<あらすじ>
クリーンエネルギーを研究する会社社長、南条温夫(浜田晃)が社内の廊下で刺殺される事件が発生。南条社長から相談したいことがあると言われ、京都の会社で社長の帰りを待っていた警視庁捜査一課の警部補、野呂盆六(橋爪功)は、偶然、現場に居合わせる。
事件の容疑者として、現場にいた社長夫人の南条彩女(原久美子)と専務の鬼頭徹(遠山俊也)、秘書の天見詩保(大後寿々花)が取り調べを受ける。なかでも詩保は、南条社長の義理の娘だった。南条社長は同じ会社に勤める天見司郎(詩保の父親)から妻・都(詩保の母親)を奪い、結婚。司郎はその後、自殺。南条社長も後に都と別れ、彩女と再婚した。しかし「足元の不自由な南条社長を見守るように」と母・都から言われた詩保は、母の死後、南条社長の秘書になるため北海道から出てきたのだった。事件当日、スイスに出張していた南条社長を関西国際空港まで迎えに行き、一緒に帰社した詩保。だが、取り調べをした刑事に「南条社長が殺害された現場での出来事は記憶が飛んでいて何も覚えていない」と証言。耳を疑う刑事に詩保は、ひどく驚いた時やショックを受けたときに発作が起こると、泣きながら訴えるばかりだった。
その様子を別室でモニタリングしていた盆六は、姪の詩保を心配して駆けつけた精神科医で大学教授の涼風凛子(高橋惠子)と遭遇。凛子は詩保の死んだ父・天見司郎の妹だった。そして、盆六のかつての恋人だった。26年前にとある殺人事件をめぐって対立し、盆六の前から姿を消した恋人との偶然の再会。皮肉なことに、再会したきっかけも、また殺人事件だった。そんな盆六に凛子は、詩保がメンタルケアのために自分のもとに通っていたことを明かし、彼女は犯人ではないと告げる。犯人につながるヒントは“オニ”だと…。
凛子の“オニ”というヒントを受け、刑事たちが「鬼頭のことなのか?」、はたまた、「彩女の旧姓の尾仁(オニ)を指すのか?」などと論じるなか、盆六は詩保の記憶が飛ぶという発作について、詩保とともに調べに出掛けるが、そこで不可解な出来事に遭遇する。
その不可解な出来事の謎を解くべく、凛子の研究室を訪れた盆六。そんな盆六に凛子は“オニ”の正体を告げる。詩保は多重人格であり、彼女のなかにはもう一人の別人格がいるというのだ。その別人格の名は“オニ子”。既に凛子は“オニ子”と話したと言い、その時の映像を盆六と刑事たちに示す。だが、凛子が“オニ子”を犯人に仕立てようとしているように感じ、どうしても納得がいかない盆六だった。
捜査が続くなか、鬼頭と彩女の不倫関係や、二人が結託し、株を不正操作していたとの情報もあり、なかなか犯人を絞り込むことができない警察。しかし、南条社長が産業スパイを暴くため、殺害現場となった廊下に隠しカメラを仕込んでいたことが発覚。そこには事件の一部始終が映っていた。その映像から盆六は真犯人のトリックを暴いたかにみえたが、それは盆六最大の誤算だった!
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複アリ)。
クリーンエネルギーを研究する会社の社長・南条温夫が社内の廊下で刺殺される事件が発生。
この捜査に警視庁捜査一課の警部補・野呂盆六が乗り出した。
事件の容疑者は、現場にいた社長夫人の南条彩女、専務の鬼頭徹、秘書の天見詩保の3人。
特に詩保は南条社長の義理の娘であり、動機も強かった。
詩保の父は南条と同じ会社に勤務していた天見司郎。
天見司郎には娘・詩保と妻・都が居たが、当時の研究成果を南条に奪われた挙句、妻の都も南条と再婚してしまう悲劇に見舞われ自殺していた。
ところが、南条は都とも別れ彩女と再婚していたのである。
いわば、詩保にとってすれば南条は両親の仇とでも言うべき立場の存在であったが……。
しかし、都はそんな南条に対して愛し続け、今また成長した娘・詩保を彼の秘書として送り出すと死亡してしまったらしい。
詩保は南条の秘書になる為だけに北海道から出て来たのだ。
だとすれば、わざわざ詩保が南条を殺すとも考え難いが……。
詩保が南条殺害当日に同道していた事実が浮上。
取調を受けた詩保は「南条社長が殺害された現場での出来事は記憶が飛んでいて何も覚えていない」と証言。
確かに南条と同道していた筈の詩保がこの調子では何も分からない。
結局、捜査は暗礁に乗り上げてしまう。
其処に精神科医で大学教授の涼風凜子が現れる。
凜子は詩保の父・司郎と兄妹であり、凜子にとって詩保は姪だったのだ。
そして……凜子は盆六のかつての恋人でもあった。
凜子は詩保は犯人ではないと主張。
さらに真犯人は「オニ」だと謎の言葉を残す。
これを受けて専務の鬼頭か、はたまた旧姓が尾仁である彩女のか色めき立つ捜査陣。
しかし、1人盆六だけはこの見解に異を唱える。
凜子に「オニ」の正体を尋ねた盆六。
すると、凜子は驚愕の事実を述べる。
なんと、詩保は多重人格者であり、「オニ」とは詩保の別人格「オニ子」だと言うのである。
その「オニ子」こそが南条を殺害したらしい。
だから、詩保の与り知らないことだと主張したのだ。
そんな中、鬼頭と彩女の不倫関係が発覚。
さらに、2人が結託し株を不正操作していたことも分かる。
やはり、2人が犯人なのか?
