ネタバレあります、注意!!
登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬立樹:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。
大仲正悟:公認会計士。ある理由により常に正直たらんことを強要されている。
ヨシ:正悟の小学生時代からの友人の1人。
<88話あらすじ>
大仲正悟は優秀な公認会計士なのだが、クライアントからの評判はイマイチ良くない。
何故なら、彼はどんな些細な不正も許さず粉飾決算でもしようものなら告発も辞さない男だったからである。
今日も彼はあるクライアント相手に粉飾決算を指摘する。
そして、取引停止を盾に沈黙を強要されていた。
果たしてどうするべきか……正悟は深く悩む。
とはいえ、正悟は熱血漢ではない。
むしろ、逆だ。
正悟とて取引停止されるくらいならば見逃したい。
しかし、それが出来ない事情があるのだ。
何故なら、彼の正直は自身に由来する物では無く、他者に強要されている物だから。
正悟に強要するのは精霊・キジムナーだ。
彼が小学生となって以来、キジムナーは正悟の傍を離れない。
そして、悪事を働く悪い人間を絞め殺して食べてしまうのである。
正悟はキジムナーが怖い。
だからこそ、嘘が吐けない。
だが、このままではクライアントに見放されてしまう。
悩んだ正悟は里帰りすることに。
正悟にとって故郷とは、小学校のときに引っ越した沖縄のことである。
そう言えば、キジムナーと出会ったのもこの頃であった。
あの頃は、近所の同級生であるヨシたちと共に森の中を遊び回った物だ。
ふと童心に帰った正悟は近所の森へと足を運ぶ。
すると、其処には当時の彼さながらの少年と少女が居た。
いや、当時の正悟よりは些か大きいか。
彼らこそクワガタを求めて沖縄にやって来ていた森羅と立樹であった。
慣れぬ森の中、クワガタ採取に苦戦する森羅たち。
彼らを見かねた正悟は森羅たちに自身の知る穴場スポットを教えることに。
さらに、正悟は森羅と連絡先を交換する。
その遣り取りの中で、森羅の雰囲気に惹かれた正悟はキジムナーについて語り出す。
本来、伝承では人を食べることなどない筈である。
通常とは異なる正悟のキジムナーに、森羅は強い興味を示す。
特に、森羅は正悟のキジムナーが「絞め殺し」て「食べてしまう」ことに注目。
何故、わざわざ食べる前に絞め殺してしまうのだろうか……。
すっかり森羅と意気投合した正悟は彼を連れて、久しぶりにヨシたちと食事をすることに。
その中でヨシは「牛を絞め殺して食べる」ことについて口にする。
これを聞いていた森羅の目が光った。
森羅は言う。
もしかして、正悟のキジムナーは過去の記憶から生じたものではないかと。
例えば……と森羅はヨシに「牛を絞め殺して食べる」話を小学生時代にもしなかったかと尋ねる。
これに、そう言えば……と応じるヨシ。
確かに、正悟にも記憶があった。
何しろ、当時の正悟にとってはかなり衝撃的な出来事だったのだ。
さらに、キジムナーと聞いたヨシが奥から取り出して来た本には正悟が見知ったキジムナーの姿があった。
どうやら、正悟のキジムナーは彼がショックを受けた事実を組み合わせて生じた物だったらしい。
その翌日、長年の謎が氷解した正悟は上機嫌で森の中を歩き回っていた。
もはや、悩む必要は無いのだ。
クライアントの求めに応じるべきだろう……正悟はそう決めていたのだ。
一方、森羅には1つだけ納得がいかないことがあった。
何故、正悟のキジムナーは「悪人」を食うのか、それにも何か理由がある筈なのだが……。
そんな中、油断した正悟はハブに噛まれてしまう。
咄嗟に大騒ぎしようとして、何かを思い出す正悟。
確か、前にもこんなことがあったような……。
そのとき、相手は正悟に落ち着くように促すと冷静に対応するように諭した。
その教えを思い出し、騒がず冷静に森羅へ連絡を取る正悟。
これが功を奏し、正悟は命を取り留めることに。
そして、正悟は思い出した。
何故、正悟のキジムナーが「悪人」を食べるのかを。
同時に森羅もある事実に辿り着いた。
森羅に連れられ、地元の派出所を訪れた正悟。
其処で正悟が小学生時代に死亡した人物について調べる。
すると、該当者が1人だけ居た。
その人物は都会で不正を犯した罪で追われ、森に逃げ込みひっそりと命を落としたらしい。
この人物こそ、幼い正悟をハブの毒から救ったおじさんであった。
おじさんは涙ながらに自身の罪を悔い、正悟に正直であることの大切さを説いたのだ。
これが正悟の記憶に残り、彼の知るキジムナーが生まれたのだ。
悪事を働く悪い人間は絞め殺して食べてしまうキジムナーが。
里帰りを終え、仕事に復帰した正悟。
しかし、彼は未だにクライアントの不正を黙認するかどうかで揺れていた。
そんな正悟の傍らで何かを力強く訴えかけるキジムナー。
正悟はその瞳に何かを感じて……。
後日、正悟はクライアントを失うことを覚悟の上で粉飾決算について告発することにした。
そして、驚くべき事実を知ることに。
クライアントは既に不正を当局にマークされていたのである。
もしも、正悟が黙認すれば連座して罪に問われるところだったのだ。
これを知り呆然とする正悟にキジムナーが微笑みかける―――エンド。
<感想>
「月刊少年マガジン」2014年9月号掲載「88話 キジムナー」です。
キジムナーは正悟の良心が具現化した姿だったんですね。
常に彼の心のセーフティを司っていたのでしょう。
もともと正悟は困っていた森羅たちを助けたような優しさも持ち合わせる人物。
決して、悪人ではない。
しかし、世のしがらみに囚われ心ならずも……ということもある。
そんな事柄から正悟に毅然とした態度を取らせていたのがキジムナーだったのでしょう。
人間とは元来弱い者。
だからこそ、群体で社会を作りルールを決めてそれに従うように生きる。
だとすれば、強制されることにより行われる正義があっても良いのではないでしょうか。
きっと正悟のキジムナーは、今後も彼が何かの誘惑に乗りそうになったとき守ってくれるに違いありません。
なかなかの良回でした。
この良さを是非とも『月刊少年マガジン』本誌にてご覧頂きたい。
もちろん、次回にも期待です!!
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