2014年08月13日

『ゼロの迎撃』(安生正著、宝島社刊)

『ゼロの迎撃』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

都内で連続テロ発生!警察出動か、自衛隊による超法規的措置か――
正体の見えない敵が仕掛ける想像を絶する首都壊滅作戦とは!?
国家の「今そこにある危機」を圧倒的なリアリティと壮大なスケールで描く!

累計59万部突破『生存者ゼロ』の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家の作品。「今そこにある危機」を徹底的に描写!国を守るとはどういうことか――根源的な命題を日本人に問いかける衝撃の傑作エンターテインメント!活発化した梅雨前線の影響で大雨が続く東京を、突如謎のテロ組織が攻撃する。自衛隊総合情報部所属の情報官・真下は、テロ組織を率いている人物の居場所を突き止めるべく奔走するが……。核が持ち込まれたという情報にかき回される自衛隊総合情報部。東京を舞台に、死闘が始まった――。
(宝島社公式HPより)


<感想>

第11回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作『生存者ゼロ(受賞時タイトル『下弦の刻印』)』を手掛けた安生正先生のデビュー後第2作。

『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

あらすじからもお分かりの通り、今回はウォーサスペンスとでも言うべき展開が繰り広げられる。
また、真下とハン大佐、互いの愛国心と憂国の志が激突する点が見所と言えるだろう。
さらに、ラストの展開は圧巻。

村上龍先生『半島を出よ』(幻冬舎刊)や福井晴敏先生『亡国のイージス』(講談社刊)などの系譜に連なる作品とみて良いのではなかろうか。
当然、映像化の期待も高そうだ。

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
興味をお持ちの方は本作をお読みになることをオススメします。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:

真下:三等陸佐。ハンと死闘を繰り広げることに。
岐部:情報分析官。真下の部下。
寺沢:真下の部下。
高城:真下の部下。
ハン:半島にある某国の大佐。とある計画を実行する。
キム:ハンの腹心。ハンに付き従うが……。
陳:崔中将からハンに付けられた副官。
崔中将:大陸にある某国の中将、ある計画をハンに実行させることに。

日本の首都東京が所属不明の謎の部隊に襲撃された。
日本はこれをテロ組織による攻撃と判断。
治安維持を本分とする警察機構により対処しようとするが……。

実はこの攻撃は大陸にある某大国の崔中将が仕掛けた軍事行動であった。
崔中将の命で、半島某国において英雄とされるハン大佐率いる部隊が襲撃を仕掛けたのだ。
ハン大佐は数ヶ月前に両親が亡命失敗し処刑されたことで妻子ごと売国奴として囚われ、そのまま命を終えようとしていた。
其処を崔中将に付け込まれ、妻子を人質にされ部隊を指揮するよう強制されたのである。

しかし、ハン大佐はその経緯に反して乗り気であった。
ハン大佐の目的は首都を壊滅状態に追い込むことにあった。
これにより相対的に母国を救うつもりなのだ。
其処が彼らに仇を為したにも関わらず。
それほど、ハン大佐の愛国心は強かった。
それは同時に母国の危機に対する強い警戒心にも繋がる。
ハンにとって、この作戦は母国を救う起死回生の策であった。
この作戦を遂行する―――ハンの覚悟は悲壮の色を帯びていた。

ハンには2人の副官が居る。
1人は崔中将から付けられたお目付け役・陳。
もう1人はハンの古くからの腹心・キムである。
この2人を従えたハンは淡々と攻撃を仕掛けて行く。

一方で、ハンはキムと謀って故国に秘密裏に残した部下たちによる妻子の救出作戦も決行していた。
作戦は共に上手く行くかに思われたが……。

その頃、真下は敵がテロ組織ではなく、ハン率いる軍の特殊部隊であることに気付いた。
真下は「稀代の名将」と讃えられたハンを相手に寺沢、岐部、高城らの部下を動員し抗戦を開始する。

ハンの狙いは首都の排水機能を破壊し水門を封鎖することで都市を水没させることにあった。
これが実行されれば間違いなく壊滅してしまう。
しかし、寺沢や高城など多くの犠牲を払いつつも真下たちはこれを阻止する。
遂にはハン大佐の部隊を押し切ることに成功するのだが……。

同じ頃、形勢不利を悟ったハン大佐のもとに妻子の救出作戦が失敗に終わったとの報が届く。
どうやら、何者かが故意に情報を漏洩したようだ。

もはや、妻子は救えない……絶望の中、あえて撤退を主張するハン大佐。
裏切り者が居るとすれば何らかのアクションを起こす筈であった。
案の定、陳が反応しハンはこれを裏切り者として処刑する。
ところが、さらに腹心の部下である筈のキムまでもがこれに反対する。

実はキムこそが崔中将に買収された裏切り者であった。
首都壊滅を第一義とするハンに対し、崔中将は首都攻撃の事実さえあれば問題なかったのである。
崔中将は自身の影響力を示す為に事を起こしていたに過ぎなかった。
その目的は既に達せられている。
ハンは崔中将にとって良質であるが捨て駒に過ぎなかった。

そして、崔中将はキムに対し壊滅成功を以て報酬を支払う約束をしていたのである。
だからこそ、キムは撤退されては困ったのだ。

仲間を金に換えたのか―――キムの裏切りを知ったハンはこれを殺害することに。
故国からは追われ、崔中将に利用され、家族も失い、部下にも裏切られたハン。
作戦も失敗である。
相手がこれほどまでに奮戦するとは予想外であった。
ハンは残る部下たちに撤退を申し付け、自身は敵の指揮官と直接対決を望む。
すなわち、真下との対決である。

その頃、真下は残る敵を掃討すべく追い縋っていた。
其処に立ち塞がったのは敵の指揮官・ハンである。

ハンと真下は熾烈な戦いを繰り広げる。
しかし、ハンに対し真下は忠実な部下を持っていた。
この差が此処に来て影響する。
駆け付けた真下の部下・岐部により銃を突き付けられたハン。
ハンは自身の敗北を認めると自殺してしまう。

その頃、当の大国では意外な出来事が起こっていた。
勝利者となった筈の崔中将も中央本部から独断を咎められ更迭されることとなったのである。

それから数日後、事件の余波も収まらぬ内に次なる事件が。
なんと、大陸の某国が大船団を送り込んで来たのだ。

これに真下は真相を察する。
遂に黒幕が動き出した―――と。

黒幕は崔中将の思惑を知った上でこれを泳がせ、日本の反応を窺っていた。
そして目的を達すると出過ぎた崔中将を処分した。
黒幕にとって崔中将でさえも捨て駒に過ぎなかったのだ。
その目的は有事における日本の対処能力や周辺諸国の動向を観察することだったのである。
そして、必勝を確信し攻めて来た。

しかし……真下は思う。
真下たちもまたハンとの対決を以て、大きく成長している。
これに決して屈することはないだろう、と―――エンド。

◆「このミステリーがすごい!」関連過去記事
【第11回】
『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第10回】
『弁護士探偵物語 天使の分け前』(法坂一広著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』(矢樹純著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『保健室の先生は迷探偵!?』(篠原昌裕著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』(岡崎琢磨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『公開処刑人 森のくまさん』(堀内公太郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第9回】
「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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【第3回】
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【その他】
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第11回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『生存者ゼロ(仮)』に!!

第10回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「懲戒弁護士」に

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「ゼロの迎撃 (「このミス」大賞シリーズ)」です!!
ゼロの迎撃 (「このミス」大賞シリーズ)





こちらは文庫版「生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)





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