その矢先、南条社長が殺害現場に隠しカメラを仕掛けていたことが判明。
これを確認した盆六。
すると、映像には詩保が南条を殺害する様子がこれ以上ないほどはっきり映っていた。
しかし、詩保にこの記憶はない。
やはり「オニ子」の犯行なのか。
ところが、今度は詩保の中に第3の人格・サトル君が存在することが分かる。
南条を殺害したのは詩保なのだが、詩保の中のどの人格が殺害したのかが分からない。
そんな中、今度は凜子が殺害されてしまう。
現場から押収された映像には、またも詩保が凜子を殺害する様子がはっきり残されていた。
「詩保、詩保」と画面内で必死に訴えかけながら殺害されて行く凜子。
「詩保じゃねぇって言ってんだろ」と叫びながら凜子を殺害するその姿は普段の詩保とは思えない。
これに凜子と共に詩保の治療に当たっていた滝本医師は「オニ子の犯行に違いない」と断言することに。
もっと厳しく詩保を監視していれば……と自身を責める滝本。
しかし、盆六はこの見解に批判的であった。
どうにも作為的なのだ。
さらに、盆六は凜子があるDNA鑑定を依頼していたことが判明。
しかも、凜子の所持品からは「赤ちゃんの産毛」が発見される。
どうやら、凜子は過去に赤ん坊を死産していたらしい。
これらから盆六は遂に真相に辿り着く。
詩保を呼び出した盆六。
まずは、南条殺害時の映像の不自然さに触れる。
詩保は犯行直前にわざわざ隠しカメラに映るように場所を移動していたのだ。
つまり、詩保はカメラの存在を知りつつ殺害を実行したことになる。
さらに調べたところ、隠しカメラの映像が9月11日だけ削除された形跡があったことが判明。
この削除されたデータを復元したところ、南条が詩保にカメラの存在を教えていたことが分かった。
やはり、詩保は故意に犯行を録画させたのだ。
データを消したことからも分かるように明らかな計画的犯行である。
此処に盆六は南条殺害は「オニ子」ではなく「詩保」による犯行と断定する。
そして、そもそも「オニ子」や「サトル君」が存在しないのではないかと詰め寄る。
その理由は凜子殺害時の映像にあった。
凜子は殺害されながら、何度となく「詩保、詩保」と呼んでいたのだ。
凜子はプロとして人格を尊重し相手の名を呼び間違えることは無い。
あれが「オニ子」の犯行ならば「オニ子、オニ子」と呼びかける筈なのだ。
凜子は詩保が多重人格を装っていることに気付き、犯人である詩保に呼びかけたのだ。
すなわち、「オニ子」も「サトル君」も存在していない。
おそらく、これまでの治療過程に疑惑が生じたのだろう。
これを明らかにしようとして、詩保に先手を打たれたのである。
「うっせぇ、盆六がぁぁぁぁぁぁ」
図星を突かれた詩保は「オニ子」を演じて逃げようとするが……。
「猿芝居は止めなさい!!」
盆六に一喝され罪を認めるのであった。
実は凜子が依頼したDNA鑑定は詩保と南条のものであった。
そして、2人は実の親娘であると鑑定されていた。
司郎は最初から妻に裏切られていたのだ。
この事実を詩保も都から聞かされていた。
これを聞き、詩保は司郎が可哀想になり南条と都を許せなくなったらしい。
其処で復讐しようと南条を多重人格に偽装しつつ殺害したのだ。
しかし、これを凜子に見抜かれ口封じに彼女も殺害したのである。
こうして、詩保は逮捕された。
数日後、事件が解決した盆六のもとに「赤ちゃんの産毛」について追加情報が届く。
盆六はある人物の髪の毛と「赤ちゃんの産毛」のDNA鑑定を依頼していた。
そして、これが親子のものであると知ることに。
瞬間、盆六は何やら晴れやかなそれでいて寂しそうな笑顔を浮かべるのであった―――エンド。
<感想>
「天才刑事・野呂盆六」シリーズ9作目。
シリーズ前作は2013年8月10日に放送されているので、ほぼ11ケ月ぶりの新作となりました。
前作については、感想の後に過去記事があります。
興味のある方はどうぞ!!
