2014年05月23日

「思春鬼のふたり」第14話「逆転のふたり」(反転邪郎作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「思春鬼のふたり」第14話「逆転のふたり」(反転邪郎作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
辻:WCO(世界お掃除機構)に所属する掃除人(連続殺人鬼)。
白雪:辻に恋焦れる少女。
担当さん:辻を担当するWCOの職員。
深海末姫:辻と白雪の前に現れた少女。「もう1人の掃除人」を名乗る。
諏訪:深海のクラスメート。実はWCOの掃除人。6話で小鹿に処刑される。
小鹿陸:眼帯を着けた謎の少女。演劇部所属。実はWCOのお仕置き人であった。
黒金:辻たちが通う学校の教師。女性。
若丸:黒金が招いた病院の医師。男性。
星野銀華:元WCOのお掃除人。だが、WCOを離脱する。
園長:辻と白雪が遊びに出かけた動物園の園長。
高倉さとみ:星野銀華に大きな影響を与えた人物。

<あらすじ>

お仕置き人・小鹿の登場でヒヤリとさせられた辻であったが、彼女の狙いは辻の命ではなく共闘し星野銀華を討つことであった。
そう、辻はWCOに仇為す星野銀華のお掃除を命じられたのだ。

抵抗を示す辻に、小鹿は星野の過去を語り出す……。

WCOのお掃除人であった星野銀華は実力抜群の若手であった。
ある日、彼は男をあっさりと葬った。
男の名は高倉、彼には幼い娘がおり、その名をさとみと言った。
さとみは高倉が殺され、その死を悲しみ泣いた。

星野は高倉の悪行を知っており、娘・さとみが悲しむ理由が分からなかった。
当時の星野はそれこそが正義と疑わなかったからである。

そんな星野に担当は語る。
「1人ずつでも悪人を減らして行けば、世の中は良くなる」と。
そして「今こそ、さとみは泣くだろうが、いつか笑う日が来る」と励ましたのだ。
星野はこの言葉を糧に、多くの命をその手で奪った。

星野はいつしかお仕置き人に推薦されるまでになった。
しかし、現場で悪を討つことこそが正義と信じる星野はこれを辞退し悪を狩り続けた。

時が過ぎ999人もの悪が星野により消えた。
いよいよ1000人目―――そのとき、それが起こった。

今回のターゲットは同級生を苛める女子高生。
その非道ぶりは周囲に良く知られていた。
星野は彼女の悪行を知るや、これをお掃除することを厭わなかった。

ところが、当の本人を目のあたりにした星野は戸惑うことに。
なんと、ターゲットの女子高生こそ高倉さとみであった。
さとみは幼き日に泣き腫らした瞳を邪悪に淀ませ、唇を歪めて愉快そうに笑っていた……その足元にはイジメの対象を踏みつけてである。

確かにさとみは笑っている。
だが、星野が望んだものはこんな笑顔ではなかった。
星野はさとみを殺せなかった。
それどころか、どれだけ悪人を狩ったところで悪は滅びないと結論付けた。
すなわち、WCOの行為は無意味である、と。

こうして、星野はWCOを抜けると他のお掃除人を妨害し始めた。
有数のお掃除人である星野に対抗し得る者は居らず、多くのお掃除が失敗に終わった。
そして、今も星野はお掃除を妨害しようと動き回っている。

これを聞いた辻は、討つ前に星野と話をさせて欲しいと主張する。
それに何らかの意味を認めたのか……小鹿は意味ありげに頷く。

其処へ新たなお掃除依頼が飛び込む。
その標的は5人、罪状はリーマン狩りであった。
もちろん、星野はこれを妨害すべく現れる筈である。
そのときこそ……勝負の時だ。

一方、標的とされた5人は今日もサラリーマンを捕まえてはナイフで脅し遊んでいた。
命乞いするサラリーマンに次々と無茶な要求を突き付ける彼ら。
しかも、最後には「飽きた」との理由で殺してしまうのである。

この外道相手に、星野は……辻は……どう対するのか!?―――15話に続く。

星野と辻の正義が激突するとき迫る!!
一方、5人のターゲットも存在。
果たして、どうなる!?
「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「コミックフラッパー」にて「モコと歪んだ殺人鬼ども」を連載中の反転邪郎先生の新作が「週刊少年チャンピオン」で連載開始です。

その新作「思春鬼のふたり」はなかなかにぶっ飛んだ設定が印象的な作品。
思春期真っ盛りの主人公・辻は悪を滅する掃除人こと連続殺人鬼。
そんな辻の正体を知りつつ、彼を愛する少女・白雪。
果たして、2人はどうなるのか……的なストーリー。

そんな「思春鬼のふたり」コミックス1巻が発売決定とのこと、見逃せません。
しかも「モコと歪んだ殺人鬼ども」4巻も発売が控えているそうです。
ちなみに「思春鬼のふたり(1巻)」と「モコと歪んだ殺人鬼ども(4巻)」にコラボ企画があるとのこと。
両方購入すると、描き下ろしのコラボ特典を貰えるそうです。注目!!

さらに5月29日更新の「チャンピオン タップ!」にて「思春鬼のふたり」番外編が掲載。
ほんわか番外編とのこと、こちらも注目です!!

