ネタバレあります、注意!!
『月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ』誌上にて『棺探偵D&W』を連載中の光永康則先生。
そんな光永先生が新たなミステリー作品に挑まれました。
その名も『カコとニセ探偵』!!
『週刊ヤングジャンプ』誌上にて読切として掲載された本作、こちらをネタバレ批評(レビュー)です。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
六波羅覚:幼き日に少年探偵として名を馳せた名探偵。
沢角泉:捜査一課所属の女性刑事。
化子:謎の存在。
みさき:泉の高校生の妹。
平田香苗:主婦、何者かに殺害される。
その日、高校生探偵・六波羅覚は捜査一課の女性刑事・沢角泉に呼び出され、とある殺人事件現場に赴いていた。
彼の目の前には殺害された主婦・平田香苗が横たわっている。
「あなたにこの事件の犯人が分かるかしら、名探偵くん?」
挑発的な泉の言葉にも、六波羅に怯む様子はない。
「すでに犯人は分かっていますよ」
六波羅が冷静に応じる。
彼の視線はある一点を捉えていた……そう、横たわる平田香苗の遺体の上に浮かぶモノを。
それは恨めし気な表情を浮かべ、傍らで立ち番をしている制服警官を指差している。
それこそ、平田香苗の霊であった。
そして、彼女の指が指し示す制服警官こそ彼女を殺害した犯人である。
「世も末だな……」
六波羅はボソリと呟くと行動を開始した。
まずは、台所である。
洗い物を確認し、包丁を見詰める。
「これが凶器ですよ。そして、犯人は来客としてこの家を訪れた。何故なら、ティーカップが濡れている……おそらく、犯行後に犯人が痕跡を消すべく洗ったのでしょう」
次いで、2階へ。
寝室に入り込むとクローゼットを調べ始める。
其処には香苗の夫である平田の服が多数吊られていた。
その中からサイズが明らかに一回り小さい物を選び出す六波羅。
「これが犯人の衣服でしょう。犯人は犯行後に服を着替え、元着ていた服を此処に紛れ込ませた」
言い置いて元の場所へ―――すなわち、立ち番している犯人のもとだ。
六波羅は無造作に犯人の腕を掴み上げると、袖口を確認する……其処は濡れていた。
「やはり……着替え後に痕跡を消すべく洗い物をした為に濡れたのでしょう。この人が犯人です」
六波羅の推理に、犯人はその場で逮捕された。
同時に、すっと平田香苗の霊も消える。
「見事だわ、六波羅くん」
六波羅の推理に立ち会った泉は素直に感心している。
さらに泉は続ける。
「流石は少年探偵として名を馳せた六波羅覚くん。でも、その為にさまざまな犯人や組織から恨みを買い一家は離散。そして、君自身も犯人と指摘された人物の家族たちから名誉棄損で訴えられている」
泉の揶揄するような言葉を相手にせず、背中を向ける六波羅。
そんな六波羅の背中に泉は話し続ける。
「どう?そんなあたなでなければ解決出来ないだろう難事件があるの。協力してくれないかしら」
こうして、六波羅は泉の語る難事件に挑むこととなった。
泉に連れられ六波羅がやって来た場所は夜の女子高……その3階トイレである。
泉によれば、此処で都合8人の生徒が死亡しているらしい。
まず、最初の1人が「花子さんを見た」と言い残し転落死を遂げた。
次いで、7人が同様に「花子さんを見た」と言い残すと次々と変死を遂げたのだ。
この8人を殺害した犯人を突き止めて欲しいらしい。
泉の依頼に六波羅が周囲を見回した。
状況は明らかであった。
トイレの窓の外に1人、トイレの中に7人の制服を着た幽霊が立っていた。
六波羅は真相を語り始める。
まず、最初の1人は後に死亡した7人による殺人事件であったこと。
動機は不明だが、7人は共謀して1人を殺害した。
この女子高の建物は階が違えど、構造はまるきり同じである。
7人は被害者を1階教室で椅子に座らせた状態で眠らせた。
その後、気付かれないように3階教室に運ぶ。
目覚めた被害者が教室を出ると、花子さんの面を被った7人が脅す。
これに怯えた被害者は逃げようと手近なトイレへ逃げ込む―――その窓が外へ通じていると知っていたからだ。
だが、此処は1階では無い3階である。
あえなくバランスを崩し転落死してしまったのだ。
この六波羅の推理に窓の外に浮かんでいた幽霊は消えた。
どうやら正しかったようだ。
そして、残る7人を殺害した犯人は……。
「犯人はお前だな……花子さん!!」
六波羅は7人の霊の上にふよふよと浮かぶ奇怪な面の少女を指差す。
釣られてこれを見た泉が恐怖のあまり倒れ込んだ。
六波羅が冷や汗を流す。
(まさか、普通の人間にも見えるとは……一体、なんだ?)
