<あらすじ>
5月11日、管内の公園で女性の絞殺死体が発見され、牛尾正直(片岡鶴太郎)たち新宿西署の刑事たちは捜査を開始した。被害者は、通販会社のコールセンター室長・岡崎由美(田中美奈子)。山梨・塩山に住む兄・達雄(難波圭一)によると、由美はまもなく結婚すると話していたという。由美の自宅マンションを調べた牛尾は、婚約者との写真が1枚も存在しないことが気にかかる。もしや相手とは不倫の関係だったのか…。また、神田川沿いにあるマンションの3階、由美の部屋の窓からは川にかかる橋がよく見えた。今年1月、この橋から転落死した男性がいたが、事故として処理されたか事件となったかの結論までは、管轄外の牛尾が知るところではなかった。
勤め先のコールセンタ―でも婚約者の存在は浮かばす、昨年末、由美が室長に昇進した際の軋轢で、志賀邦枝(高岡早紀)、初見芳子(池津祥子)という2人の女性が、由美に半ば追い出されるように会社を辞めたことを知る。どうやら、由美はかなり自己中心的な性格だったようだ。由美を憎んでいたことは認めながらも、殺意までは否定する芳子。それは邦枝も同様で、現在、生花店に勤めながらフラワーアレンジメントを教えているという彼女は毎日が充実して楽しく、今では由美に感謝しているとまで話す。
そんな中、由美の葬儀に根岸正人(鈴木一真)という謎の男が現われた。事情を聴く牛尾に対し、根岸は由美とつきあっていた事実を告白。しかし、3月初旬に別れ話を切り出されたと打ち明ける。由美が実家の兄に結婚宣言をしたのも同じ頃、つまり新しい交際相手が出現したため、根岸に別れを告げたものと思われた。いったい由美は誰とつきあっていたのか…。
その矢先、牛尾は由美のマンションから見えた橋で男性が転落死した一件が、事故として処理されたと聞く。死亡したのは大手銀行の本店に勤める大泉武男(宮川一朗太)だというが、その銀行名を耳にした牛尾は引っかかる。確か、由美の部屋から新たに作成したその銀行の通帳が見つかっており、彼女は2月に銀行を変えたばかりだと知っていたからだ。なぜ由美は利用銀行を変えたのか、牛尾には不思議だった。というのも、新たな銀行はマンションから遠く、勤め先とも逆の方向にあって不便なはずなのだ。
転落死があったのは1月17日、銀行を変えたのが2月14日。由美の殺人が、橋から転落した銀行マンの死と何らかの関連があるのではないか…牛尾の勘がそう告げていた。牛尾は、由美の口座開設を担当した行員・岩田修作(岡田浩暉)を訪ねるが…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
牛尾正直は新宿西署の刑事である。
牛尾はこれまでにさまざまな事件を解決して来た。
そして、今日もまた彼の前には事件が立ち塞がることに。
5月11日、管内の公園で女性の絞殺死体が発見された。
被害者は通販会社のコールセンター室長・岡崎由美である。
由美の死体からは薬指の付け爪が1つ無くなっていた……。
由美の兄で山梨・塩山に住む達雄によると、3月初旬ごろに由美は間もなく結婚すると話していたという。
どうやら、「運命の人」と出会ったのだそうだ。
由美の自宅マンションを調べた牛尾。
すると、由美宅には婚約者との写真が1枚も存在していなかったことが判明。
此処から牛尾は由美と相手とが不倫の関係だったのではないかと疑う。
これを裏付けるように、由美の勤務先のコールセンターではその交際相手らしい人物を特定できない。
しかも、由美宅のカレンダーには「706」や「707」とメモが残されており、これも何かを意味しているかと思われたが……。
一方、室長になった由美が2人の女性を職場から退職に追い込んだことが分かる。
その2人とは志賀邦枝と初見芳子。
しかし、邦枝も芳子も由美殺害は否定する。
周辺の聞き込みから、由美がかなり自己中心的な性格だったことも明らかになった。
由美を憎んでいる人物は相当の数に上るようだ。
由美の葬儀が行われた。
牛尾は由美の葬儀に訪れたものの、由美の住所録に登録のない人物をピックアップする。
対象は2人。
1人は芳子、もう1人は根岸正人という男性である。
根岸に事情を尋ねる牛尾。
すると、根岸は由美の恋人だと名乗る。