さらにさらに、「ダ・ヴィンチ 2014年6月号」の「相棒」特集に反転邪郎先生が参加されています。
先生による美麗なイラストつきで、好きな相棒回が掲載。
その回とは「シーズン4」19話!!
詳しくは……「ダ・ヴィンチ 2014年6月号」を読むべし!

まさに破竹の勢いの本作。
さて、その14話ですが……。

星野とさとみのシチュエーションは、辻と白雪のソレと同じか。
星野銀華はある意味もう1人の辻なのかもしれないなぁ……。
そして、高倉さとみはもう1人の白雪か。
辻も白雪がさとみみたいになっていたら、星野と同様の結論に至っていたのかも。
その点、白雪は特殊に過ぎたが、これが奏功した形に。

それにしても、高倉さとみ。
あの幼くあどけなかった少女があのように悪辣に変貌するとは恐ろしい。
本エピソード解決前には、星野から託された辻によりお掃除されそうだ。
でもって、さとみの成長具合から星野銀華は結構な年齢を重ねてそうだなぁ……。

ちなみに妄想の上で「辻が星野から託され、さとみをお掃除する」と書いたけど、十中八九星野は本エピソードで絶命しそうだな。
展開としては、星野がWCOに反抗する理由が彼自身が口にした通りかどうかで次の3つに分かれる。

1.まず、星野が彼自身が語る通りの理由でWCOに反抗している場合(その1)。

自身の信念で5人組を助ける星野。
だが、警察に通報されることを怖れた5人組は助けてくれた星野を背中から刺す。
こうして、不意討ち同然の方法で星野は殺害される。
これにより、星野は助けるべきではない外道が存在することを認め、さとみもまた矯正されるべきと、このお掃除を辻に託すパターン。
これを通じて辻もまた悪人狩りの意義を認める展開か。

2、星野が彼自身が語る通りの理由でWCOに反抗している場合(その2)。

星野と対決する辻。
辻を追い込む星野だが、止めに入った白雪から彼女が辻に感謝していることを聞かされる。
これにより、決してさとみのようなケースだけではないことを知りトラウマが解消、星野は和解しようとするが……。
此処で小鹿が乱入。WCOの意志により、星野は粛清される。
これにより、辻がWCOに疑念を抱くきっかけとなる。

3.星野が口にした理由が全くの嘘の場合。

それこそ辻が戦う理由には事欠かないから、辻により星野は抹殺されるだろう。

1、2、3いずれにしろ、星野存命は難しい。

個人的には1のパターンだと思う。
だからこそ、あの非道な5人組が登場したのだと思うし。
ちなみに、辻の両親の死にはWCOが関与していると思うから、いずれは辻とWCOが対立することになりそうだが、まだ時期尚早かも。

ただ、上記方法はどれもあまりに普通過ぎて好ましくない。
どちらかと言えば、もっと星野と辻のイデオロギーを真っ向から対決させた上で意外な決着にして欲しい。
果たして、本編は如何なる展開を迎えるのか……注目です!!

本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は「名探偵マーニー」、「実は私は」や本作など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

◆関連過去記事
「思春鬼のふたり」(反転邪郎作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)1話から10話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

「思春鬼のふたり」第11話「息抜きのふたり」(反転邪郎作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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「思春鬼のふたり」第13話「生死のふたり」(反転邪郎作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
辻も銀華も根本的な勘違いとして、そもそも悪人を倒したり、逮捕するのは「これ以上マイナスを増やさない」ために行うことである
ヒーロー物の怪人が良い例で、「倒さないと犠牲者が増え続ける」が「被害者や壊された物は敵を倒してもなおらない」からだ

銀華の語ったケースは、父親を殺した後、娘の生活を支援して被害者を救うことから始まるのである

善人だけは無理でも善人を増やしたいのなら経済や治安の安定をもたらし、不満不安の少ない、「良い」社会を作るべきである

つまり、「良くする」ためではなく「悪くならない」ために行動しているからで、銀華の語る「パレートの法則」は実は問題ではないのだ

もっと言えば、彼らは行動がもたらす結果を明確に予測せず、ただ良くなるだろうと言う思い込みに振り回されているだけだ

本当に「良く」したいのなら政治家になって治安と社会の安定、大規模の会社を作って雇用者に安定した給料と生活の提供、教育者として児童を正しく導けばいい
しかし、そのためには未来の明確なビジョンと責任が必要だが、彼らにはどっちも無く、簡易で芯も核も無い夢想を実行しているだけである

ここで気になるのは、この話がどう転がるのか

辻が白雪という救われた例を元に殺人を正当化して辻を「ヒーロー」として押し通すか、過ちに気付いて変わっていくのか、ブラックなネタで押すのか
最初はブラック路線かと思えばいつの間にか先が気になってます

長文失礼しました
Posted by アキシン at 2014年05月26日 00:41
Re:アキシンさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

「思春鬼のふたり」いろいろ考えさせられる作品ですよね。

確かに辻と星野が行っているのは対症療法に過ぎませんね。
根本的な解決には至らない。

そして、これを推奨するのが「お掃除機構」だとすれば、やはり「お掃除機構」には何か狙いがあるのかもしれせん。

此の点、如何に展開して行くのか、辻がどう変化するのか(あるいは、しないのか)……。
「思春鬼のふたり」は今後に注目の作品の1つです!!
Posted by 俺 at 2014年05月27日 00:01
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