さゆりの母は静養中(「さゆりと峠とお見舞い」参照)なのでしょうか。
そう言えば、リコスはトトロっぽいと言えなくもないか。
入院中とのことですが、何か理由があるのでしょうか。
このあたりも謎だし、連載になった以上はいずれ明かして欲しい。

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は「名探偵マーニー」や「実は私は」など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

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