2014年10月15日

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第89話「空き家」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年10月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第89話「空き家」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年10月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬立樹:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。

内田降:刀剣収集家。
木嶋:空き家で死亡していた男性。

<89話あらすじ>

とある空き家の取り壊し作業が行われていた。
所有者は既に亡く、長らく遺棄されていた空き家は周辺住民からクレームの対象となっており、このほど遂に行政が処理に踏み切ったのだ。

いよいよ、ショベルカーが作業に取り掛かろうとしたそのとき。
担当者が聞き捨てならない情報を拾って来た。
最近になっても空き家付近で不審者情報が出回っていたそうなのである。
これはもしかして……中に人が居る可能性もあるのではないか。

慌てて、中を確認したところ……其処には人が居た。
ただし、その人は既に息をしていなかったのである。

ちょうどその頃、森羅と立樹は刀剣収集家の内田に招かれ、彼の自宅を訪れていた。
なんでも、内田によれば彼のコレクションを高値で買い取って欲しいらしい。
価値の何たるかも理解せず無造作に並べられたソレに、森羅は「この人、本当に価値が分かってるのかなぁ」としかめっ面を浮かべていた。
これを必死に執成す立樹。

と、其処へ外から何やら騒動の声が届いた。
興味を持った森羅たちは外へと飛び出すことに。

すると、空き家から遺体が運び出されて行くところであった。
どうやら、空き家内で勝手に生活し病死していたらしい。

周辺住民は顔を見合わせて「嫌ねぇ……」「怖いわねぇ」と囁き合う。
さらに「ソイツが噂の不審者だ」と声が上がる。

これを黙ってみていた内田。
ところが、彼の肩は小刻みに震えていた。
遂には「その人は不審者じゃない。木嶋さんだ」と訴えることに。

どうやら、内田によれば木嶋と交際があったらしい。
2人は共に天涯孤独の身で、良き将棋友達だったそうだ。
2人に差があるとすれば、内田には資産があり、木嶋にはそれがないことだったようである。
だからこそ、木嶋は空き家に住みついていたのである。

「丁重に弔って欲しい。もしも、無理なら私が葬儀を上げる」と主張する内田。
これを見ていた森羅の目が光って……。

数日後、内田宅には森羅と立樹の他に2人の男性が立ち会っていた。
「け、刑事さん……?」と戸惑う内田の前で森羅が事件の真相を解き明かす。

まず、森羅は内田が刀剣収集家で集めた品それ自体はしっかりしているにも関わらず、森羅に買取を依頼した際の無造作な並べ方に疑問を抱いた。
どうにも、そぐわないのだ。

此処から、森羅は収拾した本人と買取を依頼している人物が別人なのではないかと考えた。
どちらかが、内田ではないのだ。

だが、刀剣の所持には免許が必要。
書類を確認したところ、内田で間違いない。
ということは、収集していた人物こそ内田である。

だとすれば、目の前で買取を依頼している人物こそ内田ではないのだ。
つまり、買取依頼を行った男性は「内田を騙る偽物」なのだ。

そんな折、例の空き家騒動が起こった。
其処で発見された遺体は偽の内田によれば「木嶋さん」なる親友だと言う。
そして、偽内田によれば内田には資産があり、木嶋にはそれが無かった。

もしかして、内田と木嶋が入替っていたのではないか。
今、内田を名乗る偽物こそが木嶋。
そして、木嶋として処理されようとしている人物こそが内田なのではないか。

こうして森羅は事実を調べ、これに間違いがないことを確認したのだ。

成り済ましを指摘された偽内田こと木嶋は真実を語り始めた。
空き家に暮らし始めた木嶋はひょんなことから内田と知り合った。
共に天涯孤独であった2人はいつしか親友になった。
そんなある日、不意に内田が訪ねて来なくなった。
奇妙に思った木嶋は内田を自宅に訪ね、彼が病死していることに気付いたのだ。

そして、このとき考えたのである。
自身が内田を騙ればその資産を奪うことが可能である、と。
こうして、木嶋は内田を騙ったのだ。

「刑事さん、すみませんでした」
同席していた2人の男に謝罪する木嶋。
しかし、森羅は笑って首を横に振る。

2人は弁護士だったのだ。
実は、内田は死に際して木嶋に遺産を譲る旨を遺言状にしていたのだと言う。
2人の弁護士はその際の立会いを勤めていた。

こうして、木嶋は内田の遺志により合法的に遺産を相続することになった。
木嶋は卑劣な真似を行おうとした自身に恥じ入るのであった。

その帰路、立樹は疑問を口にする。
何故、近隣住民は空き家の不審者が入替っていたことに気付かなかったことにだろう、と。

これに森羅は応じる。
それは隣人を見ているようで見ていないからさ、と―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2014年10月号掲載「89話 空き家」です。

都会の無関心と孤独死を描いた作品ですね。
まず、共に天涯孤独の身であった木嶋と内田。
そもそも、空き家の住人である木嶋と内田が入替ったことに誰も気付きませんでした。
同様に、木嶋が内田に成り済ましていたことにも誰も気付かない。
さらに、内田が孤独死していたことも木嶋が居なければ当分気付かれなかったでしょう。
まさに、木嶋も内田も特に誰に顧みられることもない立場であった。
その存在は互いだけが認識していたワケです。
だからこそ、木嶋と内田は互いを親友とし、内田は遺産を木嶋に遺したのでしょう。
なかなかに切ない。

とはいえ、木嶋のやったことはかなりの悪事。
実は、この「代理人」の回の犯人と本質的に同じことをやってます。
それだけにモヤモヤも残りましたね。
相違点があるとすれば、相手に直接手を下していない点か。

「Q.E.D.証明終了 代理人」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン+(プラス) 2014年8号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

そう言えば、木嶋は不審者として運び出される内田を見て「それは木嶋さんだ」と呼び止めました。
あれは内田への罪の意識がそれを為さしめたのでしょうか。
あるいは、不審者として運ばれる内田に本来の自分の姿を重ね合わせた故か。
それとも……あの場で木嶋が死亡したことになれば、成り済ますことに都合が良いからか。

果たして、いずれでしょうか。
作中描写から見れば最初か2番目のように思われますが、深層心理下で3番目のソレを望んでいなかったと言えるでしょうか。
出来れば、最初の「罪の意識」故であれば僅かながらでも救いがあるのですが。

そもそも今回のエピソード、木嶋と内田で死亡順が異なっていれば「内田が木嶋の葬儀を上げる」話で終わっていただろうことを考えると、木嶋にとっては内田が消えたことでもっとも利益を得たことになる(現に財産を奪おうと目論んだ)のがモヤモヤする原因なのかもしれない。
友情話としてはスッキリしない。
都会の無関心と孤独死にしては木嶋の行為のインパクトが強過ぎて……どうにも。

難しいですね……。
この複雑な心境を是非とも『月刊少年マガジン』本誌(2014年10月時点では先月号の内容なので注意!!)をご覧頂き体験して欲しい。
もちろん、次回にも期待です!!

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