2014年05月14日

『死の発送』(松本清張著、角川書店刊)

『死の発送』(松本清張著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

トランクの死体は発送者本人だった…!競馬界を舞台に描く本格長編推理小説

東北本線・五百川駅近くで死体入りトランクが発見された。被害者は東京の三流新聞編集長・山崎。しかし東京・田端駅からトランクを発送したのも山崎自身だった。競馬界を舞台に描く巨匠の本格長編推理小説。
(角川書店公式HPより)


<感想>

被害者が発見されたトランクを送り出したのも被害者だった!?
そんな不可思議状況が発生する本作。

確かに、謎は魅力的なのですが……その解明については首を傾げざるを得ないかも。
個人的に、その他の部分も恣意的に過ぎて不満が残る。
それと、競馬界を舞台にしているものの、特に競馬界とは関連性が薄いのも……。

正直、松本清張先生作品ならば、他に読むべき作品も多い。
他の作品を読むことをオススメしたい。

<ネタバレあらすじ>

・登場人物一覧
底井武八:山崎の部下で記者。彼の死の真相を追う。
山崎:底井の上司で編集長。
岡瀬:5億円を横領したとされる公務員。
西田:調教師。
末吉;厩務員。
立山:元代議士。

5億円を横領した罪で逮捕され、近頃刑期を終えた岡瀬が何者かに殺害された。
岡瀬が横領した5億円のうち4億円は使途が明らかになっていたが、残り1億円のみ不明になっていたのだが……。

編集長の山崎は部下の底井と共に岡瀬の死について調べ始めた。
すると、西田が調教師を勤める厩舎に殺害される直前の岡瀬が出入りしていたことが明らかになる。

矢先、底井は山崎から取材を外される。
山崎の真意が分からない底井は困惑するが……。

数日後、今度は山崎の死体が宅配済みのトランクの中から発見される。
しかも、不思議なことに発送者も山崎本人であった。

発送した人物が発送した荷物の中にどうやって入れるのか?
この謎に底井が挑むことに。
底井は山崎の敵討ちを目論むが……。

まず、山崎の取材経路を追った底井。
すると、山崎が西田厩舎に注目していたことが判明する。
さらに、西田厩舎に馬を預ける立山元代議士にも興味を持っていたようだ。
山崎は立山に接触していたのである。

此処で、底井ははたと気付いた。
もしかして……山崎は立山を脅迫していたのではないか。
しかも、前後を考えれば岡瀬の横領が関係していることは間違いない。

だとすれば、何が考え得るか。
そう、使途不明とされる1億円は立山の手に渡っていたのでは……。

岡瀬は立山に1億円を貸し付けた。
刑期を終えた岡瀬は、西田を通して立山に取り立てに向かった。
だが、立山はこれを返済出来ず西田に命じて岡瀬を殺害した。

これに山崎が気付いた。
山崎は底井を遠ざけると、岡瀬同様に西田を通じて立山を脅迫した。
其処で、西田に殺害されたのではないか……。

しかし、山崎が発送したトランクの謎が残る。
さらに調査を続けた底井は、西田厩舎の厩務員・末吉が犯行当日に同僚に夏みかんを配っていたことを知り注目。
果たして、末吉はどこから夏みかんを運び込んだのか。

もしかして、トランクは2つ用意されていたのではないか。
1つには夏みかんが入っていた。
もう1つは空だった。

山崎が発送したのは夏みかん入りのトランクだったのでは……。
その後、山崎が殺害され空のトランクに収められ、夏みかん入りのものとすり替えられたのではないか。

これならば謎は解ける。
だとすれば、西田だけでなく末吉も関与しているに違いない。
ところが、当の末吉は厩舎を退職し姿を消していた。
おそらく、立山と西田から報酬を受け取ったに違いない。

それは間接的に底井の推測が正しいことを示していた……。

数日後、西田が逮捕され、その供述から真相が明らかになった。
底井の推測は正しかった。

立山は岡瀬から1億円を借りていた。
岡瀬はこれを取り立てようとして殺害されたのだ。
その後、山崎がこれに気付き脅迫を開始。
口封じするべく、西田が山崎を殺害しトランク詰にしたのである。
この際、自身の関与を知られないように山崎自身に発送させた。

しかし、西田はこれを後悔しているとのことであった。
山崎を発送役にしてしまったことで、不可解な状況が生まれてしまったからである。

さらに数日後、末吉も逮捕された。
もちろん、立山も逮捕されることになったのは言うまでもない―――エンド。

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