しかし、3月初旬に別れ話を切り出されていたようだ。
由美が「運命の人」について達雄に話したのも同じ時期だ。
どうやら、由美は新しい交際相手が出来た為に根岸を捨てたらしい。
しかし、この相手が分からない。
矢先、由美のマンション寝室から見える水車橋にて1月17日夜に男性が転落死していたことが判明。
死亡したのは大日銀行本店融資審査部に勤務する主査・大泉武男。
第一発見者によれば、大泉は橋の欄干から川に向かって嘔吐していたそうである。
その場は眉を顰めつつ後にしたが、気になって戻ってみたところ、橋の下に転落死していたのだそうだ。
大泉の死体の右腕付け根の上から重なるように鞄が落ちていたことが印象に残ったそうだが……。
大日銀行の名を耳にした牛尾はあることに注目する。
由美の部屋にあった通帳が大日銀行の物だったのだ。
しかも、由美はこの2月から利用先を大日銀行に変えたばかりであった。
由美宅からは大日銀行は勤め先とは真逆の方向になる。
何故、由美はわざわざ不便な銀行を選択したのか。
由美が大日銀行を利用し始めたのが2月14日。
大泉の転落死から1ヶ月ほど後のことである。
何らかの意味があるのではないかと考えた牛尾は大日銀行に由美の担当者を訪ねる。
由美の担当は岩田修作という男性行員。
岩田は転落死した大泉の同期。
大泉の死を惜しみ、通勤がてら水車橋に通っていたところ、毎朝、花が供えられていることに気付いた。
気にかけていたところ、女性が花を供えている現場に出くわす。
その女性こそ邦枝であった。
邦枝は友人宅で大泉の死を聞き、以来こうして悼んでいるのだと言う。
その友人こそ、由美だったのだ。
邦枝に釣られ、由美のマンションを見た岩田。
其処に由美の姿を目撃する。
由美もまた何かに驚いたかのようにじっと岩田を眺めていた。
これが縁となり、岩田と由美は挨拶を交わす程度の仲になったのだそうだ。
それで、由美が大日銀行に口座を開いたのだと言う。
岩田の態度に不審を覚える牛尾。
大泉の死に岩田の関与を疑ったのだ。
大泉の鞄は大泉の遺体の右腕付け根の上に覆いかぶさるように落ちていた。
もしも、大泉が鞄を持った状態で転落すれば鞄は遺体の下にある筈である。
つまり、何者かが大泉を突き落とし、その上に鞄を落としたのではないか。
だとすれば、岩田は怪しい。
一方、邦枝のもとには「人殺し」と書かれた差出人不明の手紙が届いていた……。
岩田について調べ始めた牛尾。
岩田を知る相川によれば、岩田はかなり神経質なタイプ。
外出から帰宅すると上着をふるう癖があるそうだ。
さらに、由美のカレンダーに記載された「706」と「707」の意味が判明。
それは7時6分や7時7分との岩田の通勤時間だったのである。
どうやら、岩田は水車橋を毎日の通勤コースにしており、由美はこれをチェックしていたようだ。
同じ頃、邦枝の元へまたも「人殺し 次はお前だ」との手紙が……。
しかし、邦枝は動こうとはしない。
翌朝、牛尾は大泉転落現場が由美宅の寝室から目撃可能な位置であることに注目。
1月17日夜の由美の行動を調べ始める。
すると、由美の室長就任と邦枝の退職、さらに新居のお披露目パーティーが行われたことが分かる。
由美のマンションは先頃になって、由美が購入した物だったのだ。
しかも、この際に由美と邦枝が寝室で言い争いになったらしい。
パーティーの参加者によれば、由美の寝室から次のような声が聞こえたそうである。
「精々、3度目も許しちゃったワケよね」と由美。
これに「4度目は何もさせない」と邦枝が宣言していたそうだが。
事情を知っているであろう芳子を訪問した牛尾。
やはり、芳子は事情を知っていた。
なんと、由美は邦枝の恋人を2度に渡り奪っていたのである。
1度目は4、5年前で、2度目は去年のことだそうだ。
つまり、根岸は元々は邦枝の恋人だったのだ。
さらに、言い争いの際の台詞から3度目もあったと判断した牛尾。
思い切って邦枝にこの疑問をぶつけると、3度目はマンションだったことが判明する。
由美が購入したマンションは先に邦枝が購入予定を立てた物だったのだ。
由美は邦枝に嫌がらせを繰り返していたのである。
こうなると、邦枝は由美に対し動機があることになるが……。
