2014年07月10日

『猫弁と魔女裁判』(大山淳子著、講談社刊)

『猫弁と魔女裁判』(大山淳子著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

百瀬太郎は、青い瞳をした女性国際スパイの強制起訴裁判に指定弁護人として選任された。
挙式の相談に乗ってくれない百瀬に困惑する婚約者の亜子。
事務所に帰ってこない主(あるじ)を待ちわびる野呂と七重(ななえ)。
飼い主と会えずに寂しい日々を送るテヌー。
百瀬の事務所を手伝う赤井、百瀬の身を案じる法律王子と透明人間、百瀬を利用しようとする業界最大手法律事務所の秦野……。
一心不乱に裁判の準備をする天才弁護士は、シリーズ最終巻にしてついに法廷に立つ。
(講談社公式HPより)


<感想>

『猫弁』、『猫弁と透明人間』、『猫弁と指輪物語』、『猫弁と少女探偵』に続く「猫弁シリーズ」第5弾にして最終巻。

遂に百瀬と亜子の恋に結論が……。
百瀬に結婚キャンセルを伝える亜子、その真意とは!?
まさに激動の最終巻、見逃せない展開に。

そんな中、青木その子や九など新キャラも登場。
果たして、彼らはどう関わるのか。

さら、シュガー・ベネットとユリ・ボーンという謎の人物たちが百瀬に与える影響とは!?

既存キャラの去就も楽しい。
まことは結婚するし、春美も赤坂と契約結婚中など見逃せない要素も十分。

ネタバレあらすじはかなり簡略化してまとめています。
当然、本作の魅力を伝えきれていないので、原典を読むべし!!
シリーズ既読の方は必読と言えるでしょう!!

ちなみに、これからシリーズに興味を持った方にはシリーズ5作全てを収録した愛蔵版『猫弁全集』がオススメ!!
百瀬と亜子の歩みが一目で分かる筈!!

<ネタバレあらすじ>

百瀬太郎が事務所から消えた!?
最近、事務所に寄りつかない百瀬に不安を募らせる七重。

一方、徹二の反対を押し切り半ば強引に百瀬との結婚を進める亜子だが、当の百瀬は上の空。
2人の擦れ違いは続く……。

実は、百瀬は古巣ウェルカムオフィスの秦野からある仕事を引き受けていた。
この案件の為に百瀬は周囲を顧みることが出来なくなっているのだ。
それは百瀬にとって避けては通れない案件で……。

その頃、二見と沢村(共に『猫弁と透明人間』の登場人物)は百瀬が担当した案件に驚愕していた。
百瀬が関わったのはAMIという組織に所属する大物産業スパイ、シュガー・ベネットの裁判であった。

シュガー・ベネット裁判までには紆余曲折があった。
シュガー・ベネットは既に不起訴が決まっていたのだが、検察審査会で協議の末に強制起訴裁判の運びとなったのである。
この起訴の立役者が、滝ノ上(第4作『猫弁と少女探偵』参照)であった。
滝ノ上はこれを実現する為に無理を強いられ辞職していた。
今では、塾を開き娘・京子と共に暮らしているそうである。

そう……多くの人の想いを抱え、百瀬は指定弁護人としてベネット側の弁護人と争いその罪を問わなければならない。

ウェルカムオフィスが百瀬を巻き込んだのはAMIと対立することを避ける為であった。
AMIは企業の持つ極秘技術などを盗み出す産業スパイを世界中に送り出していた。
それほど相手は強大なのだ。

さらに、衆目の一致するところでは罪に問うこと自体が不可能だろうとの物であった。
何しろ、問える罪状が無いのだ。
もはや、本人が罪を認めるしかありえないのだが……。

その頃、裁判を控えた百瀬はベネットの弁護士であるユリ・ボーンと会っていた。
このユリ・ボーンこそ、『猫弁と少女探偵』に登場した百瀬の弟・二郎を騙った人物。
しかし、それには事情があるようで……。

遂に裁判が開廷。
亜子は父・大福徹二と共に傍聴することに。

其処で亜子は普段の百瀬らしからぬ彼を目撃する。
百瀬は執拗にシュガー・ベネットの罪を問う。
これに対抗するユリ・ボーン。
だが、百瀬は止まらない。
遂にはユリ・ボーンをも沈黙させ、シュガー・ベネット自身の自供を引き出すことに。

法廷がざわめいた。
結果、シュガー・ベネットには3年の刑が確定した。

実はシュガー・ベネットはAMIから抜けようとしていたのである。
だが、AMIを抜けることは命を狙われることでもあった。
百瀬とユリ・ボーンはシュガー・ベネットの命を救うために有罪にしようとしていたのだ。
シュガー・ベネットが有罪となり収監されれば、その間は如何なAMIとておいそれとは手が出ない。
いや、純粋に利益を追求するAMIならば少なくとも危険を冒さないことを選ぶだろう。
この判決により、少なくとも3年間はシュガー・ベネットは命を永らえることとなった。