通常、幽霊は六波羅以外の人間には見えない筈である。
だからこそ、平田香苗や他の被害者たちも騒がれなかったのだ。
だが、この奇怪な面の少女は違う。
現に泉が直視し切れずに気絶してしまった。
「なかなか面白そうなのが来たな」
未だふわふわと浮き続けるそれに六波羅は威圧される。
しかし、それは意外な言葉を続けた。
「だが、残念ながら私は犯人ではない。それと、私は花子ではない化子(カコ)だ」
化子を名乗るそれは位置を変えた。
すると、7人の少女の霊は未だに先程と同一方向を向いている。
つまり、その方向に7人を殺害した犯人が居るのだ。
そして、ある可能性にふと気付いた。
念の為、泉の所持品を調べる……やはり無い。
深夜に現場検証と称して足を運んだ女子高。
だが、その捜査に必要と思われる令状が其処には無かったのである。
つまり、すべて泉の独断だったことになる。
では、泉は何故、独断で事を運んだのか。
被害者はもう1人居るのではないか。
おそらく、その人物は死に瀕している。
そして、その人物は泉の身近な人物に違いない。
六波羅はその人物を助けることにした。
其処へ興味深そうに化子が声をかけた。
「確かに犯人は花子だ。だが、あれは手強いぞ。私を連れて行けばどうにかしてやれるがどうする?」
これに六波羅は一も二も無く頷いた。
むしろ、提案した化子の方が戸惑ったほどだ。
化子は六波羅に同行するべくこれに憑りつく。
こうして、奇妙なホームズとワトスンコンビは校外へと出向く。
目指すは付近の病院である。
忍び込んだ六波羅はカルテを確認し「沢角みさき」を見つけ出す。
苗字と年齢からいって泉の妹に違いない。
病室へと赴くと、ベッドに横たわるみさきの上に霊体が立っていた。
「間に合わなかったのか?」
呆然と呟く六波羅。
「いや、あれは生霊じゃ」
即答する化子。
これに勇気を得た六波羅はみさきの生霊が眺める方向を高性能レーザーポインターで特定する。
それは、先程の学校内にある1点を示していた。
その1点、3階廊下の突き当たりに現れた六波羅と化子。
すると、六波羅の目の前に化子とも全く異質な存在が湧き出した。
それは凍えるような瞳で六波羅を舐めるように見遣る。
恐れ戦く六波羅、これを押しのけるように化子が前へ出た。
「任せておけ」
化子はソレに向かって駆け出す。
そして、距離を縮めて行くうちに姿を変える。
美少女になったかと思うと、光を纏い神々しいまでの姿になったのだ。
光を放ち続ける化子は掌でソレを掴んだ。
瞬間、ソレが雲散霧消した。
六波羅は悟った化子は霊ではなく神なのだ、と。
「うむ、お前の力を認めよう。神の憑代となったのだ誇りに思うがいい!!」
化子の言葉が六波羅の耳朶を打つ。
こうして、神である化子とその憑代である六波羅のコンビが誕生したのだ。
彼らの前には幾多の事件が待ち構えている―――エンド。
<感想>
『月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ』誌上にて『棺探偵D&W』を連載中の光永康則先生。
そんな光永先生が新たなミステリー作品に挑まれました。
その名も『カコとニセ探偵』!!
『週刊ヤングジャンプ』誌上にて読切として掲載された作品です。
さて、その内容について感想を。
なかなかに興味深い作品です。
神とその憑代によるバディものは流石にこれまでに無かった新機軸か。
この軸を如何に活かすかがポイントになりそう。
そして、六波羅の過去には謎がある様子。
また、もちろん化子自身にも謎があるようだ。
化子については光永先生の他の作品……特に「南Q阿伝」ともリンクしてそうだけど。
ちなみに「カコ」=「化子」であり「過去」でもある。
共に謎に満ちた六波羅と化子2人の「過去」がキーになりそうか。
これは『棺探偵D&W』同様に期待の新作が現れたか。
ツイッター上でも大変評判が良い様子なので連載化するかに注目が集まりますね。
◆関連過去記事
・「棺探偵D&W」(光永康則著、少年画報社刊)第1話(月刊ヤングキング2012年1月号掲載)ネタバレ批評(レビュー)
・「棺探偵D&W」3話(光永康則作、少年画報社刊「月刊ヤングキング」連載)ネタバレ批評(レビュー)
・「棺探偵D&W」5話(光永康則作、少年画報社刊「月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ」連載)ネタバレ批評(レビュー)
・「棺探偵D&W」6話(光永康則作、少年画報社刊「月刊ヤングキング アワーズ ジーエイチ」連載)ネタバレ批評(レビュー)
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