その矢先、岩田と大泉が出世競争のライバルだったことが判明する。
ところが、2年前の9月に状況が急転する。
当時、同じ支店に在籍していた大泉が本店に岩田の不正融資を訴えたのだ。
しかし、真相は全くの逆で大泉が岩田に責任を押し付けたようである。
これにより、岩田は支店に異動。
大泉は本店の融資審査部主査となり、山下常務の婿候補にまでなった。
しかし、1月17日に大泉が転落死を遂げてからは岩田の無実が明らかとなった。
今度は岩田が大泉と同じ融資審査部主査となり、山下常務の婿候補になっているようである。
さらに、由美が出処不明の大金でさまざまな物を購入していたことも分かった。
由美は金の出処を「私だけの銀行」と自慢そうに語っていたようだ。
これを知った牛尾は岩田が大泉を殺害。
その現場を由美に寝室から目撃され、これに脅迫された為に殺害したと結論付ける。
その夜、邦枝が不審な車に狙われる。
しかし、それでも邦枝は届け出ることはない。
牛尾は岩田の罪を立証すべく物証を探す。
牛尾が注目したのは由美の遺体から消えていた薬指の付け爪だ。
そして、遂に付け爪を発見する。
これにより岩田が逮捕された。
付け爪が発見されたのは岩田の実家の前だったのだ。
神経質な岩田は殺害後の精神状態もあって、上着を実家の前で執拗にふるった。
この際、上着に付着していた由美の付け爪が落下したのだ。
この事実を突き付けられた岩田は罪を認める。
あの夜、岩田は帰宅途中に水車橋の上で酔っ払って上機嫌の大泉に出会った。
大泉は「俺は常務の娘婿だぞ。もう、お前は歯向かえないんだ。そうだ、これからお前は俺の犬だ。わんわんになれよ!!」と笑いながら要求したのだ。
これに逆上した岩田は橋の上から大泉を突き落としてしまった。
ところが、これを「由美の寝室に立つ人影」に目撃されていたのである。
以来、気にかかって仕方が無かったところに、花を供えていた邦枝と出会った。
そして、邦枝から部屋の主が由美であると聞いた。
しかも、その光景を由美に目撃されたのだ。
由美は岩田を目にし、何かに驚いた表情をしていた。
このとき、岩田は由美が目撃者だと確信したのだ。
怯えていたところに、由美が猛烈なアタックを開始し始めた。
通勤していれば声をかけられる。
退勤すれば銀行前で待ち構えられている。
勤務していれば口座開設を要求される。
岩田は由美が空恐ろしかった。
それでも、告発されることを怖れて由美に従っていたのだ。
そんなある日、由美は3月7日が誕生日だからプレゼントが欲しいとせがんで来た。
岩田は遂にコレが来たか……と覚悟した。
其処で岩田は、月に1回のプレゼントで許してくれと懇願。
これを由美も了承する。
由美はこの際「しょうがないわね、目と目が合っちゃったんだもん」と告げたそうだ。
岩田はそれでも我慢していた。
金で済むことなら仕方がないと。
ところが、遂に由美は結婚を迫ったのだ。
「それが私たちの運命だ」と繰り返したらしい。
そんな由美に岩田は大泉と同じ影を見出した。
こいつを殺さなければ自分が破滅する……岩田は決意を固めた。
そして、由美を殺害したのである。
この岩田の供述を聞いた牛尾は「何かがおかしい」との印象を受ける。
牛尾は大泉が転落した当時の1月17日に引越しパーティーが行われていたことを思い出した。
確か、寝室には由美以外にもう1人居たような……。
その頃、根岸が邦枝に花束を作るよう迫っていた。
花束は恋人・由美に捧げる為の物だそうだが……。
根岸は邦枝を由美の殺害現場へと連れ出す。
実は、根岸は邦枝が由美を殺害したのではないかと疑っていた。
其処で「人殺し」との手紙を送りつけた。
さらに、車で邦枝を襲ったのも根岸であった。
どうやら、邦枝の反応を窺っていたらしい。
ところが、邦枝は通報する様子が無い。
後ろ暗いことがあるからに違いないと考えた根岸は邦枝の犯行だと思い込んだのである。
根岸は邦枝に由美を返せと迫る。
さらには償いとして邦枝を殺そうとするのだが……邦枝は全くの無抵抗である。
此処に危機一髪、牛尾たちが駆け付け根岸は逮捕される。
助け出された邦枝に牛尾はすべてを告白するよう促す。
牛尾は岩田の犯行の目撃者が由美ではなく邦枝ではないかと考えていた。
これに邦枝は過去を語り始める。