シリーズの生みの親だけに当然と言えば当然ですが、脚本は長坂秀佳先生。
長坂先生は「江戸川乱歩賞」を受賞したミステリ作家でもあります
詳しくは下記過去記事をどうぞ!!
・「刑事・野呂盆六シリーズ」の脚本家・長坂秀佳先生がミステリ作家であることを知っていますか?
では、ドラマ感想。
ちなみに、実はメインは裏番組の「金田一少年の事件簿」の視聴に宛てていました。
ですので、こちらは些か弱くなっているかもしれません。
此の点をご了承の上、あらすじ、感想ともにご覧ください。
ラストにて盆六が鑑定を依頼した「ある人の髪の毛」、あれは盆六自身のモノだよね。
つまり、凜子が死産した赤ん坊とは盆六と凜子が交際していた折に出来た子供となるのか。
意図せず凜子と別れてしまった盆六だけど、凜子自身が愛の結晶である子供を産んでいた事実は彼にとって嬉しかったんだろうなぁ。
だからこそ、そんな凜子が永遠に失われてしまったことが辛かったのだろう。
なかなかに切ない。
それにしても、詩保は本末転倒だなぁ。
司郎の復讐を目論むなら、その妹である凜子を殺害しちゃダメでしょ。
なんだかんだで実父である南条や都に似たのだろうか。
そして、復讐が果たして本当に復讐足り得ているのかも疑問。
そう言えば、作中で盆六が「詩保がパソコンが堪能だ」と繰り返していて違和感があったんだけど「堪能」の「芸事・技術に通ずる」との意味からすれば正しいんだよなぁ……と思ったのは蛇足です。
総評すると、今回もなかなかの怪作だった気がします。
◆関連過去記事
・土曜ワイド劇場「天才刑事・野呂盆六(5)〜いい死、旅立ち〜富山・宇奈月温泉復讐殺人!難病の娘と父を奪った男を殺せ!哀しき美女の挑戦状」(6月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「天才刑事・野呂盆六(6)〜哀しみ館の惨劇!殺しを見られた令嬢に迫る姿なき脅迫者!青のトラウマの恐怖!千羽鶴に隠された美人母子の秘密〜」(9月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「天才刑事・野呂盆六(7) 美しき母の伝説〜ハイヒール連続殺人!雨の京都に忍び寄る謎の絞殺魔!?35年前の怪事件に潜む驚愕の真実 美人プロファイラーVS盆六!」(3月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「天才刑事・野呂盆六(8) 見知らぬ他人〜悪女の完全犯罪!復讐殺人に潜む黒ネコの亡霊!?犯行時刻に仕組まれたアリバイトリックの謎 空白の32分間に隠された裏切りの策略」(8月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
野呂盆六:橋爪功
涼風凛子:高橋惠子
天見詩保:大後寿々花
氏原ケイ:原田夏希
八住警部補:小木茂光
南条温夫:浜田晃
南条彩女:原久美子
鬼頭 徹:遠山俊也 ほか
(公式HPより、敬称略)
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1.詩保に写真を渡すときに、無言のままで隣の刑事が内ポケットから写真を取り出していた。
隣の刑事は、このことを事前に知っていたのか?
2.盆六さんが詩保の名前を”きょうちゃん”と呼んだように聞こえたが??
もしそうなら、こんな間違いは気が付かないはずはない。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
教えて頂きありがとうございます。
確かに2つとも気になる点ですね。
1だと事前に知っていたことになるし、2だとそもそも不可解。
共になかなかの謎です。
是非とも本編の決定的瞬間を視たいところなのですが……。
管理人には録画環境がありません。残念です。
あまり耳が良くないため字幕をつけて見ることも多いですが、字幕とセリフが違うように聞こえることってたまにあります。今回の不自然な点は気付きませんでしたが。
盆六さんのシリーズをずっと見ている者として元カノや子どもまで…いやはやビックリ!
以前キムタクのドラマで仲間ゆきえさんが多重人格者を装う犯人を演じたことを思い出しました。今回の大後寿々花さんも演技上手でした。
こんど土曜ワイドで「白銀ジャック」があるようですね。真夏にスキーのドラマ涼しげでいいですねぇ。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
なるほど、確かにその可能性も考慮に入れるべきです。
こうなると、さらに録画環境にないことが悔やまれる……。
そして、盆六さんの意外な過去に触れた点で本作は稀有な回となったような気がしています。
ラストの展開は管理人も驚きました。
木村拓哉さんと仲間由紀恵さん共演で仲間さんが犯人となるドラマと言えば、TBS系で土曜20時枠に放送されていた「MR.BRAIN」ですね。
その回、管理人も視ました。
仲間さんが演じた秋吉かなこが怖かったことが印象に残ってます。
今回の大後さんも名演でした。
『白銀ジャック』は原作がサスペンスとして上質な作品なので映像化にも期待してます。
そして、確かに本作は公式HPの写真も見ていて涼しそうなんですよね。
なんとなくですが、目と気持ちに優しい。
放送予定日である8月2日の気温次第では物凄く視たいドラマになるかも!?