ネタバレあります、注意!!
<感想>
「明智小五郎対金田一耕助」シリーズの正統なる続編です。
シリーズはこれまでに本作を除き3作品発表されています。
それぞれ『明智小五郎対金田一耕助』と『金田一耕助対明智小五郎』と『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』となっています。
3作品とも過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
うむむ……なかなかに紛らわしいタイトル。
それもその筈、作者である芦辺拓先生も意識してつけているとあとがきに語られているほど。
そんな3作ですが、時系列は『明智小五郎対金田一耕助』→『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』→『金田一耕助対明智小五郎』の順。
これに本作『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助』が加わって来るワケです。
ちなみに『金田一耕助対明智小五郎』はかなり後年の出来事と言えそうです。
そして『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助』は前後篇。
今回はその後篇です。
早速、読みました。
なるほど、こう来たか……との印象。
これは想像もしなかったなぁ。
完全に脱帽です。
物語自体も明智と金田一の対決に相応しく明智の推理と金田一の推理が語られる多重推理ものに。
同時にこの多重推理により、金田一の真実追及にかける若さゆえの純粋さ、明智の先達ゆえの老練さなども描かれました。
これも良かったですね。
でもって、明智と金田一の推理について。
まず明智の推理はブラウン神父のアレでも有名な「見えない人パターン」。
これを偽の解決とした上で、真相が続く。
それが金田一による「そもそも最初からの人物誤認」。
実は金田一自身が意図せず「信用出来ない語り手」になっていたとの結論はなかなかに凄い。
しかも、これにより大道寺の首無し死体に必要性が生じる点も良し。
そして、それを知った上で明智が偽の解決を選択した理由。
これが、何故金田一が最激戦地であった南方戦線に送られたかの理由付けに繋がる点も秀逸でした。
流れとして非常にバランス良く綺麗にまとまっていて、余韻を感じさせるラストも含めてかなりの完成度でした。
読むべし!!
ちなみにドラマ版第2弾製作の報も出ています。
ドラマ化されるのは原作『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』のようですが、こちらも続報に期待!!
・【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
金田一耕助:若かりし日の金田一耕助。
明智小五郎:ご存知、名探偵。
大道寺少尉:金田一が入院先で知り合った人物。
本位田憲兵中尉:スパイを追っている。
法眼軍医中将:金田一の入院先の責任者。
磯貝もよ子:看護師。
蜂屋:憲兵。
白雪麗:魔術団の花形。
・前篇のあらすじはこちら。
『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
大道寺殺害の疑惑をかけられた上に、スパイ容疑で処分されそうになった金田一。
当時、防諜活動に従事していた明智の口添えにより一命を取り留めることに。
思わぬことから命の危険に曝された金田一であったが、彼は根っからの探偵であった。
自身の安全よりも、事件の真相が気にかかって仕方がない。
こうして、推理を巡らせることに。
金田一は未だに殺害された人物が大道寺自身なのかと疑惑を抱いていた。
もしも、大道寺でなければいくつかの可能性が生きて来るのだ。
しかし、明智は大道寺の死体であることが確認されたと告げる。
なんと、金田一が拘束された直後に大道寺の首が見つかっていたのである。
魔術団の花形・白雪麗による人体切断マジックが行われた際に、大道寺の生首が転がり出たのだそうだ。
これと胴体の切断面が一致。
しかも、大道寺を知る人間により大道寺の首実検が行われ本人と断定されたのだ。
何やら違和感を抱く金田一に、明智は「これ以上、首を突っ込まない方が良い」と先輩探偵として助言する。
尊敬する大先輩の言葉に一度は素直に従う金田一。
こうして、病院に戻ることとなったのだが……。
数日後、不意を突かれ院内から謎の集団に連れ攫われてしまう。
謎の集団の正体は反戦活動を行っている現地のグループであった。
なんでも、金田一が証言した大道寺殺害の状況により、白雪麗に容疑がかかって困っているらしい。
実は、白雪麗はグループの象徴的存在であった。
そして、大道寺もまた白雪麗の仲間だったのである。
彼らは金田一が偽証していると思い込んでいた。
真相を告白するよう拷問が行われることに。
折角、本位田の手を逃れたかと思えばコレである。
どこまでも不遇な金田一であった。
其処へ、またも救いの手が。
そう、明智だ。
明智は金田一を陰ながら見守っていたのである。
金田一に代わり真相を明かすと宣言する明智。
彼は自身の推理を語り出す。
明智は現場が決して密室では無かったと主張。
大道寺殺害犯は警官に扮し出入りしたのだと告げる。
つまり、「見えない人」パターンだ。
しかし、これを聞いていた金田一は「それは違う!!」と叫ぶ。
そして、「やめたまえ」と明智が制止したにも関わらず、自身の推理を開陳してしまう。
そもそも、金田一が大道寺だと思っていた人物は本当に大道寺だったのか!?
もしも、その人物が別の人物であり犯人だとしたら……。
犯人は大道寺が白雪麗と通じ、反戦活動を行っていることを疎ましく思っていた。
其処に金田一が現れた。
犯人はこれ幸いと大道寺を名乗り金田一と交際を持った。
そしてあの日、金田一を連れ出すと犯行現場へと連れて行った。
白雪麗を陥れる為の証言者にする為だ。
金田一が現地に到着した時点で「本物の大道寺」は既に殺害され、首も胴から離れていたのである。
何故、首なし死体を仕立てる必要があったのか。
それは金田一に死体の顔を確認され、死体が彼の知る大道寺ではなく「本物の大道寺」であると知られることを避ける為であった。
犯人の狙いは大道寺を殺害し、白雪麗にその疑惑をかけること。
そして弱味を握り、シンボルである白雪麗を操れれば良し。
もし、それが叶わなくとも白雪麗を拘束しグループに打撃を与えるつもりであった。
つまり、犯人は……憲兵なのだ。
其処まで金田一が語ったところに、憲兵が現れた。
その名は蜂屋。
彼こそは、金田一が知る大道寺その人であった。
つまり、本物の大道寺を殺害した真犯人だ。
蜂屋は銃を構え、周囲を牽制する。
事此処に居たり、金田一は初めて明智の意図を察した。
明智は推理を誤ったのではない。
金田一の身を慮って、敢えて偽の推理を語ったのだ。
偽大道寺こと蜂屋は金田一が真相を何処まで掴んでいるかを確認しようとずっと様子を窺っていたのだ。
蜂屋は金田一が全てを見抜いていたことを知ると、不敵に笑って姿を消した。
後日、金田一は再び前線へと赴くこととなる。
その場所は……赴けば二度とは帰れぬ南方戦線。
すなわち、これこそ合法的に金田一の口封じを目論む蜂屋の差金であった。
しかし、金田一がこの苦難を乗り越え帰国の途に就くことは賢明なる読者がご存知の通りである―――了。
【ドラマ化情報】
・【至急報】謎の推理ドラマ情報が!!果たして「KvsA」とは!?
・「KvsA」の正体判明!!土曜プレミアムSPドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」だった!!
・【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?
◆関連過去記事
【明智小五郎対金田一耕助シリーズ関連】
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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