最初、邦枝は由美のマンションを購入するつもりはなかった。
しかし、マンションの寝室から外を眺め見たときに気が変わったのだ。
其処には幼い時分に暮らした想い出の家と同じ光景が広がっていたのだ。
邦枝は幼い時分、母に先立たれていた。
邦枝の母は仕事先で事故に巻き込まれ落命していたのだ。
しかし、邦枝はそれを知らず母を待ち続けた。
邦枝がそれを知ったのは数日後のことだ。
その間、邦枝は外に見える水車橋を眺め続けた。
未だに邦枝は水車橋に優しかった母の面影を追い求めている。
そんな邦枝にとって水車橋が見えるマンションはどうしても必要だった。
だから、由美に購入されてしまったときにはひどく驚きショックを受けた。
其処で、事情を明かし譲ってくれないかと頼み込んだ。
ところが、由美は事情を知るなりニヤリと笑うと邦枝の足元を見た。
「1億円で譲る、いや、2億円寄越せ」と口にしたのだ。
これは邦枝にとってどうしても許せないことであった。
「だから、岩田を利用し由美を殺害したのか」と問う牛尾。
しかし、邦枝は事実を認めようとしない。
数時間後、牛尾は岩田に事実を教えていた。
由美は脅迫者ではなかった。
由美は岩田に一目惚れしただけだったのだ。
彼女の要求も惚れた岩田への甘えでしかなかった。
これを知った岩田は自身の行為を激しく後悔するのであった。
翌日、牛尾は再度邦枝にぶつかっていた。
自身の仮説を語って聞かせる牛尾。
あの夜、邦枝は由美の家の寝室から岩田が大泉を殺害する現場を目撃していた。
邦枝は由美にこれを伝えようとするが、由美はこれを聞こうとしないばかりか根岸を奪ったことを自慢げに語る。
邦枝は遂に耐え兼ねた。
其処で邦枝は大泉殺害犯を利用しようと考えた。
もちろん、邦枝は岩田が犯人であることを知らない。
まずは、犯人を突き止める必要がある。
其処で花を供え続け、あの夜の男が現れるのを待った。
自分の顔が見られたリスクもあるが、それでも由美に一矢報いたかったのだ。
「4度目は何もさせない」
その意志が邦枝を動かしていた。
運命はそんな邦枝に味方した。
岩田は邦枝の顔を知らなかった。
そして、邦枝の誘導により由美が目撃者だと思い込んだ。
邦枝の計画は由美の性格もあって順調過ぎるほど順調に進んだ。
こうなると邦枝は怖くなった。
其処で由美に「岩田が人殺しだ」と伝えたのだが、由美はまたも聞く耳を持たなかった。
そのうち、由美は岩田に殺害されてしまった。
根岸に「人殺し」と名指しされつつ耐えたのは邦枝に罪の意識があるからだ。
しかし、邦枝が「人を殺した」と罪の意識を抱いているのは由美の件では無い。
岩田に橋から突き落とされた大泉を助けようとしなかったことであった。
牛尾は邦枝に真相を明かすよう告げるが、邦枝はそれを認めない。
邦枝によれば、それは罪を償うことではないらしい。
すべてを打ち明ければスッキリするだろう。
だが、それでは罪を償ったことにならない。
罪の意識を抱えて生きて行くことにこそ、贖罪がある……邦枝はそう結論を伝えた。
法律上、邦枝の罪は殺人犯を知っていながら通報しなかったことである。
しかし、これを立証する術は無い。
牛尾は自身の無力感に苛まれるのであった。
それから1ヶ月後、牛尾は邦枝が由美が住んでいたあのマンションを購入したと聞いた。
他の刑事は「邦枝は強かだ」と批判する。
しかし、牛尾は邦枝が自分自身に厳罰を与えたのだと気付いた。
大泉が死亡し、由美が死亡したあのマンション。
もはや、水車橋は以前のようには邦枝に郷愁を与えはしないだろう。
邦枝は見る度に思い出す筈だ―――自身の行動を。
そう、あの景色は邦枝に罪の意識しか与えない。
それでも、邦枝はそれを望んだ。
それこそ、彼女なりの贖罪なのだ。
きっと今日も、あの裏窓から広がる景色は残酷な視界でしかないのだろう―――エンド。
<感想>
「終着駅シリーズ」第28弾。
ドラマ原作は森村誠一先生の短編『残酷な視界』(講談社刊『残酷な視界』収録)。
<あらすじ>
殺さないと、欲望は満たされない
双眼鏡で殺人を目撃してしまったOLに犯人の魔の手がしのびよる
高層アパートに住むOL・志賀邦枝のひそかな趣味は、双眼鏡で他人の生活を覗くことだった。ある晩、殺人を目撃した彼女に迫る危機!