そして、シュガー・ベネットに百瀬が拘った理由。
それはシュガー・ベネットこそが百瀬の母・翠が整形した姿だったからである。

翠が百瀬を捨てた理由も此処にあった。
翠は百瀬を産業スパイの世界に関わらせないよう自身の傍から引き離すことで守ったのだ。

そんな母を百瀬は守るべく必死に戦った。
こうして母を守ろうと弁護士になった百瀬の選択は正しかったことが証明されたのである。
もちろん、ユリ・ボーンも事情を知った上で翠に協力していたのだ。

この事実を知った大福徹二と亜子は百瀬との結婚をキャンセルすることに。
これを亜子から聞かされた百瀬は遂に捨てられたと絶望してしまうが……。

実はこれには理由があった。
百瀬の母・翠立会いのもとで結婚式を挙げて欲しいと徹二が願ったのだ。
遂に徹二は百瀬と亜子の結婚を認めたのだ。
これに亜子も同意したのである。
こうして、百瀬と亜子の結婚式は3年後となった。

それから数日後、百瀬に亜子がある申し出を伝えていた。
引っ越し先を探しているという亜子。
亜子の狙いは百瀬が住む201号室の隣202号室だ。

大家・梅園が去った百瀬のアパート。
しかし、結局買い手がつかなかった為に百瀬に管理を任せ放置することになっていたのである。

だが、202号室には既に入居者が居た。
百瀬は亜子におずおずと201号室を奨める。
そして、亜子もまたこれに応じるのであった―――エンド。

◆関連過去記事
『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち』(大山淳子著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「猫弁」で検索してたどり着きました。
全巻読了しました。

>それから数日後、百瀬のもとへ亜子から電話が入った。

と書かれてあったのですが、私はこのエピローグの会話って、あのベンチでの流れでの会話だと思いました。
ベロニカ(白い猫)の鳴き声も会話に入ってたので。

数日後の電話での会話って、どうしてそう思われたのか、ちょっと気になってしまって・・。
百瀬がアパートにベロニカを引き取るとか言う伏線ってありましたっけ?
読み落としがあったのかもしれないので、よろしかったら教えてくださいませ。

Posted by 小雪 at 2014年11月25日 18:14
Re:小雪さん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

ご指摘頂きありがとうございます。

該当箇所についてですが、まず、まだ本書を確認出来ていないので現時点では曖昧な解答になってしまうことをお許し頂ければと思います。

その上での解答となりますが、該当箇所はおそらく管理人がまとめ易さを重視してあらすじ上にて改変した部分だったかと思います。
なので、特に伏線はない可能性が高いです。

基本、大筋については作品に配慮しつつ興趣を削がない程度に要所を押さえていたつもりだったのですが、アレンジを加えたことにより困惑させてしまったとしたら大変申し訳ないです。

念の為、本書に再度当たっていますが、これに少し時間がかかっています。
来週中には確認出来るかと思うので、出来次第結果をこのコメントでお伝えしたく思います。
もう少しお時間頂けると嬉しいです。
Posted by 俺 at 2014年11月28日 01:01
俺さま。

ご丁寧な返信をありがとうございます。
お手間を取らせてしまったことに恐縮しております。

私もこちらにコメントを入れた後に、もう一度、読んでみたのですが、私が書いた

>あのベンチでの流れでの会話だと思いました。

と言うのも間違っているような気がしてきました。
なぜかと言うと、この会話の中で百瀬は

「おととい入居者が決まりました」

と言っており、これは赤井弁護士が紹介した女性だと思うので、時系列的に裁判当日の会話ではないと思いました。
百瀬が裁判前に赤井弁護士と連絡を取り合っていたとは考えずらいですし・・・。

でもベロニカがいるので、少したってからのあのベンチでの会話って感じなのかなと思いました。

なんか細かいところにコメント入れてしまって、かえってすみませんでした。

ご無理のない範囲で、もし可能でしたらまたの返信をお願いいたします。
時々、覗かせていただきますね。
(お忙しいでしょうから、返信なくても構いませんので)
Posted by 小雪 at 2014年11月28日 08:34
Re:小雪さん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

こちらこそ曖昧な回答でご迷惑をおかけしました。
再読し終えましたので改めて回答致します。

本作をもう1度読み返してみたところ、次のように考えて「電話での遣り取り」としたのだと思います。

まず、エピローグであることから本編の後日談と判断しました。
つまり、時系列的に本編から間が空いている。

続いて「電話での遣り取り」とした理由が次の2点。

1.エピローグが会話のみで成立していたこと(つまり、口頭のみでの遣り取り?)。

2.ベロニカは満足していたとはいえ公園で孤独な存在であった。
百瀬や亜子に居場所が出来たのでベロニカにも居場所があって欲しいと思ったこと。

この2点から「エピローグ時点でベロニカが百瀬のもとに居り、あの会話は亜子との電話の内容であったのではないか」と考えていました。

ただ、ご指摘を受けて考えてみると1も2も根拠としては弱いですね。

1については会話のみの描写だからと言って電話とは限らない。
そもそも電話口での応対にベロニカの鳴き声が入るのは些か不自然。

2については管理人の個人的な願望込みになってますね。
しかも、よく考えればベロニカには孤高が似合うような気もします。

再読してみると、確かに「後日のベンチでの会話」と捉えた方が筋が通ると思われます。
此の点について、少しあらすじに手を入れてみます。
Posted by 俺 at 2014年12月03日 01:08
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