ネタバレあります、注意!!
<感想>
『小説宝石』に連載中の『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』―――その第8話。
事件はどんどん混迷の度合いを深めているようです。
よもやの岡野が再登場―――しかも、3番目の被害者として。
これはサプライズ!!
まさか、1話の推理が此処に来て息を吹き返すのか!?
西町恵がどう絡んで来るのか?
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
一方で、前回触れた朝霞襲撃自作自演説も信憑性を増したか。
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
犯人が朝霞襲撃に限り鈍器では無くスタンガンを用いた理由。
もっとも考えられるのは、すなわち「自分で自分を背後から殴ることは出来ない」から。
だとすれば、やはり朝霞の狂言か……?
とはいえ、これが即すべての犯行が朝霞によるものとは言い切れない。
真犯人にアリバイを与える為の朝霞の工作の可能性もある。
あるいは、敢えて朝霞の狂言を除けば、福住、葛子襲撃時には腕が使えたが、朝霞襲撃時には腕を使えなかった人物の可能性もあるか。
さらに、香月と清音による事件の検討も為されることに。
とはいえ、あの中に直接的な解は無い筈。
あるとすれば、ヒントか。
今回の検討の要旨は「3人の被害者の内、本命は2人で残り1人は攪乱目的」であること。
香月は敢えて「福住、朝霞が犯人の狙い。葛子はミスリード」と述べましたが……岡野の死により全く別の組み合わせも出て来る可能性が。
ああ、謎は深まるばかり。
2話で述べた村雲犯人説が息を吹き返すか?
バルトーク『弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽』の意味とは?
楽器の見立てだとすると「清い音」こと「清音」にも意味はあるのか?
そして、シリーズ中での時系列も7話で判明。
作中の台詞によると、今鏡家の事件が1年前の出来事らしい。
つまり、本作『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』は『翼ある闇』から1年後の世界観であることが判明。
これもまた何かを意味するのか……。
9話にも注目です!!
<ネタバレあらすじ>
・登場人物一覧
木更津:名探偵。香月との関係は……。
香月:今回も香月らしい活躍を……。
村雲:今回の依頼人。
朝霞:村雲の娘、福住とは恋人同士。福住殺害の有力容疑者とされている。
葛子:村雲の後妻で朝霞の継母。第2の被害者に……。
梅昭:村雲の弟。
磐人:村雲の長男。朝霞の兄。
珠代:村雲家の家政婦。
福住:第1の被害者、朝霞の恋人。普愛寮の寮生。
日置:福住の友人。普愛寮の寮生。
亜弓:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
清音:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
岡野:福住の手首を発見したコンビニ店員。第3の被害者に……。
西町恵:岡野の憧れの同僚、コンビニ店員。
〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先輩・西町恵とコンビニのバイトをしていた岡野は切断された手首を発見する。
バラバラ殺人であった。
被害者は大学生・福住。
容疑者はその恋人・朝霞。
この事件に挑むのは木更津と香月。
だが、事件は木更津の頭脳を以てしても膠着状態に陥ってしまう。
果たして、依頼人・村雲の娘である朝霞の無実を証明することが出来るか?
矢先、朝霞の継母である葛子までもが謎の死を遂げてしまう……。
・前回のあらすじはこちら。
『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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朝霞襲撃に関して幾つかの情報がもたらされつつあった。
まず、福住、葛子殺害には気絶させる為に鈍器を用いていたが、今回に限ってはスタンガンを使っていたこと。
さらに、朝霞の部屋の忘れ物の正体がチェレスタの部品だったことも判明。
これに木更津は「バルトークだ」と叫ぶ。
福住が「弦」、葛子が「タムタム(打楽器)」、朝霞が「チェレスタ」。
すなわちバルトークの「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」がモチーフにされていたのだ。
木更津によれば、その意味するところは「黄金比かもしれない」らしいのだが……。
そんな中、木更津は香月を普愛寮に残し出掛けてしまう。
残された香月に清音が事件について意見を求めて来るのだが……。
香月はあくまで自身がワトスン役に徹していることを説明しつつ「犯人は福住と朝霞を目的としており、葛子は捜査攪乱の為のミスリードなのではないか」との自説を述べる。
これに何やら考え込む清音であったが……。
その翌日、なんと岡野(1話に登場したコンビニ店員)が死体で発見されてしまう―――9話に続く。
【木更津シリーズ】
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第2話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年1月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第3話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年4月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第4話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年9月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第5話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年11月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第6話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年2月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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