表題作を始め、会社の労使交渉の陰で渦巻く、色と欲を描いた「殺意中毒症」、純真無垢な子供の残酷さがじわりと伝わってくる「魔少年」など、初期発表の傑作短編9編を収録。
(講談社公式HPより)
興味のある方は本記事下部のアマゾンさんのリンクよりどうぞ!!
では、ドラマ版の感想を!!
物凄く切ない物語でした。
上手く構成されていて、視聴者はどうしても邦枝に感情移入してしまう。
すると、邦枝の贖罪の重さが胸に来る……。
それにしても、由美と根岸は物凄く身勝手だ!!
由美は罪の意識に欠けるし、根岸には後ろめたいとの気持ちは無さそうだなぁ。
正直、実行したことは許されないけど邦枝の気持ちも分かる。
仏の顔も3度までだしなぁ……何度となく注意を促したし、4度目は許せなかったのだろう。
特に根岸を奪われた為に寄る辺を求めた邦枝の憩いの場所まで奪った由美の罪こそが最も大きかったのだろう。
由美は邦枝を精神的に殺していたように思う。
ただ、邦枝は自身と同じように虐げられた岩田を利用したことは罪深い。
どうせ利用するなら根岸を利用すべきだったな。
そしたら、邦枝にとっても由美にとっても根岸にとっても岩田にとっても丸く収まったに違いない。
ああ、大泉は丸く収まらないのか……。
それにしても由美が岩田を愛していたというのもなぁ……「私だけの銀行」の台詞があるし。
遠慮もせずに平然と岩田から金を受け取るし、由美の金銭感覚はちょっと怖い。
本気で結婚を考えてたのなら、そのお金を結婚資金に充てるよう提案するよなぁ……。
それを平然と受け取ったからこそ、岩田は由美を疑ってしまったんだし。
あれ、本当に由美は岩田を愛していたんだろうか。
牛尾の言葉にも今回に限っては著しく説得力がないなぁ……。
なにしろ、由美のやってたことがやってたことだし。
由美にとって岩田が「運命の人」とか言ってたけど、今回も邦枝と一緒に居たから盗ってやろうと考えていたようにしか見えない。
岩田が「運命の人」の根拠は「結婚話」のようだけど、現に根岸とも結婚話は出ていたようだし。
まったくあてにならないこと甚だしい。
もっとも、確かに由美にとっては岩田は「運命の人」だったんだろうなぁ。
彼女の終焉を看取る「運命の人」だったワケなので。
そう考えると、由美は岩田を道連れにすることには成功していたのか……。
由美が酷過ぎてどうにも由美には同情しづらい。
あれは無邪気で済まされるレベルじゃないよ、邪気ありまくりでしょう。
ちなみに岩田は由美に目を付けられた時点で由美が目撃者で無くともストーカーされるから結末は一緒だったような気がする。
由美の性格ならば、岩田と常務の娘との結婚も断固阻止しただろうし。
これに根岸が絡んで来るのかと思うと……これだけで別の「2時間サスペンス」が出来そうだ。
あれ?
どうにも邦枝よりも由美のインパクトが強いなぁ。
本作の結論は「由美恐るべし」の一言になりそうか。
【終着駅シリーズ】
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ『悪の魂』〜ベストセラー小説に仕組まれた二重殺人の罠!!見知らぬ女が依頼する1億の殺人!?」(9月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「35周年特別企画 終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子・森村誠一の『悪の器』九州唐津〜海色のイヤリングの殺意!!私を探して…女は東京に殺された!?」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ・殺意の奔流〜ある退職刑事の死!!犯人が遺した二重血痕の謎容疑者はバスツアーの中にいる…」(10月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「35周年特別企画 終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子〜ラストシーン!!雪山に消えた第三の殺人者!チョコが告げる泥棒猫の殺意…」(2月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ・途中下車する女 凶器のない密室殺人を追う!!置き忘れた写真の中の殺人構図」(9月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子・森村誠一の完全犯罪の使者!!富山八尾〜風の盆に始まる殺意の連鎖!!赤いルージュの伝言」(12月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅〜新宿着あずさ22号の殺人同乗者・消えた姉と三千万の行方…顔のない脅迫者を追う!!」(7月31日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の灯〜終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子!!バス事故から生還した3人新宿〜妙高高原に運命の連続殺人!?」(12月12日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
牛尾正直:片岡鶴太郎
牛尾澄枝:岡江久美子
志賀邦枝:高岡早紀
岩田修作:岡田浩暉
岡崎由美:田中美奈子
大泉武男:宮川一朗太
根岸正人:鈴木一真
大上刑事:東根作寿英
山路刑事:徳井 優
坂本課長:秋野太作 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
◆森村誠一先生関連過去記事
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・土曜ワイド劇場「森村誠一の棟居刑事 目撃美女は二度死ぬ猫が運ぶ犯人!?悪い男vs手玉に取る女…愛と欲の背徳の詩集」(7月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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【終着駅シリーズ】
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ『悪の魂』〜ベストセラー小説に仕組まれた二重殺人の罠!!見知らぬ女が依頼する1億の殺人!?」(9月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ・殺意の奔流〜ある退職刑事の死!!犯人が遺した二重血痕の謎容疑者はバスツアーの中にいる…」(10月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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・金曜プレステージ「壮絶!女のミステリー第1弾 森村誠一サスペンス 孤独の密葬〜翻訳家の殺人推理〜死んだ女は部屋の前の住人だった 死者に届く手紙の罠…執拗な老女…誘う男…次に殺されるのは私」(11月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【アタミステリー紀行関連】
・『ただ一人の異性』(森村誠一著、アタミステリー紀行2011より)ネタバレ書評(レビュー)
・「アタミステリー紀行2010」結果が発表される
・「熱海の靴屋」(森村誠一著、アタミステリー紀行2010より)3つのミスにチャレンジ!!
・近付く「アタミステリー紀行2010」の足音……
・アタミステリーへの誘い……
(アタミステリー紀行2009について触れた過去記事です)
【その他】
・知ってましたか?森村誠一先生『人間の証明』が韓流ドラマに!!その名も『ロイヤルファミリー』!!
・森村誠一先生「義仲・巴ネットワークフォーラム・イン・富山」にて講演
・クリスマス(12月24日)の森村誠一さん!!
(「森村誠一 謎の奥の細道をたどる」についての過去記事です)
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由美は他人の物を欲しがる性癖で、殺人犯に近づくことで邦枝の奪いたくなる衝動を刺激するため、と
後は殺人犯の岩田に殺されるなり、彼の罪を暴いて破滅させるかと思ってました
今回のサブタイトルは秀逸だと思います
疑心暗鬼で由美の好意(たちが悪かったけど)がわからなかった岩田、運命の人が「顔色が悪いか表情が冴えない」はずなのに気付かない由美
きっかけこそ邦枝でしたが、二人の誤解は解かれようとしませんでした
表の残酷な視界が邦枝の窓なら、裏の残酷な視界は被害者と加害者のフィルターがかかって認識のずれた視界
結果、由美は嫌な人でしたが愛した相手から訳もわからず殺され、岩田はまた一つ罪を重ねてしまった
でも、最後の自分が間接的に人を殺した罪より、他人にまた一つ罪を重ねさせたことに焦点がいかないのが個人的に邦枝の歪み、に思えます
他人に罪を犯させ、更なる重みを負わせたことに気付かず、殺人の方だけの罪の償いだけを語るのは、視聴者の視点で岩田に同情していたのもありますが私には虫が良く白々しく聞こえました
相棒の右京さんなら、こういう事を語って落としそうですね
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
なるほど「残酷な視界」には「邦枝の裏窓」以外にも「岩田と由美それぞれの一方的な思い込み=視界」があったというワケですね。
まさに、互いに互いの真意が見えていなかった点こそが悲劇でした。
此の点、邦枝の贖罪にも別の角度からのアプローチの必要性があったのかも。
そして、右京さんならばどうするか……気になります。